icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査38巻11号

1994年10月発行

雑誌目次

特集 ホルモンと生理活性物質

ホメオスターシスと生理活性物質

河合 忠

pp.9-10

 1つの細胞が生命を維持するためには,6つの適切な条件が必要である.すなわち,水素イオン濃度(pH),電解質組成,浸透圧,温度,エネルギー源となる栄養素の補給,有害な代謝産物の除去である.約30億年も以前に海水の中で紫外線のエネルギーを吸収して生命が誕生したと考えられているが,そのときの海水がたまたま上記の条件のうちの水素イオン濃度,電解質組成,浸透圧が生命現象に必要な内部環境を作るのに適切であり,細胞膜の発達によって内部環境を維持する状況が整ったためであろう.内部環境を適切な条件に維持することがホメオスターシスであり,それが生命現象を維持するのには絶対に必要である.ただ,1つの細胞の生命維持にも限界があり,それが寿命である.したがって,細胞が半永久的にその性質を維持するためには,古い世代の細胞に代わって新しい細胞が次の世代を引き継がなければならない.それが生殖という現象である.

 単細胞生物から多細胞生物に進化していくことでヒトが誕生したが,ヒトの個体は数十億個の細胞の集まりであり,さまざまな機能を持った組織,臓器へと分化している.

総論

1.ホルモンの生理学

本間 研一

pp.12-19

ホルモンと内分泌系

 ホルモンが発見されたのは今世紀初頭(1902年)のことである.イギリスの生理学者Bayliss WMとStarling EHは,小腸粘膜で産生され,血流によって膵臓に運ばれて膵液分泌を促す物質を発見し,セクレチンと名づけた.これと前後して,同じイギリスの生理学者Edkins JSは胃粘膜に胃酸分泌を刺激する物質,ガストリンを見つけた.セクレチン,ガストリンの発見により,それまで支配的であった"生体機能はすべて神経により調節されている"という考え方は大きく変更され,ホルモンという新しい概念が提唱されたのである.ホルモンとは"刺激する"という意味のギリシャ語に由来する言葉で,後年,特定の臓器(内分泌腺)で作られる化学物質で,血流で離れた場所に運ばれ,少量で特異的な作用を発揮するもの,と定義された.

 このような性質を持つホルモンは副腎,膵臓,甲状腺,脳下垂体,性腺などから多数見つかり,神経系と並ぶ生体機能調節機構としての内分泌系が確立された.内分泌とは,言うまでもなく,体外に通じた管腔に分泌される胃液や膵液などの外分泌に対し,体内(血中)に分泌されることである.

2.生理活性物質の生理学

片渕 俊彦 , 堀 哲郎

pp.20-24

はじめに

 生体内には数多くの生理活性物質が存在し,細胞間の情報伝達に重要な役割を果たしている.すなわち,ペプチドやステロイドなど内分泌腺から放出されるホルモン,神経ペプチド,増殖/成長因子,およびアセチルコリンやアミンなど古典的な神経伝達物質,およびプロスタグランジン類などのアラキドン酸代謝産物などがある.さらに,免疫細胞や最近では神経系でも産生されることが明らかになったサイトカイン,神経系,免疫系および血管系など生体の各所で生理活性が報告されている一酸化窒素なども広い意味で生理活性物質と考えられる.

 近年,種々の生理活性物質の作用の細胞内機序が詳しく解析され,これらがいくつかの共通した情報伝達経路をとることや,異なるシグナル伝達路の間にクロストークがあることが示されている.さらに1つの物質が持つ生理作用は単一ではなく,神経,内分泌,あるいは免疫系など,複数の系において作用していることが明らかになった.

3.ホルモン,神経伝達物質のシグナル伝達機構

神﨑 展 , 小島 至

pp.25-30

はじめに

 非常に多くの細胞からなる生体は,互いに絶えず細胞間で情報を交換している.複雑な生命現象を円滑に行っていくために,この情報を正確に受容し,細胞内に伝達するシステムが必要である.ホルモン,神経伝達物質,サイトカイン,細胞増殖因子などが情報物質として産生・分泌され,標的細胞にその情報を伝えている.これらの情報物質は,その受容体が細胞膜に存在するものと細胞内に存在するものに大別できる.

 脂溶性であるステロイドホルモン,甲状腺ホルモン,ビタミンA,ビタミンD3などは細胞膜を透過して,細胞内に存在する受容体に結合する.そのほかの多くの情報物質は細胞表面に存在する受容体に結合して細胞内情報伝達物質(セカンドメッセンジャー)を産生する.そして,細胞はあらかじめプログラムされたさまざまな反応を惹起し,最終的に生物学的効果が引き起こされる1).このSotherlandにより提唱されたセカンドメッセンジャー説は,cAMPを増加させるホルモンにおいて確立されたものである.一方,アゴニストの中にはcAMPは増加させずに作用を発揮するものがあるが,これらは多くはカルシウムイオン(Ca2+)をセカンドメッセンジャーとしている.

総論 4.ホルモン異常と遺伝子診断

1)下垂体―甲状腺―副甲状腺系

巽 圭太 , 網野 信行

pp.31-34

はじめに

 1つのホルモン機能の異常はホルモン産生細胞における生成・分泌の異常と,標的細胞におけるホルモン作用の発現の異常(不応)により起こり,さらに,その上位ホルモンから下位ホルモンに至るさまざまな段階での異常を考慮に入れる必要がある(図1).

 さて,これまでの蛋白・細胞レベルで発見されてきた異常はホルモン蛋白,ホルモン合成酵素,ホルモン結合蛋白,ホルモン受容体,伝達器の異常で,現在ではその多くの病因が遺伝子レベルで明らかにされている.さらに,これまで蛋白・細胞レベルでは解析できなかった蛋白の異常に関しても,最近では分子生物学の進歩によりそれらの遺伝子の解析から病因が明らかにされ始めている.

2)副腎・性腺系

中井 利昭 , 竹越 一博 , 磯部 和正

pp.35-39

 副腎・性腺系のホルモン異常疾患で,遺伝子診断の行われている多発性内分泌腺腫症,先天性副腎皮質酵素欠損症,アンドロゲン不応症の3つの疾患について,その異常となるホルモンおよび原因遺伝子さらに適用となる遺伝子診断について以下概説する.

3)膵臓系

柱本 満 , 春日 雅人

pp.40-48

糖尿病の病型と遺伝子

 糖尿病は生体内での相対的インスリン作用不足の結果,種々の代謝異常がもたらされる全身性疾患であるが,その発症には遺伝因子,環境因子が複雑に関与していると考えられている.現在,わが国における糖尿病の発症頻度は約1人/20人の割合とされており,その病型は大別してインスリン依存性糖尿病(IDDM),インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)の2型に分類される.一卵性双生児での糖尿病発症一致率はIDDMで約45%,NIDDMで約90%という報告が多く,両者とも何らかの遺伝因子の関与が明白である.

総論 

5.ホルモン測定法の最前線

橋本 琢磨 , 西部 万千子

pp.49-57

はじめに

 1990年代に入って以来,ホルモン測定は,少なくともルーチン検査に関しては,非放射性免疫測定法(non-isotopic immunoassay)が全盛期を迎えようとしている.すなわち,化学発光や蛍光発光を応用した高感度測定法が相次いで登場し,簡便な自動化機器の開発と相まって,急速に普及し,従来のラジオイムノアッセイ(RIA)を色あせた歴史的方法に葬り去ろうとしている感がある.

 現在,世界各国で開発され,市販されているnon-RIAの全貌を私は知らない.しかし,わが国においてさえ次に記すような多種多様のnon-RIAの機器試薬が登場してきたことから推測しても,かなりの数のものがあると思われる.私自身が性能を調べた機器試薬はその中のごく一部にすぎない.しかし,いずれも第1世代のRIAよりも高感度で,第2世代のIRMA(immunoradiometric assay)よりも精度が良かった1,2)

各論 1.視床下部ホルモン系

1) CRH (CRF)

須田 俊宏

pp.60-62

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 ACTH分泌刺激因子であるcorticotropin-releas-ing hormone (CRH)またはcorticotropin-releasing factor (CRF)は視床下部室傍核の小細胞で合成される.CRF遺伝子は2つのエキソンと1つのイントロンからなり,この5′側上流にはcAMP反応部位がある.その遺伝子発現は主にAキナーゼ系により促進され,糖質コルチコイドで抑制される.CRF mRNAから翻訳されてできたCRF前駆体は196個のアミノ酸からなり,その後修飾されて41個のアミノ酸からなるCRFができる.

 CRFの合成と分泌の3大調節因子として,①日内リズム,②ストレス,③糖質コルチコイドによるネガティブフィードバック,がある.日内リズムとはヒトなら早朝,夜行性動物なら夕方~夜にかけてCRF―ACTH―糖質コルチコイドの分泌が亢進するパターンをいう.そのため鍵となるCRF mRNAは分泌ピークの数時間前から増加し始めてCRF合成を促進させ,その後分泌が亢進する.ストレスによるCRF遺伝子発現の亢進には,カテコールアミン,アセチルコリン,ヒスタミンなどのほかにアンギオテンシンIIやニューロペプチドYなどの神経伝達物質が関与している.

2) GnRH (LH-RH)

青野 敏博

pp.63-65

生合成・分泌・機能

 1.生合成,分泌

 ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releas-ing hormone; GnRH, LH-RH)は,1971年にSchal-lyらがブタ50万頭の視床下部から抽出,純化し,その構造を決定した.アミノ酸10個からなるペプチドホルモンである.

 GnRHは視床下部の対角帯核,中隔,視索前野,弓状核などの神経核において合成され,神経終末から分泌され,下垂体門脈を経て下垂体に運ばれる.ゴナドトロピン分泌細胞に作用すると,LHとFSHの産生と放出が促進される.

3) TRH

入内島 德二 , 森 昌朋

pp.66-68

生合成・分泌・機能

 1.生合成,代謝

 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyrotropin-releasing hormone; TRH)は視床下部室傍核においてTRHの前駆体であるプレプロTRHから生成される.ヒトプレプロTRH遺伝子は3個のエキソンと2個のイントロンから成る.第1エキソンはプレプロTRH DNA 5′側のCAP siteで始まる転写開始部位をコードし,第2エキソンはシグナルペプチドを含む部位をコードし,さらに第3エキソンは6個のTRH前駆体配列(Gln-His-Pro-Gly)と3′側のポリA部位をコードしている(図1).

 この6個のTRH前駆体配列は各々塩基性アミノ酸対であるLys-ArgまたはArg-Argにより挟持されており,このアミノ酸対を認識するプロテアーゼにより分解され切り出された後,N端Gln残基側はシクラーゼによりPyroGluを形成し,C端側はカルボキシペプチターゼにより順次消化され,pGlu-His-Pro-Gly(TRH-Gly)となる.このTRH-Glyはα-amidating enzymeの作用によりTRH (pGlu-His-ProNH2)に変換される.そして最終的にpGluペプチダーゼにより代謝され,種々の生理活性を有するサイクロ(His-Pro)となる(図2).

4) GH-RH

高原 二郎 , 佐藤 誠

pp.69-71

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 GH-RH (growth hormone-releasing hormone)は主として視床下部の弓状核に存在するGH-RHニューロンで産生され,視床下部ホルモンとして生理作用を発揮するが,中枢以外においても胎盤や精巣で産生されることが最近知られている.GH-RH遺伝子は5つのエキソンから成り,全長は約10kbに及ぶと考えられている.

 GH-RHの生合成は,他のペプチドホルモンと同様にGH-RHニューロンの核内においてGH-RH遺伝子から転写されたRNAが,スプライシング機構によりイントロン部分が除かれ,約750塩基のGH-RH-mRNAが産生されることから始まる.GH-RHmR-NAから翻訳された107個あるいは108個のアミノ酸残基からなるプレプロGH-RHは,N端側から30個のシグナルペプチドが除かれてプロGH-RHとなる.プロGH-RHは蛋白分解酵素の作用によって,C端側30個のアミノ酸(GCTP)が除かれ,GH-RH (1-45)となり,さらにC端側のグリシンが除かれてアミド化され最終的に生理活性を有するGH-RH (1-44)NH2となる.

