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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査39巻7号

1995年07月発行

雑誌目次

今月の主題 赤血球―新しい展開

総説

溶血性疾患(貧血)の検査診断

濱﨑 直孝

pp.749-753

 赤血球はその直径よりも狭い毛細血管をすばやく通り抜け体内の隅々まで循環し酸素を組織へ運搬している.赤血球の膜蛋白質,細胞内酵素,ヘモグロビンはお互いに協調して作用し,赤血球で酸素を運搬している限り,決して過剰な酸素を組織へ供給しないような仕組みを作り上げている.このような赤血球の構成成分に異常が出現すると,赤血球の機能異常が起こり,結果として,循環している赤血球の寿命が短縮し溶血性疾患が起こる.

 このような溶血性疾患の診断には系統的な検査診断を行う必要があり,その概略を述べる.〔臨床検査 39:749-753,1995〕

赤血球膜異常症

八幡 義人 , 神崎 暁郎

pp.754-761

 赤血球膜異常症は,従来から末梢血赤血球形態に基づいて診断が決定されてきているが,最近の膜生化学分析の著しい進歩によって,新たな疾患群が種々確立しつつある.また従来からの遺伝性球状赤血球症や遺伝性楕円赤血球症も,その病因について膜蛋白の生化学的分析と,それを決定している病因遺伝子の解析が不可欠となっている.そこで,赤血球膜異常症の代表疾患について,最新の知見を紹介したい.〔臨床検査39:754-761,1995〕

赤血球酵素異常症の分子機構

藤井 寿一

pp.762-768

 赤血球酵素異常症は,赤血球機能を保つうえで重要な酵素の質的ないし量的な異常により赤血球寿命の短縮をきたす疾患である.その病因のほとんどはミスセンス変異であるが,ナンセンス変異,塩基欠失,塩基挿入ないし異常スプライシングも同定され,遺伝子型と表現型の関係が明らかになっている.今後は異常のない他のアイソザイムの発現を促す方法や,遺伝子治療などの分子異常に基づいた治療法の開発が望まれる.〔臨床検査39:762-768,1995〕

技術解説

PIG-A遺伝子と発作性夜間血色素尿症

植田 悦子

pp.769-773

 発作性夜間血色素尿症(PNH)血球はPIG-A遺伝子の突然変異によりGPIアンカー前駆体生合成経路が初期段階で停止し,GPIアンカー型蛋白をすべて欠損する.この変異は多能性幹細胞レベルで起こっており,遺伝子上の変異の部位や形に偏りはみられない.PNH血球はクローナルな増殖を示すが必ずしも単一クローンに由来するわけではないことがPIG-Aの解析から示された.PNHが重症再生不良性貧血患者に高率に合併してくることからその関連が注目されているが,PNHと造血不全との関係は今後の研究の進展を待たなければならない.〔臨床検査39:769-773,1995〕

サラセミアの遺伝子解析

今村 孝

pp.775-780

 ヘモグロビン異常の発見を契機として,分子病の概念が生まれた.その後,種々の変異型についてヘモグロビン分子の構造と合成の異常の仕組みが明らかにされた.ヒトの遺伝子解析の面でもヘモグロビンは研究モデルとして先端的な役割を果たした.ヘモグロビン異常の分子レベルにおける研究は,ヒト遺伝子突然変異のありさまをもっとも明快に示すものとして,広く代謝性異常症の理解に資するものと思われる.〔臨床検査39:775-780,1995〕

赤芽球トランスフェリン受容体

新津 洋司郎 , 加藤 淳二 , 高後 裕

pp.781-784

 赤血球系細胞の分化過程において,赤芽球の増殖期ならびにヘモグロビン合成期には鉄の需要度が高まり,多量のトランスフェリン受容体(TfR)が発現する.TfRの翻訳は,細胞内鉄濃度が低下するとTfRmRNAに鉄反応性エレメント結合蛋白が結合することで高まる.TfRの細胞外ドメイン(extracelluiardomain)は可溶型として遊離され循環中に存在することから,血中TfR値を定量することで,生体のエリスロンの活性,すなわち造血能を推定することができる.〔臨床検査39:781-784,1995〕

エリスロポエチン受容体

三浦 恭定

pp.785-791

 エリスロポエチン受容体の構造と機能について最近発表された多くの研究成果について解説し,それが臨床的にどのような意味を持つのかについて述べる.

