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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査39巻13号

1995年12月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床検査とQOL

巻頭言

医療とQOL

後藤 由夫

pp.1359-1360

1.医療とQOL

 近年quality of life (QOL)という言葉が多くの分野で使われている.この言葉は,19世紀の産業革命のころ,英国の炭鉱労働者の生活環境の改善に関して使われたのが始まりと言われている.生命の質とか生活の質と訳され,中国語では生存質量と訳されているが,lifeそのものが広い意味を持っているのでQOLと言ってもその内容は言う人や分野によって違ったものになっている.したがって筆者は人生の充実度,生活の充実度,生活の満足度,幸福度,生きがいの度合いという言葉に置き換えたほうがわかりやすいと思っている.医療の分野で用いる場合には身体あるいは心身快適度というほうがわかりやすい.

 生活の充実度や満足度は主観的なものなので,楽天的な人と悲観的で被害意識の強い人とでは異なり,また性格,境遇,環境によって左右されるが,一般には次のようなものの総和として感じられると思われる.その1つは健康で,体が健やかで心が康らかであること.しかし病気があったり体に欠陥があっても,その状態を受容し自分なりに納得していれば,それは生活の充実度を損う大きな要素とはならない.次には人間関係で,一緒に生活している家族や近隣の人,職場の人たちが自分をよく理解してくれ好意を持ってくれるかということ.そして生きがいとなることがあるか.自分の気に入った仕事があるか.生活基盤が安定しているか.自分が望んでいる生活を維持するだけの収入があるか.

総論

QOLと血液化学検査データ

岡部 紘明

pp.1361-1365

 臨床検査の立場から検査値とQOLの関係について考察した.QOLは検査値と異なり数値化することは困難なため,QOLをADLに置き換えて,ADLの低値群と高値群に分けた.QOLの良い群をADLの高値群,悪い群をADLの低値群として,検査値の変動をみた.QOLの悪いADLの低値群ではBUNは基準値より高値を示し,ALBやTCが基準値以下に低下すると死亡危険率が高まり,QOLの良い,ADLの高値群では血中Hb, ALB, GLU,,TC, HDL-Cなどは基準値内で高値を維持していた.〔臨床検査39:1361-1365〕

QOLと体力測定・運動処方

和田 高士 , 池田 義雄

pp.1366-1372

 これからの健康づくりには,単に高齢を極めればよいということから,質の高い人生(QOL)を求めることに重点を置く必要がある.そのために重要な要素に体力づくりがある.これの実施には,体力測定とその評価が欠かせない.そして体力づくりのための運動処方は,メディカル検査結果を踏まえた総合的な健康状態の把握のもとで作成されなければならない.継続してできる種類の中から選び,4~6か月ごとに再評価を行い,再処方することが重要である.〔臨床検査39:1366-1372, 1955〕

疾患別QOLと臨床検査

脳卒中―大都市部の脳卒中発症者の予後に関係する因子

馬場 俊六

pp.1373-1378

 大都市部における脳卒中発症者の予後追跡調査の結果,クモ膜下出血,脳塞栓,70歳以上の高齢者で予後が悪い傾向が認められた.脳梗塞は数のうえでは他の病型を大きく凌いでいるが,その中では皮質枝系梗塞の予後が悪い.臨床所見では麻痺のある者,言語障害のある者のほうが予後が悪かった.合併症としては心房細動のある者の予後が悪かった.脳卒中発症の最大の原因である血圧管理により,脳卒中を予防することが重要であるが,疾患として心房細動の管理が特に重要なことが明らかとなった.〔臨床検査 39:1373-1378,1955〕

痴呆症

金子 満雄

pp.1379-1382

 老人性痴呆症は時間的にも重症度からも正常範囲から順次,準正常,軽度痴呆,中等度痴呆,重症痴呆へと移行しているものである.現時点で,その重症度分類を可能にしうるのは神経心理機能テストのみで,その中でも人の最高次脳機能をつかさどる前頭前野をターゲットにしたテストで初めて可能となる.今回は,かなひろいテストとMMSを用いた二段階方式早期痴呆診断法と各重症度でのQOLを具体的内容を含めて表示した.〔臨床検査 39:1379-1382, 1955〕

