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p53
著者: 土橋洋1
所属機関: 1大阪大学微生物病研究所発癌制御研究分野
ページ範囲:P.169 - P.169
文献購入ページに移動 1989年,Vogelsteinらが大腸癌において染色体の17pの欠失領域にはp53遺伝子が存在していることを報告して以来,p53遺伝子は癌抑制遺伝子として注目され続けてきたが,その機能については明らかでなかった.結合蛋白として,DNAウイルスのSV 40大型抗原,ヒトパピローマウイルスのE6蛋白のほか,gadd 45(growth arrest,DNA dam-age-inducible gene),MDM 2(murine double min-ute)蛋白などが挙げられ,それらの機能を調節するという間接的な役割が強調されていたにすぎなかった.しかし,ようやく1993年,p53の主たる標的蛋白p21(Waf 1/Cip 1/Sdi 1)が同定されるに至った.p53はp21のプロモーター領域に結合し,その転写を活性化する.図1に示すようにp21は,サイクリンとともに細胞周期の進行を担うサイクリン依存性キナーゼ(cdk)に結合し,その活性を抑制する1,2).p53はこうして細胞周期の進行を負に制御しているのである.
p53は,またアポトーシスの誘導に関与しているという報告が相次いでなされている.放射線照射などによるp53の発現亢進,トランスフェクションによる強制発現で細胞はG1期で停止し,続いてアポトーシスが観察される.
p53は,またアポトーシスの誘導に関与しているという報告が相次いでなされている.放射線照射などによるp53の発現亢進,トランスフェクションによる強制発現で細胞はG1期で停止し,続いてアポトーシスが観察される.
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