各論 2.下垂体前葉ホルモン系

1) GH

片上 秀喜 , 松倉 茂

pp.72-76

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 1)視床下部性GH分泌調節(図1)

 下垂体のGH (growth hormone;成長ホルモン)分泌は中枢神経系によって調節されている.ストレスなどの刺激は中枢神経系,特に大脳皮質に作用し,脳内の各種の生理活性アミンやペプチドを介して,最終的には視床下部に存在する作用の相反する2つのホルモン,促進性のGH分泌促進因子(growth hormone-releasing hormone;GHRH)と抑制性のソマトスタチン(somatostatin;SRIF)の複合作用の結果,GH分泌が生ずる.血中に放出されたGHは末梢の標的組織(肝臓,脂肪組織,軟骨,骨格筋やその他の広範な組織)に作用し,各組織でインスリン様成長因子-I(IGF-I,別名ソマトメジンC; somatomedin C, SM-C)を産生し,成長や脂肪分解などの各種の生理作用を発現する.

2) ACTH, LPH

田中 孝司

pp.77-81

生合成・分泌・機能

 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH; adrenocorticotro-pic hormone, adrenocorticotropin, corticotropin)は下垂体前葉で合成され,副腎皮質に作用して副腎皮質ステロイドの合成分泌を促進するホルモンである.リポトロピン(LPH; lipotropin, lipotropic hormone)にはβ-LPHとγ-LPHがあり,まとめてLPHと呼ぶ.

 ACTHとLPHは,この両者と他の活性ペプチドを含む大分子の共同前駆体(common precursor)として合成されたのち,蛋白分解酵素により切断されて生じる.この共同前駆体はACTH, LPHのほかに色素細胞刺激作用のあるMSH (melanocyte-stimulatinghormone),モルフィン作用のあるエンドルフィンなどを含むためproopiomelanocortin (POMC)と呼ばれる.したがって種々の生理的条件,病態でACTHとLPHの合成,分泌と血中濃度は並行する.

3)βエンドルフィン

加藤 讓

pp.82-84

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 βエンドルフィン(β-endorphin)は31個のアミノ酸から成るペプチドである.図1に示すように,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と共通の前駆体(proopio-melanocortin; POMC)から生成されるβリポトロンピン(β-LPH)のC端部分(β-LPH61-69)に由来する.

 ヒトでは主として下垂体前葉から産生され血中に分泌される.下垂体以外にも視床下部を中心とした中枢神経系,交感神経節,副腎髄質,消化管,膵臓,甲状腺,卵巣,胎盤など多くの組織において産生される.このほか,異所性ACTH産生腫瘍においてもβエンドルフィンの同時産生がみられる.

4)ゴナドトロピン(FSH, LH)

仲野 良介

pp.85-87

生合成・分泌・機能

 下垂体前葉から分泌されるゴナドトロピン(gonadotropin)である卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone;FSH)と黄体化ホルモン(luteinizing hormone;LH)は性腺〔卵巣,精巣(睾丸)〕のレセプターと結合してその内分泌調節に主要な役割を演じ,性腺の機能調節に関与している.

5)プロラクチン

山路 徹

pp.88-90

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 ヒトのプロラクチン(prolactin)は199個のアミノ酸で構成されており,分子内に3個のS-S結合がある.下垂体前葉プロラクチン細胞では,まずプレプロラクチンが産生された後,28個のアミノ酸からなるシグナルペプチドが外れてプロラクチンに変換される.血液や下垂体中のプロラクチンは多くが単量体であるが,二量体や四量体などの多量体プロラクチン,糖鎖を持つプロラクチンも存在する.多量体プロラクチンや糖化プロラクチンの生理的意義については明らかになっていない.

 ヒトのプロラクチン遺伝子は第6染色体上に存在する.5個のエキソンからなり,10kb以上の長さを有する.プロラクチン遺伝子の発現や転写,プロラクチン細胞の増殖には,転写調節因子Pit-1(GHF-1)が重要な役割を果たしている.エストロゲン,TRH(thyrotropin-releasing hormone),EGF(epidermal growth factor)はプロラクチンの生合成を促進し,ドーパミンはこれを抑制する.いずれの場合も,効果が現れるためには,プロラクチン遺伝子上流にあるPit-1結合部位の存在が必要である.なお,プロラクチンのアミノ酸配列,プロラクチン遺伝子の構造には,成長ホルモンや胎盤性ラクトゲンと共通点があり,これら3つのホルモン遺伝子は進化の過程で同一の祖先遺伝子から派生したものと考えられている.

6)TSH

木村 博典 , 長瀧 重信

pp.91-94

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone,thyrotropin;TSH)は下垂体前葉細胞から分泌される,分子量約28,000の糖蛋白ホルモンである.糖鎖が付加されたαサブユニットとβサブユニットの2つのサブユニットから成り,各々のサブユニットは異なった染色体上の異なった遺伝子にコードされていて,独立してプレホルモンを経て生合成される.αサブユニットはTSH,LH,FSH,hCGで共通であるが,βサブユニットはTSHに特異的である.したがって,TSHのホルモンとしての特異性はβサブユニットに基づいている.αサブユニットは89個のアミノ酸から,βサブユニットは112個のアミノ酸から成り,それぞれに糖鎖が付加されている.ホルモンとしての作用を発現するためには,αサブユニットとβサブユニットが結合して一定の立体構造を保つことが必要である.

 TSHの遺伝子の発現および蛋白合成は多くの因子によって調節されている.その中で主要な因子は甲状腺ホルモンとTSH放出ホルモン(thyrotropinreleasing hormone;TRH)である(図1).

各論 3.下垂体後葉ホルモン系

1) ADH (抗利尿ホルモン)

吉田 勢津子 , 吉田 尚

pp.95-98

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 ADH (antidiuretic hormone;抗利尿ホルモン)は視床下部の室傍核(paraventricular nuclei)や視索上核(supraoptic nuclei)の大細胞ニューロンにおいて,ADHとニューロフィジンⅡと呼ばれる特異的結合蛋白質からなるプロホルモン(プロプレッソフィジン)として合成される.神経分泌顆粒として軸索内を正中隆起から下垂体後葉の神経終末に2~3mm/時の速度で移動する過程でプロセッシングを受け,ADHとニューロフィジンⅡに切断され貯蔵される(図1).このニューロフィジンⅡは軸索末端でのホルモン蓄積に関与すると考えられている.

 さらにこのような経路とは別に,室傍核小細胞ニューロンから脳幹・脊髄・大脳辺縁系および正中隆起外層門脈起始部へ分布する系も存在する.この小細胞ニューロンは脳内に広く分布し,ADHのほかに副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)やソマトスタチンなどを含むものもあり,中枢の自律的制御にも関与していると考えられている.また,正中隆起外層門脈起始部から分泌されたADHは,下垂体門脈血管系を経てACTH分泌刺激に関与している可能性が示唆されている.

各論 4.甲状腺ホルモン系

1) T4,フリーT4

女屋 敏正

pp.99-101

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 内分泌臓器である甲状腺が甲状腺ホルモンであるサイロキシン(thyroxine;T4)およびトリヨードサイロニン(triiodothyronine;T3)を合成するためには,まず甲状腺ホルモン合成の場ともいうべき甲状腺特有の糖蛋白質であるサイログロブリンの合成が甲状腺濾胞細胞によってなされていなければならない(図1).サイログロブリンは分子量33万のサブユニット2個から成る巨大分子で,ヨードチロシンが縮合して有効にホルモン合成ができるような構造を有している.

2) T3,フリーT3

池田 斉

pp.102-103

 3,5,3′―トリヨードサイロニン(triiodothyronine; T3)はサイロキシン(以下T4)の4つのヨードのうち,5′のヨードが取れて,3,5,3′の位置にヨードを含んだ活性の高い甲状腺ホルモンである(図1).分子量は651,化学式はC15H12I3NO4である.

各論 5.副甲状腺ホルモン・骨代謝ホルモン系

1) PTH

稲葉 雅章 , 森井 浩世

pp.104-108

はじめに

 副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone; PTH)は副甲状腺の主細胞(chief cell)で合成され,種々の因子によりその合成・分泌が調節されている.しかし,PTHの遣伝子発現や合成過程と,その分泌過程を制御する因子は互いに異なっており,このことを銘記することが重要である.最近,PTHの受容体がクローニングされ,分子レベルでの作用機序の解析が進むものと思われる.臨床的にはPTHの高感度アッセイ,intactアッセイが開発され,種々疾患の鑑別やPTH分泌の動態解析が容易となっている.

2)活性型ビタミンD

深瀬 正晃

pp.110-111

生合成・分泌・機能

 ビタミンDはステロイド様化合物で,食物中に含まれる植物由来(D2系)のエルゴステロール(ergoster-ol)と,動物(D3系)の皮膚の表皮および基底膜に主として存在する7-デヒドロコレステロール(7-dehydro-cholesterol;7-DHC)の2つのD前駆体に由来する.7-DHCは,皮膚では酵素に依存せず紫外線(270~320nm)によりプレビタミンD3へ変換され,さらに皮膚温度依存性にビタミンD3に変換される.以後,活性型ビタミンDは肝臓と腎臓で引き続き2段階の水酸化反応を受けて合成される.

 体内のビタミンD(D2,D3とも)はビタミンD結合蛋白(DBP)により肝臓へ運ばれ,肝臓のミトコンドリアおよびミクロソームに主として存在する25位の水酸化酵素により25(OH)ビタミンD〔25(OH) D〕に変換される.しかし,これらの異なる小器官に存在する酵素の異同の詳細はまだ不明である.なお,肝臓の25―水酸化酵素は大山らにより精製され,そのcDNAからクローニングされている.

3)カルシトニン

石井 良章

pp.112-114

生合成・分泌・機能

 1.構造,生合成

 カルシトニン(calcitonin)は32個のアミノ酸から成るペプチドホルモンである.1968年ブタのカルシトニンの構造がPattsらによって明らかにされて以来,現在までにウシ,ヒツジ,ヒト,ラット,サケ,ウナギなどで明らかになっている.いずれも32個のアミノ酸から成る単鎖のポリペプチドで,1番目と7番目のアミノ酸がS-S結合をし,C末端がプロリンアミドであるほか,1,3,4,5,6,7,9,28,32番目に位置するアミノ酸はすべての種において共通である.

 多くのホルモンの場合,生物活性を発現するのに,その全構造を必要とせず,活性中心部位のあることが知られている.しかしカルシトニンの生物活性の発現には32個すべてのアミノ酸が必要であり,さらにC末端のプロリンアミドも活性発現に重要であることが示されている.また,1番目と7番目のS-S結合が切断されるとその生物活性がほとんど消失することから,カルシトニンの生物活性発現にはカルシトニンの全構造が必要であると考えられている.カルシトニンの生合成,代謝についてはいまだ不明である.特に生合成に関する記載ははなはだ乏しいが,甲状腺C細胞からカルシトニンが分泌され,このC細胞は胎生器官である鰓後腺由来であるため,カルシトニンは鰓後腺由来の組織で生合成が行われている可能性があると考えられている.

4) CGRP

高見 博

pp.116-117

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide; CGRP)は分子遺伝子学の技術によって発見された最初の生物学的活性のあるペプチドの1つであり,カルシトニンと同一の遺伝子から発現され,37個のアミノ酸から成っている(図1)1)

 カルシトニン遺伝子はRNAへの転写後,その形質発現上2種のmRNAを産生し,臓器特異的に甲状腺C細胞ではカルシトニンmRNAを,脳・中枢神経系ではCGRPmRNAを派生し,それぞれカルシトニンとCGRPの前駆体蛋白を産生する.CGRPはラット甲状腺髄様癌の継代移植中にカルシトニンとは異なる別のmRNAが発見され,このmRNAの情報に基づいて,分子遺伝子学の技術により合成されたペプチドである.したがって,生物活性を指標として抽出・構造決定されたほかの多くのペプチドとは逆の研究経緯をたどっている.

各論 6.副腎皮質ホルモン系

1)コルチゾール

柳瀬 敏彦 , 名和田 新

pp.118-121

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 コルチゾール(cortisol)は副腎皮質において合成されるが,その合成分泌は下垂体ACTHにより促進的調節を受けている.副腎におけるステロイド合成経路の概略を図1に示すが,ここでは主にコルチゾール合成について言及する.

