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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査39巻6号

1995年06月発行

雑誌目次

今月の主題 抗体蛋白

巻頭言

なぜいま抗体蛋白か

河合 忠

pp.627-628

 Jennerが,1798年に種痘を始めてからにわかに免疫に関する学問(免疫学)が発展したが,実際に液性抗体についての実体が捕らえられたのは1889年Behringと北里による抗毒素の発見である.すなわち,破傷風菌やジフテリア菌の毒素で免疫した動物の血清中に抗毒素の存在することを証明した.その後,溶菌素,凝集素,沈降素,溶血素,などが次々に発見され,試験管内または生体内における抗原抗体反応が血清中に現れる生理活性物質,"抗体"によって起こると考えたため血清反応(serological reaction),血清学(serology)と呼ばれ,実際の臨床の場では,血清療法とか血清学的診断法(血清診断)として広く利用されてきたのである.すなわち,血清診断ではもっぱら抗体活性を検出するために,凝集反応,沈降反応,細胞溶解(溶菌)反応,補体結合反応,毒素中和反応,などを利用して検査が実施された.つまり,一定量の抗原溶液と一定量の抗体溶液を混合して,特異的抗原抗体反応が見られるかどうか,陽性か陰性か,を定性的に観察することが行われた.さらに,抗原抗体反応を定量的に観察するために,抗原減量法や抗体減量法や総合法(抗原量も抗体量も変える)による方法がくふうされた.すなわち,①陽性結果を示す最高希釈倍数で表現する終価法,②最適比法,③溶菌や溶血などが50%見られる条件で表現する50%法の大きく3つの方法が用いられた.

免疫グロブリンの基礎知識

免疫グロブリン産生とその調節

足立 靖 , 稲葉 宗夫

pp.629-635

 抗体産生は,B細胞が分化した抗体産生細胞によって行われるが,その調節には,T細胞が不可欠であり,T細胞とB細胞の直接接触やT細胞が分泌するさまざまなサイトカインによって抗体産生は調節されている.〔臨床検査39:629-635,1995〕

免疫グロブリンの糖鎖構造

中田 宗宏 , 水落 次男

pp.636-642

 免疫グロブリンG (IgG)はFc部位に2つの二本鎖複合型糖鎖を持つ.糖鎖は,IgG分子の立体構造の維持だけでなく,抗体が持つエフェクター機能にとって重要な働きをしている.IgGの糖鎖パターンは,IgG産生細胞のクローンごとに異なることが示された.一方,慢性関節リウマチ患者や自己免疫疾患マウスのIgGでは,ガラクトースを欠くという糖鎖構造異常が起きていることが明らかとなった.IgGの糖鎖を調べることは,免疫系に異常をきたす疾患の病因解明や検査法の開発に有効であることが示された.〔臨床検査39:636-642,1995〕

抗原抗体結合部位の微細構造とその医学的意義

清水 章

pp.643-648

 ニワトリ卵白リゾチームなどの蛋白抗原と,それに対する強アフィニティーのモノクローナル抗体のFabあるいはFvとの複合体のX線結晶解析が研究され,抗原および抗体分子の接触面にあるアミノ酸残基が明らかにされた.カノニカル構造,水分子の役割,抗原結合に伴う結合部位の構造変化,抗イディオトープの高次構造などが,次々とわかってきた.これらの知見は臨床検査にとっても重要である.〔臨床検査39:643-648,1995〕

抗原抗体反応の基礎知識

抗原抗体結合反応のメカニズム

中村 弘

pp.649-656

 ホルモンをはじめ,生理活性物質の中には極微量で重要な生理的効果を表す物質が数多く存在しており,その検出・同定方法として免疫測定法が広く利用されている.こうした方法を適切に応用するためには,抗原抗体結合の基礎的な理解が必要である.ここでは,抗原決定基と抗体活性基の構造,両者の結合反応の性質などから解説し,反応の熱力学的解析,X線結晶解析,速度論解析を含めて抗原抗体結合のメカニズムを化学構造論的基礎から理解することを目標とした.〔臨床検査 39:649-656,1995〕