 主な内容としてエリスロポエチンの生物作用,受容体にエリスロポエチンが到達したときに起こる情報伝達経路の働き,受容体の各部分の機能,転写因子との関係,受容体の異常による家族性多血症などを記した.〔臨床検査 39:785-791,1995〕

異常ヘモグロビンの検出

大庭 雄三 , 服部 幸夫

pp.793-797

 異常ヘモグロビン(Hb)症ではHb分子の性質の異常がそのまま臨床所見に反映される.したがって,症状に対応するスクリーニングテストと,高分離電気泳動や液体クロマトグラフィーの併用によって異常Hbの検出を試みる.DNA検査は,赤血球系以外の細胞を用いて,既知の異常Hbを検出・確認する特異的手段である.未知の異常Hbのアミノ酸配列異常の決定にも,DNA分析はもう1つの手段として定着した.〔臨床検査 39:793-797,1995〕

赤血球結合免疫グロブリンの微量検出法

小峰 光博

pp.798-804

 赤血球に結合している免疫グロブリンあるいは補体成分は,標準的にはCoombs試験によって検出される.これが陽性で,臨床的に活動性の溶血所見があれば自己免疫性溶血性貧血(AIHA)である可能性が高く,広く免疫機序による後天性溶血性貧血の診断には不可欠な検査である.一般に結合分子数は溶血の強さと相関するが,抗体量が少なく標準法ではCoombs試験が陽性とならないのに強い溶血所見を示すことがある.臨床的に結合分子数の定量が意味を持つのはそのような場合であり,Coombs陰性AIHAと呼ばれている.高感度の微量定量法では検出されるIgが真の自己抗体であるか否かも問題となる.〔臨床検査39:798-804,1995〕

話題

B19パルボウイルスと赤血球造血

小澤 敬也

pp.805-810

 B19パルボウイルスは急性赤芽球癆,免疫不全患者における慢性骨髄不全,小児の伝染性紅斑,成人の多発性関節炎,胎児水腫など,さまざまな疾患の原因となることが判明してきている.B19ウイルスの標的細胞は赤血球系前駆細胞から赤芽球までであり,そのレセプターは赤血球型抗原物質のP抗原であることが判明した.P抗原を欠いているヒトではB19ウイルスの感染が起こらない.ウイルス遺伝子産物の非構造蛋白質はウイルス複製に関与すると考えられるが,細胞内に過剰に蓄積してくると細胞傷害を惹起する.〔臨床検査39:805-810,1995〕

人工赤血球

小林 紘一

pp.811-814

 臨床医学が大きな発展を遂げた原因の1つに輸血が安全に行われるようになったことがある.輸血の際には血液型の判定と交差試験が必須であるが,大量出血などの緊急の際に血液型に関係なく使用でき,しかも保存も簡単な人工の酸素運搬体(人工赤血球)が開発されれば有意義である.本稿ではそのような可能性のある3種類の人工酸素運搬体,フルオロカーボン,修飾ヘモグロビンおよび全合成系酸素運搬体について述べる.〔臨床検査39:811-814,1995〕

赤血球保存と自己血輸血

岩崎 誠 , 鈴木 洋司

pp.815-818

 赤血球保存法には液状保存法と凍結保存法がある.液状保存液は長期保存を目指して改良され,日本でも近年MAPが開発され普及しているが問題点もあり,さらに改良されることが望まれる.自己血輸血は同種血輸血に代わる安全な輸血法として,整形外科分野などで盛んに行われている.貯血式,希釈式,回収式がありそれぞれ特徴があるが,赤血球保存液の開発とともに貯血量,期間が拡大されさらに発展することが望まれる.〔臨床検査39:815-818,1995〕

今月の表紙 臨床細菌検査

Bordetella pertussis

猪狩 淳

pp.742-743

 Bordetella属には,現在4菌種―B. pertussis,B. parapertusss,B. bronchiseptica,B. Avium―が知られている.このうち,B. pertussisとB. parapertus論がヒトの病気を惹起し,とくにB. pertussisが重要である.

