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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻11号

1990年10月発行

文献概要

特集 電解質と微量元素の臨床検査ガイド 各論 1 生体に必要な元素

14)硫黄(S)

著者: 産賀敏彦1 益岡典芳1 阿部匡史1

所属機関: 1岡山大学医学部生化学教室

ページ範囲:P.1436 - P.1441

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はじめに
 硫黄(S)は,細胞構成元素の0.25%(重量比)を占め,生体構成元素組成中第8位の元素である.S元素は,主として蛋白質中の含硫アミノ酸の成分として体内に取り込まれる.自然界には約350種類のSを含むアミノ酸すなわち含硫アミノ酸が知られているが,蛋白質中に含まれる含硫アミノ酸はメチオニンとシステインの二つのみである.メチオニンは人体内でほとんど合成されないために,栄養素として摂取する必要がある.すなわち,栄養学的不可欠アミノ酸である.これに対して,システインは体内でメチオニンから生成されるので栄養学的不可欠アミノ酸ではないが,メチオニン要求量の一部を補うことができる.
 体内において含硫アミノ酸は複雑な物質代謝を受け,S元素の酸化が行われる.S元素の代謝の流れの概略を図1に示した.細胞内で生成した代謝産物はそれぞれの機能を果たした後,血液を経て尿中に排泄される.図1中下線で示したのは,尿中に常時排泄されている代謝産物である.欧米人におけるSの尿中排泄量は1日当たり平均約1gである1).そのうちの約80%が無機硫酸(遊離硫酸),約10%がエステル硫酸(エーテル硫酸ともいう),残りが含硫アミノ酸などのS化合物である.含硫アミノ酸として最も多いのはタウリンで,このほかシスチン,メチオニン,システイン酸,シスタチオニン,β-メルカプト乳酸システイン混合ジスルフィドなどが微量排泄されている.これらのS化合物は細胞内で生成した後,比較的速やかに排泄される.したがって,尿中S化合物を定量することによって,S化合物の栄養状態,代謝動態および代謝異常を推定することができる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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