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文献詳細

雑誌文献

臨床検査39巻10号

1995年10月発行

文献概要

今月の主題 乳腺の検査 話題

乳癌とc-erbB-2

著者: 大倉久直1 菅野康吉2

所属機関: 1国立がんセンター中央病院薬物療法部 2国立がんセンター病院臨床検査部

ページ範囲:P.1172 - P.1174

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1.プロトオンコジン
 乳癌にみられる遺伝子異常の中で特に頻度が高く,かつ悪性の予後を示す因子として重要視されているものに,c-erbB-2癌遺伝子(Her/neuとも呼ばれる)の過剰増幅がある.これは東大医科研の山本が発見したプロトオンコジンで1),そのコードする蛋白2)は上皮性細胞増殖因子に似た受容体構造を持つ細胞外ドメイン,細胞膜を貫通するドメイン,チロシンカイネース活性を持つ細胞内ドメインからなる.細胞外ドメインに結合するリガンドはまだ知られていないが,このリガンドが結合すれば細胞内でチロシンカイネースが活性化されて細胞増殖が促進する3)).その切除組織中でのメッセージ(mRNA)の発過剰現は,リンパ節転移のある乳癌症例でTNMに次ぐ重要な予後因子であり,本遺伝子とその産物は乳癌の新しいバイオマーカーとして注目されている4,5).本遺伝子は,発癌の初期段階ではなく,その増殖と進展にかかわる遺伝子であり,p53とともに乳癌により悪性の性格を与える遺伝子といえる.乳癌以外に卵巣癌や胃癌で発現増強が報告されたが頻度は低く,晩期にのみ検出され12),臨床的意義は高くないようである.
 最近米国でc-erbB-2蛋白の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体を投与して,遺伝子過剰発現のある腫瘍の増殖を抑える実験治療が報告された.これはレセプター抑制療法とも呼ぶべき方法で進行乳癌の治療法として効果が期待される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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