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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査37巻13号

1993年12月発行

雑誌目次

今月の主題 眼科画像検査―最近の進歩

巻頭言

眼科領域における画像診断―最近の進歩

増田 寛次郎

pp.1307-1308

 最近盛んに言われている言葉にQOL (quality of life)がある.私たちの日常生活のQOLを高く維持してゆくために感覚機能は常に正常に働いていなければならない.視機能は感覚のなかでも特にたいせつなものであることは言を待たない.

 眼科は視機能障害を正常に返すための診療科である.このためには眼疾患の正確な診断が不可欠である.最近の眼科診断,診療機器の進歩には目覚ましいものがあり,これらの機器の最新情報は眼科医にとってたいせつなものである.眼科はいろいろな検査を自ら行うことが多く,検査機器の使用目的,使用方法,得られたデータの意味などを正しく理解することは必要なことである.

技術解説

眼科写真撮影の技術―眼底写真を中心として

金上 貞夫

pp.1309-1315

 眼科では,眼底カメラをはじめとして特殊な写真撮影機器を多く用いている.本稿では眼底撮影,特に無散瞳眼底カメラを用いた撮影法について機器の構造と原理,撮影技法について述べる.眼底撮影は写真による記録のみでなく,それによって診断・治療に結び付く重要な検査である.無散瞳眼底カメラによって撮影された写真は,後日読影されるので失敗は許されない.したがってその写真は正確かつ明瞭に撮影されなければならない.〔臨床検査38(13)1309-1315,1993〕

眼底写真

大久保 彰

pp.1316-1322

 眼底検査は,容易にかつ無侵襲に生体外から生体内を観察できるため,眼科臨床のみならず内科・外科臨床のほとんどすべての領域で重要であり,眼底写真によってその所見を記録することは臨床経過の観察に重要である.本稿では正常者の眼底所見をはじめ,網膜細動脈硬化症,糖尿病性網膜症など全科的に重要な疾患の眼底所見の特徴について眼底写真を示して説明を加えた.〔臨床検査37(13):1316-1322,1993〕

蛍光眼底撮影

石本 一郎 , 田野 保雄

pp.1324-1329

 蛍光眼底撮影は,網膜の特質―散瞳という特に苦痛・障害のない処置を行うことにより,直接網膜血管を観察できること,血管―網膜柵が存在し,血管内に注入した色素が容易に血管外に漏出しないこと―を利用した検査法です.

 この検査法により,①網膜局所での循環動態,②網膜血管の異常,③網膜色素上皮の異常を知ることができます.本稿では,それぞれの代表疾患として網膜中心静脈閉塞症,糖尿病網膜症,中心性網脈絡膜症を例に取ってこの検査法の概略を説明しました.また,加齢性黄斑変性症を例に取り,最近導入されたICG蛍光眼底検査法についても若干触れてみました.〔臨床検査37(13):1324-1329,1993〕

視野検査

前田 修司

pp.1331-1337

 視野検査とは視野の広さを測定することではなく,視野内部に感度低下(暗点)があるかどうかをみることである.視野は視神経から後頭葉へ至る視路の機能をそのまま反映しており,視野が正常であれば視路は正常であるといえるのである.視路の中のある部位は必ず視野内のある一点と対応しており,暗点のパターンを詳しくみればかなり正確に病巣の部位や広がりを推定できる.臨床的には緑内障と脳腫瘍の診療に視野検査は不可欠である.〔臨床検査37(13):1331-1337,1993〕

超音波検査

菅田 安男

pp.1338-1342

 日常診療によく用いる接触法Bモードを主に,眼科超音波診断の実際を解説した.他の画像診断と異なり,眼球運動を促しながら眼内の膜様構造の動態を診断することに大きな特徴がある.超音波の特性に基づくアーティファクトも多いが,生体影響が少なく簡便な点を生かした検者の術中所見の解釈が最も大切である.〔臨床検査37(13):1338-1342,1993〕

