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雑誌目次

雑誌

臨床検査39巻1号

1995年01月発行

雑誌目次

今月の主題 糖鎖の異常

総説

糖タンパク質糖鎖の多様性とその生理的意義

奥山 隆

pp.5-17

 われわれの生体にはさまざまな構造の糖鎖を結合した糖タンパク質が広く分布する.また同一の糖タンパク質でも,微細に糖鎖構造の異なる数種の分子集団から成る.このような多様性を展望しそれらの生理的意義を理解するために,まず,生体での糖タンパク質の多様な分布を一瞥し,その多様性を適正に把握するための方法論を述べ,またそのような多様性のゆえんである生合成機作をも要約した.これらの糖鎖の機能については,N―グリカンの機能として今日最も確かとみられるポリペプチド部のfoldingとのかかわりを述べ,糖タンパク質の多様性を論ずるうえで最も重要とみられるミクロヘテロジェニティについて考察し,最後に接着分子であるセレクチンリガンドの糖鎖をめぐり,高親和性を持った認識決定群を構築する糖鎖についての新しい視点を紹介した.〔臨床検査39:5-17,1995〕

糖鎖を認識する単クローン抗体

神奈木 玲児

pp.18-22

 単クローン抗体は,従来から用いられていた糖鎖検出プローブに比べて,一般に特異性が高く,独特の性質を持っている.癌,免疫,発生をはじめとした研究分野に活発に応用され,数多くの新しい抗原の発見に結びついた.糖鎖に対する抗体の作製法も発達し,抗原として合成糖鎖も用いられるようになった.また,遺伝子工学的手法による抗体の作製や改変も行われるようになり,さらに応用範囲が広がっている.〔臨床検査39:18-22,1995〕

レクチンの糖結合特異性

辻 勉

pp.23-28

 糖結合タンパク質であるレクチンは植物,動物,微生物に広く存在し,これまでに多くの種類が発見され単離されている.それぞれのレクチンは特定の糖鎖構造を認識し結合する.すなわち個々のレクチンは,その"個性"ともいうべき結合特異性を持っている.構造の多様な糖鎖を認識する分子として,生体においてさまざまな糖鎖―タンパク質相互作用に関与し複雑な生命現象を制御していることが近年明らかになってきた.〔臨床検査39:23-28,1995〕

糖鎖合成酵素の疾患時偏倚―N-アセチルグルコサミン転移酵素Ⅲを中心に

吉村 雅史 , 谷口 直之

pp.29-32

 N-アセチルグルコサミン転移酵素(GnT)ⅢおよびVはそれぞbisecting N-アセチルグルコサミンおよびβ1-6分枝構造の合成に関与する糖転移酵素である.GnT-Ⅲは,肝硬変から肝癌へと病期の進展に伴う患者血清や組織での活性の上昇,慢性骨髄性白血病急性転化期の白血病細胞での特異的な活性の上昇,GnT-Vは癌の転移能との相関など,これら2つの酵素の悪性腫瘍での異常発現が明らかになってきた.〔臨床検査39:29-32,1995〕

病態と糖鎖異常

先天性N―結合型糖鎖転移不全症候群

山下 克子 , 大倉 隆司

pp.33-38

 発生やホルモン作用,蛋白質輸送などに重要な機能を担うN―結合型糖鎖が種々の糖蛋白質で部分欠損している遺伝疾患,先天性N―結合型糖鎖転移不全症候群が発見され注目されている.本症は小脳形成や,肝障害,精神運動発達遅滞,ホルモン異常,骨格異常,血液凝固系異常など特徴的で多面的な臨床症状を示す.わが国で10例,世界中では約120例の報告があるが,欠損酵素はまだ不明である.〔臨床検査39:33-38,1995〕

