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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻11号

1990年10月発行

文献概要

わだい

眼球中の金属動態

著者: 石川弘1

所属機関: 1日本大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.1567 - P.1568

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 生体内微量金属は,酵素の活性や蛋白質の合成に重要な役割を果たしている.微量金属の中で亜鉛(Zn)は特に大切であり,前立腺,骨,および皮膚などとともに,眼球に高濃度に含まれている.ヒトのZnの全含有量は約2g,大部分の臓器のZn濃度が20~30μg/gであるのに対し,眼球各組織,特に網脈絡膜は470μg/gと極端に高い値を示しており,生体内で最もZn濃度が高い組織であることが知られている.したがって,Znが網脈絡膜の機能に深くかかわっていることが予想される.
 さて,眼におけるZnの働きを臨床例で最初に報告したのはPrasadであり,2例の栄養性Zn欠乏症で夜盲と視力低下を指摘した.当時,これらの視機能障害の発現機序は不明であったが,その後の研究により次のように考えられている.すなわち,網膜の感光物質であるロドプシン(視紅)は,活性型ビタミンAであるレチナールから合成される.このレチナールは,網膜内でアルコール脱水素酵素の働きにより,肝臓から運ばれてきた循環型ビタミンAであるレチノールから変換される.このアルコール脱水素酵素はZnをコファクター(cofactor)としているので,Zn欠乏が生じると活性が低下し,レチノールからレチナールへの変換が阻害され,夜盲や視力低下が出現する.さらにZnは,ビタミンA輸送蛋白であるレチノール結合蛋白の肝臓内での合成にも関与することから,これらの視機能障害の発現には,Zn欠乏によるビタミンAの減少も加わるものと考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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