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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査37巻9号

1993年09月発行

雑誌目次

今月の主題 データ処理の未来学―検査成績の報告・解析・保存

序論

診療上の振り分け値

臼井 敏明

pp.947-951

 振り分け値とは基準範囲(正常値)を実際に臨床の現場に当てはめて,健常群と疾患群の判別に用いる数値を表す.この値は1つの検査項目に対して一元的に定まるものではなく,対象とする患者群,判別の対象となる疾患群,臨床検査値の利用目的などによって異なる。臨床検査室においては,単に健常人データの統計量である基準範囲を提供するだけでなく,臨床検査データがより有効に臨床の現場で利用されるよう配慮する必要がある.

検査成績の基準値

基準範囲(reference interval)に関するNCCLSガイドライン

菅沼 源二

pp.953-956

 National Committee for ClinicalLaboratory Standards (NCCLS)が,ProposedGuideline (標準の中の1つの位置づけとしての提案指針)として1992年3月にC28-P ISBN 1-56238-143-1として公表した「臨床検査におけるreferenceintervals (基準範囲)の定義ならびにその設定法と利用法」の概要について紹介を行った.〔臨床検査37(9):953-856,1993〕

小児の基準範囲

飯田 暢子

pp.957-965

 小児の基準範囲設定が難しいのは,基準標本にできる健康な小児のボランティアを得にくいためと,加齢(発育,成長)により測定値が変化する成分があり,そのうえ,乳児期や思春期では発育程度の個体差により基準値のバラツキが大きいためである.難点の解消法として,基準標本を受診患児の中から選ぶ方法と,推定誤差を小さくできる基準値の統計処理法(回帰法その他)を開発した.また,他施設の値の利用法として,成人の値に対する小児の値の利用を提案した.〔臨床検査37(9):957-865,1993〕

老人の基準範囲

野間 昭夫

pp.966-970

 老人の病院受診の増加に伴い、老人における基準範囲の設定が必要になってきた.健常老人を多数抽出することは困難であるので,Hoffmann法などにより求めることが多い.検査項目によって,加齢による変動を示さないもの,低下を示すもの,上昇を示すもの,一時上昇し,その後低下するものなどがある.厚生省研究班では健常老人を多数集めることができ,血圧,血糖,血清脂質,その他についての基準範囲の設定の試みがなされた.〔臨床検査37(9):966-970,1993〕

検査成績の表示

図形表示の基礎知識

棟近 雅彦

pp.971-978

 検査成績を医師や被検者にわかりやすく伝えるためには,数値データを図的方法で表示することが有効である.本稿では,分布と正常範囲の表現,時系列での表示の2つのテーマに絞り,いくつかの図形表示法についてその有効性を例示する.また,統計解析という観点から,検査データを図形表示することに関するいくつかの注意点についても述べる.〔臨床検査37(9):971-978,1993〕

ベクトル表示法―酸塩基平衡異常の計量化

井上 裕二

pp.979-983

 臨床検査は"正確なデータを迅速に報告すること"が基本であり,これからの検査データ処理の方向として,"診療への有効利用のためのシステム化"に目が向けられている.そのためには,検査部から主治医のもとに分析後の生データを届けるだけでなく,病態の把握が容易になるように検査成績の表示法を工夫し,さらに,検査データの物語る病態を定量的に評価できる診断論理が不可欠になる.〔臨床検査37(9):979-983,1993〕

レーダーチャート法

丹羽 正治

pp.985-990

 検査データをグラフ表示して病態判定を容易にする試みは,わが国で最初に開発された"血液スペクトル"をはじめ多種のものが国内外の多数の先人によって工夫,発表されている.それらのうち筆者らはレーダーチャート(くもの巣グラフ)を採用し,データの共通表示,色彩変化による動的表示を導入し,血液化学領域のデータによる病態解析を行い,4症例の結果を示した.それと並行して各分野の専門医の経験を活かした"重み付け因子",すなわちファジー的要素を組み入れた病態解析プログラムを組み,それによる定量的,客観的,経時的解析結果と対比させ,グラフ表示による病態判定の裏付け評価を図った.この対比操作を反復し,望ましい人間・機械系を建設するのに必要な課題を考察した.〔臨床検査37(9):985-990,1993〕

共通表示法―臨床単位(CU)