ムチン型糖鎖代謝異常症

飯田―田中 直子 , 石塚 稲夫

pp.39-45

 ムチン型糖鎖は糖タンパク質の主要な糖鎖の1つであり,特徴的なコア構造Galβ1-3 GalNAcα1-Ser/Thrを持つ.Α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ欠損症は分解経路の障害であり,ムチン型糖ペプチドの蓄積が,皮膚症状,神経症状などを引き起こす.Β-1,3-ガラクトース転移酵素の欠損症(Tn症候群)は,合成経路の骨髄幹細胞における異常であり,Tn抗原GalNAcα-Ser/Thrを発現した赤血球が,自然Tn抗体によって溶血される.そのほか多くの疾患でムチン型糖鎖の異常が報告されており,研究が進められている.〔臨床検査39:39-45,1994〕

発作性夜間血色素尿症

長倉 祥一 , 中熊 秀喜

pp.46-51

 発作性夜間血色素尿症の主病態をなす血管内溶血に寄与する血球膜異常の分子機構が解明された.つまり,N―アセチルグルコースアミン糖転移障害により,グリセロ糖脂質(いわゆるGPIアンカー)糖鎖の合成不全を生じ,このアンカーを利用する蛋白質群の膜発現が阻害される.この中の補体制御因子の欠損が血球の補体感受性亢進を招き,補体介在性溶血に至る.糖鎖異常は糖蛋白質やスフィンゴ糖脂質にも検出され,多彩な病態との関連が注目される.〔臨床検査39:46-51,1995〕

血液凝固線溶異常―糖鎖の多様性を中心に

津田 博子 , 岩永 貞昭

pp.52-58

 血液凝固線溶因子に含まれるさまざまな糖鎖については,最近その構造が主要な因子で明らかにされたものの,機能についてはまだほとんど明らかでない.こうした因子の遺伝子工学的生産とその臨床応用が要請されている今日,糖鎖を含めたposttranslationalな修飾基の同定や構造決定,作用機序の解明は,緊急を要する問題といえる.本稿では,これまでに明らかにされている各因子の糖鎖構造を紹介するに止めた.〔臨床検査39:52-58,1995〕

糖鎖の癌性変化

渡辺 由美子 , 佐内 豊

pp.59-65

 複合糖質糖鎖構造は細胞の表面抗原としてだけではなく,その細胞の認識や接着にかかわる分子としての機能が最近注目されている.細胞の癌化に伴う糖脂質糖鎖の変化のパターンを,ガングリオシドを中心に糖脂質生合成経路および糖転移酵素の発現調節という視点からまとめてみた.また,癌関連糖脂質糖鎖抗原に対するモノクローナル抗体を用いた癌の診断法について概説した.〔臨床検査39:59-65,1995〕

糖鎖異常と分析法

AFP糖鎖の構造

武田 和久

pp.66-70

 AFPは1分子当たり1本のアスパラギン結合型の二本鎖複合型糖鎖を有し,出生時の臍帯血および肝炎,肝硬変ではコアのN―アセチルグルコサミン(GlcNAc)のフコシル化されていない,非バイセクト型のジシアロ二本鎖が主であるが,肝細胞癌ではコアGlcNAcがフコシル化された糖鎖を有するものないしマンノースα1→6側に露出したガラクトースを有するモノシアロAFPが高頻度に出現し,ヨークサック腫瘍ではコアのGlcNAcがフコシル化されたバイセクト型二本鎖糖鎖を有するものが大部分を占め,消化器癌では肝細胞癌とヨークサック腫瘍の中間型のものおよび未同定の糖鎖が出現する.本来は純化AFPの糖鎖を分離して,その構造の決定を行うが,糖特異性の明らかなレクチンを用いた1次元ないし2次元親和電気泳動によって,生体試料を純化することなくAFP糖鎖の構造を解析することが可能なことを示した.〔臨床検査39:66-70,1995〕