 コレステロール(cholesterol)からコルチゾール合成に至る経路には4つのチトクロームP450(P450scc,P45017α,P450c21,P45011β)および3β-HSD(3β-hydroxysteroid dehydrogenase)の5つの酵素が関与する.すべてのステロイドホルモンの合成はミトコンドリアにおけるコレステロールのP450sccによる側鎖切断反応に始まり,その結果,プレグネノロン(pregnenolone;P5)が形成される.P5は小胞体へ移行し,P45017αにより17α-水酸化反応を受け17α-hydroxypregnenolone (17 OHP5)が生成される.さらにP5および17OHP5は3β-HSDによりそれぞれプロゲステロン(progesterone; P4)および17α-hydroxyprogesterone (17OHP4)に転換される.17OHP4は小胞体のP450c21,により11-deoxycortisol(S)に転換され,Sは再度ミトコンドリアに移送された後,最終的にP45011βによりコルチゾールが生成される.

2)レニン,アンジオテンシン

福地 総逸

pp.122-124

生合成・分泌・機能

 レニン(renin)は腎臓から血中に放出される以外に,心臓,血管壁,副腎,脳などの臓器内にも存在し,各臓器において種々の生理的機能を示す.

 腎臓の傍糸球体装置から産生されるレニンは血中に放出され,肝臓において生成されるアンジオテンシノーゲンに作用して,アンジオテンシンⅠ(angiotensin Ⅰ;AⅠ)を生成する.AⅠは直ちに血管内皮細胞に存在するアンジオテンシン転換酵素によりアンジオテンシンⅡ(AⅡ)を産生する.

3)アルドステロン

𠮷見 輝也

pp.125-129

生合成・分泌・機能

 生体内に分泌される最も強力なミネラロコルチコイドはアルドステロン(aldosterone)で,副腎皮質の球状層でのみ生合成される.生合成の過程で生じる18ヒドロキシコルチコステロン,コルチコステロン,デオキシコルチコステロン(DOC)や,グルココルチコイドのコルチゾールにもミネラロコルチコイド作用が認められる.18ヒドロキシコルチコステロンとアルドステロンは,球状層で合成されアンギオテンシンにより分泌調節を受けるが,コルチコステロン,DOC,コルチゾールは索状層で合成されACTHによって分泌調節を受けている1).アルドステロンは腎臓でのNa吸収作用が最も強力で,生体内で体液量の保持と血圧の調節に主要な役割を演じている.アルドステロン以外のミネラロコルチコイドも,病的状態では過剰に産生されてミネラロコルチコイド過剰症を発症し,レニン―アンギオテンシン系が抑制されるため,アルドステロンの分泌は低下する.

4)11-デオキシコルチゾール

西村 元伸 , 田村 泰

pp.130-131

生合成・分泌・機能

 1.産生および機能

 副腎皮質束状層では糖質コルチコイドであるコルチゾール(cortiso1;F)が主に産生されるが,11-デオキシコルチゾール(11-deoxycortiso1;S)はその前駆物質であり,図1に示すとおり17-ヒドロキシプロゲステロンが21-ヒドロキシラーゼにより代謝されて合成され,さらに11β-ヒドロキシラーゼにより代謝されコルチゾールに変換される.

 Sの糖質コルチコイド,あるいは鉱質コルチコイドとしての活性はコルチゾール,アルドステロンに比べはるかに弱く,生理活性物質としての存在意義はあまりないが,ステロイド合成の中間代謝産物として副腎皮質酵素欠損症の診断,またメトピロンテストの評価においてその測定意義は大きい.

5)11-デオキシコルチコステロン

木野内 喬

pp.132-133

生合成・分泌・作用

 1.生合成・分泌

 11-デオキシコルチコステロン(11-deoxycortico-sterone; DOC)は,1938年にReichsteinによってウシの副腎から抽出されたミネラロコルチコイドの一種で,図1に示すような構造を有するステロイドである.

 血中DOCは,副腎皮質の束状層におけるコルチゾール生合成過程の副産物として,ミクロソーム中の21―水酸化酵素(チトクロームP450c21)の作用で,プロゲステロンのC21位が酸化されて合成されるものと,副腎皮質球状層でレニン―アンギオテンシン系の支配下に,コルチコステロンやアルドステロンの中間代謝産物として合成されるものとに由来する.

6)デヒドロエピアンドロステロン(DHEA),DHEA-S

佐藤 文三

pp.134-136

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 デヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandro-sterone;DHEA)は主に副腎から分泌されるステロイドであり,その硫酸基結合型がDHEA-sulfate(DHEA-S)である.副腎細胞は血中のLDLやHDLを受容体依存性に取り込み,これらのリポ蛋白に含まれているコレステロールをステロイド合成の基質としている.コレステロールは,下垂体からのACTH刺激により複雑な過程を経てプレグネノロンへ転換されていく.さらに17α-ヒドロキシラーゼの作用により17α-ヒドロキシプレグネノロンに,次に17,20リアーゼの作用によりDHEAに合成されていく.DHEAは副腎内でDHEA-Sにまで転換しうることが知られている.DHEAはアンドロステンジオンや11β-ヒドロキシアンドロステンジオンへも転換しうる.

 ここで注意をしておかなければならないのは,プレグネノロンはプロゲステロンへ代謝され,最終的にはコルチゾールやアルドステロンなどの重要なステロイドホルモンの基質にもなっていることである(図1).プレグネノロンからコルチゾールへの転換に関与する酵素(例えば21-ヒドロキシラーゼ)が欠損している患者では,コルチゾール産生が低下することによりACTHの分泌が亢進し,結果的にプレグネノロンからDHEAへの転換が著増することになる.

7)テトラヒドロ-11-デオキシコルチゾール

大澤 仲昭

pp.138-139

生合成・分泌・機能

 テトラヒドロ-11-デオキシコルチゾール(tetrahy-dro-11-deoxycortisol;THS)は,副腎皮質で生成されるグルチコルチコイドのコルチゾールの前駆体である11-デオキシコルチゾールが肝臓で代謝され,主としてグルクロン酸抱合型となり尿中へ排泄された物質である.11-デオキシコルチゾールは最初ReichsteinによりSubstance Sとして発見されたのでSRの略称がよく用いられ,したがって本物質もTHSと略されることが多い.

8)17α-ヒドロキシプロゲステロン

柴田 幸信 , 五十嵐 良雄

pp.140-142

生合成・分泌・機能

 1.生合成・分泌

 副腎皮質における17α-ヒドロキシプロゲステロン(17α-hydroxyprogesterone;17α-OH-P)の生合成過程は,コレステロールからプレグネノロンが合成されることから始まる1,2).細胞中のミトコンドリアに取り込まれたコレステロールは,ミトコンドリア内膜に存在するコレステロール側鎖切断酵素によりC20,22の水酸化と20~22内の切断を受け,プレグネノロンとなる.この酵素はNADPHからの電子伝達系と共役したチトクロームP450であり,P450sccと呼称されている.チトクロームP450は生体における諸物質代謝に広く関係しているヘム蛋白の一群で,副腎皮質酵素反応のエネルギー供給系である2).コレステロールからプレグネノロンへの反応は3回の酸素添加反応(原子酸素添加反応)であり,最初の反応に律速される.コレステロールがP450sccに結合すると,プレグネノロンまでの反応は続いて起こる.

 合成されたプレグネノロンは拡散によってミトコンドリアから遊離し,ミクロソーム(endoplasmicreticulum)に移行する.そこで3β水酸基脱水素酵素と△4-5イソメラーゼ(この両者を3β-hydroxy ster-oid (or-ol) dehydrogenaseと呼んでいる)の双方の働きによりプロゲステロンとなる.

9)アンドロステンジオン

田中 俊一 , 関原 久彦

pp.143-145

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 アンドロステンジオン(androstenedione)は副腎皮質,精巣,卵巣で合成されるステロイドの中間代謝産物でアンドロゲンに属する.また,末梢でのデヒドロエピアンドロステロンからの転換で合成される(表1).副腎・性腺ともにコレステロールからプレグネノロンを経て合成される.合成経路は△4経路と△5経路の2つがあり(図1),副腎皮質では主として△5経路で性腺では△4,△5両経路を使用する.

各論 7.副腎髄質ホルモン系

1)カテコールアミン

中井 利昭

pp.146-147

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 カテコールアミン(catecholamine)の生合成の過程は,まず血中からアミノ酸であるチロジンがactive transportにより副腎髄質や交感神経のクロム親和性細胞内へ取り込まれ,チロジン水酸化酵素の働きでドーパとなる.生成されたドーパは,ドーパ脱炭酸酵素によりドーパミンとなる.ドーパミンはカテコールアミン貯蔵顆粒内に存在する酵素であるドーパミンβ水酸化酵素(DBH)によりノルアドレナリンとなる.交感神経終末端では,この段階までであるが,副腎髄質ではフェニルエタノラミン―N―メチル転移酵素(PNMT)により,ノルアドレナリンからアドレナリンへの転換が行われる.このPNMTは主として細胞質に存在するので,ノルアドレナリンはいったんカテコールアミン顆粒を出て,細胞質でN―メチル化を受けることになる.

 カテコールアミンの生合成は各生合成段階での基質,酵素,補酵素などの量的な変動によって変動するが,チロジン水酸化酵素が最も生合成を速度調節(律速)している.そのほかに神経機能による調節もみられる.すなわち,交感神経を切断すると,その生合成が抑制される.ホルモンによる調節もみられ,下垂体を摘除すると,PNMT,チロジン水酸化酵素,ドーパミン―β水酸化酵素活性が低下し,ACTH,グルココルチコイドを投与すると活性が回復する.

2)メタネフリン2分画

中井 利昭

pp.148-149

生合成・分泌・機能

 1.生合成・分泌・代謝

 メタネフリン2分画,すなわちメタネフリン(metanephrine),ノルメタネフリン(normetane-phrine)は,それぞれアドレナリン,ノルアドレナリンの中間代謝産物である(アドレナリン,ノルアドレナリンの生合成過程については,カテコールアミンの項を参照).

 低血糖,出血そのほかさまざまのストレスに対応して,副腎髄質から分泌されたカテコールアミン(アドレナリン,ノルアドレナリン)は,血管系,肝臓などに多く存在するCOMT (カテコール―O―メチルトランスフェラーゼ)によりメチル化を受け,中間代謝産物のメタネフリン,ノルメタネフリンとなる.これはさらにMAO (モノアミンオキシダーゼ)により酸化を受け,VMA (バニルマンデル酸)や3―メトキシ-4―ヒドロキシ―フェニルエチレングリコール(MOPEG)となる.また交感神経から分泌されたノルアドレナリンは,大部分(80~90%)は再び交感神経終末に取り込まれ,不活化すなわちMAOにより酸化的脱アミノ化を受け3,4―ジヒドロキシマンデリックアルデヒドとなり,さらに3,4―ジヒドロキシマンデル酸(DOMA),3,4―ジヒドロキシフェニレングリコール(DOPEG)になる(図1).

3) VMA, HVA

金子 道夫

pp.150-152

生合成・分泌・機能

 バニルマンデル酸(vanilmandelic acid;VMA),ホモバニリン酸(homovanillic acid;HVA)はカテコールアミンの尿中分解産物である.カテコールアミンの生合成・分泌などの詳細については7.1)(146ページ)を参照されたい.

 カテコールアミンはチロシン→ドーパ→ドーパミン→ノルエピネフリン→エピネフリンの順で合成されて行く.これらカテコールアミンの分解経路はいくつかあるが,主要な代謝の様式として,カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)により,カテコールがメチル化されてメトキシとなり,またモノアミンオキシダーゼ(MAO)により,アミノ基が酸化されて代謝される.交感神経節や副腎髄質にはこれらのカテコールアミン分解酵素が含まれ,分泌顆粒はこれらの酵素によるカテコールアミンの分解を防ぐ働きがある.COMTは肝,腎細胞の細胞質に特に多く含まれ,2価の陽イオンとメチル基供給源としてS-adenosylmethionineを必要とする.流血中のカテコールアミンはこの酵素で代謝され,生理学的に不活性なメチル体になる.

4)ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ

石村 泰子 , 大内 武 , 岡 源郎

pp.154-155

生合成・分泌・機能

 ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ(dopamineβ-hydroxylase; DBH)は,ドーパミンをノルアドレナリン(NA)に変換させる酵素である.生体内では副腎髄質,交感神経終末,中枢神経系の一部などNA,アドレナリン(A)を含有する組織に存在し,ほかには認められない.1960年Levinらにより副腎から高度に精製され,その酵素の性状が明らかになってきた.これら組織の細胞内では,ほとんどがカテコールアミン(CA)含有顆粒内(クロマフィン顆粒)に局在する.この顆粒内のDBHには,膜と結合しているmembrane bound DBH(m-DBH)と顆粒内容物として可溶性の状態で存在するsoluble DBH(s-DBH)の2型がある.

