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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻11号

1990年10月発行

文献概要

特集 電解質と微量元素の臨床検査ガイド 各論 2 公害性・医原性金属

1)水銀(Hg)

著者: 田村行弘1

所属機関: 1東京都立衛生研究所生活科学部食品研究科

ページ範囲:P.1445 - P.1448

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はじめに
 水銀(Hg)は体温計,水銀灯,電池,歯科用アマルガムなど生活の中で広く使われているが,生体に対しては生理的有用性のまったくない元素である.蓄積性の有害金属で,特に低級アルキル水銀は半減期も長く,中枢神経系に親和性が高いために,特異的な神経症状を呈し,胎盤通過性もよく胎児に強く作用する.熊本,新潟の水俣病やイラクのHg農薬禍では多数の患者を出し,胎児にまで及ぶ悲惨な中毒事例を起こしている.
 Hgによる疾病は,過去にはそのほとんどが金属Hg蒸気を作業中に吸引して起こる職業病であった.しかしながら,水俣病は工場からの排水中Hgが食物連鎖を経て,一般人に取り込まれ,回復不能な強烈な神経障害などの疾病が起きたもので,現在の環境汚染問題のすべてを含む象徴的な公害の事例である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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