 B. pertussisは百日咳(whooping cough,pertussis)の原因菌である.本菌はグラム陰性の小短桿菌で,多形性を示すことがある.莢膜を持つ(病原性の強いI相菌).芽胞,鞭毛はない.培養には特殊な培地でなければ発育せず,ボルデー・ジャング(Bordet-Gengou)培地が用いられる.直径1mrn程度の小ドーム型の真珠様の光沢を持つコロニーが35~37℃,4~5日間の培養で認められ,集落の周囲に溶血がみられる.血液寒天培地,チョコレート寒天培地には発育しない.偏性好気性菌で,代謝は呼吸により,糖類を発酵しない・オキシダーゼ陽性,H2S産生性陰性,インドール陰性,V-P反応陰性,ウレアーゼ陰性,非運動性.発育にはニコチン酸,リジン,メチオニンを必要とする.本菌は以前はHaemophilus属に含まれていたが,血液成分のX(ヘミン)因子やV(NAD)因子を必要としない.

学会だより 第43回日本輸血学会総会

認定輸血検査技師制度が本年度から試験的に導入

髙松 純樹

pp.774

 1995年3月22日から25日まで,第24回医学会総会のトップバッターの分科会として,第43回日本輸血学会総会が名古屋市名古屋国際会議場で神谷忠愛知県赤十字血液センター副所長を会長として開催された.名古屋国際会議場は1989年名古屋市主催で開催されたデザイン博覧会のメイン会場として建築されたが,今回の医学会総会を中心とする一連の分科会のために増築され,3,012名収容可能なセンチュリーホールをはじめ多目的用のイベントホール,会議場があり,ここだけで数千人規模の学会が可能で大変ゆったりとしていた.

 このような好条件下で開催された本学会には1,400人を超す参加者があり,"示説+スライド"による口演という新しい発表スタイルは,示説だけの場合の演者と十分議論ができないという欠点,逆に口演のみだと聞き漏らすという欠点を補うものとして多くの参加者に好評であり,いずれの会場も用意された椅子席がなくなるという盛況であった.

学会だより 第84回日本病理学会総会

余裕のある雰囲気の中で質・量ともに充実:今春の病理学会

岡安 勲

pp.840

 第84回日本病理学会総会は名古屋市名古屋国際会議場で4月17~19日に名古屋大学教授浅井淳平会長,松山睦司副会長のもとに開催された.春の総会は日ごろの成果を持ち寄って討論をするのみでなく,1年に1度顔を合わせてお互いの近況を話したり,旧交を温めたりと,多目的に利用され,いろいろな意味で大変有意義に感じる学会でもある.今回も約2,300名の参加者が集まり,広い会場で多数の演題発表と活発な討論が行われた.具体的には宿題報告3,一般演題1,263(演説536,示説727),ワークショップ10が演説8,示説16会場でゆったりとしたスペースの中で行われた.

 宿題報告は①"濾胞樹状細胞の形態・機能・病態",②"HLA分子の免疫及び疾患感受性制御",③"活性酸素による組織障害と発癌"であった.①ではリンパ濾胞内の濾胞樹状細胞について広範岡にわたる研究発表がなされ,②ではHLA抗原系と疾患の感受性との関連性を白樺花粉アレルギーや重症筋無力症を例とした詳細な免疫病理学的研究,③では活性酸素による細胞・組織障害・発癌を鉄を例として述べられた.いずれも演者のライフワークとしての研究の集大成であり,学会会員にとってはまとまった研究成果を単に聞くというだけでなく,長期的展望に立った研究の進め方などもおおいに参考になる報告であった.この宿題報告の詳細は今秋発行される日本病理学会会誌84巻2号に掲載される予定である.

コーヒーブレイク

正月諷詠詩

屋形 稔

pp.804

 "人よむに如かず正月諷詠詩"とは,正月の俳句は人を詠むのが一番という昭和37年に没した俳人飯田蛇笏(だこつ)の晩年の句である.正月は年賀状などでも改めて人の消息,交流などを懐かしむ時季でもある.

 終戦直後の大学生時代にこの蛇笏を神様のようにしていた上級生が3人ほどいて,ときどき彼らの句会の行われる貧しい下宿に誘われて行ったことがある.当時の新潟医大には髙浜虚子の門下でも有数の俳人が3方教授をしていて,俳句は全般に高いレベルにあった.髙野素十(法医),中田瑞穂(脳外科),及川仙石(衛生)で,特に素十さんは虚子の十哲などと呼ばれ法医の講義は助教授まかせで俳句指導に魂を入れていた.私も自宅に参上して文芸部雑誌に掲載するからと"吹っとんで湯の山紅葉顔をうつ"という豪快な句を頂載してきたことがあった.

