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文献詳細

雑誌文献

臨床検査35巻3号

1991年03月発行

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TOPICS

ドレブリン

著者: 白尾智明1

所属機関: 1岡崎国立共同研究機構生理学研究所

ページ範囲:P.291 - P.292

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 発生過程において神経組織が作り上げられるときには,神経細胞は自分のあるべき場所まで移動し神経軸索や樹状突起を伸ばして標的細胞と選択的にシナプスを形成しなければならない.そのためには種々の特異的な蛋白質が,空間的ならびに時間的に一過性に出現する必要がある.ドレブリン蛋白質はそうした神経発生に関連した特異蛋白質の1つである.ドレブリン蛋白質には幼弱型E1, E 2と成熟型Aの3種の蛋白質アイソフォームがあり,神経細胞の発生が進むに従って順次交代に出現してくる1,2).分裂中の神経上皮細胞にはドレブリンは存在しないが,最終分裂を終えて神経細胞に分化した細胞はドレブリンE1を作るようになる.次に神経細胞はその細胞固有の場所に移動するわけであるが,その場所へ到達するとドレブリンE1を作るのをやめてドレブリンE2を作るようになる.したがってドレブリンE1は細胞の移動と関係していると考えられる.またドレブリンE2は成長中の神経突起に存在し,もう動かなくなった細胞体には存在しないので神経突起の成長に関係していると考えられる3).こうして神経細胞は軸索や樹状突起を伸ばして標的細胞とシナプスを作り,神経組織が完成するわけであるが,このような完成した神経組織ではドレブリンAが樹状突起にのみ存在している4).神経細胞の樹状突起は完成した神経組織においてもさかんにその形態を変えていることが報告されているので5),そうした樹状突起の形態変化とドレブリンAとの関係は興味深い.実際ドレブリンAを線維芽細胞由来の株化細胞に発現させると細胞の形態が変化して一部の細胞は神経細胞様の突起を持っようになることが最近わかってきている. それではドレブリン蛋白質はどのようにして細胞の形態変化とかかわっているのであろうか.ドレブリン蛋白質は細胞質可溶性画分に属する蛋白質であるが1),そのアクチンに対する結合能やアミノ酸配列6・7)から細胞骨格に結合している蛋白質ではないかとわれわれは考えている.生体内神経細胞においては免疫組織化学の結果からドレブリンは膜直下に高濃度存在しており,膜の内在性蛋白質と細胞骨格をつなぐ機能を持ちその結果細胞の形態変化に関与しているのではないかと期待される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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