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今月の主題 真菌症 話題
(1→3)―β―D―グルカンを指標とした深在性真菌症の検査
著者: 大林民典1
所属機関: 1自治医科大学臨床病理学教室
ページ範囲:P.852 - P.853
文献購入ページに移動カブトガニの血液は以前よりリムルステストとしてエンドトキシンの検出に使われていたが,このテストの結果に釈然としないものを感じていたわれわれは,G因子を除いたエンドトキシンに,特異的なリムルステストを作り(図3),従来の方法と比較検討してみたところ,従来法で明らかな高値を示しながら新しい方法ではまったく反応しない検体があり,それらはいずれも内科的深在性真菌症の症例であることがわかった.そこでG因子を利用した(1→3)―β―D―グルカンの測定系(Gテスト)を組み立て(図4),熱水抽出したいろいろな真菌多糖に対する反応性をみてみると用量依存的に反応することが確かめられた.このGテストを用いて血液培養で真菌が陽性にでた検体,剖検で内臓真菌症が確認された検体,臨床的に抗真菌剤の奏効した症例の検体についてみるといずれも血中(1→3)―β―D―グルカン濃度が高いことが示された.さらにこのような血液検体を(1→3)―β―D―グルカナーゼで消化した後,Gテストにかけるとまったく反応しなくなることから検体中のG因子反応物質は確かに(1→3)―β―D―グルカンであることが裏づけられた.また,血中(1→3)―β―D―グルカン値は抗真菌剤による臨床症状の改善につれて低下していくことも観察されている.これまでの経験から,カンジダ,アスペルギルス,クリプトコッカスといった内科的深在性真菌症の三大病原真菌はすべてGテストに反応しており,カンジダのなかでも広い菌種がカバーされている.以上のように血中(1→3)―β―D―グルカンの測定は深在性真菌症のスクリーニング,経過観察に非常に有望な検査法と言える.しかしまだ臨床に供する前に解決しておかなければならない点が残されている.その1つは(1→3)―β―D―グルカンの標準品の調製である.すでに述べたように(1→3)―β―D―グルカンの大きさや高次構造によって活性に大きな開きがあるので,これらの条件をある程度そろえた,一定の活性を持つた安定した標準品を用意しなければならない.また偽陽性の問題として腎透析患者の場合がある.腎透析膜がセルロースで作られている場合には,(1→3)―β―D―グルカンが大量に混在しているので,血中に流出して偽陽性となる.腹水の透析灌流を受けている場合も同様である.また,血漿分画製剤やアミノ酸製剤のなかには製造工程でセルロース膜を使用しているところもあるので,これらの非経口投与を受けている場合には,結果の解釈に注意が必要となる.
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