 このうちs-DBHはCAが開口分泌機序(エキソサイトーシス)により細胞外に分泌される際の随伴蛋白として,クロモグラニン,ATPなどの可溶性内容物とともに放出され血中に出現する.CAとs-DBHの分泌相関はほほ一致している.m-DBHとs-DBH両者の特性はほとんど同じであるが,s-DBHの方が活性が高い.このことは膜構成成分となったDBH蛋白は酵素活性が抑制されている状態にあることを示唆している.

5)ドーパ

髙橋 伯夫

pp.156-157

生合成・分泌・機能

 アドレナリン,ノルアドレナリン,ドーパミンなどすべてのカテコラミンの前駆物質であるドーパ(DOPA;3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン;3,4-dihydroxyphenylalanine)は交感神経系の神経伝達物質であるノルアドレナリンの血中濃度に比べて高濃度で血液中に存在する.血漿中のドーパの由来についてはいまだに明確にはされていないうえに,血液中のドーパの生理的な役割についても交感神経系との関連が指摘される中でこれも明確とは言い難い1).しかし,最近の研究成果からその生理的役割の一端が明らかになりつつある.すなわち,一面においては従来から頻用されてきたカテコールアミンより優れた臨床検査の指標となる可能性も指摘されている.そこで,本稿ではドーパに関する最近の知見を概説する.

6) MHPG

重富 秀一

pp.158-160

生合成・分泌・機能

 1.カテコールアミン代謝とMHPG

 MHPG (3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol,図1)は血漿,尿および髄液中に存在するノルエピネフリン(またはエピネフリン)の代謝産物の1つである.カテコールアミン(ドーパミン,ノルエピネフリン,エピネフリン)は貯蔵顆粒内でのみ遊離型のままでも安定であり,顆粒外では酵素の作用を受けて速やかに代謝される.ノルエピネフリンおよびエピネフリンはモノアミン酸化酵素(monoamine oxidase; MAO)とカテコール-O-メチル転換酵素(catechol-O-methyl-transferase;COMT)による代謝を受けて最終代謝産物のバニリルマンデル酸(vanillil mandelic acid; VMA)またはMHPGになる.神経組織内と非神経組織とはカテコールアミンの合成と代謝に関与する酵素の分布や性質が異なるのでMHPG産生量は臓器によりさまざまである.アルコール脱水素酵素によるアルデヒド基の還元反応がMHPGの生合成に不可欠な反応過程である.体液中のMHPGは中枢神経活動の変動に伴い増減するが,末梢交感神経活動とは必ずしも相関しないので,中枢のノルエピネフリンの代謝と末梢クロム親和細胞(交感神経あるいは副腎髄質)におけるカテコールアミン代謝動態には明らかな相違があると思われる.

各論 8.性腺ホルモン系

1)エストロゲン(エストロン,エストラジオール)

加藤 順三 , 笠井 剛

pp.161-164

 エストロゲン(estrogen)とは特定の1つのホルモンのことではなく,女性ホルモン活性を持つ種々のホルモンの総称である.生体内に存在する天然のエストロゲンは,主にエストロン(estrone; E1),エストラジオール(estradiol; E2)およびエストリオール(estriol; E3)の3つであり,すべてステロイド環を持つステロイドホルモンである(図1).E1~3の数字はステロイド環に付いている水酸基の数を示すが,この3つの中ではE2が女性ホルモンとしての活性が最も高い.エストロゲンの主要な合成器官は性腺,胎盤および脂肪組織である.

2)プロゲステロン

小辻 文和 , 富永 敏朗

pp.165-167

生合成・分泌・作用

 1.生合成

 プロゲステロン(progesterone)は卵巣,睾丸,副腎皮質,胎盤で生合成され,エストロゲン,アンドロゲン,副腎皮質ホルモンの中間物質として利用される.卵巣では卵胞細胞が黄体化するとプロゲステロンを変換する酵素が減少する.また,胎盤にはこの酵素が存在しない.したがって,黄体や胎盤で生合成されたプロゲステロンの多くは流血中に分泌される.

 図1にプロゲステロンの生合成過程を示す.プロゲステロンはコレステロールを前駆体として生合成され,ヒトでは流血中の低密度リポ蛋白コレステロールが主に利用される.コレステロールはミトコンドリアに運ばれ,コレステロール側鎖切断酵素(side-chain cleavage cytochrome P 450:P450scc)の働きにより,20と22位の炭素が水酸化と側鎖切断を受けプレグネノロンとなる.プレグネノロンは滑面小胞体内で3β水酸基脱水素酵素(3β-hydroxysteroid dehydrogenase/5-4isomerase;3β-HSD)の作用を受け,3位の水酸基がケトン化され,二重結合を5-6位から4-5位に移しプロゲステロンとなる.

3)エストリオール

臼杵 悊

pp.168-174

生合成・分泌・機能

 エストロゲンは主に卵胞で産生されるが,妊婦では胎盤からも大量に産生される.肝臓,脂肪などでも産生されるが,図1に示した経路で副腎皮質,精巣でも微量ながら産生される.エストロゲンは約20種以上が確認されているが,主なものはエストロン(E1),17β-エストラジオール(E2)およびエストリオール(estriol;E3)で,E1とE2(本来の卵巣エストロゲンで最も強力)の代謝は可逆的反応で相互に変換し,E1とE2は,E3(最も弱い卵胞ホルモン作用を持つ)に代謝されるが(図1,2),E3への転換は卵巣では行れず,肝臓,胎盤などで行れる.図1に示すように性腺と副腎皮質のステロイドホルモン代謝経路には多くの類似点がある.

4)プレグナンジオール,プレグナントリオール

小原 満雄 , 伊吹 令人

pp.175-177

生合成・分泌・機能

 1.生合成・分泌

 プレグナンジオール(pregnanediol, 5β-プレグナン-3α,20α-ジオール;以下P2)は,黄体,胎盤,副腎皮質,睾丸などで生合成されるプロゲステロンの主要尿中代謝産物である.主に肝臓の5β―ヒドロゲナーゼと3α-および20α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼにより生成する(図1).プロゲステロンは,グルクロン酸と結合し水溶性に転換されて,尿や便,胆汁中に排泄される.産生されたプロゲステロンの約10~20%がP2として尿中に排泄される.また,プロゲステロンの約10%は大便中に,約30%は胆汁中に排泄される.胆汁中に排泄されたプロゲステロンは腸管から再吸収されて肝臓に入り,ここで再び代謝され,一部は再び胆汁に入り(腸肝循環),最終的には完全に代謝されて尿か便に排泄される.妊娠時には,胎盤で産生されるプロゲステロンは母体,胎児に移行する.母体では主に肝臓で代謝されP2となって尿中に排泄されるが,胎盤からのプロゲステロンの産生量に従ってP2値は妊娠経過とともに増量し,妊娠36週で最高値に達し,以後は漸減する(図2)1)

5) hCG, hCGサブユニット

玉舎 輝彦

pp.178-179

生合成・分泌・機能

 hCG(human chorionic gonadotropin;ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は妊娠中,栄養胚板(トロホブラスト)→絨毛膜有毛部→胎盤(妊娠第4か月で完成する)の胎盤形成過程において,絨毛のシンチチウム細胞で合成される.受精卵の2分割卵からhCGが局所で分泌されることが知られ,母体では妊娠8~10週が最高値を示す(尿中hCG値は50,000~500,000IU/l,血中β―hCG値で50,000~100,000mIU/ml).その後急減し,妊娠期間中変動せず,尿中hCG値は10,000~50,000IU/l (血中β-hCG値で4,000~30,000mIU/l)となる.

 この変化は以下に説明される.完全な型のhCGは絨毛のシンチチウム細胞で合成される.その下層にあるLanghans細胞はシンチチウム細胞へ分化するが,その過程である妊娠8~10週ごろはhCGの合成が盛んである.妊娠10週以後Langhans細胞の減少とともに,そのパラクリン的影響を受けていたシンチチウム細胞のhCG産生は低下する.

6)テストステロン,DHT

山中 英寿 , 湯浅 久子 , 小野 芳啓 , 福村 幸仁

pp.180-181

生合成,分泌,機能

 1.生合成

 成人男子体内でのステロイド生合成は,一般的には酢酸(C2)→コレステロール(C27)→プレグネノロン(C21)→アンドロゲン(C19)→エストロゲン(Cl8)の順で生合成される.C19,ステロイドの最終生成物であるテストステロン(testosterone)の大量の生成は精巣のLeydig細胞においてなされる.Leydig細胞は前駆体細胞から分化するが,この分化過程は下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(luteinizing hormone; LH)と精巣内のパラクリン因子によって調節されている.Lyedig細胞においてはコレステロールからテストステロンまで生合成されるが,コレステロールからC21ステロイドであるプレグネノロンの生成はミトコンドリアで行われ,プグネノロンからテストステロンまでの生合成は主に滑面小胞体で行われる.ステロイド生合成にかかわっているステロイド代謝酵素は基質特異性が高く,明確な細胞内局在性があるために,Leydig細胞内におけるステロイド生合成の部位が異なる.Leydig細胞におけるステロイド生合成の経路として△4経路と△5経路の2経路がある.ラットおよびマウスではプロゲステロンを経てアンドロステンジオンを直接の前駆体としてテストステロンが生合成されるが(△4経路),ヒトでは△4経路のほかに,デヒドロエピアンドロステロンを経る△5経路が共存している(図1).

7)インヒビン,アクチビン

定月 みゆき , 堤 治 , 武谷 雄二

pp.182-184

生合成・分泌・機能

 インヒビン(inhibin),アクチビン(activin)は下垂体前葉からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を調節するホルモンとして卵胞液中から発見された物質である.インヒビンは,下垂体前葉からのFSHの産生と分泌を抑制する分子量31,000~32,000の糖蛋白である.134個のアミノ酸から成るαサブユニットと116個(βA)または115個(βB)のアミノ酸から成るβサブユニットとのヘテロダイマーである(図1).これに対しアクチビンはβサブユニット同士のホモダイマーで(図1),FSH分泌促進作用を有することが知られている.

 インヒビンは,女性では卵巣の顆粒膜細胞,黄体細胞,胎盤で産生されており1),男性では精巣のSertoli細胞で産生されている2).アクチビンは初め卵胞液中から発見され,その産生部位は顆粒膜細胞と考えられている.男性では,精巣のLeydig細胞で産生されることが報告されている4)

8)ヒト胎盤ラクトーゲン

望月 眞人

pp.185-187

生合成・分泌・機能

 ヒト胎盤ラクトーゲン(human placental lactogen;hPL)は糖質を含まない分子量22,000の単純蛋白ホルモンで,191個のアミノ酸残基の単一鎖から成り,2個のS-S結合を持つ.191個のアミノ酸のうち162個,つまり85%がヒト成長ホルモン(hGH)のそれと同じであるが,α-ヘリックスは少ない.2個のS-S結合のうち1つを切断するとプロラクチン(PRL)様活性は消失し,2つとも切断するとPRL様とGH様両活性が失活する.N末端切断で脂質分解作用が消失するが,免疫活性は維持される.トリプシン処理ではPRL様活性が低下するが,GH様活性は変化しない.つまりhPLの持つGH様活性部分とPRL様活性部分はそれぞれ別個のフラグメントに存在するようであるが,その生物作用や分子構造の類似性から,これら三者のペプチドホルモンはいわゆるスーパーファミリーを構成する.

各論 9.膵ホルモン系

1)インスリン

橋本 尚武 , 牧野 英一

pp.188-191

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 インスリン(insulin)は21個と30個のアミノ酸から成るA鎖とB鎖がA7―B7, A20―B19の2か所のシステイン間にS-S結合した分子量約5,700のペプチドホルモンである.A鎖内には別にA6―A11間にもう1つのS-S結合が存在する.その生合成は膵ランゲルハンス島細胞内で行われるが,その過程は他の分泌蛋白質と同様DNAの情報からmRNAに伝えられ,前駆体から蛋白分解のプロセッシングを受けて合成される(図1).

 ヒトインスリン遺伝子は第11染色体短腕上にあり,約1430塩基対で3つのエクソン,2つのイントロンから成る.インスリンのmRNAは粗面小胞体で翻訳され110個のアミノ酸から成る分子量約11,500のプレプロインスリンが合成され,すぐにN末端の23個のプレペプチドであるアミノ酸がとれプロインスリンとなる(図2).

2)グルカゴン

川井 紘一

pp.192-194

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 膵島の細胞から分泌され,肝臓からのブドウ糖放出を刺激するグルカゴン(glucagon)は29アミノ酸残基より成るポリペプチドである(分子量3,485).歴史的には血中にグルカゴンのRIAに交差する消化管由来の物質があることがわかり,前者を膵グルカゴン,後者を腸管グルカゴンと呼んだ.その後グルカゴン遺伝子が解明され,グルカゴンの生合成が膵α細胞と腸管L細胞では異なることがわかった1)(図1).

 膵α細胞ではプログルカゴンの33-61部分がグルカゴンとして生成されるに対し,L細胞では1-69として60~80%,1-33と33-69として20~40%生成される.1-69はグリセンチン,33-69はオキシントモジュリンと呼ばれ,腸管グルカゴンの主要な構成成分である.少量だが33-53も生成される〔グルカゴン(1-21)〕.図1のごとくプログルカゴンはC端側にグルカゴンと一次構造が類似した2つのペプチドを含んでおり,各々グルカゴン様ペプチド(GLP)-1,-2と呼ばれる.L細胞からはGLP-1と-2は分離して分泌されるのに対し,α細胞からは主に両者が分離されないままで分泌される.図1には各々の推定産生量が%で表示されている.

各論 10.消化管ホルモン系

1) GRP, GIP,ガストリン

中田 裕久 , 千葉 勉

pp.195-197

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 gastrin releasing peptide (GRP),gastric inhibi-tory polypeptide (GIP)およびガストリンは,いずれもペプチドホルモンであり,シグナルペプチドを含むプレプロGRP,プレプロGIPおよびプレプロガストリンとしてそれぞれの遺伝子のmRNAより細胞質で合成され粗面小胞体に入る.GRPではalternativesplicingによって3種のmRNAが存在し,C末端の構造が少し異なる3種のプレプロGRPが合成される.粗面小胞体においてシグナルエンドペプチダーゼによりシグナルペプチドが切断され,プロGRP,プロGIPおよびプロガストリンとなる.ゴルジ装置を経て分泌顆粒内に移行する間にC末端のアミド化を含むさまざまなプロセッシングを受け活性型のペプチドホルモンが完成する.

 活性型GRPは27または10アミノ酸,活性型GIPは42アミノ酸から構成される.ガストリンでは71アミノ酸から成るガストリン71(G71)をはじめとして,G52, G34(big gastrin),G17(little gastrin)が生成する.G17は血中へ分泌された後G14(mini gas-trin)およびG6に転換されると考えられている.血中ではG34が約2/3でG17が約1/3であるが,生理活性はGl7が最大である.

2)セクレチン

池田 みどり , 岩部 千佳 , 白鳥 敬子

pp.198-200

 セクレチン(secretin)は,1902年あらゆるホルモンに先がけてBaylissとStarlingにより発見,命名された膵外分泌刺激作用を有する消化管ホルモンである.しかし,ペプチドの抽出,純化が困難であったため,アミノ酸構造が決定されたのは発見から63年後のことである.

3) CCK, PP

岩部 千佳 , 池田 みどり , 竹内 正

pp.201-203

CCK

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 コレシストキニン(cholecystokinin; CCK)はペプチドホルモンの生合成の一般的な過程と同様に,前駆体であるプレプロCCKとプロCCKを経て生成される1,2)が,その詳しい合成過程は不明である.実際標的細胞に作用する生理活性CCKは数種あると考えられ,分泌組織や動物が違えば生理活性CCKの種類も異なると考えられている.

 CCKは33個のアミノ酸残基から成るポリペプチド(CCK-33)としてブタ腸管から単離されたが,その後分子型の異なるCCKが同定され,CCK-33のほか,83,58,39,25,22,18,12,8,4などが知られている.

4) VIP

岸本 真也

pp.204-206

●生合成・分泌・機能

 1.生合成

 VIP (vasoactive intestinal peptide)はブタの小腸からSaid, Mutt1)によって単離された28個のアミノ酸配列を持つ神経ペプチドで,この化学構造がグルカゴン,セクレチンに類似することからセクレチン族に属する.VIPにはほとんど同じ化学構造を持つPHI, PHMとがある.

 ヒトのVIPは170個のアミノ酸配列から成る前駆体からプロセッシングされるものである.この前駆体は,ヒトの神経芽細胞腫の培養細胞HB-OK-1にdibutyryl cAMPを添加するとVIPの生合成と分泌が刺激されることから,VIPのmRNAの解析によりVIPの全化学構造が明らかにされた.この前駆体の中には27個のアミノ酸配列のPHM, PHI (peptidehistidine methionine or isoleucine)を含んでいる(図1)2).これらの活性ペプチドは,いずれもこの前駆体の塩基性ペプチド(Lys-Arg)が蛋白分解プロセッシングによって開裂して生成される(posttranslationalprocessing).また,VIPとPHM(I)は組織によって各々のモル比が異なる事実から,この共通の前駆体から別個にプロセッシングされる.

5)モチリン

坂井 貴文 , 伊藤 漸

pp.207-209

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 モチリン(motilin)はBrownらによりブタ十二指腸から単離された22残基のペプチドである.その後ヒト,イヌ,ウサギ,ネコでもアミノ酸配列が決定され,ヒトとブタでは完全に一致していることが知られている(図1).ウサギを除くとPhe1―Thr6,Glu9―Gln11,Glu15―Gln22の部位はよく保存されており,ウサギを加えてもN末端および中央部の合計9残基は上記の種において完全に一致している.モチリンの構造活性相関の研究は,①種々のモチリン断片の合成物,および,②モチリンを構成するアミノ酸をN末端から順次D体に置換したアナログを用いて活性を調べることにより行われている.それによると,モチリン受容体との結合部位は,Phe1とTyr7の間に存在し,Phe1,Val2,Ile4およびTyr7の側鎖が受容体との結合に亜要であり,Pro3,Phe5,Thr6が生物活性の安定化に寄与していると考えられている.

 ヒトのモチリン遺伝子は5個のエクソンと4個のイントロンより成り,cDNAのクローニングから決定されたヒトのモチリン前駆体は25残基のシグナルペプチド,22残基のモチリンと68残基のモチリン関連ペプチドから構成されている.

各論 11.成長因子系

1) IGF

高橋 義彦 , 門脇 孝

pp.210-212

生合成・分泌・機能

 insulin-like growth factor (IGF)は以前ソマトメジンと総称されていたもので,現在はinsulin-likegrowth factor-Ⅰ,-Ⅱの2種類として知られている(そのうちIGF-Iはソマトメジン―C,―Aと同一物質である).これらはペプチドホルモンであり,アミノ酸配列はいずれもプロインスリンと約40%の相同性を有し,それぞれに対する特異的な受容体が存在する(IGF-Ⅰ,-Ⅱ受容体).

 IGFは,インスリンの約1/100という低い親和性ながらインスリン受容体とも結合しうるという点でインスリンと類似しているが,明らかに違うのは体液中に特異的な結合蛋白(IGFBP;insulin-like growthfactor binding protein)が存在する点である.すなわち,インスリンが体液中に遊離の形で存在するのに対し,IGFは遊離型と結合型の2つの形で体液中に存在する.その結合蛋白は1~6までのアイソフォームが知られており,血液中に最も多く存在するのは3型である.この結合蛋白の機能的意義はよくわかっていないが,多くのペプチドホルモンの中でIGFは血中濃度が比較的高くかつ安定に保たれ,1回の検体採取によりその平均血中レベルを評価することが可能である.

2) TGF

加藤 淳二 , 瀧本 理修 , 新津 洋司郎

pp.213-215

 TGF(transforming growth factor)は,元来は正常線維芽細胞の形質転換にかかわる因子として定義づけられたが,現在では上皮細胞や間葉系細胞に対して増殖促進あるいは抑制といった細胞増殖制御機能を示す増殖因子群として認識されている.TGFには,上述した細胞に対して主に増殖促進に作用するTGF-αと,増殖抑制や線維化促進など多彩な作用を持つTGF-βがある.TGFは他の多くの増殖因子と同様に,種々の癌細胞で合成・分泌されることが知られ,オートクリンによって自身の増殖を促進したり(主にTGF-α),パラクリンによって周囲の細胞の増殖を制御(主にTGF-β)することにより自己の無限増殖を有利にしていると考えられている.最近,血漿中や尿中に腫瘍細胞由来のTGF-αやTGF-βが測定可能となり,新たな腫瘍マーカーや線維化の指標としての意義が注目されつつある1~3)

3) EGF

伊崎 誠一

pp.216-218

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 上皮成長因子(epidermal growth factor; EGF, S.Cohen,19621)は53個のアミノ酸から成る分子量6,050の一本鎖ポリペプチドである.これはもともとマウスの顎下腺抽出物から発見されたものであるが,これとヒトのEGFはアミノ酸レベルで約70%の相同性を示す(図1).EGFの前駆体(プレプロEGF)は分子量110kDaの細胞膜を貫通する糖蛋白で1,207個のアミノ酸から成る.EGFはこの蛋白の膜貫通ドメインに隣接した一部分にある.

 EGF前駆体をコードするcDNAがヒト腎臓から分離され配列決定された2).24個のエキソンを含む全長約110kbのエキソン構成ならびに蛋白のドメイン構造を図2に示す.EGFは20番目と21番目のエキソン,膜貫通領域は21番目のエキソンにコードされる.プロモーター領域にはTATAおよびCAATボックス様の配列が存在する.

4) FGF

吉田 輝彦

pp.219-221

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 近年,多くの遺伝子がファミリーを形成していることがわかってきたが,FGF (fibroblast growth fac-tor)ファミリーにも少なくとも9つのメンバーが存在することがわかっている(図1,表1).その数は今後さらに増えていく可能性がある.FGFファミリーのプロトタイプは古典的血管新生因子として同定された塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growthfactor; bFGF)と酸性線維芽細胞増殖因子(acidicFGF; aFGF)である.aFGF, bFGF以外は分子生物学的手法を用いて近年クローニングされたものが多く,蛋白質としての生合成・分泌・作用についてはまだ明らかにされていない点が多い.これらの分子の詳細については他の文献に譲る.

 aFGFは等電点(pI)4.0~5.0, bFGFはpI9.0である.FolkmanらはFGFを腫瘍が自ら産生する血管新生因子としてTAF (tumor angiogenic factor)と呼んで精製を進めていたが,血管新生部位に肥満細胞の浸潤が顕著であることに気づいた.肥満細胞の分泌する物質の中からヘパリンがTAFの効果を促進し,かつこれに特徴的に結合することを見いだした.

5) PDGF

松井 利充

pp.222-224

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 ヒト血小板から精製された血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor; PDGF)はA鎖およびB鎖の2種類のポリペプチドから成る分子量約30Kのヘテロダイマーである.A鎖およびB鎖の遺伝子は,それぞれヒト第7染色体pter→q22および第22染色体長腕に位置し,それぞれ7つのエキソンから成る.B鎖の最小プロモーター領域は,TATAbox上流42bpに存在する.5′および3′端に長い非翻訳部位が存在し,転写調節に関与している.翻訳関始コドン上流140bpには,負の制御領域がみられ,この部分の欠損によりB鎖の細胞形質変換能は亢進する.A鎖のプロモーター領域も最近同定され,1.9kb,2.3kb,2.8kbの3種類の転写産物の転写開始点は同じである.B鎖mRNAは4.2kbの1種類のみが検出される.

 A鎖は分子量約16K,B鎖は分子量約14Kのポリペプチドで,AおよびB鎖のアミノ酸配列には約56%の相同性が認められ,A鎖とB鎖の前駆体ペプチドは,等間隔に保存されている8個のシステイン残基によりS-S結合し,前駆体二量体として細胞内で修飾を受け,成熟二量体糖蛋白として分泌される.したがって成熟二量体には,AA, AB, BBの3種類が天然体として存在する.

6) HGF

森實 敏夫

pp.225-227

 肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor; HGF)はラットにおいて肝部分切除後血清中に出現する成熟ラット肝細胞の増殖を促進する因子として1984年に発見された1).その後,ラット血小板から単一の蛋白として精製され2),さらにヒト3,4),ラット5)HGFのcDNAがクローニングされ全一次構造が明らかにされた.HGFは肝細胞に対する最も強力な増殖促進因子である6)とともに,さまざまな細胞に対して多彩な生物学的活性を有する.

