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文献詳細

雑誌文献

臨床検査39巻3号

1995年03月発行

文献概要

トピックス

隔壁性細胞質内空胞

著者: 広川満良1

所属機関: 1川崎医科大学病理学教室

ページ範囲:P.350 - P.351

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 甲状腺の穿刺吸引細胞診は,その簡便さと正診率の高さから近年盛んに行われるようになってきた.そして,甲状腺の悪性腫瘍のほとんどを占める乳頭癌には,診断に役だつ種々の細胞形態学的特徴かあることがわかってきた.隔壁性細胞質内空胞(septate cytoplasmlc vacuoles)もその1つである.隔壁性細胞質内空胞とは乳頭癌細胞の胞体内に存在するブドウ状に集合した空胞のことであり,空胞間に明瞭な隔壁状の細胞質か介在することを特徴とする.この空胞の存在は1985年AbeleとMillerによって最初に報告された1)が,まだ多くの成書には記載されておらす,細胞診業務に携わるものにとって耳慣れないことばであるかもしれない.そこで,本稿では隔壁性細胞質内空胞の形態学的特徴やその診断的意義について簡単に説明する.
 隔壁性細胞質内空胞は,塗抹標本上,細胞質がライトグリーンに好染し,細胞境界が明瞭ないわゆる化生細胞(metaplastlc cell)と呼ばれているタイプ1)の乳頭癌細胞か集合重積性に出現する場合に観察されやすい.理由はわからないが,個々散在性に出現する腫瘍細胞に見いだすことは困難である.空胞間には明瞭な隔壁状の細胞質か介在し,腫瘍細胞の細胞質かライトグリーンに好染していることか明瞭な隔壁状になることに関与しているものと思われる.個々の空胞は小型でほぼ同じ大きさを呈するためブドウの房のように見える(図1).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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