血清タンパク質糖鎖構造変化の質量分析による検出

清水 章 , 中西 豊文

pp.71-75

 血清タンパク質糖鎖の構造は種々の疾患で変化している.この変化を臨床検査として,簡便,正確に,質量分析を用いて測定できる可能性がある.糖鎖の誘導体化や分離などをせずに,タンパクに結合したままでの検出が望まれる.われわれは,検体血清と特異抗血清を混ぜ合わせ,生じた沈殿物を分析した.沈殿物中の目的分子のイオンピークがMALDI/TOF-MSでもESI/MSでも明瞭に観察でき,構造既知の変異分子の有無を速やかに調べることができる.〔臨床検査39:71-75,1995〕

HPLCによる糖鎖解析

松本 宏治郎

pp.76-82

 近年,癌や各種病態時に複合糖質の糖鎖が質的量的に異常となることが注目され,その解析法も著しく進歩した.ここでは,その有用な解析法の1つであるHPLC法について,糖タンパク質糖鎖のAsn結合型糖鎖を中心に,糖タンパク質からの遊離法,糖鎖の検出および標識法,各種分離モードのHPLCによる分離法,エキソグリコシダーゼによる逐次消化やレクチンによる系統的分析法を含めて概説した.〔臨床検査39:76-82,1995〕

話題

イオンスプレー質量分析法

児島 薫

pp.83-85

1.はじめに

 未知物質の構造を解析するには,まず正確な分子量を知る必要がある.その分子量の測定において,質量分析法は有力な方法の1つである.質量分析計は,気相状態でイオン化した試料を,磁場あるいは電場内で分離しその質量を測定する装置である.したがって,分析時に試料をイオン化する必要がある.多くの生体関連物質,特に,糖は難揮発性であるため,これまでのイオン化法(EI, FAB法など)では,試料を化学修飾(誘導体化)して,揮発性を高めた状態で測定することが必要であった1).しかし,糖の誘導体化は困難であり,また,糖の誘導体の測定において,イオンが検出されない場合が多かった.

 この問題点が種々のイオン化法の開発により克服され,そして試料を大気圧下でイオン化させるatmospheric pressure ionization (API法)の1つである,イオンスプレー法2)が開発された.これにより,試料を誘導体化することなく,分子量の測定が可能となった.現在,イオンスプレー質量分析計は,生体関連物質の分析において有力な分析手段となってきている.以下にイオンスプレー質量分析計の概略と,その測定例について述べる.

キャピラリー電気泳動による糖鎖解析

本田 進

pp.86-88

1.はじめに

 キャピラリー電気泳動の高分離能と高い再現性が注目されるようになり,臨床分析にも取り入れてみようとする機運が高まっている1).キャピラリー電気泳動とは一般にキャピラリー中で行う電気泳動の総称であり,この中には等速電気泳動,等電点電気泳動,ゾーン電気泳動などの手法が含まれるが,最近特に発展の著しいのはキャピラリーゾーン電気泳動(capillary zone electrophor-esis;CZE)である.これらの新しい分離分析法は種々の物質の分析に適用されてその威力が示されているが,本稿では糖鎖の分析に適用する場合の問題点を中心として概説する.

糖鎖蛍光標識法

近藤 昭宏 , 宮村 毅 , 佐野 睦 , 加藤 郁之進

pp.89-91

1.はじめに

 複合糖質の生物活性・機能の解明が進むにつれ,糖鎖がその活性や機能の発現に重要な役割を果たしていることがわかってきた.医学領域においては,特に病気のマーカーとなりうる複合糖質の糖鎖構造(いわゆる糖鎖異常)について興味が持たれており,種々の病態と糖鎖異常の関係について精力的に研究されていることは,本号に紹介されているとおりである.

