icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査36巻7号

1992年07月発行

雑誌目次

今月の主題 皮膚

総説

皮膚科学の進歩

今山 修平 , 堀 嘉昭

pp.707-712

病因の解明と治療の進歩を中心に,表皮の破壊性・炎症性・増殖性疾患,色素異常症,血管の炎症性・増殖性疾患の順に解説した.すなわち,①表皮ケラチノサイト間の接着分子と,それに対する自己抗体により細胞接着が破壊される天疱瘡群,およびその先天的な形成不全症,②表皮を場としたアレルギー反応における担当細胞とサイトカインの違い,およびその反映としての接触性皮膚炎とアトピー性皮膚炎,③ケラチノサイトの分化増殖の促進因子とその異常症としての乾癬,④色素産生の制御因子としての増殖因子とその異常症,⑤血管炎と血管腫の新しい診断,⑥血管腫と色素異常症に対するレーザー治療を取り上げた.〔臨床検査36:707-712,1992〕

技術解説

皮膚組織標本作製上の問題点

吉村 忍

pp.713-717

皮膚組織は標本作製という観点からみた場合,その特異な構造から,硬度の異なる2つの要素を組織中に持っている.このため表皮と真皮の人工的亀裂を代表とした種々の難しさがある.本稿では主に光顕標本作製法を中心に最新の知見を踏まえ,良好な標本の作り方,安定した凍結切片作製法について解説した.〔臨床検査36:713-717,1992〕

動物性皮膚疾患

三原 一郎 , 新村 眞人

pp.718-721

皮膚は外的環境と接する最大の臓器であり,それだけに多く病原体の標的となりやすい.一方,皮膚は外的刺激に対する反応を皮膚の症状(皮疹,発疹)として容易に認識しうる特殊性を備えており,それぞれの病原体がそれぞれに特徴的な皮膚症状を呈するために,多くの症例は検査をするまでもなくその病原体を類推することは容易である.ここでは,動物性皮膚疾患の中から比較的頻度の高い疾患を取り上げ,病原体を直接,間接的に証明するための検査法を中心に,疾患の原因となる病原体,臨床症状,治療および予後について述べた.〔臨床検査36:718―721,1992〕

DNA染色と皮膚腫瘍

池 亨仁 , 大塚 藤男 , 石橋 康正

pp.722-726

細胞核DNAの定量はその細胞の生物学的動態の解析に有用な情報を提供する.DNA量の測定にはDNAを蛍光色素によって染色,その蛍光量を定量する方法がよく用いられる.最近,われわれはDNAに特異的親和性を持つ蛍光色素であるDAPI (4′,6―diamidino-2―phenylindole)を用いてDNAを染色し,顕微蛍光測光法によってDNA量を定量している.本稿ではこのDAPI-DNA顕微蛍光測光法を中心にDNA染色および定量について概説し,われわれの皮膚腫瘍における最近の結果を簡単に紹介する.〔臨床検査36:722-726,1992〕

皮膚の免疫組織化学的検査

小野寺 有子 , 清水 宏 , 西川 武二

pp.727-732

 免疫組織化学は,細胞や組織中に存在する特定の物質を抗原抗体反応などを用いて同定する方法である.皮膚科領域においても自己免疫疾患や腫瘍などの補助診断に欠かせないもので,幅広く用いられている.

 免疫組織化学において良好な結果を得るためには,組織を処理するに当たり形態と抗原性の両者が十分に保持されなければならない.そこでまず,組織の基本的な固定法,包埋法,切片作製法について解説した.また,光顕レベルの観察で通常用いられている蛍光抗体法,酵素抗体法について,それぞれの原理,特徴,手技につき概説し,特に皮膚疾患への応用についてまとめた.また,免疫電顕については,最近の新しい知見も含めて解説した.〔臨床検査36:727-732,1992〕