河合 忠 , 丹羽 正治

pp.991-993

 測定系(測定原理,測定試薬,測定機器,キャリブレータを含めて)が異なるために,測定値が施設間で大きく異なる検査項目が少なくない.そのため,施設ごとにさまざまな正常範囲(基準範囲)を用いている.測定技術が進歩するために,より精度の高い測定系へ変更すると,その都度正常範囲(基準範囲)が変更となる.これらの問題点を改善するために共通表示法が提案されている.すなわち,基準下限値を80CU,基準上限値を120 CUと統一して表現する.〔臨床検査37(9):991-993,1993〕

検査成績の保存と解析

検査情報の一元化

只野 壽太郎

pp.995-1000

 数字情報,波形情報,文字情報の混在する臨床検査情報を,コンピュータと光ディスクを利用し一元管理したシステムを紹介する.このシステムの開発・導入により,情報へのアクセスが迅速化でき,しかも保存場所が縮小された.また一元化された情報は,診察室や病棟に配置した端末で24時間いつでも検索が可能となった.このシステムは"検体処理の検査部から情報処理の検査部"への脱皮を目的としたものである.〔臨床検査37(9):995-1000,1993〕

lC・光カードの医療への応用

椎名 晋一

pp.1001-1004

 カードはどこの病院,医院でも共通に使用できる必要がある.それにはカードの物理的フォーマットとデータ・フォーマットの2つが標準化されていなければならない.前者は日本国内案としてヨーロッパで作られたDELA規格に決定した.後者は文部省科学研究班から規準フォーマット案が公表されている.医療に用いるカードの中に蓄積されるデータの大部分は臨床検査データであるので,検査機器の差,測定法の相違などを超えて診療施設間差のないデータを共通表示として利用できるようにする必要がある.〔臨床検査37(9):1001-1004,1993〕

診断的推論システム―スペクトルから計量的推論へ

松田 信義 , 市原 清志

pp.1005-1010

 検査データによる診断的推論法の原型とされる,血液スペクトル法(柴田,1949)の考え方と手法の概略を述べた.次いで,コンピュータ技術のインテリジェントな応用事例として,血液スペクトルと末梢血液検査の診断的推論システム,および最適化判別式を用いた肝・胆道系疾患の計量的推論システムを取り上げ,その考え方と手法について解説を加えた.最後に,検査データおよび推論システムの共同利用を実現する具体的な方法について私見を付記した.〔臨床検査37(9):1005-1010,1993〕

検査成績記入の誤り

検査業務の事故記録から

古田 真由美 , 中山 年正

pp.1011-1013

 検体検査はコンピュータシステムの導入により,分析以前の検査過誤は激減したが,分析や結果報告の過誤が圧倒的多数を占めるようになった.しかも,その大半は構築したシステムの不具合やタイミングのズレによるもので,これらの撲滅は今後の全自動化へ向かっての重大な課題である.

日本医師会精度管理調査から―誤登録による結果解析の撹乱

菅野 剛史 , 河合 忠

pp.1014-1020

日本医師会平成4年度精度管理調査の資料に基づいて,特に臨床化学の酵素検査を中心に,測定法の誤登録と,その誤登録が与える調査の解析への影響についてまとめた.誤登録は5%から30%程度に認められ,測定値の解析に大きな影響を与えている.特に精度管理に真剣に取り組む施設に対して,努力をむだにするようなマイナスの効果も考慮されるので,今後,測定法の誤登録には十分な配慮と対策が必要である.また,中には測定薬のキット添付書の改善により誤登録を防止できる可能性も考えられるので,関係する試薬関連業者にも協力を依頼したい.〔臨床検査37(9):1014-1020,1993〕

ひと―ベノジェクトⅡリレー訪問

江部充

pp.941-942

 人は一生の間にいくつかの節目に会い,成長し変化する.私の節目を列挙していこう.

 (1)小学校を卒業するとき,将来は生物学者になる夢を持った.教師の影響である.

Coffee Break

NaOH

𠮷野 二男

pp.983

 言うまでもなく,水酸化ナトリウムのことです.もしこの化学記号を読むならば,英語式に"エヌエーオーエィッチ"でよいと思いますが,"エヌエーオーハー"と言っている人がいます.英語のみならず独語にも堪能なことはよくわかるような気がして敬意を表したいと思いますが,どちらかに統一した発音がよいのではないでしょうか.いまは英語式発音のほうがすすめられると思います.

 同じように,17-OHCSも"ジュウナナオーハーシーエス界という人がいます,"ジュナナ"あるいは"ジュウシチオーエィッチシーエス"がよいかと思いますがいかがでしょうか.日本で日本人同士の間では,"セプンティーンオーエィッチシーエス"とまで言わなくてもよいのではないでしょうか.