心不全―重症度とquality of life

芹澤 剛

pp.1383-1387

 心不全によって低下する,あるいは治療によって向上させてやらなければならないquality of lifeとは,まさに運動耐容能そのものである.そのためには,臨床的に運動耐容能を正確に評価し,それに応じたリハビリテーションプログラムを組んで,安全かつ効果的に運動能力の改善が図れるようにする.運動能力の測定には,生理学的方法が応用されているが,神経体液因子の面からの評価が今後の課題となる.〔臨床検査 39:1383-1387, 1955〕

呼吸不全

真野 健次

pp.1389-1392

 慢性呼吸不全の症例では疾患そのものが難治性で不可逆な病変を有している場合が多い.したがって,日常生活も厳しい制限を受けQOLの低下ということが切実な問題になっている.QOLを高めるためには残存している肺機能をできるだけ維持してゆかなければならない.本稿では,慢性呼吸不全においてQOLに直接関係する肺機能検査とその臨床的意義,およびQOLを維持するためのリハビリテーションについて概説した.〔臨床検査 39:1389-1392, 1955〕

肝不全

与芝 真

pp.1393-1395

 急性肝不全患者も慢性肝不全患者もQOLが損われることは自明である.しかし,肝不全時のQOLが脚光を浴びるようになったのは肝移植の導入が契機となっている.欧米では既に肝移植が標準的治療として定着しており,その治療効果は生死の問題から患者のQOLの向上に移っている.また,早期に肝移植の適応を決めるうえでもQOLは重要視されている.ただし,QOLは主観に大きく影響され,客観化し得ない点で評価法として問題がある.〔臨床検査 39:1393-1395, 1955〕

腎不全

小岩 文彦 , 秋澤 忠男

pp.1396-1400

 腎不全患者のQOLを阻害する2大要因は,尿毒症と長期透析合併症である.尿毒症は透析療法の普及と発展で,長期透析合併症のうち腎性貧血はエリスロポエチンの登場によりほぼ解決したが,他の合併症の解決は今後の課題である.血液透析医療の目覚ましい進歩と普及に伴う患者の高齢化,糖尿病の増加もQOLの抑制因子である.移植医療など総合的な対策の確立が望まれる.〔臨床検査 39:1396-1400, 1955〕

三木 一正

pp.1401-1404

 早期癌の術後のQOLはきわめて良好である.一般に大部分の早期癌は無症状であり,臨床検査所見でも異常を示さない.早期癌を発見するためには無症状の健康人を対象とした(総合)健(検)診(人間ドック)が最も重要である.癌診断における臨床検査項目であるこれまでの腫瘍マーカーでは,癌の早期診断に連がるものはほとんどない.癌の先行病変(高危険群)をスクリーニングすることで対象群を絞り込み,二次精密検査で癌,特に早期癌を多く発見しうる.早期胃癌発見における血清ペプシノゲン値の位置付けにつき概説するとともに,早期肝癌発見に連がる可能性のある血小板数に関する最新の報告を紹介した.〔臨床検査 39:1401-1404, 1955〕

骨髄移植

石田 明

pp.1405-1408

 骨髄移植により種々の悪性腫瘍の生存率が飛躍的に向上し,それに伴ってQOL評価が重要な問題となった.移植前検査はQOLの予知因子として重要であり,また移植後合併症に関する検査はQOL評価に深く関与している.しかし,移植後QOLにおける臨床検査の位置づけは必ずしも明確でない.今後,移植後QOLは治療方針の決定に関与し,より客観的なQOLの評価方法として臨床検査領域が組み込まれることが予想される.〔臨床検査 39:1405-1408, 1955〕

糖尿病

松山 辰男

pp.1409-1412

 大部分の糖尿病は症状がなく,検査の病気と言われるように,診断および管理のほとんどが臨床検査に依存している.そして,良好な管理が,臓器障害である特有の合併症を防ぐために重要である.したがって,糖尿病は臨床検査がQOLに関与する最も代表的な疾患であろう.臨床検査が日々の生活に与える短期的なQOLへの影響は避け難く,むしろ,生涯を通じた長期的なQOLの向上への役割を強調したい.〔臨床検査 39:1409-1412, 1955〕

骨粗鬆症

水口 弘司 , 明間 勤子 , 五来 逸雄

pp.1413-1415

 骨粗鬆症は,高齢化社会を迎えたことや行政上の施策などにより,最近にわかにマスコミに取り上げられるようになった.骨粗鬆症の診断には骨量計測が重要であり,DXA法が現在かなり普及している.しかし診断基準に関しては厚生省長寿科学研究骨粗鬆症班やWHOの分類などがあり統一されていない.現在行われている種々の骨量計測法,さらに最近の診断基準についての考え方について述べる.〔臨床検査 39:1413-1415, 1955〕