CLS

𠮷野 二男

pp.810

 臨床検査室や,いわゆる検査センターなどで働く人々のことで,clinical laboratory scientistsの略です.

 臨床検査は,そのために特別に訓練され教育を受けた技師によって行われるだけでなく,広い範囲にわたり専門化された分野の知識,技術が必要になってきて,臨床検査技師以外の理系の人々の力を期待しなければならないことが多くなってきました.そこで,多くの臨床検査技師以外の人々が臨床検査室などで働くようになってきている現状を考えると,このような呼び名がより適切かと思われます.

海外レポート

ボリビア共和国―医療事情・検査室を中心に(2)

宇都宮 明剛

pp.819-822

 前号では,ボリビア共和国の疾病状況,JICAの医療技術協力,感染症の事前調査,検査技師制度を報告した.今回は検査室事情などについてさらにくわしく解説する.

目でみる症例―検査結果から病態診断へ・31

急性心筋梗塞における再灌流療法―冠動脈造影による診断

米田 孝司 , 片山 善章

pp.823-827

検査結果の判定

 図1,2は急性心筋梗塞患者(症例1,2)における冠動脈造影である.

 図1の矢印に示すように,症例1は冠動脈の比較的細い部分(RCA3)に血栓が詰まった(図3を参照)症例である.図1―aの冠動脈内血栓溶解療法(ICT)前や図1―bのICT中(UK48×104単位注入)では閉塞しているが,図1―cのICT中(UK72×104単位注入)では再開通しており,冠動脈造影により再灌流療法は成功していると考えられ,この患者は予後良好であった.

トピックス

スーパー抗原関連糸球体腎炎

飯塚 正 , 小山 哲夫

pp.829-830

 最近,スーパー抗原1)が食中毒や中毒ショック症候群を引き起こし,また慢性関節リウマチ,シェーグレン症候群,多発性硬化症などの自己免疫疾患の病因および発癌などに関与しているとの仮説が提唱され,スーパー抗原への関心が非常に高まっている.

 一般抗原は,マクロファージに代表される抗原提示細胞に取り込まれ,ペプチドに分解されてMHC分子の抗原結合溝に提示される.一方,抗原特異的レセプターを持つヘルパーT細胞は,T細胞レセプター(TcR)のα鎖,β鎖でペプチド抗原―MHC複合体を認識し,活性化される.通常,各々のT細胞は1種類のペプチド抗原に特異的であるとされ,1種類のペプチド抗原ではすべてのヘルパーT細胞の約0.01%程度しか活性化されないと考えられている.

retプロトオンコジーンの変異と遺伝性疾患

高橋 雅英

pp.830-832

 retプロトオンコジーンは,上皮成長因子レセプター(EGFレセプター)やインスリンレセプターなどと類似の受容体型チロンンキナーゼをコードしている1,2).これらは細胞膜貫通型の蛋白であり,細胞表面において特異的な増殖因子と結合することにより,チロシンキナーゼ活性が誘導され,細胞の増殖や分化にかかわっている.したがって,これらの蛋白にアミノ酸変異が生じれば,発現細胞の異常増殖や機能異常により種々の病気が起きることが予想される.retプロトオンコジーンは胎生期に一過性に生じる神経堤細胞由来の腫瘍(神経芽細胞腫,副腎褐色細胞腫,甲状腺髄様癌など)に特異的に発現することが知られており,この2年間にretが複数の遺伝性疾患の原因遺伝子であることが明らかになってきた.