抗原抗体反応の基礎知識 抗体蛋白定量法

1.終価法(titration)―凝集反応の再評価

狩野 恭一

pp.657-661

 終価法は凝集反応では最も古典的かっ半定量的な免疫測定法であるが,その簡便さと迅速性のゆえに臨床的に重要な輸血検査や感染症検査の主な手法として使われてきた.近年,凝集法の自動化と高感度PA試薬の開発によって輸血関連検査の標準化に貢献しつつある.再評価に値する検査法である.〔臨床検査39:657-661,1995〕

2.光学的免疫測定法

河合 忠

pp.663-666

 光学的免疫測定法には,沈降反応とラテックス凝集反応が利用されている.濁度の測定には,透過光または散乱光を使用する.さまざまな要因が測定精度に影響するので,抗原抗体反応の特性,問題点を十分に理解したうえで利用する.特に,汎用自動化学分析装置を利用する場合には,検査担当者の責任において,適切な測定系(試薬,機械,キャリブレータの組み合わせ)を確立しなければならない.〔臨床検査39:663-666,1995〕

3.標識免疫測定法

前田 昌子 , 辻 章夫

pp.667-672

 抗体蛋白質の標識法には発蛍光性や発光性の有機化合物を標識する場合と,酵素を標識し,免疫反応後その酵素活性を比色,蛍光または発光法で検出する方法がある.本稿ではこれらの標識法について述べた後,抗体蛋白質の定量例としてHCV感染患者血清中のGOR抗体の測定法とその臨床的応用例について述べる.〔臨床検査39:667-672,1995〕

4.電気免疫測定法

下川 洋太郎

pp.673-677

 電気化学発光免疫測定法(ECLイムノアッセイ)は,検出反応に電気化学的な発光反応を用い,抗原・抗体などを測定する免疫測定法である.従来の発光反応では,使用する発光系,発光物質,あるいは,酵素とその反応時間により,検出される光子量が限定されるが,ルテニウム錯体を用いた電気化学発光では,電極に与える電荷とその時間によって得られる発光量をコントロールできる方法である.また,電気化学発光反応の場である電極を,固相である磁性マイクロビーズのB/F分離に利用でき,従来の化学発光免疫測定法に比べ,短時間の反応で,高感度かつダイナミックレンジの広い測定が可能な画期的な方法である.〔臨床検査39:673-677,1995〕

技術解説

病原体IgM抗体

岩沢 篤郎 , 中村 良子

pp.679-684

 IgM抗体は,感染症の急性期に検出される臨床診断上重要な抗体である.肝炎マーカーのうち,抗HA―IgM抗体および抗HBc-IgM抗体は,感染初期に一過性に出現する抗体であるため,急性A型およびB型肝炎のワンポイント診断に用いられている.また,風疹,サイトメガロウイルス(CMV),クラミジアなどの感染症におけるIgM抗体の解釈には慎重を要する.IgM抗体陽性は,一般的には初感染を意味するが,ヘルペスウイルスによる感染症においては,再活性化(reactivation)の場合にも検出されることがある.感染症検査すなわち,抗原検出,抗体価測定,DNA検査の中から最適な検査法を,個々の症例において判断選択し,他の検査成績と合わせて迅速に対応する必要がある.IgM抗体測定は,迅速診断に有用であり,自動化が進められている.〔臨床検査39:679-684,1995〕

ASO

伊藤 忠一

pp.685-688

ASOの測定は溶連菌感染症の診断には欠くことの出来ない検査である.ASOの測定法としてはRantz-Randall法が従来より標準的測定法として使用されてきたが,最近,凝集法に基く定量法が普及しつつある.しかしこれらの定量法によって得られるデータの施設間差は大きく,判定法,希釈系列,標的赤血球,標準品,基準範囲など解決されるべき問題点も山積みされている.〔臨床検査39:685-688,1995〕

梅毒トレポネーマ抗体

菅原 孝雄

pp.689-693

 梅毒トレポネーマ抗体は,梅毒血清反応で検出される感染抗体である.梅毒の診断に当たっては,用いる抗原の状態によって,主としてIgG抗体のみに反応する場合と,IgM抗体への反応性が高くなる場合とがある.