皮膚結合織病と検査

辻 卓夫

pp.733-739

皮膚結合織病の検査として,①皮膚の弾力性を調べる皮膚弾力測定器,②非観血的に真皮の状態を観察する超音波測定装置,③真皮結合織の形態的な変化を観察する光学顕微鏡および電子顕微鏡用標本作成,④組織中のコラーゲン,エラスチン,GAGsの量や型,真皮由来培養線維芽細胞が産生するこれらの量,型およびリシルオキシダーゼ活性を測る生化学的手法をそれぞれ述べた.そして主な皮膚結合織病の臨床像,形態的および生化学的所見につき表にまとめた.〔臨床検査36:733-739,1992〕

発汗異常の検査

植木 宏明

pp.740-743

発汗にはエックリン汗腺とアポクリン汗腺によるものがあるが,体内外の種々な環境因子や精神作用によって影響される.病的状態では,この発汗が異常に増加したり,逆に低下することがある.これらの発汗状態を測定する方法として定性的,および定量的な方法が工夫されている.また,場合によっては発汗を誘発することも必要である.これらの方法について,簡単に解説した.〔臨床検査36:740―743,1992〕

話題

皮膚疾患とサイトカイン

向田 直史

pp.744-747

 1.はじめに

 1980年代に入り,主に遺伝子工学の進歩に伴い,細胞が産生する種々のペプチド性の生理活性物質の構造の解明と大量生産が次々と成功した.その結果,これらの活性物質のいくつかは,微量でも一見無関係と思われるような多彩な生理活性を示すこと,しかも通常はautocrineまたはparacrine的に働くことが判明した.このような生理活性物質を総称してサイトカインと呼ぶことが提唱され,現在ではこの名が広く用いられつつある1)

 皮膚は,微生物やその他の異物の侵入に対して,単に物理的障害として働くのみならず,これらに免疫反応を起こし,サイトカインを含む種々の生理活性物質を産生・分泌する.と同時に,リンパ球・好中球などの白血球が局所に動員され,これらの細胞も異物の排除へと働く.このような機構は通常は生体防御に有利に働くが,ときには局所で過剰産生されたサイトカインや過剰に動員された白血球によって,種々の病態が生じることがある.

高コレステロール血症と黄色腫

小玉 肇

pp.748-751

 泡沫細胞が浸潤して発症する黄色腫は基本的には高脂血症における皮膚症状であり,種々の形態を呈する.高コレステロール血症では,結節性黄色腫,腱黄色腫,眼瞼黄色腫が発症する.その発症病理は動脈粥状硬化症に類似する.黄色腫ではプロブコールがその退縮を促進することが確認されている.

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

町田 勝彦 , 桜井 進

pp.752-756

はじめに

 1970年にMelishとGlasgow1)が,新生児剥脱性皮膚炎,水疱性膿痂疹,ブドウ球菌性猩紅熱の各疾患からファージタイプII群に属する黄色ブドウ球菌を分離し,その菌を生後4日以内の仔マウスの皮下または腹腔に接種することによって,患者に認められるような全身性の表皮剥脱が生じ,肉眼的にも組織学的にもヒトの病変と同じ皮膚変化を観察し,さらに仔マウスの病巣から同じファージタイプの黄色ブドウ球菌を回収してKochの3原則を確認した.このように上記疾患に共通した起病因子を有する特定の黄色ブドウ球菌による発症の可能性を指摘したことが,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(staphylococcal scalded skinsyndrome;SSSS)の病態解析の端緒となっている.

 その後多くの研究者によってMelishらの実験が追試確認され,病巣由来黄色ブドウ球菌の培養上清から新生仔マウスに表皮剥脱を起こす高分子蛋白質である表皮剥脱素(exfoliative toxin;ET)が分離精製された2,3).このETについて物理化学的性状の解析4),生物活性作用の追求,疫学的研究5),免疫学的研究6)などが進められつつあり,SSSSの病態解析はETを中心に行われていると言える.