 ここでたいせつなことは,研究に用いるためのサンプル(複合糖質)は患者各人から別々に採取し分析に供するため,微量しか得られないことが多く,構造の多様性(microheterogeneity)を持つことを特徴とする糖鎖の構造解析を行うためには,高感度で再現性の良い分析法が切望されている.しかし,糖分子はそれ自体高感度検出に利用できる標識を有しておらず,何らかの標識を導入しなければならない.このときの標識は,蛍光標識が最も優れていると思われる.理由は微量での検出が可能であることは当然であるが,扱いやすさや安全性に加えて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による分離分析・分取が容易に行えるからである.

NMRによる糖鎖解析

嶋田 一夫

pp.92-94

1.はじめに

 糖鎖の構造解析における核磁気共鳴法(nuclearmagnetic resonance; NMR)の特徴として,非破壊分析法であること,また原子レベルの構造情報を与えることを挙げることができる.このためNMRは糖鎖の構造解析法として重要な機器分析法の地位を確立している.

 本稿では,糖鎖構造解析に用いられるいくつかのNMR測定法の解説とその応用例について解説する.

糖鎖生物学

鈴木 明身

pp.95-97

1.ことばの意味

 "糖鎖生物学"ということばは最近作られたもので,対応する英語はglycobiology1)である.glycoということばには鎖を意味する概念はない.glycoの語源はギリシャ語でsweetを意味する.糖鎖ということばが考案されたのは,これまで行われてきた糖質,複合糖質の研究から脱して,新しい視点で研究を促進させようとする意欲による.

 糖質というと,エネルギー代謝にかかわるグルコースやエネルギーの貯蔵物質としてのグリコーゲンが思い浮かぶ.複合糖質というと蛋白や脂質に結合して存在し,物理的空間を占める物質というイメージがある.しかし,そこには糖の作り出す構造が生物の利用するシグナル伝達の媒体として機能する側面が浮かび上がってこない.糖鎖という言葉が新鮮味を帯びて受け止められるのは,糖の持つ構造が特異的に認識され,機能する重要性が多くの人々によって理解され始めたことによるといえる.

ジャッカリン:ヒト免疫グロブリンA1結合レクチン

萩原 啓二 , 小林 邦彦

pp.98-100

1.はじめに

 ジャッカリン(jacalin)とは熱帯植物jackfruit(図1.日本名:パラミツ,学名:Artocarpusintegrifolia)の種子から得られるレクチンの1つで,もともと1981年にリンパ球のマイトーゲンとして見つけられた,その後1985年にブラジルの研究者によりヒトIgAと結合することが発見されたのを機に注目を浴びたレクチンである.

コーヒーブレイク

女優とエッセイスト

屋形 稔

pp.65

 まず新春のお祝いを申しあげたい.今年もコーヒーブレイクのコラムで読者とひとときのお喋りができるのは楽しいことである.お喋りといっても元来エッセイなので独りごとに近いが,役者の独り芝居も観る客がいるようにエッセイにも読み手が存在することは間違いない.

 エッセイというものの語源は試みるということから,常に人生を追究することとされている.40年前に誕生した日本エッセイストクラブは当初85人であったが,昨年は386人に達した.私も十数年前に加えていただいたが,昨夏第42回日本エッセイストクラブ賞贈呈式があり,3人の受賞者が自動的に加わった.女性2人,男性1人で一昨年と同じ比率で女性優位であった.

l

𠮷野 二男

pp.100

 リットルの記号です.万国度量衡総会で,リットルの記号は普通の活字体の小文字の"l"を使うと定められています.SI単位においても当然同じで,わが国でもJISで同様に定められています.筆記するときにはこれに準ずるとされています.わが国の医学・医療関係ではlやℓが使用されていますが,これは国際的に認められているものではありません.

 小文字のエル(l)が数字のイチ(1)と紛らわしいからとの説もありますが,タイプライターでは小文字のエル(l)を数字のイチ(1)として使用してきたこともありますし,筆記体ℓを用いればその混乱はないかもしれません.JISでは"どうしても紛らわしいときにはlitreと書く"と追加されているのですが,その必要のあるときはほとんどありません.

