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文献詳細

雑誌文献

臨床検査39巻11号

1995年10月発行

文献概要

ミニ情報

P糖蛋白とMDR 1遺伝子

著者: 竹村譲1

所属機関: 1防衛医科大学校検査部

ページ範囲:P.146 - P.146

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 従来から,ドキソルビシン(アドリアマイシン)やビンクリスチンなど癌治療に幅広く使われている抗腫瘍剤に獲得耐性化した腫瘍細胞は,他のanth-racycline系薬剤,vinca alkaloidsばかりでなく構造や作用機序が異なる他の抗腫瘍剤に対しても広範な交差耐性,すなわち多剤耐性(multidrug resis-tance;MDR)形質を示すことが知られており,この現象は細胞外への薬剤の能動的排出の亢進によってもたらされることが明らかにされた.このようなMDR形質を示す多剤耐性細胞の膜には分子量170kDaの糖蛋白(P-glycoprotein;P糖蛋白)の発現が認められ,このP糖蛋白が細胞外への薬剤排出の能動的ポンプとして機能していることが示されている.この糖蛋白は獲得耐性化した腫瘍細胞ばかりではなく,副腎,腎,膵,肝,胆管,腸管などの正常組織の細胞にも発現が観察され,代謝産物,毒性物質を含む化学物質や薬剤を細胞・組織外へ排出する機能を営んでいるものと考えられている.また,これら組織由来の癌がもともと化学療法に抵抗性を示す(自然耐性)原因の1つに挙げられている.
 薬剤耐性マーカーとしてのP糖蛋白の発現を検出する方法として,モノクローナル抗体を用いた免疫組織染色やウエスタンブロット法,あるいはフローサイトメトリー法などが開発されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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