話題

角膜内皮のスペキュラーマイクロスコピー

大原 國俊

pp.1343-1345

1.はじめに

 スペキュラーマイクロスコピー(以下,本法)は,角膜内皮細胞を観察する生体顕微鏡検査として開発された(図1).その利点は,角膜内皮の病変を細胞単位で直視することであり(図2),個々の細胞輪郭を観察し,その形態変化をコンピューターの画像処理で数値化して評価することができる.本法は非侵襲的な臨床検査法で,同一眼で繰り返し検査を行うことが可能であり,特定の単一細胞形態の経時変化をも調べることができる.

白内障の定量診断

佐々木 一之

pp.1347-1349

1.白内障定量診断の意義

 水晶体が混濁する所見を白内障(cataract)と呼ぶ.先天性,後天性とさまざまな原因で発現するが,老人性白内障といわれるものが圧倒的に多い.高齢化社会に入った現在,日常の眼科臨床の中ではこの白内障が頻度的にも主座を占めている.

 瞳孔から眼内に入る外界からの光は,水晶体,硝子体を通り網膜に達するが,この水晶体に混濁が生じると光の透過性は妨げられ,視力障害の原因となる.視力障害は水晶体混濁の局在,程度により異なる.

視神経所見と緑内障診断

富田 剛司 , 北澤 克明

pp.1351-1353

1.はじめに

 緑内障は,無治療で放置すれば,最終的に回復不可能な視機能の異常(視野欠損とそれに続く視力障害)をきたし失明に至る.眼科学的に最も重要な疾患の1つである.近年,緑内障は比較的発生頻度の高いことが世界的に知られるようになってきており,わが国では約30人に1人の割合で見られることが判明している.緑内障は,今や先進国では糖尿病網膜症に次ぐ失明原因となりつつある.

 しかしながら,緑内障の多くを占めるいわゆる単性緑内障(原発開放隅角緑内障)は,初期には自覚症状はほとんどなく,疾病が進行して末期段階になり初めて視力障害などに気づく場合が少なくない.そのため,緑内障においては,早期発見が重要であり,無自覚症状期におけるスクリーニングが最近の緑内障診断の重要なテーマの1つとなっている.

眼科診断機器と電子画像

金上 貞夫

pp.1355-1357

1.はじめに

 近年,電子画像機器の発達は著しいものがあり,次々と新しい機器が誕生しているのでその対応に苦慮している.ここにいくつかの機器や方法を紹介するが,あまりに種類が多過ぎて,具体的に解説することは難しい.今回は画像のファイリングを中心に筆者の経験を通じて述べることにする.

 眼科においてはこの特集によってもわかるように,多くの画像を伴う検査が行われている.以前には写真によって行っていた検査が電子画像に置き換えられ,ハードコピーが直接出力されるものが増加してきた.そのいくつかの例を挙げると,超音波検査,ERG・EOGのような電気生理検査,角膜トポグラフィなどがある.さらに最近になってスペキュラーマイクロスコープや水晶体断面の混濁を定量する機器なども電子化されたものが誕生した.

臨床EOGの標準化

三宅 養三

pp.1359-1360

1.はじめに

 眼球には,角膜側が陽性(+)で,後極部が陰性(-)の電位があり(静止電位),この電位の発生源は主に網膜色素上皮である.眼球の両側の皮膚面上に電極を貼り眼球を左右に動かすと,角膜が近づく方が(+)となり,後極が近づく方が(-)となり,2つの電極間に電位差を生じ,これを記録したものがEOG (electro-oculography)である.

 EOGは臨床的に2つの使用目的があり,1つは網膜機能の測定であり,もう1つは眼球運動記録である.本稿では,網膜機能測定のためのEOGの国際標準化について述べる.