海外レポート

タイ王国マヒドゥ大学サラセミアセンター

フチャロエン スタット , プラニィ(ウィニチャゴン) フチャロエン , 戸谷 誠之

pp.101-103

■地理と厚生の概要

 タイは南アジアの中央部に位置して,東にはラオス,カンボジア,南はマレーシア,西はビルマの各国に接しています.国土の総面積は約20,000平方マイル(51,800km2)です.総人口はおよそ5,500万人余で,その88.7%が地方の村落部に住んでいます.厚生指標の概要を表1にまとめます.

座談会 PartⅡ・2

遺伝子検査

高橋 正宜 , 引地 一昌 , 島田 馨 , 河合 忠

pp.105-108

血液疾患の遺伝子解析

 河合 遺伝子検査の中でも特に注目されている分野に癌があるんですが,癌のうちでも最も日常診療に広く応用されている血液疾患の分野での,最近の動きを,高橋先生,紹介していただけますか.

 高橋 白血病はいろいろ染色体異常を起こしますので,形態学的に核型分析が行われます.培養してPHAで芽球化し,metaphase (分裂中期)でもって白血病にしばしば起きてくる転座を見る,という方法が形態学で行われているわけです.

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・25

免疫グロブリン依存性低LDH血症

小川 実

pp.109-112

結果の判定

 LDHアイソザイム像を図1―aに示す.健常人(NS)では陽極側からLDH1~5の5本のバンドが観察される.しかし,患者(PS)ではLDH4~5の間に痕跡程度のバンドが認められるのみ(矢印)で他は観察されなかった.

 LDH活性の著しい低値(9IU/lとアノマリー像を呈していることから,遺伝性低LDH血症あるいは酵素結合免疫グロブリンを疑い追加検査を行った.図1―aのように患者赤血球(P-RBC),血小板(P-PLT),白血球(P-WBC)のアイソザイム像で特に異常は認めなかった.

トピックス

蛍ルシフエラーゼ遺伝子を用いた抗酸菌の迅速抗菌薬感受性試験

舘田 一博

pp.113-114

 近年,わが国における結核感染症は順調に減少してきた.しかし,いまだに年間5万人もの新たな結核症患者が登録されているという事実もあり,わが国において結核症は依然として重要な感染症であることに変わりはない.また,最近数年間にみられる結核罹患率減少速度の鈍化,結核患者の高齢化,在日外国人の結核問題,集団感染事例の増加,そしてAIDSに伴う日和見感染症としての結核症という新たな問題も生じてきている.特にアメリカにおいてはAIDS患者の増加とともに,複数の抗結核薬に耐性を示す多剤耐性結核菌による感染症の増加が報告され,臨床において問題となっている.

 このような耐性菌による感染症患者への抗菌薬の選択には迅速な抗菌薬感受性試験が必須である.しかし,残念ながら結核菌の場合には寒天培地上にコロニー形成がみられるまでに4~6週間,抗菌薬感受性試験の結果が得られるまでにさらに2~3週間がかかることから,迅速性という面からは程遠いというのが現状である.ここでは最近報告された蛍のルシフェラーゼ遺伝子を用いた結核菌の迅速抗菌薬感受性試験法について紹介する.

ペニシリンに応答する酵素スイッチ素子

末永 智一 , 内田 勇

pp.114-115

 生体内における情報変換は,きわめて複雑ではあるが巧妙に仕組まれた一連の化学反応によって駆動されている.それゆえマクロで見ると生体内ではアナログ的に情報処理がなされているように見える.しかし,ミクロで見ると,生命情報の源であるDNAの複製,読み込みや神経細胞での情報伝達のようなデジタル的(on-off的あるいは離散的)処理も,生命活動を維持するうえできわめて重要である.また,生体内の制御機構は原則的に互いに拮抗的な励起因子と抑制因子によって駆動されている.この2つの因子の強度(この2つの因子は実際には化合物であるので,強度は濃度に相当する)の大小により,励起あるいは抑制いずれかの機能(つまりデジタル出力)が発現する.