慢性関節リウマチ

高橋 秀仁

pp.1416-1418

 慢性関節リウマチ(RA)のQOLに関しては種々の報告がなされているが,その評価法に関しては統一した見解が得られていない.しかしながらQOLを評価する場合,身体状況(ADL)は無視できない要素ではあるが,現在まで考えられていたほど重要なファクターではない.それに比較して,精神面,社会文化面,医療面などの要素はQOLを向上させるのに重要なファクターであることが理解された.今後,実際の治療においてもQOLを評価してその効果判定も考慮されるべきであり,実際に行われつつある.〔臨床検査 39:1416-1418, 1955〕

座談会

臨床検査とQOL

片山 善章 , 中原 一彦 , 高木 康 , 池田 康夫

pp.1419-1429

 池田(司会) "QOLと臨床検査"という難しいテーマを与えられて,大変悩んでいます.QOLが今どうして話題になってきているのかということを最初に考えますと,ある疾患を治療する場合,今までは治療成績について,何年生きたかとか,何%ぐらいの治癒率が得られたかなどと評価されていたわけです.例えば癌の治療であれば,5年生存率が何%である,という格好です.しかしそもそもいちばん重要なことは,患者さんの苦痛を取り除くことであり,患者さんがいちばん希望する形で治療が行われるということであり,これが医療の原点なのです.

 そこでこの原点に立ち返って考えると,そこにはどうしても患者さんの生活の質,QuaIity ofLife;QOLがあるのです.ですからQOLを簡単に定義すれば,"人間らしく生きるためにどう生活の質を確保するか"ということになると思います.

今月の表紙 臨床細菌検査

Clostridium perfringens

猪狩 淳

pp.1354-1355

 芽胞を形成する偏性嫌気性グラム陽性桿菌である.本菌は慣用的にウェルシュ菌(Clostridiumwelchii)とも呼ばれている.

 大型(0.8~1.5×2~4μm)の両端が鈍の桿菌で,芽胞は楕円形で中央または偏在性に位置する.鞭毛を持たず,運動性がない.

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・36

心房内に発生した心臓腫瘍・粘液腫の超音波画像

増田 喜一 , 田中 教雄 , 片山 善章

pp.1431-1434

超音波画像の解釈

 心臓腫瘍は,超音波検査(心エコー図検査,図1)により偶然に発見される場合が多い.中でも粘液腫は日常臨床で遭遇する機会が最も多く,左房を好発部位とした原発性の良性腫瘍である.次いで右房,左室,右室の順で心室発生はきわめて少ないとされる.本例は左房(症例1)および右房(症例2)に発生した粘液腫である.心房内での付着部位は心房中隔の卵円窩付近が多く,通常有茎性であるため可動性に富む.

 断層心エコー図では心運動に伴い心房―心室間を往復する卵円形ないし球形の塊状エコーとして描出される(図1―a~c,矢印).左房に発生した粘液腫の場合,収縮期に左房内の塊状エコーは拡張期には僧帽弁口に嵌頓し,血液の左室への流入障害により僧帽弁狭窄症(MS)とよく似た血行動態を呈する.一方,右房に発生した場合には三尖弁口を閉塞し,三尖弁狭窄症と同様の血行動態を呈する.

海外レポート

中華人民共和国―北京熱帯医学研究所

甘 紹伯 , 薛 燕洋 , 閻 岩

pp.1435-1437

■はじめに

 世界の総人口の半数,約25億人が何らかの寄生虫を保有し,1/3の人がそれらの寄生虫病に悩まされているという.世界の人口の1/4を占める中国でも,地域によっては,気象条件と生活習慣により,寄生虫感染をコントロールすることは,重要の課題になっている.中国で1992年の10万人の調査により,寄生虫感染率は約60%で,その中で特にマラリア,日本住血吸虫,包虫,嚢虫,肺吸虫,肝吸虫の感染はかなり問題になっている.これらの寄生虫撲滅のための研究活動の中心的な役割を果たしているのが北京熱帯医学研究所である.