 IgM抗体の検出は,初期抗体の検出による早期診断,梅毒の病期と治癒の判定,先天性梅毒の際の胎児への感染の有無などに有用な反応と考えられている.〔臨床検査39:689-693,1995〕

風疹抗体

松野 哲也

pp.695-700

 風疹抗体陰性の妊娠早期の女性が同ウイルスに感染すると先天性異常児を出生する危険性がある.したがって,風疹の血清学的検査は,妊娠前の風疹に対する免疫を判定する際,特に重要な意義を持つ.

 抗体価のスクリーニングにはHI(血球凝集阻止)試験が広く用いられる.HI価と風疹IgH抗体価の同時測定は,風疹初感染ならびに再感染の有無を調べる上で1つの手がかりとなる.〔臨床検査39:695-700,1995〕

リウマトイド因子

吉野谷 定美

pp.701-704

 リウマトイド因子(RF)検査法はRAテストと呼ばれた半定量法から,比濁法,比ろう法,TIA法を主体とする定量測定に移行しつつある.この定量測定法は施設間差が20~40%と大きいため,医療機関相互の患者の受け渡しや情報交換に際し不都合をきたしている.同一医療施設内においては安定した再現性を有するので,慢性関節リウマチやその他の自己免疫疾患の活動性を評価したり,薬物の臨床評価に用いることができる.〔臨床検査39:701-704,1995〕

話題

抗体蛋白のエンジニアリング

前田 浩明

pp.705-708

1.はじめに

 ハイブリドーマ法の確立により1つの抗原決定基に対して均一な抗体(モノクローナル抗体:MoAb)が大量に得られるようになり,免疫学,生物学,医学の分野で広く利用されてきた.また,抗体遺伝子構造の解析により抗原に対する多様性獲得の機構1)が解明され,抗体蛋白質の高次構造もX線結晶解析2,3)(図1,2)により明らかにされた.最近では,これらの知見をもとにマウスMoAbをヒトMoAbに近づける技術(ヒト型化)や新しい抗体クローニング法,抗体の高機能化などが試みられている.

今月の表紙 臨床細菌検査

Burkholderia pseudomallei

猪狩 淳

pp.622-623

 Burkholderia(Pseudomonas)pseudomalleiとそれによる感染症は,1912年にミャンマー(ビルマ)での患者の病理解剖所見から,WhitmoreとKrishnaswamiによって報告され,翌1913年に原因菌がBacillus mallei (現在はAeudomonasmallei)に多くの点で類似することから,Bacilluspseudomalleiと命名することが提案された1).1992年に藪内らはBurkholderia pseudomalleiと命名することを提案し2),現在はPseudomonas属から離れ,Buzkholderia属に含まれている.

 本菌は極多毛のブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌で運動性がある.グラム染色では菌体の両端が濃染する極染性を示す.発育温度域が広く,42℃でもよく発育する.4℃では発育しない.集落の性状は培地の種類によって多少異なり,HI寒天平板上の集落は36℃,48時間培養では直径約1mm,S型を示すが,72時間後にはR型菌株を示すものがある.マッコンキー寒天平板やデオキシコーレート寒天平板で集落は赤色を呈し,TSI寒天培地の斜面を黄変する.Buzkholderia ce-paciaと誤認しやすい.

コーヒーブレイク

NPT

𠮷野 二男

pp.648

 near the patient testingの略語で,患者のそばで臨床検査を行い,その結果をすぐに得て,診療に役だてようとすることで,今まではbedsidetestなどと呼ばれていましたが,ベッドに寝ているような患者だけが臨床検査の対象ではなくなっているのはよくご承知のとおりです.それで最近はこの略語がよく用いられています.

 そのための簡易測定の機器が数多く開発され,操作も簡単であり,だれにでも容易にできて,待っている間に結果が出てきます.

残日録

屋形 稔

pp.666

 日残りて昏るるに未だ遠し.老いの心境をこの一語で見事に表現している小説「三屋清左衛門残日録」はテレビでもシリーズ化され,仲代達矢のこれも見事な演技もあり何度も放映されている.山形県の鶴岡に生まれた作家藤沢周平は昏い北海を背景にしているような地味な筆致の中に,小藩の家督争いなどを絡ませながら武士を描けば日常の中の武士道の厳しさを表現する手法は比類を見ない.この作品もその1つであるが,老いゆく日々の生命の輝き,魂のゆらぎは現代の我々の身にも共感すること多く,間然するところない.