 われわれは,このようなデジタル情報処理に基づくバイオ素子に注目し,研究を進めている.アナログ素子に比べ,デジタルバイオ素子の出力は離散的であるため情報量は少ないが,それだけに処理が正確であり,情報を伝達する際に外部からの物理的,化学的ノイズの影響も受けにくい.また,情報の高次処理も簡単である.特に,人工臓器,ドラッグデリバリーなど生命にかかわるシステムにバイオ素子を使用する場合には,なによりも動作の信頼性が要求され,デジタルバイオ素子の使用が不可欠であると考えている.

質疑応答 血液

造血幹細胞採取の定量法

池淵 研二 , Y生

pp.116-118

 Q 末梢血から造血幹細胞を採取して骨髄移植を行うことが盛んになってきましたが,どの程度の造血.幹細胞が採れたかを定量するのに,どのような方法があり,どの方法が最もよいでしょうか.

質疑応答 病理

基底膜の染色法

加藤 良平 , I子

pp.118-119

 Q 現在,基底膜の染色法としてどのようなものが用いられているのかお教えください.これからは,癌の浸潤の有無の判定にどの程度有効でしょうか.

質疑応答 一般

HIV感染者の喀痰検査

小中 千守 , 土田 敬明 , 加藤 治文 , W生

pp.120-121

 Q エイズ患者,HIV陽性者の喀痰検体の扱い方について,注意事項をお教えください.

質疑応答 その他

花粉飛散量の測定法

斎藤 洋三 , 瀬古 義雄

pp.121-122

 Q 花粉飛散量の測定方法とその判定法についてご教示ください.

資料

ラテックス免疫比濁法によるLp(a)測定法の評価

中 恵一 , 下條 信雄 , 赤井 俊洋 , 巽 典之 , 尾崎 幸男

pp.123-127

 ラテックス凝集免疫比濁法による,Lp (a)測定法を評価した.本法は汎用自動分析装置に応用でき,直線範囲,再現性ともに優れ,他の方法とも相関が高く,信頼性が高かった.しかし,EIAを含む他法と乖離する検体がごく少数みられた.これは現在進行中のLp (a)標準化に際し.標準物質を用いる標準化法では解決できないため,別途詳細な検討が必要となるものと考えられる.

編集者への手紙

直接法(TAMSMB法)による血清銅測定の際に経験した異常反応

喜田 たろう , 山田 満廣 , 達城 行準 , 幡中 うき , 大西 将則 , 小味渕 智雄

pp.128-129

1.はじめに

 当院生化学検査において血清銅の測定は,直接法であるTAMSMB法を使用しCOBAS MIRA S自動分析装置(日本ロシュ)により実施している.今回,TAMSMB法で偽高値を示す多発性骨髄腫患者検体を経験したので,その原因の解明を試みた.

今月の表紙 臨床細菌検査

Chromobacterium violaceum

猪狩 淳

 Chromobacterium violaceumは通性嫌気性グラム陰性の短いあるいは中等長の桿菌で,菌体の両端は丸味を帯びている.鞭毛を持ち運動性がある.

 ヒツジ血液寒天培地,チョコレート寒天培地,マッコンキー寒天培地に発育し,普通寒天培地にも発育する.発育至適温度は25℃であるが,30~37℃でもよく発育する.集落は直径0.5~1.5mm,凸状に盛り上がり,表面平滑で,紫色の色素(水に不溶性)を呈する.時には色素を持たない集落を作る株があり,この場合はVibrio属やAeromonas属の菌と間違いやすい.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 実は増えている“梅毒”

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今月の特集2 心腎連関を理解する

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今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

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今月の特集2 脂質検査の盲点

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60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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