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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻2号

1992年02月発行

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TOPICS

赤血球膜内在性蛋白質

著者: 濱崎直孝1

所属機関: 1福岡大学臨床検査医学

ページ範囲:P.184 - P.186

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 細胞は細胞膜で囲まれており,細胞膜を横切る物質の動きは制限されている.一方で,細胞が生存しその機能を正しく発揮するためには細胞外から細胞内への情報の伝達や物質の移動が起こらねばならないし,細胞内から外への同様な動きも必要である.これらの現象を媒介しているのが細胞膜に存在する蛋白質である.赤血球は他のどのような細胞とも違って,細胞内器官がまったく存在しないのでそれら器官を囲む膜系がまったくなく,赤血球膜(赤血球の細胞膜)は純度が高いものを容易に調整することができる.そのようなわけで赤血球は細胞膜の生化学的研究の格好な材料となっている.
 細胞膜蛋白質は膜表在性蛋白質(peripheralmembrane protein)と膜内在性蛋白質(integralmembrane protein)とに大別できる.図に赤血球膜蛋白質をSDS―ポリアクリルアミド電気泳動で分析したもの(図1)と,それぞれの蛋白質が赤血球膜にどのような形で存在しているかの模式図(図2)を示す.この模式図で赤血球膜内側表面に存在しているスペクトリン(バンド1および2),アンキリン(バンド2,1),バンド4,1,バンド4,2,アクチン(バンド5),バンド6(GA 3 PDH,解糖系酵素)などが膜表在性蛋白質であり,これらの蛋白質は相互に結合して,細胞骨格(cytoskeleton)を形成している.細胞骨格は細胞膜の基本構造を安定化させる方向に働き,赤血球の場合,その独特のドーナツ型をした形態の維持や自身の直径よりも狭い毛細血管を通り抜けるときに必要な柔軟性の維持に貢献している.これらの蛋白質に異常があると溶血性貧血の原因となることが証明され,さらに,細胞骨格の形成は,赤血球に限らず神経細胞や血小板その他多くの細胞で起こっていて,それぞれの細胞機能発現に必須であることが明らかになりつつある.赤血球の細胞骨格についてはPalek & Lambert1)や高桑2)の総説を参照していただきたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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