計測技術とは

屋形 稔

pp.1004

 臨床検査において計測技術の重要なことは言うまでもないが,最近工学や理学畑も含めてこの技術を振興するためのある財団の表彰式があった.そのとき受賞者の代表が抱負の中で米国若手研究者の合言葉である"1計測技術は1ノーベル賞である"という意気ごみにあやかりたいと述べていた.確かにわが国では計測技術の研究はやや軽視されがちの点もある.もう一度計測技術は研究のseeds (種子)でありneeds (必要)であるということを噛みしめる必要がありそうである.

 臨床検査に身を挺した感のある臨床化学者の故北村元仕博士は,その目標として検査技術を科学,サイエンスに磨きあげることにおいた.そして重箱の隅をつつくような仕事ではあるが,一生つついたら隅ではなくなるであろうと始終自分に言い聞かせたそうである.日本人はある意味では本来こうした地味な仕事に向いているのではないかと思われる.日本びいきで有名なチャプリンは,日本人がどうして好きなのかと聞かれたとき,掃除のやり方を見ていると隅々までよく掃き清め,欧米人のように円く掃いてすましているようなことがないからと答えたという.

学会だより 第42回日本臨床衛生検査学会

「新しい技術へのアプローチ―臨床との接点を求めて」

立石 謹也 , 東山 智宣 , 松井 美保子

pp.1021-1023

 第42回日本臨床衛生検査学会が,1993年5月19~21日の3日間,後藤尚美学会長(札幌医科大学附属病院検査部)のもと札幌市で開催された.メインテーマは「新しい技術へのアプローチ―臨床との接点を求めて」.次回は愛媛県松山市で村瀬光春学会長のもと開かれる予定である.

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・9

頸部にみられた多発性の低エコー腫瘤

谷口 信行

pp.1025-1028

●超音波像の判読●

 図1の右縦断面では,高エコーを示す甲状腺(Th)の背側に,低エコーの腫瘤(矢印)が2個存在する.大きさは頭側が9×7mm,尾側が10×8mmで,境界鮮明,内部は低エコーを示す(図5;図1の説明図).その横断面である図2でも同様の所見で,甲状腺背側に接して低エコーの腫瘤が存在する.一方,左側は図3のように,縦断面で甲状腺上極近くに境界明瞭な低エコー腫瘤が観察され,その横断面でも甲状腺背側に低エコー腫瘤が観察できる(図6;図4の説明図).以上の所見をまとめると,甲状腺背側に多発した低エコー腫瘤であることがわかる.

 通常,体表臓器の描出には腹部,心臓と異なり,7.5MHz以上の高周波数の探触子を使用することが多い.なお,頸部の超音波の表示は,縦断面は向かって左が頭側,横断面では向かって左側が被検者の右側となるように表示するように取り決められている.

TOPICS

抗菌加工繊維

坂上 吉一

pp.1029-1030

1.開発の経過と特徴

 抗菌加工繊維は,1980年代に"雑菌の繁殖を抑え,臭いを防ぐ"機能性製品として登場したが,特殊な薬剤に浸す"後加工"処理が多く,風合いが落ちたり,洗濯で効力が減少する難点があった.しかし,その後,各社が改良を加え,現在,天然繊維にも合成繊維にも使え,風合いにも変化が少ない製品ができあがっているようである.

 最近,これらの抗菌加工繊維をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの院内感染(病院感染)起因菌の対策手段の1つとして適用していこうとする動向がある.本稿では,抗菌加工繊維の現状などについて解説する.

メリオイドーシス

荒川 迪生

pp.1030-1031

 メリオイドーシス(melioidosis,類鼻疽)とはBurkholderia pseudomallei1)(旧Pseudomonas pseudomallei)による感染症をいう.WhitmoreとKrishnaswami2)はこの新菌種をBacillus pseudomallei(P. pseudomalleiを経て現在はB. pseudomallei)と命名し(1911年),StantonとFletcherはこの新疾患をメリオイドーシスと命名した(1921年)3)

 B. pseudomalleiはブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌で,両極染性,極多毛である.発育が速く,集落に放射状の搬襲を生じることが多い.液体培養では表面に厚い菌膜を作る.

糖濃度の長時間連続計測

田代 亜彦 , 牧野 英一 , 清水 義浩

pp.1032-1033

糖尿病性昏睡やケトアシドーシス,また最近繁用される高カロリー輸液時のhyperosmolar non-ketotic coma,膵全摘術術後などでは集中代謝管理を要し,血糖値の持続的測定が必要である.また,糖尿病や侵襲下など種々の耐糖能異常状態における血糖動態解析のための研究方法としての有用性もきわめて高い.長時間持続血糖測定法には以下の方法がある.