各論 12.循環調節液性因子系

1)ナトリウム利尿ペプチドファミリー

菅 真一 , 伊藤 裕 , 田中 一成 , 中尾 一和

pp.228-232

生合成・分泌・機能

 1984年Matsuoらによりatrial natriuretic peptide(ANP)が単離・構造決定されて以来1),血圧・体液量調節に関与する心臓ホルモンおよび神経ペプチドとしてのANPが注目されてきた.1988年には第2のナトリウム利尿ペプチドとしてbrain natriuretic pe-ptide (BNP)が2)さらに1990年には第3のナトリウム利尿ペプチドとしてC-type natriuretic peptide(CNP)が3)いずれもMatsuoらによりブタ脳から単離され,ナトリウム利尿ペプチドは異なる遺伝子に由来するナトリウム利尿ペプチドファミリーを形成することが明らかになった4)

 一方,ナトリウム利尿ペプチド受容体に関する研究も進展し,1988年のクリアランス受容体クローニングに続いて1989年には膜型グアニル酸シクラーゼそのものである2種類の受容体,ANP-A受容体(GC-A)とANP-B受容体(GC-B)がクローニングされた5)

2)エンドセリンファミリー

成瀬 光栄 , 成瀬 清子 , 出村 博

pp.233-236

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 エンドセリン(endothelin; ET)は21個のアミノ酸から成るペプチドホルモンで,分子内に2か所のS-S結合を有する.このS-S結合による環状構造とC末端部分がその生物活性の発現に重要である(図1).ETにはET-1, ET-2, ET-3の3種が存在し,ETファミリーと称する.これらのアミノ酸配列は環状部分で一部異なるが,直鎖部分は同じで,また,動物種差はきわめて少ない.これらETファミリーの遺伝子発現には組織特異性があり,ET-1は血管内皮細胞のほか,脳,腎髄質,肺に,ET-2は腎髄質,小腸,腎皮質に,ET-3は副腎,小腸に多い.ペプチド濃度からの検討結果ではET-1は下垂体,肺,脳,副腎に,ET-3は下垂体,脳に多い.この組織特異性は各ETの生埋的役割の相違を反映していると考えられ,本ペプチドの局所調節因子としての役割を示唆しているが,臨床検査としての観点からは主に血管内皮細胞から分泌され,血中の主要成分となるET-1が重要であるといえる.

 ET-1はその遺伝子から転写,翻訳され212個のアミノ酸から成るプレプロET-1として合成され,次いで20個のシグナルペプチドが切断されてプロET-1となる.次いでLys-Arg, Arg-Argの2か所でプロセッシングされ,38残基のbig ET-1となる.

各論 13.神経ペプチド系

1)ソマトスタチン

若林 一二

pp.237-239

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 ソマトスタチン(somatostatin; SS)は大分子のSS前駆体(プレプロSS)として翻訳され,N端のシグナルペプチドが小胞体(endoplasmic reticulum)で切断されプロSSとなり,ゴルジ装置に移行する.プロSSのC端にある14個のアミノ酸から成るSS-14とSS-14のN端に,さらに14個のアミノ酸が結合したSS-28が酵素によってプロセッシングされる.SS14/SS-28比は組織によって異なる.SS-14とSS-28はSS受容体のサブタイプに対する親和性が違うことなどから,両者は異なった役割を担っていることが推測される.

2) NPY

芝崎 保

pp.240-242

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 NPY (neuropeptide Y)は36個のアミノ酸から成るペプチドで,そのアミノ酸配列はペプチドYYやpancreatic polypeptideと似ており,これらペプチドは同一のグループに属すると考えられる.NPYは中枢神経系や末梢組織に広く分布する.NPYの前駆体の遺伝子には4つのエクソンが存在し,NPYのアミノ酸配列の大部分はエクソン2に由来する.ヒトNPYの前駆体は97個のアミノ酸から成り,それは28個のアミノ酸のシグナルペプチド,36個のNPY,30個のC端側ペプチドに切断される.

 NPYmRNAやNPYは中枢神経系では線条体,大脳皮質,海馬,視床下部,延髄,脊髄などに存在する.末梢組織では副腎髄質のノルアドレナリン含有クロマフィン細胞や,心臓,肺,脾臓,消化管,膀胱,子宮,輸精管などに存在する血管壁の神経線維にノルアドレナリンとNPYが共存する.

3) PACAP

磯部 和正 , 竹越 一博 , 中井 利昭

pp.243-245

 PACAP(pituitary adenylate cyclase-activatingpolypeptide)は,1989年にArimuraらによりヒッジ視床下部から発見されたアミノ酸38個から成る神経ペプチドである1).このペプチドは,強力なアデニレートシクラーゼの活性化作用を持ち,内分泌臓器に対しては種々のホルモン分泌促進作用,血管系に対しては拡張作用を持つことが明らかにされている.構造的に類似しているVIP(vasoactive intestinal polypep-tide)に比較して1,000倍も強力な作用が報告されていて注目を集めている.

4)サブスタンスP,ニューロテンシン

中村 康彦 , 加藤 絋

pp.246-248

 サブスタンスP (substance P; SP)およびニューロテンシン(neurotensin; NT)は,いわゆるbrain-gutpeptidesに属し,その主な生体内局在部位は中枢神経系および消化管である.近年これらペプチドの局所ホルモンとしての生理活性が注目されており,例えば産婦人科の領域においては,ゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin-releasing hormone; GnRH)やプロラクチン(PRL)の分泌に関与しているとの報告1,2)や,卵巣内にも存在するとの報告3~5)がみられる.ここでは,この2種類のペプチドについて,その産生と機能を中心に述べてみたい.

各論 14.カリクレイン―キニン―プロスタグランジン系

1)カリクレイン,キニン

島本 和明 , 野村 直人 , 浦 信行

pp.249-251

生合成・分泌・機能

 1,生合成・分泌

 カリクレイン(kallikrein)は,前駆物質であるプロカリクレインから生成される酵素で,基質キニノゲンに作用して本系の生物活性物質であるキニンを産生する.キニンは破壊酵素であるキニナーゼI,キニナーゼII,そして近年発見されたニュートラルエンドペプチダーゼ24.11(NEP)により不活性化される(図1).

 カリクレインには,酵素学的・生化学的にまったく異なる血漿カリクレインと腺性カリクレインがあり,前者は主に線溶・凝固系に関与し,循環血液中で急速に不活化される.後者は血中以外にも腎,唾液腺,膵などに広く存在し,これら諸臓器機能に関与していると考えられる.また,腺性カリクレインは,α1―プロテアーゼインヒビターにより緩徐に不活化され,このことから,血液中のキニン(kinin)の由来は血管壁などの腺性カリクレインにより生成されたキニンが主体をなすものと考えられる.

2)プロスタグランジン,プロスタサイクリン

尾股 健 , 阿部 圭志

pp.252-254

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 アラキドン酸は,酸素添加反応で始まる一連の酵素反応により,エイコサノイド(eicosanoids)と総称される数多くの化合物に変換される.生成物にはプロスタグランジン(prostaglandin; PG)およびその関連物質であるプロスタイサイクリン(prostacyclin;PGI2),トロンボキサンA2(thromboxane A2; TXA2),ロイコトリエン(leukotriene; LT),エポキシエイコサトリエン酸(epoxyeicosatorienoicacid;EET),ヒドロキシエイコサテトラエン酸(hydroxyeicosatetraenoic acid;HETE)などの生理活性物質がある.これらの生理活性物質は,臓器や組織に特異性のある生理活性を発現し,種々の生理現象や病態にかかわっている.

 これらのエイコサノイドは細胞膜を構成しているリン脂質から,各種の刺激によって遊離されるアラキドン酸を主な基質として生合成される.アラキドン酸はホスホリパーゼA2とC (phospholipase A2とC)の作用を受けて遊離される.遊離されたアラキドン酸はさらにシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase)によって中間体であるPGG2,PGH2を経てPGD2,PGE2, PGF2α,PGI2,TXA2などに代謝される.

3)ロイコトリエン

原田 芳照

pp.255-257

発見の経緯

 感作したモルモットの肺を摘出して灌流し,抗原で刺激するとヒスタミンやブラジキニンなどと比較してモルモット回腸を非常にゆっくり持続的に収縮させる活性物質が遊離される.この物質はアナフィラキシーに際して遊離され,平滑筋をゆっくり収縮させる物質という意味でslow reacting substance of anaphylax-is (SRS-A)と呼ばれた.このような活性の存在は1938年ごろから知られていたが,その化学的実体は長い間不明であった.最初の記載から約40年を経た1979年,Samuelssonらによって構造が決定され,白血球が生成する共役トリエン構造を有する物質という意味でロイコトリエン(leukotriene; LT)と命名された.以来,気管支喘息や即時型過敏症のメディエータ候補として注目され,多くの研究が報告されている.

4)トロンボキサン

小田 淳

pp.258-259

 トロンボキサン(thromboxane)は血小板活性化,さまざまな臓器の平滑筋収縮作用などを持つ強力な生理活性物質である.最新の知見を基にトロンボキサン生合成経路,生理作用機序,臨床的意義について概説する.

各論 15.その他

1) GABA

本橋 伸高

pp.260-261

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid; GABA)は哺乳類の中枢神経系で最も重要な神経伝達物質と考えられている.GABAはグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)によりグルタミン酸から合成され,GABA-アミノ基転移酵素(GABA-T)に引き続きコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素によりコハク酸に分解されクエン酸回路に入る.最近,プトレシンからGABA-アルデヒドを経るGABA合成系が明らかになっており,末梢組織では中心的役割を演じている(図1).

 GABAは初期にはもっぱら中枢神経系内に存在すると考えられていた.しかし,その後の研究により卵管,膵のB細胞,松果体などにも高濃度に存在することが明らかになった.他の末梢組織でのGABA濃度やGAD活性は中枢神経系のせいぜい数%程度にすぎない.

2)セロトニン,5-HIAA

盛政 忠臣

pp.262-264

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 セロトニン〔serotonin,5-ヒドロキシトリプタミン(5-hydroxytryptamine; 5-HT)〕は,血液中のトリプトファンが選択的能動輸送系により細胞内に取り込まれた後,2段階の酵素反応(インドール核5位炭素の水酸化反応(律速酵素であるトリプトファン5-水酸化酵素)と脱炭酸反応(基質特異性が低い芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素)によって生合成される.

 トリプトファンは必須アミノ酸であり,1日の必要摂取量は,約150~200mg程度とされている.体内に摂取されたトリプトファンの大部分(約90%)は蛋白質の材料アミノ酸となり,約8%がキヌレニン代謝経路によりニコチン酸となる.セロトニンへ代謝されるのは,摂取された全トリプトファン量の2%程度とされている.

3)ヒスタミン

福井 裕行 , 今村 育男

pp.266-267

生合成・分泌・機能

 1.生合成と貯蔵

 ヒスタミン(histamine)は唯一の合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)によりヒスチジンからワンステップで合成される.HDCはピリドキサールリン酸を補酵素とする.ヒスタミンはそのほとんどが肥満細胞(マスト細胞)に貯蔵される(肥満細胞性ヒスタミン).肥満細胞のHDC活性は低い.すなわち,ヒスタミン代謝回転は低い.肥満細胞のヒスタミンが遊離され枯渇することによりHDC活性は増加する.それに対して肥満細胞以外のヒスタミンは貯蔵量は低いが,HDC活性は高い.肥満細胞性ヒスタミンに対して非肥満細胞性ヒスタミンと総称する.非肥満細胞性ヒスタミンは胃粘膜ECL細胞(エンテロクロマフィン様細胞),中枢ヒスタミン神経細胞,IL-3(インターロイキン3)および4に反応する骨髄細胞,IL-1に反応する網内系細胞,増殖中の細胞(胎児細胞,癌細胞,組織の修復細胞)などに存在する.

 ヒスタミン生合成の調節について,HDC酵素蛋白を直接的に修飾して活性調節を行う機構の存在は不明である.HDC遺伝子の転写調節によるHDC活性調節機構が存在する.糖質コルチコイド,サイトカイン(IL-1,3および4)は遺伝子の転写を促進しHDC活性を増加させる.

4) cAMP, cGMP

三国 雅彦

pp.268-269

生合成・分泌・機能

 cyclic adenosine monophosphate (cAMP)はアデニル酸シクラーゼによりATPから産生される.このアデニル酸シクラーゼ活性を促進的に調節するGTP結合調節蛋白質(Gs)と抑制的に調節するGiとが細胞膜の各種ホルモン受容体や神経伝達物質受容体と共役し,cAMP産生を調節している.さらに,cAMP産生はGTP結合調節蛋白質に共役するもう1つの細胞内情報伝達系であるイノシトールリン脂質代謝―カルシウムイオン動員系とのクロストークによっても調節されている.cAMPはホスホジエステラーゼにより分解され5′―AMPとなる.

