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ホスホグリセリン酸キナーゼ異常症
著者: 藤井寿一1
所属機関: 1東京女子医科大学輸血部
ページ範囲:P.229 - P.230
文献購入ページに移動 ホスホグリセリン酸キナーゼ(phosphoglyceratekinase;PGK)異常症は慢性溶血性貧血としばしば精神・神経症状を伴うことが多く,赤血球酵素異常症の中では比較的重篤な伴性遺伝性疾患で,世界で15家系(うち,わが国の例は4家系)の報告がある1,2).PGKは正常酵素の3次構造も明らかになっており,人類遺伝学および酵素学的に非常に興味ある酵素であり,現在までに6種の変異酵素において単一アミノ酸置換が証明されている(図1)2~7).すなわち,酵素の活性基に重大な影響を及ぼす部位の単一アミノ酸置換であるPGK Uppsala, PGK TokyoとPGK Matsueは溶血性貧血と精神・神経症状は重篤である.PGK Shizuokaのアミノ酸置換の部位はN―ドメインを構成するβストランド直前で,等電点変化はほとんどないが,より側鎖の大きいアミノ酸への変化で,軽度の溶血とミオグロビン尿を呈するものの,精神・神経症状は伴わない.活性基に直接影響を及ぼさない酵素蛋白表面での異常であるPGK IIとPGK Münchenでは臨床症状は認められない.
以上,分子遺伝学的手法の進歩に伴い,変異酵素の構造異常の同定が分子レベルで可能となり,PGK異常症では変異酵素の構造異常と機能異常の関係が明らかになっている.
以上,分子遺伝学的手法の進歩に伴い,変異酵素の構造異常の同定が分子レベルで可能となり,PGK異常症では変異酵素の構造異常と機能異常の関係が明らかになっている.
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