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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻11号

1990年10月発行

文献概要

特集 電解質と微量元素の臨床検査ガイド 各論 1 生体に必要な元素

10)モリブデン(Mo)

著者: 小泉利明1 山根靖弘1

所属機関: 1千葉大学薬学部衛生薬学講座

ページ範囲:P.1426 - P.1429

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はじめに
 モリブデン(Mo)はほとんどすべての生物種に必須である.ヒトに対する必須性は,1967年の幼児における致死性重症精神障害を特徴とする先天性亜硫酸塩(sulfite)欠損症の発見と1969年における亜硫酸塩酸化酵素(sulfite oxidase)のMo要求酵素としての確認とにより確立された1,2).Moは穀物,野菜,ミルクなどから十分に摂取可能で通常の食生活では欠乏症を起こしにくいので,この欠損症は特殊な遺伝性疾患である.とはいえ,このほかに世界各地で同様な欠損症が見いだされているので,ある頻度で起こることは事実であり,Mo代謝の重要性を示唆している.
 ヒトにおけるMo過剰症に関する報告もまた数例に限られている.その一例は,ソ連のアルメニア共和国において起きた関節痛と過尿酸血症を伴う痛風疑似患者の発生を知らせるものであり,疫学的調査結果によれば調査された二つの村の成人362名中71名が手足の指および肘関節などに再発性関節痛を訴えたと報告されている.原因はMo過剰摂取によると考えられ,この地域の人々のMoの1日摂取量は対照地域の人々に比べて7~10倍も高い10~20mgで,また患者の血清中Mo濃度は正常人より5倍ほど高く,310±20ppbであった3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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