 北京熱帯医学研究所は,1951年鈡恵瀾教授(中国熱帯医学創始者の一人である有名な医学専門家)により開設され,1979年には,当時の熱帯医学研究室から発展的に北京熱帯医学研究所に昇格した.現在は北京の中心天安門広場から南へ2kmぐらいの,北京友誼病院の敷地内にある.しかし,当研究所は病院とは独立した組織である.1980年は世界保健機構(WHO)により,WHOの肝吸虫,肺吸虫,リーシュマニアの共同研究センターに指定された.中華医学会熱帯病の事務局が研究所内に設立されており,熱帯病の講習会を主催している.

コーヒーブレイク

今年も暮れる

屋形 稔

pp.1437

 今年も暮れようとしている.阪神大震災に続いてオウム事件など社会的に不安な前途多難を思わせる1995年であった.同時にひとそれぞれにも激動の中での歩みは個性的なものがあったに違いない.

 私も定年退官後5年間を患者の診療と以前からの臨床検査関係の仕事をひきずってやってきたが,いつの間にか今年は古稀という年に到達していた.古来稀れなりという言葉であるが今や周囲を見廻すと稀れどころでなく,自分などまだ小僧かの如き錯覚がおきるぐらいである.というのも勤務していた病院の付属老健施設などは70歳以上になって初めて入所資格のできるところで,こんなご老体ばかりを相手にしているから無理もない.

トピックス

神経・内分泌・免疫ネットワーク

菅野 純 , 広川 勝昱

pp.1439-1440

 近年,"笑うこと"が入院患者の回復や病状改善を早めるという報告がなされている.これは昔から言われる"病は気から"と類似したことが現象論的にではあるが,科学的に確認されたものと見ることができよう.

 病(やまい)から回復させるのは,正常状態を維持するホメオスターシス機構であり,それは免疫系,内分泌系,および神経系から成っている.それでは,"笑うこと"と内分泌系とはどのようにつながっているのであろうか."笑うこと"は大脳が楽しいと感じることであるが,それによって生じる心地良い気分は最終的には視床下部に作用すると考えられる.視床下部は脳下垂体の指令中枢であり,副腎,甲状腺,性腺などの内分泌臓器の活動を下垂体を介して制御している.また,視床下部は自律神経の活動に強くかかわっている.

生体の光透視と光CT

清水 孝一

pp.1440-1443

1.はじめに

 これまで"光は生体を透過しない"と考えられ,光を用いてX線のような透視を行うことは不可能とされてきた.しかし近年の光学技術の進歩は,この常識を覆しつつある.生体組織の吸光スペクトルを見ると,生体色素や水による吸収のため,光の透過率は一般に低い.しかしその中で,波長700~1,200nmの近赤外領域は,部分的に吸光度の低い"分光領域の窓"となっている.つまりこの波長域の光は,生体組織をよく透過する1,2.またこの波長域では,ヘモグロビンがその酸素化状態に応じて特有の吸光スペクトル変化を呈する.したがって透視像が得られれば,体内の生理的変化を体外から無侵襲的にイメージングできるという重要な可能性が期待できる3)

 しかし,透過率が高いだけでは体内構造を可視化することはできない.光の場合,X線や磁気と異なり,生体組織における散乱という困難な問題が存在するからである.すなわち,吸光度の低い波長域を選ぶことにより透過光が得られるが,強い拡散性の散乱のため生体内の構造物を見ることはできない4,5)

キマーゼ依存性アンジオテンシンⅡ産生経路

塩田 直孝 , 宮﨑 瑞夫

pp.1444-1446

 アンジオテンシンⅡ(AⅡ)は,レニン―アンジオテンシン(RA)系の最終生理活性物質であり,強力な血管収縮作用を有するだけでなく,血管平滑筋細胞の増殖や細胞外基質の産生亢進などを含めて細胞機能の調節に広くかかわっている.AⅡは,循環血中で産生されることはよく知られている.すなわち,肝臓から血中に分泌されたアンジオテンシノーゲンに腎臓由来のレニンが作用しアンジオテンシンⅠ(AⅠ)が切り出され,血漿中のアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりAⅡに変換される.ところが近年,RA系の構成要素が全身の多くの組織局所で発現していることが明らかになり,AⅡは循環血中以外に組織局所でも独自の調節機構で産生され,オートクリン,パラクリン系として機能している可能性が論じられている.また最近,AⅡはレニンやACE以外の酵素の働きによっても産生されることがわかってきた(図1).しかし,これらのAII産生経路の多くは,生体内での役割や病態生理学的意義がほとんど解明されていない.その中で,キマーゼの役割は少しずっ明らかになってきている.

 キマーゼは,キモトリプシン様セリンプロテアーゼの一種であり,主に肥満細胞から分泌される.

