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サイミュリン
著者: 岩田力1
所属機関: 1東京大学医学部附属病院分院小児科
ページ範囲:P.286 - P.287
文献購入ページに移動 サイミュリン(Thymulin)はいわゆる胸腺ホルモンの一種である.胸腺関連のホルモン様物質はサイモシン,サイモポイエチンなどいくつか知られているが,サイミュリンは最初血清中のサイモシン様活性物質として知られた.ロゼット阻止法と呼ばれるbioassayを用いてブタの血清より分離精製された活性物質は血清胸腺因子(facteurthymique sérique;FTS)と名づけられ,9個のアミノ酸よりなり分子量857であることが明らかにされた1)(図1).アミノ酸組成が明らかになったため合成のFTSが作られていったが,興味深いことに合成FTSにおいて活性があるものとないものとがたまたまあり,その原因を探る過程で活性発現には金属,なかでも亜鉛(Zn)の存在が必須であることが明らかとなった2).生体のなかでは種々の酵素がその活性発生のために亜鉛の存在を必要とするが,同様の機序と思われる.当初はFTSに亜鉛が結合した活性型をサイミュリンと呼んだが,現在はそのような区別はせず,一般的にサイミュリンと呼ばれるようになった.
血清から抽出されたため,その胸腺依存性と胸腺における局在が問題になるが,マウスにおいて胸腺を摘除したものではサイミュリン活性はなく,逆に胸腺移植後に活性が出現することより胸腺依存性は明らかである.モノクローナル抗体を用いた組織染色でサイミュリンの胸腺局在も確かめられている.
血清から抽出されたため,その胸腺依存性と胸腺における局在が問題になるが,マウスにおいて胸腺を摘除したものではサイミュリン活性はなく,逆に胸腺移植後に活性が出現することより胸腺依存性は明らかである.モノクローナル抗体を用いた組織染色でサイミュリンの胸腺局在も確かめられている.
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