テレビゲームとてんかん発作

高橋 剛夫

pp.1361-1363

1.テレビゲームてんかん

 1981年,ロンドンの神経科医Rushton1)が,テレビゲーム中に全身のけいれん発作が誘発された1例(17歳,男性)をスペース・インベーダーてんかん(“space invader”epilepsy)と呼んで報告した.以来,同様の症例報告が散見され,欧米では現在,ビデオゲームてんかん(video-game epilepsy)あるいはコンピューターゲーム発作(computer game seizures)の呼称が一般的である.わが国では1989年,小児科の前田2)がテレビゲームてんかん7例について報告し,その後,国内で論文として発表された症例は福迫ら3)の1例,佐藤ら4)の7例,村中ら5)の4例,筆者6)の11例,合わせて30例である.

 表1は国外・国内報告例と自験14例(その後3例を新たに経験)の比較である.計43例中,男性38例,女性5例であり,男性が女性より7.6倍も多い.1回限りの発作は23例,2回以上の発作は20例である.脳波検査では正常が9例(21%),異常が33例(77%),うち18例(42%)に光突発波反応(photoparoxysmal response)が誘発されている.光突発波反応の出現率を平均年齢に比較すると,低年齢である国外・国内報告例がそれぞれ50%,53%と高率なのに対し,高年齢である自験例は21%の低率である.

角膜トポグラフィ

杉田 元太郎

pp.1364-1366

1.はじめに

 角膜は眼球の約3/4の屈折力を担う光学系組織で,屈折力のほとんどは角膜表面のカーブ(角膜曲率半径)で決まる.つまり角膜表面のわずかな歪みは網膜での焦点に大きな影響を及ぼし,視力が変動する.

 最近の白内障眼内レンズ手術,RK,AKなどの角膜屈折手術や角膜移植では術前,術後の角膜乱視を正確に測定することが要求されており,そのために角膜トポグラフィは重要な検査器具として注目されつつある.

レーザーフレアー・セルメーター

大鹿 哲郎

pp.1367-1369

1.はじめに

 眼球の中の,角膜・虹彩・水晶体で囲まれた空間(前房,図1)は,房水と呼ばれる液体で満たされている.この房水は通常透明で,眼の中に入った光が通っていく光路の役割と,眼内の組織に栄養を運ぶ媒介の役割を果たしている.眼の中に炎症が起きて房水が混濁してしまうと,房水はこれらの役割を果たすことができなくなり,眼内の環境は重大な影響を受ける.

 房水がどれだけ透明であるか,あるいは濁っているかということは,眼内の生理学的な健全性を示す重要な指標である.臨床的にも,細隙灯顕微鏡で房水の透明度を判定することは,眼科検査の基本中の基本である.

ひと―ベノジェクトⅡリレー訪問

上杉 四郎

土田 一男

pp.1303-1304

 1930年1月28日東京府北豊島郡西巣鴨村大字池袋字三家に生まれる(旧姓土屋).池袋第一小学校を経て東京市立小石川工業学校(現都立小石川工業高等学校)機械科に入学.

 1945年4月13日の2回目の東京大空襲で町工場の家を全焼.両親の出身地,群馬県に移住して群馬県立高崎工業学校機械科に転入学,卒業する.

学会だより 第25回日本臨床電子顕微鏡学会総会

臨床応用が期待される電顕的検索

黒住 昌史

pp.1323

 第25回日本臨床電子顕微鏡学会は1993年9月28日~30日の3日間,永田哲士会長(信州大学第1解剖学教室教授)のもとに長野県松本市の松本文化会館で約500名の参加者を集めて開催された.また,国際オートラジオグラフィー会議も並立して行われた.

 日本臨床電子顕微鏡学会は1968年に医学・生物学の分野における電子顕微鏡学的研究の成果を発表するために創設された学会である.今回は25回目の記念すべき総会であり,特別な催しとして25周年記念式典がもたれた。式典では滝一郎理事長による“日本臨床電子顕微鏡学会25年の歩み”と題する記念講演が行われ,日本臨床電子顕微鏡学会の原点とその発展過程が学会参加者に示された.一方,長く学会の英文誌として,多くの優秀な論文を掲載してきた“Journal of Clinical Electron Microscopy”は名称を“Medi-cal Electron Microscopy”に変更し,新しいスタートを切ることとなった.また,例年は提出が義務づけられていた英文抄録が今回から廃止された.25周年を契機として,学会や学会誌がさらに質的に向上することが期待されている.

