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文献詳細

雑誌文献

臨床検査36巻2号

1992年02月発行

文献概要

TOPICS

QRS区間内微小電位分析による心筋の病態の把握

著者: 川口卓也1

所属機関: 1藤田保健衛生大学医用電子

ページ範囲:P.189 - P.189

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 一般の心電図ではあまり重視されていなかった高い周波数の信号成分(一般に30Hz以上の周波数と言われる)が注目され始め,現在ではQRS群の終末部に的を絞った心室遅延電位(late ventricular potential;LVPまたはLP)が有名になった.しかし高周波成分はQRS群終末部だけにあるのではなく,QRS区間全体にわたって存在し,特にQRS群の中央付近にもっとも強く発生している.技術の進歩や新しい信号処理法の応用に伴って,このQRS区間内の高周波成分の分析が可能となりつつある.一般の心電図では心筋の状態を再分極相,すなわちST-T部で判読しているが,QRS区間内高周波心電図では脱分極相を直接的に,しかも局所的に観察することが可能である.これによって心筋組織の電気的な性状の判定という新しい心臓診断分野への応用が期待されている.
 従来の心電計でも100Hz程度までの信号は記録されているが,これはR波やS波の波高やJ点(QRSとST-Tの接合部)を正確に描出するためのもので,積極的に診断に利用されているわけではなかった.しかしQRS波をよく観察すると,その中に細かな振れ(ノッチやスラー)が存在していることに気づく.このQRS波内の微小な振れは周波数の高い微小な電位によるもので,心筋局所の興奮伝播状態を反映したものと推測されている.このような小振幅で短周期の振れを高周波微小電位と名づけ,QRS波の主要成分から分離検出する研究が進められている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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