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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査38巻8号

1994年08月発行

雑誌目次

今月の主題 可溶性膜糖蛋白

総論

可溶性膜糖蛋白

半田 誠

pp.873-879

 細胞膜糖蛋白(mGP)は,接着因子あるいはサイトカインなどの液性因子の受容体として重要な役割を負っている.一方血液などの体液中には,その可溶型(sGP)が存在しており,これらは蛋白分解酵素などで水解され細胞表面から遊離したmGP由来のもの,あるいはmGP膜貫通ドメインを含むエクソンを選択的スプライシングで欠いたmRNAより直接合成されたもの,などがある.sGPは,in vivoにおけるmGPを介したイベントを調節する機構に関与し,その鋭敏なin vivoマーカーとして臨床検査に用いられつつある.〔臨床検査38:873-879,1994〕

解説

CD 4,CD 8

澤田 滋正 , 武井 正美 , 松川 吉博 , 康 浩一

pp.881-884

 免疫機能上重要な役割を担っているT細胞上のCD 4,CD 8分子の可溶性分子が血清中に存在することが明らかにされた.本稿ではこれらの膜型分そを説明し,臨床上重要視されているリウマチ疾患患者の血清中の測定結果を紹介する.さらにはウイルス感染症患者の結果を紹介し,リウマチ疾患におけるCD 4,CD 8分子の病因的意義について述べる.〔臨床検査38:881-884,1994〕

FcεRll/CD 23

吉川 勉 , 熊谷 俊一 , 淀井 淳司

pp.885-889

 FcεRll/CD 23はIgEに加えて,補体レセプターであり,Epstein-Barr virus感染のレセプターでもある補体レセプター2(CR 2/CD 21)と結合することが最近明らかになり,IgEを介するアレルギー反応だけでなく,補体系を介する炎症反応への関与も示唆される.また,血清中の可溶型CD 23レベルは,アレルギー反応,ウイルス感染さらに炎症といった多種多様な疾患状態で変動することから,本分子は免疫反応の活性化にかなり密接に関与していると思われる.〔臨床検査38:885-889,1994〕

IL-2受容体

戸叶 嘉明

pp.891-896

 可溶性IL-2受容体(sIL-2 R)は活性化あるいは腫瘍化したT細胞の細胞表面のIL-2受容体が培養上清あるいは血中に出現したものである.それゆえ,臨床的には血液悪性細胞(特にT細胞)や活性化T細胞のマーカーとして利用されている.血液悪性腫瘍ではATLなどのT細胞系悪性腫瘍のみならず,B-CLLなどのB細胞を悪性腫瘍や悪性リンパ腫でもsIL-2受容体の増加が報告されている.また,活性化T細胞の出現する自己免疫疾患では全身性エリテマトーデス,慢性関節リウマチなどの膠原病やインスリン依存性糖尿病(IDDM)などの臓器特異的自己免疫疾患でsIL-2受容体の増加が報告されている.さらに,移植後や感染症でもsIL-2受容体の増加が認められている.このように,sIL-2受容体は血液悪性腫瘍,自己免疫疾患を中心に,さまざまな疾患の新たな活動性のマーカーとして利用されつつある.〔臨床検査38:891-896,1994〕

IL-6受容体

石橋 敏幸

pp.897-902

 IL-6受容体・シグナル伝達系は,IL-6の生物学的多様性と他のサイトカインとの重複性を理解するのに基本的な事項である.IL-6受容体システムはIL-6結合性受容体分子(α鎖)とシグナル伝達受容体分子(gp130,β鎖)から成り立ち,IL-11,LIF,OSM,CNTF受容体システムにおけるgp130の共有も明らかになってきた.本稿ではさらに可溶性IL-6受容体についても最近の知見を紹介したい.〔臨床検査38:897-902,1994〕

c-kit蛋白

河北 誠

pp.903-909

 癌原遺伝子c-kitの産物は膜貫通型チロシンキナーゼ型受容体であるが,ヒト白血病細胞株培養上清中には,膜貫通部分を欠く可溶性c-kit蛋白が存在することが判明した.そこで抗ヒトc-kit抗体によるELISA法を開発し,健常者および各種造血障害患者血清中の可溶性c-kit分子の濃度を測定した.可溶性c-kitは健常者血清中にも存在し,白血病などの各種造血障害で変動することが確認された.今後症例数を重ねれば,造血障害の診断に有用な指標になると思われる.〔臨床検査38:903-909,1994〕

ICAM-1, VCAM

本谷 聡 , 辻崎 正幸 , 今井 浩三

pp.911-915

 ICAM-1はリンパ球上のLFA-1と接着し免疫反応を引き起こす分子である.と同時に多くの悪性疾患,炎症性疾患の組織にも過剰発現が認められる.