質疑応答 微生物

疥癬虫の検査法

田辺 恵美子 , 瀬古 義雄

pp.1447-1448

 Q 疥癬虫の検査法についてご教示下さい.

質疑応答 一般検査

乳幼児のおむつ赤変

野末 富男 , 出島 直

pp.1448-1450

 Q 夏期に乳幼児のおむつが赤変するのは炭酸塩の析出によるもので問題はない,という記載がありました.疾患との鑑別,および尿中尿酸濃度のおむつ赤変との関連についてご教示ください.

研究

PCR-SSCP法によるβサラセミア遺伝子変異スクリーニング

池上 由美子 , 井手口 裕 , 大久保 久美子 , 高尾 マユミ , 後藤 潮 , 小野 順子

pp.1451-1454

 筆者らは,日本人に高頻度とされる7種類のβサラセミア遺伝子変異についてPCR-SSCP法を用いてスクリーニングを実施した.βサラセミア21例中16例(76%)にはこれらの変異のいずれかが検出された.残り5例のうち4例は他の変異が疑われ,DNAシークエンシングで新たに2変異が同定された.本法は,PCR装置以外は特別な設備を必要とせず,所要時間が短く,検査室での遺伝子変異スクリーニングに有用であると考えられた.

資料

世界の臨床検査技術教育―大学学士コースにおける教育課程の動向

谷島 清郎 , 山岸 高由

pp.1455-1459

 臨床検査技師の大学学士レベル教育の世界的動向を把握するために米国,英国,ブラジル,タイ,中国のいくつかの大学について教育課程を調査した.特徴的なのは米国と英国の場合で,図書館や情報処理機器を利用した自学自習法を推奨するとともに,形態や機能,病態,環境を含めた人間生物学に立脚し,加えて分子生物学,予防医学,健康科学,情報科学を専門科目の周辺に位置付けて重視する教育課程が注目された.

全血法による2′,5′オリゴアデニル酸合成酵素活性の測定とその臨床応用

宇野 賀津子 , 堀野 嘉宏 , 垣見 和宏 , 杉之下 与志樹 , 森安 史典 , 中埜 幸治 , 藤田 俊夫 , 岸 惇子 , 石田 晃 , 山本 英嗣 , 岸田 綱太郎

pp.1461-1464

 肝炎患者において血清中の2-5AS活性の測定は有用であるが,採血条件や血清の保存条件の影響を受けやすく,単核球を分離してその2-5AS活性を測定するほうが臨床病態との関連が高いとの説もある.そこでヘパリン採血した末梢血を全血のまま凍結融解し,全血を検体としたより感度の高い安定な2-5AS測定系を検討した.この方法により,ウイルス性疾患,IFN治療中,自己免疫性疾患患者では2-5AS活性が上昇していることが示された.

学会だより 日本臨床検査自動化学会第27回大会

QC,AQ,QMの展開

斉藤 友幸

pp.1460

 日本臨床検査自動化学会第27回大会(大会長:大場康寛近畿大学教授)が,9月15日と16日の2日間にわたって神戸国際会議場および国際展示場で開催された.あの悪夢の阪神淡路大震災により開催が一時危ぶまれたが,市民の復興努力と,学会関係者らの努力により予定どおりの開催となった.震災から8か月経過し,復興もおおいに進展しているとのことであったが,まだまだ傷跡は大きく,目にしたものには生々しさが多くあり,今までとは違った格別の思いがあった.

 さて本学会は,ビックな展示が大きな特徴である."一般入場者用ネームプレートが不足になり他のものを代用します"との場内アナウンスもあり予想以上の入場者数だった(約8,000人と報告されている).そして今までよりスペースがとってあり,ゆとりがあり大変見やすかった.

編集者への手紙

Howell-Jolly小体出現率と各種赤血球恒数との関連性

兜森 修 , 康 泰珍 , 岩谷 良則 , 伏見 了 , 網野 信行

pp.1465-1466

1.はじめに

 Howell-Jolly小体は脾臓の機能低下や摘脾後にしばしば出現する.また,脾臓は造血や免疫において重要な臓器とされている1,2).末梢血液の塗抹標本からHowell-Jolly小体を含む赤血球を確認することにより間接的に脾機能の低下が把握されている3).今回,血液学的にHowell-Jolly小体が認められた患者の各種赤血球恒数とHowell-Jolly小体出現率との関係について検討した.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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