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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻11号

1992年10月発行

文献概要

特集 遺伝と臨床検査 II DNA診断 1.DNA診断のための基本的操作

6) PCR法

著者: 竹脇俊一1 永井良三2

所属機関: 1東京大学医学部臨床検査医学教室 2東京大学医学部第三内科学教室

ページ範囲:P.58 - P.62

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●はじめに
 PCRはpolymerase chain reactionの略で,DNAの既知領域を数時間のうちに数十万倍に増幅する方法である.その反応は,二本鎖DNAの一本鎖への分離,合成プライマーの一本鎖へのアニーリング,DNAポリメラーゼによるプライマーの伸張反応,の3つの過程から成り,このサイクルを繰り返すことによりDNAを増幅する.DNAポリメラーゼは一本鎖DNAを鋳型にしてそれと相補的なDNAを合成し,二本鎖とする反応を触媒する.反応の開始にはDNAと相補的に結合するプライマーが必要で,プライマーの結合後,5'から3'の方向にDNA鎖を合成していく.DNAは通常二本鎖で存在するので,目的の領域を挟む二種類のプライマーを加えてやれば,その領域は2倍になり,それを繰り返すことにより指数関数的にDNAが増幅される(図1).したがって,既知領域の塩基配列を含むゲノムが1分子でもあれば,その領域のDNA断片が大量に得られることになる.
 この方法が遺伝子研究やDNA診断に与えたインパクトは大きく,その方法論を大きく変えた.従来の分析技術は検出シグナルの増幅に焦点が置かれていたが,PCRは検出対象のDNAそのものを増幅するというまったく新しい発想に基づいている.そのため検出が,簡便な電気泳動などで十分となり,複雑な分析過程を大幅に簡略化した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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