 血清中に存在する可溶性ICAM-1の測定成績では,血管炎や肺病変を合併した膠原病や癌患者で高値を示す例が多く,特に転移や他臓器浸潤を伴う癌患者で,非常に高い値を示す.〔臨床検査38:911-915,1994〕

E―セレクチン,L―セレクチン

若林 良之 , 室田 誠逸

pp.916-920

 セレクチンは白血球の炎症部位への浸潤,癌の転移などに重要な役割を果たしていると考えられている.これらセレクチンの構造,機能ならびに生体内での役割について解説する.〔臨床検査38:916-920,1994〕

P―セレクチン

石綿 紀久 , 半田 誠

pp.921-924

 P―セレクチンは血小板および血管内皮細胞に存在する膜糖蛋白で,それら細胞と白血球との接着に関与している.最近,正常人血漿中にP―セレクチンの可溶型が存在し,少なくともその一部はmRNAの選択的スプライシングによる産物であることが明らかとなった.さらに,血栓性血小板減少性紫斑病,溶血性尿毒症性症候群,成人呼吸窮迫症候群などの微小循環障害性の疾患で異常高値を示すことが報告され,その生理的,臨床的役割が注目されている.〔臨床検査38:921-924,1994〕

tissue factor

中村 伸 , 神窪 勇一

pp.925-932

 tissue factor(組織因子,TF)はサイトカイン受容体スーパーグループの一員であるが,凝固因子・Ⅶ/Ⅶaの受容体として血液凝固反応の実質的な開始機能を担っている.他の膜蛋白質や受容体と同様,TFも血中に"遊離"型が存在し種々の凝血病態との関連で注目されている.本稿ではTFの機能ならびに分子性状を概説するとともに,血中"遊離"TFの可溶性あるいは膜結合性を同定するための新規の高感度分別測定法を紹介する.なお,TFの構造,機能,発現特性および生理的意義の詳細については関連の文献1~5)を参照いただきたい.〔臨床検査38:925-932,1994〕

話題

トロンボモジュリンによるDICの治療

小山 高敏 , 青木 延雄

pp.933-935

 トロンボモジュリン(TM)は,血管内皮細胞上に存在する高親和性のトロンビン受容体で,プロテインCの活性化を促進する補酵素蛋白として発見された.トロンボモジュリンは,いわばトロンビンを凝固因子から抗凝固因子へ変える糖蛋白で,その活性抑制が血栓症発症の要因になるとして注目されている.また,トロンビンが血管内で生じる病態,例えば播種性血管内凝固症候群(DIC)や血栓症にトロンボモジュリン投与が臨床的に効果を示すことが考えられ,ヒトトロンボモジュリンの細胞外ドメインを表出する組換え型トロンボモジュリン(rTM)や尿中から分離した可溶性トロンボモジュリンが,新しい抗凝固薬として臨床治験の対象になっている.

細胞接着分子と癌転移および炎症の抑制

神奈木 玲児

pp.937-941

1.セレクチンファミリーの細胞接着分子

 最近,セレクチンファミリーに属する細胞接着分子が注目を集めている.セレクチンファミリーの細胞接着分子はいずれも,相手側の細胞の糖鎖に結合することによって細胞接着を引き起こす.このファミリーには,E-セレクチン,P-セレクチン,L-セレクチンの3種類の分子が属する.

 E-セレクチンは別名をELAM-1(endothelial leukocyte adhesion molecule-1),CD 62 Eなどとも言い,血管内皮細胞がIL-1β,TNFαなどの炎症性サイトカインで刺激された際に合成され,4~6時間後に細胞表面に一過性に発現される細胞接着蛋白質である.炎症の際に局所周辺の血管に発現されリガンド糖鎖が陽性の白血球を接着して,白血球の炎症局所への遊走を介助するとされる.

