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文献詳細

雑誌文献

臨床検査35巻9号

1991年09月発行

文献概要

TOPICS

緑膿菌金属プロテアーゼ

著者: 福島淳1 稲見すま子1 奥田研爾1 瀬谷美子2

所属機関: 1横浜市立大学医学部細菌学 2横浜市立大学医学部看護学

ページ範囲:P.994 - P.995

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 緑膿菌は日和見感染で,抵抗性の弱まった患者に難治性の疾患を起こすことが知られている.例えば,火傷,悪性腫瘍,嚢胞性線維症(cysticfibrosis),呼吸器疾患に対する術後の患者で肺炎を起こすという報告がある.緑膿菌感染症では,感染部位で菌が増殖し,敗血症を引き起こす.今までに菌のビルレンスに関与するいくつかの因子が同定され,その中でもZnイオンを活性中心に持つ金属プロテアーゼは重要な作用をしていることがわかってきた.緑膿菌は2~3種類の金属プロテアーゼを生産する.その内主要なものはエステラーゼでほかにアルカリプロテアーゼが知られている.これらの金属プロテアーゼは,それ自体の毒性は低く,同じ緑膿菌の生産する毒素であるエキソトキシンAの1/100以下である1).ところが,プロテアーゼを生産する緑膿菌は,非生産菌に比べ著しくビルレンスが高いことが知られ,さらに動物による実験で,プロテアーゼ非生産菌を感染させる際,少量の精製プロテアーゼを投与すると菌のビルレンスが増加すると報告されている.これらの作用をプロテアーゼのアグレッシン作用と呼んでいる1).このアグレッシン作用は生体の種々の物質を分解することにより,菌の増殖しやすい環境を作るためではないかと考えられている.また金属プロテアーゼに対する抗体は感染防御機能があることから,これら金属プロテアーゼは,緑膿菌ワクチンの要素として用いることができると思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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