学会だより 第32回日本臨床細胞学会秋季大会

細胞診断学の向上に熱気あみれる学会場

上坊 敏子

pp.1346

 第32回日本臨床細胞学会秋季大会は,1993年10月15,16日の両日,澄みきった青空にナナカマドの紅葉が映える北国,旭川市で開催された.

 日本臨床細胞学会は,1961年に故増淵一正先生,水野潤二先生らによって創設された学会である.以後現在に至るまで,日本における細胞診断学の発展に寄与し,医師会員3,849名,技師会員4,042名の学会に発展してきた.この会員の内訳からわかるように,本学会の大きな特徴は,細胞診に従事する医師と技師がほぼ半々で会員になっていることであろう.

学会だより 第37回日本医真菌学会総会

充実した内容を聴く側の立場で提供

清 佳浩

pp.1358

 第37回日本医真菌学会総会は,横浜市立大学医学部皮膚科学教室の中嶋弘教授を会長として,1993年10月10日と11日の2日間にわたって秋晴れのパシフィコ横浜会議センターで開かれました.

 本学会は,皮膚科,内科,眼科,小児科などの臨床医と医学部の病理,微生物,獣医学部,薬学部,歯学部などの基礎系の研究者が一同に会して,それぞれの研究成果を発表しあう会です.学会の会員数は1,000名を越えており,真菌に関連したすべての分野からの参加者が集う会になりました.会議では写真に示しました,中嶋教授の“横浜市立大学医学部皮膚科学教室における真菌学の歩み”という会長講演に続き,招請講演Ⅰ“The Immunology of Dermatophytosis”がProfessor Roderick James Hayによって,招請講演Ⅱ“Ecology of Crytococcus neoformans”がProfes-sor David Ellisによって,招請講演Ⅲ“The Recog-nition of Host Cells by the Pathogenic Yeast,Can-dida albicans”がProfessor Richard Calderoneによって行われました.

COFFEE BREAK

臨床検査のプリンス

屋形 稔

pp.1337

 1991年6月のバンクーバー市における世界臨床病理会議(WASP)で日本の河合忠教授が会長に選出された時,わが国の臨床検査も世界のトップに立ったといえよう.これは他学会でもまれなことで,全体水準がここまで高まったともいえるがやはり個人の偉大さが頭抜けていたと思われる.わが国の検査界にとってこの人の存在したことは幸せであったといえる.

 最近プリンセスになられた雅子様は欧米に永く学ばれ,国際感覚と能力を各方面から高く評価されている.河合さんも青春時代の7年余を米国で過された経験が新しい臨床病理学の振展をわが国にもたらしたのは明らかであり,日本の学会長になる前の永い間プリンスと呼ばれていたことが思い出される.

3×1

𠮷野 二男

pp.1373

 広く使われている顕微鏡用のスライドグラスの大きさは,いま,72mm×24mm,すなわち3:1になっていますが,なぜこの大きさになったのでしょうか.ミリメートル規格表示になったからこんな数値になったもので,元は3インチ×1インチがその規格でした.

 顕微鏡が発達してきて,生物学的な観察には,透過光線を利用するのが,細かいことがよくわかって好都合です.そのために,被検体を支える(載せる)透明なものが必要になってきました.それも平らなものがよかったのは,当然でありました.

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・12

リンパ腫型α鎖病

伊藤 喜久

pp.1371-1373

検査結果の判定

 寒天電気泳動では,アルブミンの軽度低下,α1領域の軽度上昇,α2領域の中等度の上昇,免疫グロブリンの軽度低下から急性炎症パターンが疑われ(図1,上),抗ヒト全血清を用いた免疫電気泳動においても,α1-アンチトリプシン,ハプトグロビンの増加,アルブミン,IgGの軽度低下がありこれを裏づけている(図1,下).