座談会

可溶性膜糖蛋白をめぐって

青木 延雄 , 安倍 達 , 神奈木 玲児 , 池田 康夫

pp.942-951

 可溶性膜糖蛋白は医学研究の最近のトピックスの1つであり,臨床医学にも深いかかわり合いを持ち始めているが,必ずしも十分に理解されているわけではない.今回はこの領域の専門の先生がたをお招きし,"今月の主題"の理解のためにわかりやすくお話いただいた.(於・医学書院,1994.3.25)

今月の表紙 臨床細菌検査

Ureaplasma urealylicum

猪狩 淳

pp.866-867

 ヒトの尿道,外陰部粘膜に常在するマイコプラズマ(genital mycoplasma)にはMycopilzsma homi-nis,Mycoplasma genitaliumとUreaplasma urealyticumがある.このうちM.hominisとU.urealyticumが病原性を持つと推定されている.

 マイコプラズマ科は尿素の分解能の有無からMycoplasma属とUreaplasma属に分けられている(Bergey's Manual,vol 1,1984年).

コーヒーブレイク

侃々諤々

屋形 稔

pp.879

 いろいろな人間が自分の正しいと思ったことをやかましく言い立てるのを侃々誇々(かんかんがくがく)といって,このごろのはやりである.

 近頃アダムス・ファミリー2という映画を観た.愚にもつかないコメディであったが,化け物一家の主人が子供に悪魔という名をつけようと思ったがやめたという場面があった.日本でも話題になった悪魔という名付け騒ぎの若い父親も案外こんな映画を観て思いついただけなのかもしれない.それをマスコミが取り上げたり,本人も半解の哲学を振り回したりするから騒ぎが止まらなくなる.

6.8

𠮷野 二男

pp.909

 尿が酸性を示しているのか,アルカリ性なのか,あるいは中性なのかを知っておく必要があって,尿検査項目としては"反応"という言葉が使われてきました.この情報は,かつては沈渣の結晶類の鑑別に,そして臨床的には代謝の状況を知る手がかりとして必要でした.それもリトマス試験紙程度でよかったのでした.それで"反応"でした.

 最近では,尿の試験紙による検査が発達してきて,リトマス試験紙ではなくて,pH指示薬を用いた試験紙からpH値として容易に読み取ることができるようになりました.そして,その値を試験紙法による蛋白の判定,試験紙法による比重の測定に参考にしなければなりません.

学会だより 第8回サンプリング研究会例会

コックの腕が一流でも素材がだめだと良い料理はできぬ

伊藤 機一

pp.880

 1994年4月9日,桜花満開のなか,第8回サンプリング研究会例会が佐守友博博士(日本医学臨床検査研究所総括部長)を実行委員長に新大阪イベントホール"レ・ルミエール"で開催された.今回の主テーマは"外注検査とサンプリング"である.6千億円市場と言われる臨床検査の外注化は医療法改正という追い風を受け,ますます増加の一途をたどっている.遺伝子解析,ビタミンやホルモンの微量分析といった先端技術は今や大学病院を上回っているともいえる.

 このような医療環境下にあって今回のテーマは時宜を得たものと言え,参加者も病院検査室,検査センターを中心に250名にも及び,活発な論議がされた.

学会だより 第83回日本病理学会総会

そうだ京都,行こう.日本病理学会

松原 修

pp.910

 昨年は55年体制の崩壊,細川連立政権の誕生,バブル経済の破綻,今年は細川政権の崩壊と変化の目まぐるしい昨今である.われわれ医療関係者も政治,経済と無関係ではいられないが,医療分野でもAIDS,MRSA,QOL,遺伝子治療,臓器移植,脳死などと話題または議論の種が豊富である.われわれの仕事は究極のところ,患者へのトータルな意味で質の高い医療の提供あるいはそれへの基礎研究にあるので,さまざまな分野の情報を得,理解し,考えを持つことは大切なことと言えよう.

 「そうだ京都,行こう.JR東海」とのコマーシャルが朱色の平安神宮とともにテレビでしばしば放映され,雅の世界へ誘っているようである.子供に「お父さんいいな,京都に行けるなんて」といわれ,「なぜ」と聞くと,「鳴くよ,鶯,平安京(794年)で,1200年目なのよ」との返事.誰しも修学旅行などで一度は京都へと足を運んでいるだろうが,今年は平安成都1200年だそうで,特別な年とか.

学会だより 第68回日本感染症学会総会

日和見感染症の発症機序と診断および治療を中心に

小林 芳夫

pp.957

 第68回日本感染症毛学会総会は1994年4月21日(木),22日(金)の2日間,長崎大学第2内科学教室教授原耕平会長の下,長崎市で開催された.会場はメイン会場である長崎市公会堂のほか電車通りを隔てて面している長崎市民会館,そこから市電で1停留所目のNBCソシアおよびJR長崎駅前のホテルニュー長崎の4か所7会場に分かれていた.しかし各会場の移動にはシャトルバスがひっきりなしに運転されていたためそれほどの不便さを感じることもなく,参加した会員の評判もまずまずであった.

