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文献詳細

雑誌文献

臨床検査35巻7号

1991年07月発行

文献概要

TOPICS

血小板活性化因子(PAF)とその受容体

著者: 本田善一郎1

所属機関: 1東京大学物療内科

ページ範囲:P.769 - P.770

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 血小板活性化因子(platelet activating factor;PAF)はウサギ好塩基球由来の血小板凝集物質,および腎臓に存在する降圧物質として認識された脂溶性の化学伝達物質で,1-ο-alkyl-2-acetylsn-glycero-3 phosphocholineの構造を持つリン脂質である.これらの作用のほかにも,PAFは顆粒球の遊走,脱顆粒,血管透過性の亢進,肝臓でのグリコーゲン分解の促進,心拍出量の減少,子宮収縮など平滑筋の収縮といった多彩な生物作用を発揮し,臨床的には主としてアレルギー反応,アナフィラキシーショック,エンドトキシンショックなどの病態にかかわる主要な化学伝達物質の1つと考えられている1)
 PAFは非常に脂溶性が強く容易に細胞膜の脂質二重層に侵入するが,その作用は細胞表面の受容体を介する特異的な反応による.受容体結合実験や細胞生物学的な実験から,①細胞表面に立体特異的な特異的結合部位が存在すること,②受容体の活性化により細胞内遊離カルシウム濃度が上昇すること,③カルシウム濃度の上昇はGTP結合蛋白質を介するホスフォリパーゼCの活性化によるか,あるいはカルシウムチャンネルの開口による細胞外カルシウムの流入によること,などが示唆されていた.ことにPAFによる細胞活性化の機構には未解決の点があり,GTP結合蛋白質を介するイノシトールトリリン酸上昇と細胞内のカルシウムプールからのカルシウム動員を支持する報告が多いものの,PAF受容体がカルシウムチャンネル,あるいはその近傍にあるものという議論も根強く存在した.これらの疑問点を解決するには受容体の精製,あるいは受容体遺伝子の単離による受容体分子の構造,機能の解析が必須だが,主としてPAFの疎水性に基づく非特異結合のため,蛋白化学的なアプローチは成功していなかった1).最近われわれはアフリカツメガエル卵母細胞を用いた遺伝子発現系2)を利用して,受容体の1次構造の情報を用いずにPAF受容体の遺伝子をクローニングすることに成功した3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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