 ところが,病理組織所見の結果を受けて行った特異抗体による免疫電気泳動では,抗α鎖(IgA)抗体に反応してα1領域からmid-γにかけて荷電の不均一な沈降線があり(図2,▼印),α2領域から原点付近までの同一移動度には,抗κ,抗λ抗体と反応する沈降線は認められず,血清中にはα鎖の存在が疑われた.

トピックス

ビタミンD受容体―最近の進歩

清野 佳紀

pp.1374-1376

1.はじめに

 ビタミンDは,肝臓で250HDに代謝された後,腎臓で活性型ビタミンD〔1,25(OH)2D3〕となって血中に分泌される.活性型ビタミンDの血中濃度は厳密に制御され,その作用は腸管,骨,腎などの標的臓器にある受容体と結合した後発揮されるので,ホルモンと考えられている.現在,体内の多くの臓器にビタミンD受容体が発見されている.活性型ビタミンDの作用の中には,受容体を介さない作用もあるとされている.

可溶型CD 8の上昇と慢性肝疾患

石山 業弘

pp.1377-1379

 末梢血中のCD 4(helper/inducer),CD 8(sup-pressor/cytotoxic)抗原陽性T細胞数の測定のみならず,その活性化の指標として近年,血清中のフリーの可溶型CD 4(soluble serum CD 4, sCD 4)および可溶型CD 8(soluble serum CD 8, sCD 8)の測定が可能となってきており,その臨床的有用性が検討されつつある.例えば,sCD 8については伝染性単核球症で著増することが明らかにされた.そこで,B型およびC型のウイルス性慢性肝疾患について,sCD 4, sCD 8(米国T ce11 Diagnostics社製のELISA法キット,Cell Free T4&T8キット)の検討を,本学臨床病理中原一彦教授,同中央臨床検査部の前川博行先生の協力を得て行った.

 図1のように,sCD 4は肝機能正常者(normal control;NC)群の10.9±4.1U/ml(mean±SD)に対して(ここでは基準値として網かけで示した),B型慢性肝炎(B-CH),B型肝硬変(B-LC),C型慢性肝炎(C-CH),C型肝硬変(C-LC)群はいずれも,NC群と同等であった.しかし,sCD8についてはNC群の149.3±42.1U/mlに対して,いずれも有意に著明な高値を示した.

大脳磁気刺激法

上坂 義和 , 宇川 義一

pp.1379-1381

1.はじめに

 経頭蓋的にヒトの大脳皮質を刺激することが可能であるとMarsdenら1)により報告されて以来,中枢運動路を中心にヒトでの研究がなされてきた2).彼らの報告した電気刺激法は痛みを伴うため広く普及するには至らなかった.しかし,近年磁気による経頭蓋的大脳皮質刺激3,4)が開発されて以来,広く中枢神経刺激が行われるようになった.

横紋筋肉腫の遺伝子診断―MyoD1とミオゲニン

細井 創 , 澤田 淳

pp.1381-1383

 悪性腫瘍の正確な病理診断は,治療方針の決定や予後の推測に必須である.横紋筋肉腫(rhab-domyosarcoma;RMS)もその例外ではない.

 RMSは,小児で最も頻度の高い軟部悪性腫瘍である.骨格筋細胞に由来する腫瘍と考えられているが,骨格筋の存在しない身体部位(腸管,膀胱など)にも発生し,組織学的に特徴の乏しい“小円形細胞型腫瘍”に分類されることから,神経芽腫,Ewing肉腫,リンパ腫など,ほかの小児期に発生する小円形細胞型腫瘍との鑑別が困難なことがある.