 招待講演はNIH (National Institute of Health)のBennett JE博士による"Opportunistic infection(OI) in U.S.patients infected with humanimmunodeficiency virus-1(HIV-1)"でありHIV-1感染者に特によく見られる日和見感染症すなわちMycobacterium avium症候群,Pneumocystis carinii,サイトメガロウイルスなどによる感染症あるいはカンジダ症をはじめとする真菌症などの最新の診断法やその治療に関するものであった.

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・20

幅広いQRS頻拍症を呈した結核性心膜炎

中山 敏夫

pp.953-956

●心電図の判定●

 心電図(図1)は,精査目的で紹介されてきた患者の近医によるもので,心拍数144/分の幅広いQRSを呈し,初期には,心室頻拍または潜在性WPW症候群に伴うものと診断されたが,抗不整脈薬のジソピラミド20mg静注後に心拍数がほんの少し減少した後(心拍数140/分),図2に示すように,突然にF波を伴う幅の狭いQRS頻拍となり,一過性脚ブロックを伴う心房粗動と診断しえた症例である.

トピックス

デベソ核,きのこ核,モモ核,うめぼし核

高山 明子 , 大野 英治 , 蔵本 博行

pp.958-959

 近年,わが国における乳癌は著しい増加傾向にあり,遠からず女性の癌の第1位になるものと予想されている.それゆえ,患者に対する侵襲が少なく,転移の危険性が皆無に等しい乳腺穿刺吸引細胞診は飛躍的に普及しつつあり,生検に代わる確定診断法として,期待されている.しかしながら,乳癌症例には,従来の一般的な悪性基準では癌と判定しにくい,小型で細胞異型に乏しい症例が少なからず存在し1~3),医療の現場ではしばしば判定に苦慮しているのが現状と思われる.

 そこで,乳腺穿刺吸引細胞診のさらなる精度向上を目的として,細胞診で陰性と誤診した乳癌症例を再検討したところ,核の形状に注目することが重要であると気づいた.その核の形状は大きく分けてデベソ・きのこ・モモ・うめぼし様の形を呈していた(図1,2).デベソ核とは核の一部が突出したもの,きのこ核とはきのこ様に核の両側がくびれているもの,モモ核とは核の一部に切れ込みを持つもの,うめぼし核とは核の辺縁にシワを持つものである.

α1―ミクログロブリン―最近の進歩

伊藤 喜久

pp.960-961

1.はじめに

 α1―ミクログロブリンは,1975年,スウェーデンのEkströmらにより腎尿細管障害患者尿から単離された分子量約3万の低分子糖蛋白質である.ほぼ同時期にGrubbらにより正常尿からも新たに単離され,血中ではその半分がIgAと結合して存在することからhuman complex form-ing protein,heterogenous in charge (proteinHC)と命名された蛋白は,その後の一次構造の解析,物理化学的性状の一致からα1―ミクログロブリンと同一物質であることが判明しだ1,2).低分子型α1―ミクログロブリン/ブロテインHC (以下,研究の成果に応じて使い分ける)は,自由に拡散して血清,尿をはじめ広く種々の体液中に存在分布するのに対して,IgA結合型は比較的高分子であり血清のみに存在する.

DRPLAの分子遺伝学

池内 健 , 小出 玲爾 , 辻 省次

pp.961-963

 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral-pallidoluysian atrophy;DRPLA)は内藤・小柳病とも呼ばれ,わが国に多くみられる常染色体優性遺伝性を呈する神経疾患である.臨床症状は小脳失調,痴呆,けいれん,不随意運動,精神症状など非常に多彩であり,発症年齢により臨床型が異なることが知られていた.つまり,若年で発症した場合には進行性ミオクローヌスてんかんの臨床型を呈し,成人で発症した場合には失調,舞踏様運動,痴呆が主症状となる.

 最近,DRPLAの原因遺伝子か同定され,DRPLA患者ては第12番染色体短腕に存在する3塩基対(CAG)の繰り返しが過剰に増大していることが明らかにされた1,2).このような3塩基対反復配列の増大は,今までにない新しい遺伝子異常のモデルとして注目されており,現在までに表1に示した7疾患か同様の機転を原因としていることか判明している.今後も同様の遺伝子異常を有する遺伝性精神神経疾患がさらに見つかってくることは想像に難くない.