 一方,cyclic guanosine monophosphate (cGMP)は細胞膜や細胞質内に存在するグアニル酸シクラーゼによりGTPから産生される.このグアニル酸シクラーゼは可溶性と膜結合性とに区別されるが,この細胞質内の可溶性グアニル酸シクラーゼの活性化には,カルシウムイオン存在下でアルギニンのグアニジノ基から産生されるNOの関与が知られている.NOは放出され周囲の細胞に作用して,可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化してcGMPを産生する.

5)エリスロポイエチン

遠藤 一靖 , 宍戸 友明 , 阿部 圭志

pp.270-272

 エリスロポイエチン(erythropoietin; EPO)は赤芽球系前駆細胞(CFU-E)に作用し,赤血球の産生を調節する糖蛋白である.EPOは生体内では微量であり,長い間にわたり生体内での機能・動態については不明であった.EPOの純化は1977年,Miyakeらが再生不良性貧血患者の尿から初めて行い,SDS電気泳動法で分子量が36,000でシアル酸を含む多糖類であることを明らかにした.EPO分子中には4残基のシステインが存在してSS結合を形成し,N―グルコシド型が計3本とO―グルコシド型が1本存在する.これらの糖鎖はEPO分子量の約40%である.その後,抗EPO抗体が作製され,この抗体を用いてラジオイムノァッセイ法2,3),エンザイムイムノァッセイ法4)で微量レベルのEPO濃度の測定が可能になっており,臨床における種々病態でのEPO動態が検討されるようになっている.

 一方,Jacobsら,Linらが相次いで,しかも独立してヒトEPO遺伝子のクローニングに成功した.近年,遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)が大量に生産されるようになり,現在では腎不全患者の貧血に対する治療薬として広く臨床で応用されている.

6) CSF

小澤 敬也

pp.273-275

 コロニー刺激因子(colony-stimulating factor; CSF)には,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)が存在し,またインターロイキン3(IL-3)はmulti-CSFと称されることもある.この中で,遊走能,貪食能,殺菌能などの機能を有し,細菌や真菌などの感染から生体を防御するという重要な役割を担っている好中球の産生を調節する中心的な生理活性物質はG-CSFである.そこで本稿ではG-CSFに関して概説する.

7)オステオカルシン

藤枝 憲二

pp.276-278

生合成・分泌・機能

 1.構造と機能

 オステオカルシン(osteocalcin)は,bone Gla pro-tein (BGP)とも言われ,ビタミンK依存性カルシウム結合蛋白質で,骨の非コラーゲン蛋白の10~20%を占める.その構造はγ-カルボキシグルタミン酸残基(グルタミン酸のγ位炭素にもう1つのカルボキシ基が付いたもの:Gla)を2~3個含むアミノ酸49残基から成り,分子量約5,900のペプチドである.通常Gla残基は17位,21位,24位にあり,Ga2+との親和性を有する.しかし,ヒトオステオカルシンでは17位Gla残基は十分にγカルボキシル化されないため,21位,24位がCa2+の結合に関与している.SS結合はCys-23とCys-29にある.ビタミンKおよび1,25-デヒドロキシビタミンDの刺激により骨芽細胞で合成される.オステオカルシンは骨形成に際し,コラーゲンが合成され,ヒドロキシアパタイトの結晶が沈着して,石灰化が生じるが,このヒドロキシアパタイトの上に結合して存在する.最近血小板でも産生されることが見いだされている.

 オステオカルシンの生理的役割についてはあまりよくわかっていない.しかし,骨の代謝回転が亢進すると,血中レベルが上昇することから,骨の代謝回転を反映する指標として注目されている.

8)オステオクラストアクチベーティングファクター

杉本 利嗣 , 千原 和夫

pp.279-281

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 1972年,Hortonらはヒトの末梢血白血球をphyto-hemagglutininなどのレクチンで刺激すると,その培養上清中に強力な骨吸収活性が検出されることを見いだした1).この培養上清中に含まれる物質は破骨細胞を刺激することによって骨吸収を促進することからオステオクラストアクチベーティングファクター(osteoclast-activating factor; OAF,破骨細胞活性化因子)と名付けられた.

 OAFは高Ca血症を呈した多発性骨髄腫や悪性リンパ腫の成因に関与していることが示され,また,当初単一のリンホカインと考えられていたため,その精製が注目されていた.ところがその後の遺伝子工学の目覚ましい進歩により種々のサイトカインが単離,同定され,リコンビナントの純品を用いた検討により,OAFは実は複数の骨吸収促進因子の集合体であることが明らかとなってきた.したがって今日ではOAFは活性化された免疫担当細胞が産生する骨吸収活性を有するリンホカインやモノカインの総称と考えられている.

9)メラトニン

府川 悦士 , 田中 廣壽 , 牧野 勲

pp.282-284

生合成・分泌・機能

 1.生合成

 メラトニン(melatonin)は主に松果体において産生されるホルモンであり,その生合成は外界の光刺激と中枢からの内因的リズムによって調節され,夜間に増加し,昼間に減少する,顕著な概日リズム(サーカディァンリズム)を有している.メラトニンは必須アミノ酸である1-トリプトファンから図1に示す4段階の酵素反応によって生合成される.すなわち,血中の1-トリプトファンが松果体細胞に取り込まれセロトニンに変換されたのちに,N-アセチル転移酵素(arylal-kylamine N-acetyltransferase; NAT)の作用のもとにN-アセチルセロトニンとなり,次いでヒドロキシインドール-O-メチル転移酵素(HIOMT)によってメラトニンが生合成される.

 メラトニンの生合成および分泌量はNAT活性に依存しており,その活性には概日リズムが認められ,夜間のNAT活性は昼間の50~100倍にも達し,光刺激により速やかに低下することが確認されている.鳥類および,それ以下の脊椎動物においては松果体のNAT活性は自律性を有しており,松果体の分離培養後もNAT活性は日内周期の変動を示し,光照射によりこのリズムが抑制されることが報告されている.

トピックス

抗下垂体抗体

小林 功

pp.30

 生体の主要臓器には炎症,腫瘍,変性や自己免疫など多彩な病態が存在する.それでは脳下垂体においても,白己免疫による病変はありうるのだろうか?1962年Goudieらは,橋本病に合併したanteriorhypophysitisと診断した剖検例を発表している.下垂体自己免疫を示唆する一連の研究成果は,ヒト下垂体凍結切片を用い間接蛍光抗体法を用いたBottazzoらを中心して発表され,近年ようやく下垂体を場とする自己免疫の集積の時代に入っている.

 1986年杉浦らにより開発された血中下垂体抗体の測定法は,ラット下垂体細胞を抗原とし,ビオチン抗ヒトIgGとFITC標識アビジン系による間接蛍光抗体法で臓器特異性抗体を検出する1).次いで開発された高感度測定法は動物由来下垂体前葉細胞(ラットGH3細胞,マウスAtT-20細胞)膜抗体を検出する2).これらの方法を用いて,筆者らの報告3)を含め,インスリン依存型糖尿病,ACTH単独欠損症,バセドウ病,橋本病,empty sella症候群などの病態で,比較的高率に,下垂体抗体が検出されることが明らかとなった.中枢性尿崩症の約3割にarginine-vaso-pressin (AVP)分泌細胞に反応する血中自己抗体を有するという報告もある.

ビスホスホネイト

中塚 喜義 , 森井 浩世

pp.62

 ビスホスホネイト(bisphosphonate; BP.以前はdi-phosphonateと呼ばれていた)は,初め水の軟化薬と理解されていたが後にさまざまな骨疾患に使用されるべく開発されるようになったP-C―P結合を特徴とするpyrophosphateのアナログである.炭素と結合する水素を置換することで生化学的,生物学的,治療的に全く異なった特徴を持つさまざまなBPが合成され,現在,約12種類のBPが検討され,そのうち9種類は既に臨床応用されている.ヨーロッパではeti-dronate, alendronate, clodronate, pamidronateの4種類が骨疾患治療薬として認可されている.

 BPは骨形成の部位,破骨細胞のある骨吸収の部位の両方での骨ミネラルに強い親和性を持つ.この特性はこの物質を99mTcに結合させることで骨シンチグラムとして核医学に利用されてきた.BPはカルシウム・リンの結晶の形成と集合を抑制し,石灰化を阻害するが,この作用はetidronateの場合,異所性骨化や石灰化の予防に応用されている.

リコンビナントTSH

宮井 潔

pp.65

 従来からヒト甲状腺刺激ホルモン(human thyroidstimulating hormone; hTSH)は,ヒト下垂体を原料として精製されていた(pit-hTSH).TSHの遺伝子構造は,1970年Fiddesらによりα鎖が,また,われわれのグループにより1985年にβ鎖が明らかにされ,次いで1987年にはα鎖とβ鎖のcDNAを組み込んだプラスミドをCHO細胞系にトランスフェクトすることにより,遺伝子組換えによるリコンビナントhTSH (rec-hTSH)を産生させることに成功した.その後Genzyme社がこれを商品化している.

 rec-hTSHの性質をpit-hTSHと比較した場合,大体は一致しているが,詳細に調べると次のようになる.すなわち糖鎖をみるとrec-hTSHのほうがシアル酸が多く,N―アセチルガラクトサミンを欠く.免疫学的性質は,抗原決定基(エピトープ)は一部に差異があり,外国の報告では活性が低いとしているが,わが国で通常用いられる市販のイムノアッセイキットで調べたわれわれの検討ではほぼ同一活性を示した.レセプターアッセイではrec-hTSHの結合能は低いという.生物学的活性は,外国の成績ではrec-hTSHのほうが低いというが,われわれの検討ではほぼ一致した.

糖輸送担体

多田 薫子 , 奥田 諭吉

pp.87

 ブドウ糖は生体のすべてのエネルギー源に広く利用されているが,この取り込み過程は細胞膜に存在する糖輸送担体(glucose transporters)と呼ばれる蛋白で介在されることが知られている.この担体は組織によってナトリウム糖輸送担体と促通拡散型輸送担体の2種類に分類することができる.このうち後者は糖の濃度勾配に依存し促通拡散を行う輸送担体であるが,近年この糖輸送担体が,その膜蛋白の遺伝子のクローニングの結果,構造上きわめて類似した5種類のサブタイプに分類できることが判明し,発見された順にそれぞれGLUT1, GLUT2, GLUT3, GLUT4, GLUT5と命名された.これらはいずれも分子量は約5万で,構成するアミノ酸は異なるものの,そのアミノ酸鎖は細胞膜を12回貫通し,細胞中央に大きなループを持つことが明らかにされた(図1).以下,特性なども解明されている主なGLUTについて述べる.

 1.GLUT 1 492のアミノ酸から成り,赤血球・大脳などで高レベルに発現を認める.ブドウ糖に対するKmは2~30 mmol/1と低値であり,糖取り込みは生理的なブドウ糖濃度で最高に達すると考えられ,エネルギーをブドウ糖に依存する脳などの臓器の糖利用に適している.

ハイブリッドステロイド

千葉 仁志 , 小林 邦彦

pp.90

 ハイブリッドステロイドとは,糖質コルチコイドの特徴である17α―水酸基とミネラルコルチコイドの特徴の18―水酸基または18―オキソ基を併せ持つコルチコイドの総称であるが,一般には18―ヒドロキシコルチゾルと18―オキソコルチゾルの二者を指す.前者は遊離型のままで,後者は主にテトラヒドロ体として尿中に排泄されるが,いずれも正常者の尿中には少ない(18―ヒドロキシ体:114±61nmol/日(mean±SD),テトラヒドロ18―オキソ体:11.9±4.7nmo1/日)1)

 ハイブリッドステロイドが尿中に増加する疾患は,副腎皮質腺腫による原発性アルドステロン症(18―ヒドロキシ体:159~7,290nmol/日1),836~7,460nmol/日2),テトラヒドロ18―オキソ体:45~3,160nmol/日1)と常染色体優性遺伝性疾患である糖質コルチコイド反応性アルドステロン症(18―ヒドロキシ体:297~5,168nmol/日;テトラヒドロ18―オキソ体:120~888nmol/日3))の2つである.特発性アルドステロン症や続発性アルドステロン症ではハイブリッドステロイドは増加しないので,スクリーニング検査として意義が大きい.