研究

SSR(sympathetic skin response)とR-R間隔変動の相関性

吉良 保彦 , 荒巻 駿三 , 片山 義政 , 小倉 卓 , 平澤 泰介

pp.1385-1389

 sympathetic skin response (SSR)は皮膚の汗腺機能を指標とした交感神経機能の評価法である.また,心電図R-R間隔変動を測定することにより,心臓に対する交感・副交感神経機能が検討されている.今回筆者らは,SSRと心電図R-R間隔変動との相関性について検討し,SSRの交感神経機能への反映について検討した.

火災死組織によるユビキチンの発現

大谷 静治 , 池田 卓也 , 池田 真美 , 舟山 眞人 , 那谷 雅之 , 石岩 宏明 , 佐藤 昇志

pp.1391-1395

 筆者らはhspの中の一つであるUbi-quitin (Ub)抗体を用いて,火災死例の組織を免疫染色から検索した.その結果,対象に用いた非火災例組織に比べ,肝,腎,肺などの細胞にUbの発現を多数認めた.また,火災の際発生する一酸化炭素(CO)ではUbの発現はほとんど認められなかった.Ub抗体を利用した検索は火災時の熱暴露の検索に有用であることが示唆された.

成人病検診で見いだされた高GGT血症の一家系

田山 順一 , 岩渕 やよい , 小松 正孝 , 原 博子 , 中田 義隆 , 桑 克彦

pp.1397-1400

 成人病検診で血清γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT, EC2.3.2.2)のみが異常高値を示し,臨床的にはなんらの異常も認めない健常者(42歳,男性)を見いだした,3世代の家系検索の結果,母親および子供2人に同様な高GGT血症がみられた.この子供2人にはなんらの臨床的異常は認められなかった.また,発端者の血清GGTサイズは50kDaと低分子型であり,このGGTは尿中にも排泄されていた.これらの知見は,本一家系にみられた高GGT血症が遺伝性の変異であることを強く示唆するものである.

資料

省力化を目的とした病理システムの開発

西 一典 , 烏野 美千代 , 野中 喜代美 , 門田 永治

pp.1401-1404

 受付用と診断用の2台のパーソナルコンピュータを用いた病理検査システムを開発した.受付システムと診断システムは互いにフロッピーディスクを介してデータを登録する.受付システムでは入力作業の負担を軽減させ,集計,台帳管理,検索,プレパラート印刷などの事務的作業の合理化を図った.診断システムではフリーテキスト入力方式とコード入力方式を併用して,診断・所見文入力の手間を省力化した.

質疑応答 臨床化学

リポ蛋白(a)低値の測定

野間 昭夫 , N生

pp.1405-1406

 Q リボ蛋白(a)の低値は,どのくらいまで正しく測定できればよいのでしょうか.

血清セレンの測定とその臨床的意義

遠藤 了一 , S生

pp.1407-1408

 Q 血清セレン測定の臨床的意義をお教えください. 

質疑応答 血液

骨髄標本で細胞数が少ない場合

大竹 順子 , H生

pp.1409-1410

 Q 骨髄標本で細胞数が少ない場合,骨髄が採取できているかどうか判断するにはどうしたらよいのでしょうか. 

質疑応答 微生物

人体寄生裂頭条虫の鑑別法

山根 洋右 , J生

pp.1410-1413

 Q Diphyllobothrium (裂頭粂虫属)には日本海裂頭条虫,米子裂頭条虫,太平洋裂頭条虫の種別がありますが,それらの虫卵・虫体の鑑別法および臨床的な問題についてお教えください.

抗生剤投与後の肺炎桿菌の消失

三澤 成毅 , 猪狩 淳 , 堀 ユリ子

pp.1413-1416

 Q ある患者の尿を培養して,1日目は肺炎桿菌が(4+)検出され,2日目は(-)でした.人院した日から抗生物質の点滴投与を受けています.抗生物質が尿の培養の発育を抑えたのか,患者自身が治療に到ったのか不明です.どのように解釈すればよいのでしょうか. 

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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