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文献詳細

雑誌文献

臨床検査34巻6号

1990年06月発行

文献概要

TOPICS

急性膵炎重症度の早期診断

著者: 三木一正1

所属機関: 1東京大学第一内科

ページ範囲:P.742 - P.743

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 急性膵炎の診断には緊急を要する場合が多い.また,その成因には多数の活性化膵酵素による全身の多臓器障害(multiple organ failure;MOF)が関与しており,急性膵炎の重症度判定や経過観察には,これら多因子の総合判定が必要である.したがって,急性膵炎を念頭におく場合は,膵リパーゼ,エラスターゼ,アミラーゼのほかに,アミラーゼアイソザイム,白血球数,CRP,胸・腹部単純X線写真,尿・血液生化学検査,CT, USなどを,病態に応じた治療を行いながら実施する必要がある1).臨床上,急性膵炎の重症型を早期診断できるような,簡便かつ信頼性の高い検査法の開発が待たれていたが,1988年Hurleyら2)により報告された尿中トリプシノゲン活性化ペプタイド(TAP)の測定法は,トリプシノゲンの活性化ペプタイド内の5つのアミノ酸よりなるペプタイド鎖(Asp-Asp-Asp-Asp-Lys)のC末端に対する特異抗体に基づくRIA法(測定限界;10-11mol/l)である.これらの抗体はトリプシノゲン蛋白とは結合せず,遊離のTAPとのみ結合する.膵臓内のトリプシノゲン活性化によって生じた遊離のTAPは腹腔内や大循環系に放出され,その後,速やかに腎で濾過され,尿中に排泄される.すなわち,膵臓トリプシノゲンの活性化の程度は,尿中TAPを測定することによって定量化しうるわけであり,このTAP値が急性膵炎重症度の早期診断に有用である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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