文献詳細
文献概要
トピックス
PNHとGPIアンカー型蛋白
著者: 植田悦子1
所属機関: 1大阪大学医学部血液・腫瘍内科
ページ範囲:P.604 - P.605
文献購入ページに移動 補体は異物排除の第一線で働いているが,補体そのものには自己,非自己の認識能力がないので,血中で補体に接している血球は常に自己補体の攻撃にさらされていることになる.そこで,血球は補体の攻撃から自己を守るために細胞膜上にいくつかの補体抑制因子を持つ.この補体抑制因子の一部を欠くために補体が活性化されるような状況下で補体による赤血球の破壊,すなわち血管内での溶血が起こる疾患が発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria; PNH)である.約1/4の症例でその名のとおり,早朝覚醒時に血色素尿のエピソードがみられる.このPNHの異常は赤血球のみでなく,広く血球系全般に及ぶ.
PNH血球では,補体抑制因子だけでなく,赤血球アセチルコリンエステラーゼ,好中球アルカリホスファターゼ(NAP)を含む多種類の蛋白が欠損する.ところで,これら多種類の欠損蛋白はいずれも,ペプチドの疎水性部分が細胞膜脂質二重層に直接入ることで膜に結合しているのでなく,ペプチドにイノシトールを含む糖脂質が結合し,その脂肪酸部分が細胞膜に挿入されることで細胞膜に結合している蛋白(GPIアンカー型蛋白,図1)に属していることから,これらの蛋白に共通する構造であるGPIアンカー部分の生合成異常がPNHの異常の本質であると考えられるようになった.
PNH血球では,補体抑制因子だけでなく,赤血球アセチルコリンエステラーゼ,好中球アルカリホスファターゼ(NAP)を含む多種類の蛋白が欠損する.ところで,これら多種類の欠損蛋白はいずれも,ペプチドの疎水性部分が細胞膜脂質二重層に直接入ることで膜に結合しているのでなく,ペプチドにイノシトールを含む糖脂質が結合し,その脂肪酸部分が細胞膜に挿入されることで細胞膜に結合している蛋白(GPIアンカー型蛋白,図1)に属していることから,これらの蛋白に共通する構造であるGPIアンカー部分の生合成異常がPNHの異常の本質であると考えられるようになった.
掲載誌情報