Kaposi肉腫の診断

塩田 真美 , 森 茂郎

pp.757-760

 1.はじめに

 Kaposi肉腫は,皮膚やリンパ節に小血管や異型紡錘型細胞が不規則に増生し大小の結節を作り,ときには内臓にも侵襲する奇病である."肉腫"と命名されてはいるもののその本態は不明で,"腫瘍か非腫瘍か?"の議論をはじめとして,その本態,病因の解明に興味が持たれてきたが,一部の地域を除いて非常にまれな疾患であるため,日常の診療で問題になることはほとんどなかった.しかし本症がAIDSに高頻度に合併すること,この数年間のAIDS症例が急増していることなどにより,Kaposi肉腫はたいへん重要視されるに至っている.

 今回のテーマであるKaposi肉腫の診断について言うと,現在のところ単独で決め手になる検査法はなく,もちろん診断基準も定められていない.最終的には病理学的所見に臨床的,疫学的所見を加味して診断しているのが現状である.本稿ではわれわれの経験したKaposi肉腫症例を呈示して,その特徴を述べるとともに,診断上役立つと思われる本疾患の全体像について記載する.

人工皮膚

鈴木 茂彦 , 一色 信彦 , 松田 和也

pp.761-764

 コラーゲンスポンジを内層とし,シリコーンシートを外層とする2層構造を持った新しい人工皮膚が開発された.これは従来の一時的創傷被覆材と異なり,そのもの自体が真皮様組織に自然に置き換わる点で画期的な材料であり,その使用により,広範囲の全層皮膚欠損創,3度熱傷,母斑,瘢痕ケロイドなどの機能的かつ整容的治療が可能になった.

連載 重複表現型の白血病細胞・1【新連載】

MPO陽性のアウエル小体を持つ赤白血病細胞

榎本 康弘

pp.702-703

 シリーズのはじめに

 最近の診断技術の向上で,これまでは一定の系統のみが白血病化すると考えられていたが,複数の系統にまたがる混合型の白血病の症例が予想以上に多いことが明らかとなってきた.急性混合型白血病(hybrid acute leukemia;HALの定義1,2)ではリンパ系と骨髄系の両細胞が白血病化した急性白血病をinterlineage型,骨髄系の中で複数め系統が白血病化した場合はintralineage型(狭義の混合型)に分類されている.さらにこれを,白血病細胞がリンパ系と骨髄系の両方から成る場合はbilineal型・単一な白血病細胞がリンパ系と骨髄系の両方の性質を持つ場合はbiphenotypic型の亜型に分けられている.なお,HALの用語はinterlineageのものにのみ使用するのが妥当といわれている1)

混合型白血病は形態学的に診断できることは少なく,表面マーカー検索や遺伝子解析などにより見つかることが多い.マーカー検索でtwo colourのフローサイメトリーによる分析法を用いれば全体の流れはつかめるが,芽球が少なく,表面マーカー検索で多系統の細胞が混在する症例などでは電予顕微鏡による検索が威力を発揮する.

COFFEE BREAK

異境への旅

屋形 稔

pp.732

 「人は外国に旅して自分の体に合っただけのものを持ち帰る」という意味の句は確かゲーテによって書かれたものと記憶している.「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」ともいうし,いくら異国をみても旅の経験を積んでも自分の持っているだけのものを超えられないという悲観的な考えも成り立つ.

 私も出国の珍しかった時代から数えると外国へは30回ぐらい旅をしたが,半分は臨床検査関係の学会の旅であった.今は窮屈になったようであるが,学会前後はできるだけ余裕を作って人情,風物も楽しむように努力した.楽しいグループの旅もあったし,異境の孤独をかみしめることのできる一人旅もした.

Rx

𠮷野 二男

pp.760

 処方箋には,薬名を前に"とれ!"という意味で,ラテン語のReceptという字を初めに書く.それを略してRxという記号を用いたが,普通のタイプライターにはない字なのでRxと書くようになった.

 その形が便利に医学用語に取り入れられ,診断あるいは診断名DiagnosisのことをDx,症状・症候SymptomeをSx,腎摘出術NephrectomyをNxなどと病歴にみられる.臨床検査では血液凝固関係でトロンボキサンThromboxanがTxと略されることがあるが,これらのxは未知数のエックスということではない.

海外だより

ガーナ

本田 恵子

pp.766-767

 私は,1988年春から2年間,青年海外協力隊員として西アフリカのガーナに滞在した.派遣前はガーナという国がどこにあるのかも知らず,アフリカということがわかってからもまったくイメージが浮かばず不安だったものだ.それが今では,日本の雑踏の中からアフリカの4文字ばかり発見し,アフリカを悪く言われようものならすぐ反論してしまう自分に驚いてしまう.ガーナでの2年間,文句ばかり言っていたのがうそのように,今はガーナがなつかしくまたあの大地に舞い戻ってみたい.

血管病変の病理・1【新連載】

動脈の形態と機能

桜井 勇 , 新橋 真理 , 生沼 利倫

pp.769-776

 動脈は生きものである.ただの管ではない.精神的興奮,自律神経系の刺激,さまざまな生理活性物質によって複雑に統御されている.また,動脈を構成する内皮細胞,中膜平滑筋細胞,間質など相互に作用し合って動脈としての収縮・拡張反応を示す.

 動脈硬化症は癌とともに日本人の二大死因であり,これの発生・進展因子を解明し,予防や治療につなげることは国民保健の面からも極めて重要である.動脈硬化症の発生・進展にはさまざまな危険因子があり,動脈の中を流れる血液の構成成分や流動力学とのかかわりもあってその機序は極めて複雑であり,血液成分と動脈壁構成成分との関連を時間の推移ととも考えねばならず,その理解にはダイナミックな思考を要求される.動脈硬化症という病変を理解するためにも動脈の正常な状況下におけるさまざまな反応性を理解しなければならない.〔臨床検査36:769-776,1992〕

TOPICS

微小グルタミン酸センサーによる脳神経機能の解析

民谷 栄一 , 軽部 征夫

pp.777-779

 神経情報の伝達はシナプスを介して神経トランスミッターが放出されることにより行われる.神経トランスミッターとしてはアセチルコリン,アミノ酸,神経ペプチドなどが知られている.これらの物質は,長期・短期記憶,うつ病,分裂病などの精神病,アルツハイマー病などの老人病,ストレス,不安感などの情緒作用,さらには痛みに至るまでさまざまな脳・神経作用と密接に関連している.

 しかしながら,こうした神経トランスミッターを直接モニタリングする方法の開発はきわめて立ち遅れており,リアルタイムにかつ空間分解能(シナプス間隙から1神経細胞のレベル)の優れた測定方法の開発が強く要望されている.このように神経トランスミッターのリアルタイムおよびinvivo測定は,脳・神経科学上きわめて重要であるにもかかわらず方法論の開発がきわめて立ち遅れているのが現状である.

アミノ酸配列の新分析法

次田 晧

pp.779-781

 1.はじめに

 蛋白質のアミノ(N)末端の配列は1960年代にEdmanによって提出され,1980年半ばに自動分析装置が完成し,約50pmol/lの蛋白質で平均20残基が,1時間約2残基のスピードで分析できるようになってきた.それに引きかえ蛋白質のもうひとつの末端,カルボキシル(C)末端の配列分析には満足のいく方法が確立しているとは言えない.C末端アミノ酸の分析には赤堀らによるヒドラジン分解法,松尾のトリチウム標識法などわが国の貢献が大きい.一方C末端配列分析の中心はカルボキシペプチダーゼが唯一の方法で,化学的な段階的分解法も提案されているが実用化には至っていない.カルボキシペプチダーゼにはA,B,Y,Pと4種類の特異性の異なるものが市販されているが,特異性のため,また混在するエンドプロテアーゼなどのため,実際の実験では十分とは言えない.

 われわれは数年前,蛋白質の加水分解に従来用いている塩酸にトリフロロ酢酸(TFA)を加えると分解が加速されることを見いだした1,2).この原因を研究しているうちにTFAなどの酸が蛋白質のC末端から逐次分解を行う特性を見いだした3).この逐次分解がC末端アミノ酸の脱水した分子,オキサゾロンを通過しているらしいことを観察し,もしそうならオキサゾロンをより作りやすい化合物,酸無水物を用いたほうがよいと考えた.それが,ここで紹介する新しいC末端逐次分解法である.

腸炎ビブリオの2種類の鞭毛の形成制御と機能

余 明順 , 本田 武司

pp.781-782

marine vibrioの中にはpolar flagella(極鞭毛)以外にlateral flagella(側鞭毛)を持つものがあり,Vibrio Parahaemolyticusもその1つである.液中ではsheath(鞘)を持つpolar flagellaの回転運動によって推進し,固形表面ではlatelar flagellaによって遊走することが知られている.V. Parahaemolyticusの棲息範囲は海水中,河口など幅広く,polar flagellaで水中を動き回り,生物あるいは非生物表面に出会ったときそこに付いて遊走するためにlateral flagellaを産生すると考えられる.このような環境による2種類のfiagellaの使い分けはどのようなしくみで行われるのであろうか?

 液中ではpolar flagellaしか形成されないのに対して,固形表面あるいは粘度の高い液中ではpolar flagella以外にlateral flagellaも形成されるという事実から,polar flagellaの自由な回転運動が制限されるような環境におかれたという情報がlateral fragella形成のきっかけになると推測される.

パーキンソン病の理学的検査

長崎 浩

pp.782-783

 パーキンソン病は多彩な錐体外路系の運動障害を呈することで知られる.普通これは3大症状,すなわち筋強剛(rigidity),振戦(tremor)および無動(akinesia)に分類されて検査されている.ここで問題となるのはいわゆる無動である.近年,従来は無動に含められていたすくみ(freezing)および突進(festination)現象(以下すくみという)が,いわゆる無動とも,さらに強剛と振戦とも独立の錐体外路系の運動障害として重視されるに至っている.ここで紹介するのは,このすくみ現象の簡単で定量的な検査法である.

 パーキンソン病の運動障害としてすくみ現象が重要なのは,これが日常的なリズム運動すなわち歩行,発語,書字などに特異的にかかわっているからである.例えば,患者が歩き始めようとする.すると,1秒間に5回(5Hz)以上の早い振動が足の筋肉に不随意的に励起して,患者は通常の速さで歩行が開始できずにその場ですくんでしまう.もしあえて歩き始めようとすれば,患者は異常に速いリズムで突進し転倒する.このように,すくみ現象とは,歩行などのリズム運動を開始し,あるいは所期のテンポで維持できない障害である.

研究

Gag-Env融合蛋白抗原を用いたHTLV-l抗体測定試薬"デタミナーHTLV-l抗体"の開発―基礎的性能評価

森 秀治 , 竹中 浩子 , 田原 亜伊子 , 三池 彰 , 佐藤 征二 , 町田 容造 , 福井 正憲 , 好田 肇

pp.785-788

 遺伝子組み換え産物(gag-env融合蛋白質)を抗原として使用したHTLV-I抗体測定EIAキット"デタミナーHTLV-I抗体"を開発し,その基本的な性能について評価した.管理血清(高・中・低の3濃度)を試料とした場合の吸光度の同時再現性試験成績はいずれも10%以内であり,添加回収試験成績は添加回収率91~110%といずれも良好であった,また,共存物質の影響に関する試験も,回収率82~112%と,大きな影響は観察されなかった.さらに,同じEIA法であるエイテストATL (エーザイ社)と,ATL患者67検体を対象に比較したところ,98.5%の一致率を示した.

資料

尿細胞診検体のための前処理法―特に外注検査材料における検討

高桑 妃佐子 , 熊谷 智子 , 畠山 重春

pp.789-792

 検査の外注化が進み,検体処理までの時間が精度上間題となっている.経時的に細胞形態の変化を明らかにし,その防止策を提案した.採尿後3時間以上放置では細胞質の赤染傾向,核の膨化,赤血球・炎疲性細胞の破壊,細菌増殖を認めたが,沈渣にサコマノ液を混和することで防止し得た.尿細胞診の外注化では,沈渣にサコマノ液を混和し,提出することが理想である.

ドライケミストリー法(エクタケム700N)における精度管理の現状と問題点(第1報)―AST,ALTについて

川村 憲弥 , 奥住 裕二 , 望月 一雄 , 森 三樹雄

pp.793-797

 現在では,化学反応が従来の溶液型から試薬担体を巧みに応用したドライケミストリー法を利用することも多くなった.しかしドライケミストリー法は試料マトリックスの性状が測定値に影響を及ぼすことが新たにクローズアップされている.そこで第1報ではAST,ALTの2項目についてレファレンス法と多層フィルムを用いたドライケミストリー法(エクタケム700N)を使用し,患者血清により近いマトリックスの性状を持つ試料を見いだすべく,各種市販管理およびサーベイ試料の検索を行った.

編集者への手紙

組織内ノカルジア検索のための抗酸菌染色

引野 利明

pp.798-799

 ノカルジアは好気性病原性のアクチノミセス類の細菌で,土壌をはじめとして自然界に広く分布している.この菌はグラム陽性の抗酸性菌で,ツァペッグ寒天培地発育において黄,橙,紅,赤,錆鉄色などの多彩な色素を産生する1).人体への感染はカンジダやアスペルギルスと同様に日和見感染2)として感染するが,発症頻度は比較的少ない.

 この菌による発症は,皮膚の小外傷から侵入する皮膚型ノカルジア症と,塵埃などとともに肺に吸入されて生ずる内臓ノカルジア症とに分けられる.起因菌としてはその多くがNocardia asteroidesである.発症別では内臓型ノカルジア症が最も多く,その中で肺ノカルジア症が大部分を占めるが,近年X線所見において肺結核や肺真菌症,さらに肺癌などとともに類似の所見を示し,ことに結核と同様の臨床症状を示す3)ことから菌感染においては注意が必要である.

質疑応答 臨床化学

蛋白の非酵素的糖化

藤本 導太郎 , 中 恵一

pp.801-805

 Q 蛋白の非酵素的糖化(グリコシル化,グリコシレーション,グリケーション)について,その生成過程と,糖化による影響をお教えください.

質疑応答 血液

寒冷凝集反応は不可逆反応か

向畦地 善昭 , 藤岡 成徳

pp.805-806

 Q 寒冷凝集反応は可逆反応と認識していましたが,不可逆反応の場合もあると聞きました.寒冷凝集素には違った種類のものがあるのでしょうか.お教えください.

質疑応答 臨床生理

肺性心と左心異常

K生 , 佐々木 巌 , 赤柴 恒人

pp.807-809

 Q 肺性心では右心系に負荷がきますが,左心系には異常が生じないのでしょうか.ご教示ください.

質疑応答 一般検査

免疫便潜血検査の検体郵送の可否

山内 陽子 , 多田 正大

pp.809-810

 Q 集団検診では,便利さと精度管理は相反するものとしてあると思います.大腸癌の集団検診で,検体を郵送することの是非が新聞で取り上げられていました.解決のための方法と今後の動向についてお教えください.

質疑応答 診断学

血尿患者の鑑別診断におけるレーザー顕微鏡の応用

K生 , 飯野 晃啓 , 兵藤 透 , 宮川 征男

pp.811-812

 Q 上についてお教えください.

質疑応答 資格制度

厚生省の老人健康診査の項目

S生 , 柴田 博 , 熊谷 修

pp.812-814

Q 上についてご解説ください

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

62巻12号(2018年12月発行)

今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら