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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻6号

1990年06月発行

文献概要

今月の主題 フローサイトメトリー 話題

フローサイトメトリーを用いた細胞内pHの測定

著者: 米山彰子1 中原一彦2

所属機関: 1東京大学医学部第一内科学教室 2杏林大学医学部臨床病理学教室

ページ範囲:P.718 - P.720

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1.はじめに
 細胞内pH ([pH]i)は酵素反応や蛋白合成をはじめ細胞内の種々の反応に影響を与えており,一般的には,[pH]iが上昇すると細胞の代謝活性が増すように見える.一方,生理的な[pH]iは,細胞内からHを積極的に排出する機構により維持されることが示唆され,この機構のひとつとして,Na/Hexchangerが注目されている1,2).細胞増殖を刺激する物質の多くが,Na/Hexchangerの活性化とそれに伴う細胞内アルカリ化をおこす3)ことから,Na/Hexchangerの活性化あるいは[pH]iの上昇が,細胞の活性化や増殖の開始あるいは維持に何らかの役割を果たす可能性が考えられている1,4).このように,細胞内反応の制御機構や細胞の活性化を理解するうえで,[pH]iの測定は重要である.従来のpH電極,弱酸,弱塩素色素などを用いた測定法は,操作の繁雑さ,測定感度や応答速度,必要な細胞数などの点で問題があった.近年開発された蛍光pH指示薬BCECF(Bis (carboxyethyl) carboxyfluorescein)はこれらの欠点を解決しており,BCECFと蛍光分光光度計を用いて[pH]iの測定が行われるようになった5).しかしこの方法では細胞浮遊液全体の蛍光を測定するにすぎない.われわれはさらに詳細な検討を目的に,個々の細胞の蛍光が測定できるフローサイトメーターを用いた測定を試みたので紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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