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オートクリン機序
著者: 烏山一1
所属機関: 1東京大学免疫学
ページ範囲:P.745 - P.746
文献購入ページに移動 オートクリン(autocrine)機序という概念は,もともと癌化細胞の自律性増殖を説明するものとして提唱された仮説である1).すなわち,細胞がその増殖に必要な因子を自ら産生,分泌すると同時に,細胞表面に増殖因子特異的なレセプターを発現した場合,リガンドとレセプターの結合により,シグナル伝達が恒常的に起こる.その結果,細胞は正常な増殖のコントロールから逸脱し,癌化するという考え方である.このような例として,マウス肉腫ウイルスによってトランスフォームした細胞が発癌増殖因子(TGF)を分泌しており,この因子が細胞の癌化に関与していることが示された.さらに,サル肉腫ウイルスの持つ癌遺伝子sisの産物が血小板由来増殖因子(PDGF)と相同であることが明らかとなり,オートクリン仮説が裏付けられた.最近では,クローン化された遺伝子を線維芽細胞や造血系細胞に導入,発現させることにより,発癌増殖因子α(TGFα),上皮増殖因子(EGF),線維芽細胞増殖因子(FGF),顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)やマクロファージ・コロニー刺激因子(CSF-1)の自己分泌と癌化との関連が,実験的に証明されてきている.
リンパ球の増殖,分化は種々の液性因子によってコントロールされているが,成人T細胞白血病や骨髄腫のようなリンパ球系の腫瘍では,その発症にオートクリン機序が関与している可能性が示されている.
リンパ球の増殖,分化は種々の液性因子によってコントロールされているが,成人T細胞白血病や骨髄腫のようなリンパ球系の腫瘍では,その発症にオートクリン機序が関与している可能性が示されている.
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