ADH感受性水チャネルのクローニング

佐々木 成 , 丸茂 文昭

pp.1033-1035

1.ADH感受性水チャネルのクローニング

 哺乳類を含めて陸上にすむ動物は水を失い高浸透圧になる危険につねにさらされている.これを防ぐために,腎臓において水を再吸収し体液浸透圧を一定に保つ機構が働いている.つまり,尿濃縮機構である.尿濃縮機構の基本は,血液浸透圧の上昇に反応して下垂体後葉から抗利尿ホルモン(ADH)が分泌され,ADHが腎集合管に働いて尿細管内腔からの水再吸収を充進することである.この水再吸収は管腔膜に存在する水チャネルを介すると考えられている.水チャネルは概念として提唱されていたが,その実体は長く不明であった.

 何人かの研究者が蛋白精製の方法により水チャネルの同定に挑んでいたが,膜輸送体の蛋白量は少ないので,この方法では困難であった.昨年になってAgreらはCHIP28と名づけた蛋白が赤血球と腎近位尿細管の水チャネルであることを明らかにした1).しかしCHIP28はADH作用部位の集合管には認められなかった.そこでわれわれはADH感受性水チャネルのcDNAを得るために,CHIP28のアミノ酸配列を参考にしPCRクローニングを行った.その結果,WCH-CD (waterchannel of collecting duct)と名づけた1.4kbのcDNAクローンを得ることができた2)

ポリオウイルス感受性トランスジェニックマウス

野本 明男

pp.1035-1036

 ウイルスの複製には宿主細胞側分子群の助けが必要であり,単独では感染・増殖することはできない.ある生物があるウイルスに感受性を持つということは,このウイルスの複製にとって必要なすべての分子群が当該生物個体に備わっているということである.これら分子を一部でも欠いている場合には非感受性である.したがって,非感受性の生物でも欠けている分子をコードする遺伝子を感受性生物から補うことにより感受性を獲得できる可能性がある.

 ポリオウイルスは小児マヒの病因である.3種類のセロタイプが存在し,いずれもヒトに経口感染する.消化管および局所リンパ節で増殖後,血中に入る.最終的には中枢神経系に侵入し,そこで主に運動神経細胞で増殖することにより細胞破壊を起こし,四肢に弛緩性マヒを生じさせる.このウイルスの種特異性は明確に決定されており,ヒトとサル以外の動物種には,ごく一部の例外を除き,感染は成立しない.この種特異性のために,ポリオウイルス病原性研究に不可欠な感染実験動物モデルはサルに限定され,また経口生ポリオワクチンの安全性試験もサルを使って行われてきた.サルを感染実験動物モデルとして使用する際の種々の困難を避けるには,ポリオウイルスに感染する他の動物種を作る必要があった.

研究

PCR法を使用した糞便中のVero毒素遺伝子の迅速検出法

荒井 孝 , 関 孝 , 山本 英明 , 小林 悟士 , 山口 明 , 小野 善栄 , 城 宏輔 , 大石 勉

pp.1037-1040

 腸管出血性大腸菌(Enterohemorrha-gic Escherichia coli; EHEC)惑染症の診断は,従来は糞便中の大腸菌の純培養後,抗血清を使用してO抗原さらにH抗原を検索して行われてきた.筆者らは,患者糞便を短時間trypticase soy broth培地で37℃にて培養し,EHECの純培養と抗血清による同定を行う以前に,PCR法を使用して,迅速にVero毒素遺伝子を検出する方法について検討した.この方法により,糞便中からVero毒素遺伝子を,9~11時間以内に検出でき,EHEC感染症の診断を迅速に行うことが可能となった.