 この中の"草いきれ"という1章で主人公が少年時代を回想する一こまがある.野原を共に駆け巡り,素手で殴り合った友達を思い起こしながら重い夏かぜから回復する気力をとり戻す筋である,これを読みながら昔の武士の子は恥を知るを重んじ,屈辱には身命をかけて争ったのであろうと思った.また多勢で一人をいじめるという陰湿な行動は嫌われたであろうし,もしあったら刀にかけて立ち向かう勇気を日夜教えられ練ったであろうと考える.

学会だより 第10回日本環境感染学会総会

組織的な病院感染対策に重点を置いた企画

小林 芳夫

pp.678

 創立以来早くも第10回を数えるに至った環境感染学会総会は,1995年2月18日(土)および19日(日)の両日,川崎医科大学呼吸器内科副島林造教授の会長のもとに,岡山県倉敷市の倉敷芸文館および倉敷市立美術館において開催された.兵庫県南部地震の影響で交通事情が良好でないにもかかわらず,北は北海道から南は沖縄まで多数の参加者があり,初日の午前中ですでに600名以上の有料参加者があったとのことである.

 本学会の設立の目的やその経緯あるいは筆者のかかわりに関してはすでに述べてきた(臨床検査35:514,1991/臨床と微生物 21:108,1994)が,一言で言えば"院内感染症およびレジオネラ症や食中毒のような公衆衛生が関与する環境由来の感染症や人畜共通感染症に関する諸問題を取り扱う学会"である.したがって対象は"医師,獣医師,臨床検査技師,看護婦"や"国公立の予防衛生研究所の研究者"あるいは"主として消毒薬であるが製薬メーカーの研究者"や"医療品製造業の研究者"が含まれるのは当然のことであるが,これに加えて"病院および診療所の内装業者や清掃業者"も参加する,ある意味では大変ユニークなしかし今日の医療上しばしば問題とされる重要な問題をいち早く論議する学会である.

海外レポート

ボリビア共和国―医療事情・検査室を中心に(1)

宇都宮 明剛

pp.710-712

■はじめに

 南米ボリビア,地球の裏側,南米大陸の中西部,南緯10~23度,西経58~70度に位置する.パラグアイと同様に海のない国である.6,000m級のアンデス山脈が,北西から南東に2本連なる.国土の30%が4,000m以上の山岳地帯で,20%が高原地帯,50%が熱帯低地帯である.国の北西部ラパス州は,アンデス山脈の谷間に位置する,空気希薄,寒冷な環境であり,北部ベニ州はアマゾン川の源流のあるジャングル地帯で,暑さの厳しいまさに熱帯である.東部のサンタクルス州では,標高400~500mの農村地帯で,農産業を主体とした農業,熱帯森林の開発,石油,天然ガスの産出も行っている鉱業地帯でもある.しかし,国は貧しい.

 日本との時差は13時間,ロサンゼルス,サンパウロ経由のバリグ・ブラジル航空で首都ラパスまで32時間を要する.降り立ったエル・アルト国際空港は標高4,100m.世界で最も高度にある国際空港で,ここから車で20分ほどで首都ラパスに降りる.ラパスは,標高3,600~3,800m,富士山の頂上とほぼ変わらない.ここに人口70万の大都会がある(図1).

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・30

セルロースに親和性を持つ胎盤型アルカリホスファターゼ

四木 和之 , 白方 隆晴

pp.715-718

検査結果の判定

1.セルロースアセテート膜電気泳動法による アルカリ性ボスファターゼ(ALP)アイソザ イムの分画

 図1に示すように,この症例のALPアイソザイムのザイモグラムでは肝型,骨型,胎盤型のほかに小腸型の陰極にシャープなバンドが認められた.またその両者の間にはテーリング様に若干の活性が認められた.