エストロゲン,プロゲステロンと骨代謝

福本 誠二

pp.98

 近年,人口の老齢化に伴う患者数の増加から,骨粗鬆症の発症機序や治療法の開発に関心が集まっている.骨粗鬆症は種々の要因によって惹起される疾患群の総称であるが,その中でも発症機序の解明の進んでいるのが閉経後骨粗鬆症である.閉経後にはエストロゲンの欠乏により骨代謝が亢進し,骨吸収および骨形成の促進が認められる.正常の骨代謝においては骨吸収と骨形成とのバランスが保たれているが,閉経後には骨吸収の増加が骨形成のそれに比し著しいため,骨量は減少する.

 エストロゲン欠乏による骨吸収亢進の機序としては,interleukin-6(IL-6)やinterleukin-1(IL-1), tumor necrosis factor (TNF),granulocyte macro-phage-colony stimulating factor (GM-CSF)などのサイトカインの関与が注目されている.骨芽細胞や骨髄間質細胞,さらには単球などにより産生されるこれらのサイトカインは,破骨細胞形成,および破骨細胞による骨吸収を促進する.エストロゲンはin vitroおよびin vivoの成績から,これらのサイトカインの産生を抑制することが明らかにされている.したがって閉経後には,エストロゲンの欠乏により,これらのサイトカインが増加し,骨吸収の促進がもたらされるものと考えられる.

甲状腺ホルモン受容体異常症

中村 浩淑

pp.145

 細胞内に存在する甲状腺ホルモン(T3)レセプター(TR)の異常により,ホルモン作用が障害された病態をいう.最近甲状腺ホルモン不応症患者から,TR遺伝子異常が同定され,本症の少なくとも大部分がレセプター病であることが確立した.病型として全身型と下垂体型があり,前者はT3に対し下垂体も含めた全身の組織が,また,後者は下垂体のみが選択的に障害されていると説明されているが,実際にはこの区分は必ずしも明確ではない.現在両者は本質的に同一疾患で,病因も類似のTR異常によることが明らかにされている.病態として,甲状腺ホルモンレベルが高いのに下垂体からのTSH分泌が抑制されていない不適切TSH分泌状態(SITSH)が重要である.全身型では多くの場合,代謝状態は正常であるが,頻脈や多動のみられることがある.下垂体型では,心悸亢進,頻脈,手指振戦,発汗,体重減少が前景に出る.重要な点は,組織間で不応性に差がみられることで,注意を要する.診断には基礎値だけでなく,薬理量のT3を段階的に漸増投与したときの組織の反応性を調べることが大切である.全身型不応症は世界で400例ほどの報告があり,多くが家族性発症である.遺伝形式は常染色体優性遺伝と考えられる.

 これまでに全身型不応症数十症例からTR遺伝子異常が同定されている.

バセドウ病自己免疫抗体のエピトープ解析

森 徹

pp.152

 バセドウ病は甲状腺刺激性TSH受容体抗体(TSH―RSAb)の産生を主因とする自己免疫疾患である.1989年にTSH-Rの構造が解明されて以来,TSH-RSAbやTSHの受容体上の作用部位の検索が精力的に進められている.

 TSH-Rは,764個のアミノ酸から成るG蛋白共役型の受容体で,7回膜貫通部位を持つが,大きな特徴としてLH-RやFSH-Rと同様に大きな細胞外ドメイン(アミノ酸418個)を持ち,リガンドや抗体はこの細胞外ドメインにまず作用すると思われる.さらに,そのN端近くに8個,C端寄りに50個のアミノ酸から成るTSH-R特異構造部位(LH-RやFSH-Rにない)があり,その意義が注目されている.

サイログロブリン遺伝子とその異常

家入 蒼生夫

pp.177

 サイログロブリン(Tg)は,甲状腺濾胞細胞で合成される分子量66万の巨大な蛋白で,コロイド内に蓄えられている.この蛋白の立体構造を利用して甲状腺ホルモン(T4, T3)が合成される.Tgの量的・質的異常は,種々な程度の甲状腺機能低下症(粘液水腫)の原因となる.

 Tg遺伝子のcDNAの配列は,ウシ(Mercken, eta1:Nature 316:647,1985),ヒト(Malthiery, etal:Eur J Biochem165:491,1987)と相次いで明らかとなたが,イントロンを含めた全貌は,まだすべてが明らかとなったわけではない.ヒトでは第8染色体上のバンドq24に位置し,癌関連遺伝子c-mycの遠位部に存在する.これら2つの遺伝子の位置的関係は,ウシ(第14染色体),ラット(第7染色体)などでも保たれている.ヒトTg-mRNAは8,448個のヌクレオチドからできているが,5′端と3′とで構造上違いがあり,進化論的に異なる起源を持つものと考えられている.5′端の3/4を占める部分は,システインをコードする部分が多く,Tg分子の立体構造を決めており,3′端1/4は,アセチルコリンエステラーゼ遺伝子との類似性が高く,おそらく共通の起源を持つ遺伝子と考えられている.

レニン阻害薬

日和田 邦男

pp.187

 レニンはアンジオテンシノーゲンのN末端から数えて10番と11番のロイシルーバリン(ヒト)の結合を加水分解するエンドペプチダーゼで,基質特異性の非常に高い酵素である.レニンはレニン―アンギオテンシン系(以下R-A系)の出発酵素で,本系が確立する過程からすでにレニンを抑制しようとする試みはあった.しかし,いまだに理想的なレニン阻害薬は合成されていない.今回の第15回国際高血圧学会(1994年3月,オーストラリア)においても,R-A系の口頭発表20演題中レニン阻害薬に関する演題は2題,R-A系の遮断に関するポスター70演題中レニン阻害薬は1題もなかった.朝食ワークショップで"R-A系の抑制に関する最近の進歩"と題してレニン阻害薬が取り上げられたが,今までの総括であり,新しい化合物については触れられなかった.

 現在R-A系を遮断する手段として,レニン阻害薬のほかに,ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体アンタゴニストがある.ACE阻害薬はアンジオテンシンIからIIへの変換を阻害してR-A系の遮断を意図するものであるが,ACEがブラジキニンの不活性化酵素でもあることから,特異的なR-A系の遮断薬とは言えない.一方,アンジオテンシンIIアンタゴニストはR-A系のシャントとも言える組織chymaseにより産生されるアンジオテンシンIIをも遮断できる.

GTP結合蛋白の変異と内分泌腫瘍

野村 文夫 , 竹越 一博

pp.194

 情報伝達物質やホルモンの情報変換体として三量体GTP結合蛋白質(以下G蛋白質)は本誌でも述べられているように,そのαサブユニットの違いにより多くの種類があるが,成長ホルモン(GH)の分泌調節にも2つの相反する作用を持つG蛋白質が関与している.すなわち視床下部ホルモンであるGHRHによる分泌促進作用は促進性G蛋白質(Gs)を介し,ソマトスタチンによる抑制作用は抑制性G蛋白質(Gi)を介する.最近,GH分泌下垂体腺腫でGsのαサブユニット(Gsα)の変異が高率にみられることが報告され一種のoncogene (gsp oncogene)として注目されている.

 G蛋白質の機能の修飾として最もよく知られているのはコレラ毒素によるGsαのADP―リボシル化であり,その結果,GsαのGTPase活性が阻害されてアデニレートシクラーゼが刺激され続け細胞内サイクリックAMP (cAMP)濃度が著増し,コレラ特有の下痢症状が引き起こされると考えられている.このような細胞内cAMP濃度の著明な上昇は,Gsαの点変異によっても生じる.

イオン化カルシウム測定のJSCC勧告法

桑 克彦

pp.209

 血液中のイオン化カルシウム(i-Ca)濃度の測定は,イオン電極(ISE)法によって容易に測定できるようになった.しかしISE法は試料マトリックスの影響を受け,測定装置ごとにイオン電極の特性などから測定値の互換性が得られない.そこでi-Ca濃度測定の技術的な問題の解決を図り,かつ日常検査法として一般化させるためにJSCC (日本臨床化学会)血液ガス・電解質専門委員会は,関連機関と共同して基礎的検討を行い,1993年に勧告法を提示した.

内分泌腺腫瘍の遺伝子異常

吉本 勝彦

pp.221

 内分泌腺には機能性あるいは非機能性の腫瘍性病変が,遺伝性あるいは非遺伝性に発生する.

ホルモン遺伝子の発現調節

中山 耕之介 , 松本 俊夫

pp.236

 ホルモン合成の調節は,ホルモン作用の調節系において重要な位置を占める.近年,各種ホルモンの遺伝子構造の解明に伴い,その組織特異的な発現や,種々の因子による転写調節系の解明が急速に進められている.本稿では血清カルシウム(Ca)濃度の生理的調節系の中心を占める副甲状腺ホルモン(PTH)と,主に悪性腫瘍で過剰発現し,高Ca血症の主要な惹起因子であるPTH関連蛋白(PTHrP)を例にとり,その遺伝子発現の調節機構に関する最近の成績について述べる.

 PTHの合成は,血中のCaと1,25水酸化ビタミンD(1,25D)による調節を受けている.このCaと1,25DによるPTH合成の調節は,PTH遺伝子の転写領域上流に存在する各々の反応領域への転写調節因子の結合を介することが明らかにされた.細胞外液Caに反応する領域(nCaRE)は,約3,500と2,400bp上流との2か所に存在する.このうちの下流側調節領域はパリンドローム構造をとりバソプレシンやANPなど浸透圧により発現が調節されるホルモン遺伝子上流にも共通して認められることが明らかとなった.現在,nCaREに結合する転写調節因子(nCaREB)の解明が進められているが,複数の転写因子が関与している可能性がある.

糖尿病の遺伝子治療

川上 康

pp.264

 体細胞遺伝子治療法は,生殖細胞以外の細胞に遺伝子を入れる方法で,現在,癌,AIDSなどの予後不良の疾患を対象としている.しかし,安全性が確立された際,ホルモン欠乏性疾患も,体細胞遺伝子治療のよい適応となる.ホルモン欠乏疾患の遺伝子治療では,容易に採取しうる細胞(例えば皮膚の細胞,血液の細胞)に欠乏ホルモンの遺伝子を入れて戻すことで,本来のホルモン産生細胞の肩代わりをさせることを目的としている.

 現在の治療は,血中ホルモン濃度を正常域に補正する補充療法により行われているが,経口投与が難しいため,連日注射投与を必要とする.生体では,血中ホルモン濃度は一定でなく,厳格に調整されている.このため,遺伝子治療によりホルモン補充療法を行う際,ホルモン産生の調節は重要な課題となる.われわれは,糖尿病のほかに,エリスロポエチン,成長ホルモンの遺伝子治療モデルの開発を試みている.

トランスジェニックマウスとレニン―アンギオテンシン系

杉山 文博 , 堀口 尚 , 深水 昭吉

pp.272

 生体内において血圧にかかわる調節系は幾つか知られている.その中の1つにレニン―アンギオテンシン(RA)系がある.酵素レニン(RN)は,基質であるアンギオテンシノーゲン(AG)をアンギオテンシンI (AI)に変換させる.また,AIはアンギオテンシン変換酵素(ACE)により,さらにアンギオテンシンII (AII)へと変換される.AIIは生理活性物質として血管収縮など昇圧因子として働くほか,動脈硬化1)や心肥大2)の発症機構においても深くかかわっている可能性が示唆されている.したがって,ヒトのRA系遺伝子をマウスに導入し,遺伝的素因の明らかな高血圧動物の開発はヒトの高血圧の病態生理や高血圧と他の疾患との関連を解析可能な有用なモデル動物を提供することとなる.

 そこでわれわれは,ヒトRN遺伝子導入マウス3)とヒトAG遺伝子導入マウス系統4)を発生させた後,この両系統の交配により両外来遺伝子を保有する"つくば高血圧マウス"を作成した5).このマウスの体内においては,ヒトRNとヒトAGの特異的反応によりAIが正常なマウスの4倍産生されていた.また,このAIはマウス内在のACEにより過剰なAIIの産生を誘発することとなった.結果,"つくば高血圧マウス"は正常のマウスより20~30mmHg有意に高い血圧上昇を示した.また,このマウスへのACE阻害剤,AII拮抗薬,またヒトRN特異阻害剤投与は血圧上昇を抑制した.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

62巻12号(2018年12月発行)

今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら