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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻4号

1990年04月発行

文献概要

TOPICS

ネコひっかき病の病原菌と皮膚生検

著者: 森嶋隆文1

所属機関: 1日本大学皮膚科

ページ範囲:P.470 - P.470

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 ネコひっかき病はその名の示すようにネコからヒトに伝播される疾患で,古くから有名な疾患であるが,確定診断しえた症例の報告は少ないように思われる.本症は世界に広く分布し,季節的には夏から秋に多く,ヒトにのみ発症し,感染源と考えられるネコは無症状である.男女差はなく,幼小児から青年に好発する.ネコ,ことに仔ネコにひっかかれた3~5日後,病原体の侵入門戸となった受傷部位に一致して初発皮膚症状が生じる.罹患部位は上肢,ことに手に多く,単発性の丘疹としてはじまり,2~3日後水疱様あるいは膿疱様に変化し,後に痂皮に覆われる.皮膚病変は軽微で気づかないことも多く,所属リンパ節腫大をきたしてはじめて医師を訪れることが多い.
 初発皮膚病変出現1~3週後にリンパ節が腫大する.局所症状が一見重篤にみえても全身症状は通常軽度で,ときに発熱,悪感,頭痛などを訴える.リンパ節腫大は通常,片側性,単発性で,急性または亜急性に経過し,大きさは鳩卵大から鶏卵大に達し,波動を触れ,ときに自潰排膿することもある.自発痛は軽度であるが,圧痛は常にみられる.リンパ節の組織学的検索は非定型例の確定診断のために重視されている.初期では皮質や髄質に細網細胞の増殖を認め,中間期では結核結節に類似した肉芽腫性炎症像を示し,晩期では膿瘍を形成する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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