研究

生理的変動の再検討―健常人75g経口ブドウ糖負荷試験時の血液化学成分の変動

中野 恵子 , 斎藤 浩美 , 古田 真由美 , 中山 年正

pp.965-969

 健常人78名を対象とし,75gOGTTを施行した.その際,他の血液化学成分も同時に測定し,ブドウ糖負荷という比較的短時間の条件下で変化をきたす項目,および変動の大きさについて検討した.その結果,52項目中46項目に有意の変動が認められ,その変動パターンは8種類に分類された。各成分の変動の要因としては,ブドウ糖の吸収・代謝のほかに,体位の変化(立位→座位),安静などの要因,およびこれら要因の複合が考えられた.

編集者への手紙

セロファン表面培養とSDSスラブ電気泳動を用いた菌株の異同に関する簡便な判定法

実川 裕子 , 関 啓子

pp.970-971

 現在,コンプロマイズドホストの増加に伴い,常在細菌による日和見感染症が問題になることが多い.この場合,健常者からは滅多に検出されることがない伝染病などの病原体とは違い,多くの検査材料から分離される常在細菌については,その菌株が疾患の直接の原因となっていることを証明することは難しい.また,問題となっている細菌による汚染の経路を決定することもなかなか困難であることが多い.以前からわれわれの教室では,黄色ブドウ球菌について,セロファン表面培養法により得られた培養液中の蛋白の質的量的差異かち菌株間の異同を確認する試みを行っている.今回,グラム陰性菌の中から大腸菌とセラチアを選び,同じ菌種でも菌株によって菌体外蛋白の泳動パターンがどのくらい違うかを検討してみた.

血液結晶法による結晶成長形態に与える疾患血液の影響

芝田 高志 , 田中 朱美 , 小暮 美津子 , 高桑 雄一 , 降矢 熒 , 小幡 裕 , 白坂 龍曠

pp.972-973

 微量の患者の血液を塩化銅(CuCl2・2H2O)水溶液に添加し結晶化させると,その塩化銅の多結晶体の成長形態が病気の種類によって異なることが古くから知られている(血液結晶化法)1~3).これは溶液からの結晶成長の系において不純物の添加が結晶の晶相に鋭敏に影響を与える性質を利用したものであり,反応条件により得られる情報が異なる.Selawryらは健常者では放射状の樹枝状の結晶が,僧帽弁奇形では8角形,糖尿病では凸レンズ状,子宮癌では凸レンズを二分した形態,肺結核では5角形の中に十字形が,癌では成長方向に垂直に交差した形態が観察されると報告している2.最近でもいくつかの報告があり,Barthらは硅肺の診断に有効であると報告している4

 このように生体情報を血液による結晶成長の形態変化に変換し抽出する試みはわが国では研究されていない.微量の血液で診断の可能性が示される本手法は患者の負担が少なく,臨床検査,臨床への応用が期待される.そこで本研究ではパイロットスタディとしてすでに報告されている疾病でこの現象の確認を試みるとともに,研究例のない老人性精神疾患や眼疾患を取り上げ,結晶化および分子分光的な測定を試みた5

質疑応答 臨床化学

測定法変更の目安

中 甫 , 山中 照明

pp.974-976

 Q 従来の試験法(A法)を新しい試験法(B法)に変更する場合,A法とB法の間の相関係数はどの程度まで許されるのでしょうか.添加回収試験の回収率はどの程度あればいいのでしょうか.

HDL亜分画の臨床的意義と方法

野間 昭夫 , T生

pp.976-978

 Q HDLコレステロール亜分画の臨床的意義と分画の方法について,具体的にご教示ください.また,ルーチン検査に使用できる方法があれば,併せて教えてください.

質疑応答 微生物

バクテリオファージとは

宮崎 修一 , Q生

pp.978-981

 Q 緑膿菌を型別する場合バクテリオファージを用いていますが,バクテリオファージとは何ですか.また,なぜバクテリオファージによって型別ができるのですか.

質疑応答 一般検査

CAPD排液の好酸球増加

白井 大禄 , 経遠 美由紀

pp.981-982

 Q CAPD排液の検査を行っています.カテーテルから腹腔内に空気が入った場合,排液に好酸球増加が起こりますが,これはどういう機序によるのでしょうか.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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