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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻4号

1990年04月発行

文献概要

今月の主題 結核菌と非定型抗酸菌をめぐって 話題

―抗酸菌の迅速同定―DNAプローブ法

著者: 岡田淳1

所属機関: 1関東逓信病院総合検査科

ページ範囲:P.432 - P.434

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 Mycobacterium属による結核症や非定型抗酸菌症が近年漸増傾向にあり,特に従来は重視されていなかった非定型抗酸菌による感染がcompromised hostの増加に伴い,あらためて注目されるようになってきた.抗酸菌は一般的に発育が遅く(2~8週),もっとも発育の早いrapidgrowersでも1週前後を要するため,迅速同定が切望されてきた.近年分子生物学や遺伝子工学が飛躍的に進歩し,感染症診断にも応用されるに至った.いわゆる"DNA hybridization(ハイブリダイゼーション法)"である.ハイブリダイゼーションとは,由来の異なる2種類のDNAから得られる単鎖の間に二重鎖ができるか否かを調べることで,DNAの二本鎖(ヌクレオチド鎖)が比較的簡単な操作(加熱またはpHを上げる)でほどけ,逆の操作(冷却またはpHを下げる)で相補性のある元の二本鎖に戻る性質を利用し,DNA構造の明確な微生物と未知の微生物との間でハイブリダイゼーションを行い,相同性を調べ,微生物の同定を行う方法である(詳細は文献1,2)参照).DNAハイブリダイゼーション法に用いられる標識DNAをprobe(プローブ)と呼ぶ.標識には従来アイソトープが用いられてきたが,最近アイソトープを使わない(非放射性)標識法が開発されている(ビオチンや化学発光物質).またプローブとしては,全染色体DNA,DNA断片および病原性遺伝子を使う場合があり,目的に応じて使い分けられている.
 本稿は抗酸菌の迅速同定としてDNAハイブリダイゼーション法(プローブ法とも言う)について説明するが,ここではすでにFDAの認可を得てアメリカ国内で市販されているキットについて筆者らも検討する機会を得たので,その概要を紹介し,今後の問題点について考察する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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