トピックス

抗好中球細胞質抗体と腎炎

有村 義宏 , 簑島 忍 , 長澤 俊彦

pp.719-720

1.はじめに

 膠原病などの自己免疫疾患では,抗核抗体などこれまで多数の自己抗体が同定され,疾患の診断や治療,病態解明に役立ってきた.最近発見され,腎炎,特に壊死性半月体形成性腎炎(necrot-izing crescentic glomerulonephritis; NCGN)との関連で注目されている自己抗体に,抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic anti-body; ANCA)がある1~4)

バイオセンサーを用いたカルパイン,カルパスタチンの相互作用解析

高野 恵美子 , 牧 正敏

pp.721-723

 バイオセンサーを用いて生体物質を測定することは,血糖値測定などで多数実用化されている.さらに微量生理活性物質測定のために,さまざまなタイプの新しいものが開発されている.ファルマシアのBIAcoreTMシステムも最近注目されているバイオセンサーである.測定原理として表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance;SPR)と呼ばれる光学現象を採用しており,分子標識なしで,生体分子間の相互作用をリアルタイムで測定することができる1).抗原一抗体反応,細胞内シグナル系,ホルモン受容体など,蛋白―蛋白間,ペプチド―蛋白間,DNA―蛋白間など多岐にわたる測定が可能である.

 前立腺特異抗原PSAは,血清中では,主としてα1アンチキモトリプシンと結合して存在する結合型と,遊離型PSAが存在する.PSAは,前立腺肥大症でも高値になるが,遊離型と結合型の存在比率が,前立腺肥大症と前立腺癌とで異なるという報告があり,PSAの抗体が,遊離型と結合型をどのように認識するか問題となるが,PSA MoABの遊離型と結合型の親和性についてBIAcoreで調べた報告がある.また,CEAの抗体では,取得した多数のMoABが抗原のどの領域を認識しているか,それらの空間的位置関係を調べるのに応用されている.

質疑応答 微生物

エイズ脳症とは

小柳 義夫 , T生

pp.724-725

 Q "エイズ脳症"という言葉を聞きました.これは,どのようなメカニズムで起こるものなのでしょうか.特に,ウイルスはどのようにして中枢神経系に侵入するのでしょうか.ご教示ください.

質疑応答 臨床生理

ローランド発射

一條 貞雄 , U生

pp.725-726

 Q てんかんでみられるという"ローランド発射"についてお教えください.

研究

パワースペクトル解析法による心拍ゆらぎの加齢性変化

阪本 實男 , 山田 直美 , 田中 克往

pp.727-731

 心拍ゆらぎをパワースペクトル解析し,各周波数成分の加齢性変化を検討した.交感,副交感の両神経系活動を反映しているとみなされるLFとパワースペクトルの平均,副交感神経系活動を表すHF,体液性交感神経系活動との関連性を示唆されているVLFなどは加齢で減少した.LF/HFは交感神経系,パワースペクトルの回帰直線の勾配は交感,副交感の両神経系の各活動を評価する規格化した指標に利用できる可能性を示した.

資料

マルチプレーン経食道心エコー図法による基本断面の設定

平沼 ゆり , 石光 敏行 , 榎本 強志 , 杉下 靖郎 , 蛭田 正廣 , 中尾 成隆

pp.733-738

 マルチプレーン経食道探触子は,バイプレーン経食道探触子では困難な多角度からの心大血管構造物の観察を可能としたが,その反面,断面設定の自由度が高いために,得られる画像情報が増大し理解が難しくなったり,検査時間が長くなる傾向があった.われわれはマルチプレーン経食道探触子を用いて効率よく検査を行うために,10の基本断面を設定した.これらの基本断面の描出法と,それを用いた心臓の各構造の観察法について報告する.

試験紙法による尿白血球試験の精度管理に用いるための標準物質の開発

中 恵一 , 下條 信雄 , 巽 典之 , 大田 哲也 , 八木 雄次 , 坂本 久 , 山本 博司 , 肥塚 卓三 , 東畠 正満

pp.739-742

 試験紙による尿白血球試験の目常精度管理に用いるための標準試料として,プロテアーゼの1つであるズブチリシンを利用した精度管理用物質を開発した.凍結乾燥した本品は長期間安定で日々溶解後使用すれば一定値が得られるため,同一原理による試験紙法に適用可能である.現在までのところ本品は2か月間完全に安定であることを確認した.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

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今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

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今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

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62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
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62巻7号(2018年7月発行)

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今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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