3種のALPアイソザイム検出法に基づくALPアイソザイム分画比の変動について―ALP活性測定法との誤った組み合わせはないか

星野 忠 , 菰田 二一 , 熊坂 一成 , 河野 均也

pp.1041-1044

 アルカリホスファターゼ(ALP,EC 3.1.3.1)活性測定の勧告法は国際臨床化学連合(IFCC)をはじめ,各国の臨床化学会からの提案がある.しかし,ALPアイソザイムの標準となるべき検出法についてはまだ提案がない.そこでわれわれはヒト臓器由来の肝,胎盤,小腸の各ALPアイソザイム標品を用い,市販の電気泳動法による各種ALPアイソザイム検出法(ジアゾ法,インジゴ・ブルー法,ホルマザン法)間の差異を比較検討した.検討成績から,小腸ALPアイソザイムの検出度が3法で著しく異なるという結果を得た.特にホルマザン法はJSCCが勧告した活性測定法に近似した値が得られ,他の2法に比し,各ALPアイソザイムの定量性に関してより均一に測定できる試薬として評価できた.これに対し,インジゴ・プルー法はIFCCが勧告した活性測定法に近似した値が得られた.つまり,ALPアイソザイム検出法はALP活性測定法に併せて選択すべきであろう.

資料

Cloned-Enzyme-Donor-lmmunoassay (CEDIA)による血中コルチゾールの測定法の基礎的検討

山口 ひろ子 , 鈴木 久美子 , 高田 美絵 , 矢内 千鶴子 , 青野 悠久子 , 内村 英正 , 大久保 昭行

pp.1045-1048

 血中コルチゾールの測定は副腎皮質をはじめ視床下部,下垂体の異常を確かめるうえで重要であるが,最近DNA組換え技術を応用したcloned enzymedonor immunoassay (CEDIA)による測定キットが開発された,再現性,各測定法との相関などについて検討を行ったが汎用大型分析機器に使用可能であり,日常検査試薬として有用であると思われる.

編集者への手紙

単一ヒト精子内遊離力ルシウ測定法

庄野 正行 , 宮本 博司 , 南 晋

pp.1049-1050

 ヒト精子の細胞内遊離カルシウムの測定は浮遊状態でしか測定できなかった.それは,精子は常に遊泳しており,単一での測定が不可能であったためである.今回,この遊泳しているヒト精子細胞をカバーグラス上に接着させ,FURA2-AMを用いて,細胞内遊離カルシウムの変化を観察することに成功したので報告する.

血漿中に遊離型フコースはほんとうに存在するのか/著者からの返事

三浦 雅一

pp.1051-1052

 私は,UFC測定試薬TaKaRa (宝酒造)を使用し尿中の遊離型L-フコースの測定を行いました1).未発表ではありますが,そのときに血清中の遊離型L一フコースの測定も試みたところ,ほとんど検出することができませんでした.この結果はSakaiら2)の報告とも一致するものと思われます.同時に健常者と癌患者の比較も行いましたが,まったく差は認められませんでした.

 血中(血清あるいは血漿)のフコースは蛋白結合性,すなわち糖鎖に結合したフコースが大部分であると思われます.これらのフコースはα-L-フコシダーゼによって蛋白中(糖鎖)から切断されない限りは遊離型として血中に存在するとは思えません.著者の報告によると血漿中の遊離型フコースは健常人で24.4±18.1μg/mlということですが,これをmol濃度に換算すると0.15±0.11mmol/lという測定値が得られたということなります.ほんとうに血漿中にこれだけの遊離型フコースが存在するのでしょうか.いくつかの疑問点があります.

質疑応答 血液

骨髄標本で脂肪か多い場合の乾燥と染色

大竹 順子 , 井上 みどり

pp.1053-1054

 Q 骨髄血標本で,塗抹したときから多くの脂肪滴のようなものがスメアの上に載っていることがあります.乾燥もうまくいかず,染色してもよく染まりません.どのようにすれば改善できるのでしょうか.お教えください.

質疑応答 免疫血清

パルスフィールド電気泳動法の応用範囲

近藤 典子 , 平松 啓一 , Q生

pp.1054-1056

 Q 細菌学の分野でパルスフィールド電気泳動法が用いられています.この方法の原理,利点についてお教えください.また,蛋白質の解析や精製にも応用できるのでしょうか.併せて,お教えください.

炎症疾患における白血球,CRP,シアル酸の変動

狩野 有作 , 大谷 英樹 , 津田 友二

pp.1056-1058

 Q 炎症時に反応する上記3者について,反応態度や,値の経時変化についてお教えください.

ASO価測定のための検体

留目 優子 , 水瀬 学 , Q生

pp.1058-1060

 Q ASO価測定のための検体は何が適していますか.また年齢のカットオフ値は設定が可能ですか.併せてお教えください.

質疑応答 病理

パラフィン切片における増殖細胞の新しい同定法

渋谷 誠 , 宇都宮 洋才 , 長村 義之 , N生

pp.1060-1061

 Q パラフィン切片上で腫瘍増殖能を測る方法についてお知えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻7号(2016年7月発行)

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今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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