グリレコーストランスポーター―GLUT4を中心に糖尿病の治療法を考える

江崎 治

pp.832-834

 1.GLUT遺伝子群と糖尿病

 糖輸送体(グルコーストランスポーター)は血中のグルコースを細胞内に特異的に取り込む役目を持つ約45~50kDaの膜蛋白である.すなわち,細胞の"口"に相当する役目を持つ.ヒトでは,現在2種類の糖輸送機構が知られている.第1は,細胞内外のNa濃度差に依存し,グルコースの濃度勾配に逆らって能動輸送するNa/グルコース共輸送体で,小腸や腎尿細管など特殊な部位に発現している.第2はグルコースの濃度差のみに依存し,拡散により輸送される促通拡散輸送体で,発見された順にGLUT1~5の番号が付けられている1).GLUT1は血液一組織関門(例えば,脳血液関門,網膜,胎盤など)に強く発現し,弱いながら他の組織にも一様に発現している.GLUT2は肝臓や膵β細胞に,GLUT3は脳に,GLUT4は骨格筋や脂肪組織に発現し,GLUT5は上部消化管で主としてフラクトースの吸収に関与している.

 これらのGLUT遺伝子群が注目を集めているのは,①糖尿病の原因となる遺伝子異常の候補となりうること,②環境の変化によりGLUTの遺伝子の発現量が変化し糖尿病の発症に関与する可能性があること,からである.①の可能性を明らかにするためpopulation studyや1inkage解析などの多くの研究が行われたが,結果は否定的であり,糖尿病の主要な成因となる可能性は少ない.②に関してはGLUT 4が注目を集めている.

近赤外分光分析と細菌検査

松永 貞一

pp.834-836

1.はじめに

 近赤外分光法とは,光のうち可視光領域と赤外領域の中間,すなわち700~2,500nmにその波長領域を持つ近赤外(NIR;near infrared)光の吸収現象に基づく分光法である.NIR域における吸収スペクトルの測定は,このスペクトルが複雑で解析が難しかったことや装置の完成度の低さなどから,物理学や化学の分野においてさえ特殊な扱いを受けていた.いわんや医学・生物学の分野では,近赤外光に対する生体物質の吸光係数が非常に小さく吸収されにくいため,計測手段としての利用はほとんど試みられていなかった1)

 しかし近年,技術の進歩に伴い微弱光検出器,パーソナルコンピュータなどの性能が向上したため,これまで欠点として捉えられていた"吸収されにくい"という性質が逆に長所として利用できるようになってきた.すなわち,生体組織のような分厚い物質を侵襲も破壊もすることなく,そのままの状態で近赤外光を透過させることにより,実時間でいろいろな情報が得られる点である2~4)

質疑応答 臨床化学

ERCP後の高アミラーゼ血症

植田 昌敏 , Q生

pp.837-838

 Q ERCPを行った翌日,血中アミラーゼ2,333IU/1,尿中アミラーゼ4IU/1でした.その次の日は血中アミラーゼ11700IU/1,尿中アミラーゼ36,220IU/1となり,その後次第にアミラーゼは下がってきました.このような例は,いままで膵炎患者では経験したことがありません.翌日の検査データからどのような状態が考えられるでしょうか、尿中アミラーゼの異常低値の意義についてもお教えください,なお,この患者のERCP施行前のアミラーゼ値は正常でした.

random amplified polymorphic DNA analysis

向出 雅一 , 引地 一昌 , Q生

pp.838-839

 Q 遺伝子診断法としてrandom amplified poly-morphic DNA analysisというのがあるそうですが,どのような方法か具体的にお教えください.

研究

酵素法による生体試料中D体アミノ酸濃度の測定法

中 恵一 , 下條 信雄 , 巽 典之 , 田端 省三 , 大川 二朗 , 清水 浩 , 杉山 正康

pp.841-844

 血中あるいは尿中のD-アミノ酸濃度を,汎用臨床化学検査自動分析装置で測定できる試薬の開発を行った.測定の原理は,D-アミノ酸オキシダーゼによってD-アミノ酸をケト酸に酸化する際生ずる過酸化水素を,ペルオキシダーゼにより利用しインダミン色素の生成を行うもので,吸光度測定によって濃度を求める方法である.本法の基礎的な信頼性検討の結果,自動分析装置を用いた測定で直線性,再現性にも優れていた.本法で得られた,血中D-アミノ酸濃度の健常値は,1.3~15.8μmol/lであった.腎機能に異常のみられた群では有意にD-アミノ酸濃度の上昇がみられたが,特に血中尿素窒素あるいは血中クレアチニンと高い相関はみられなかった.また,D-アミノ酸代謝に関係する腎D-アミノ酸酸化酵素の尿中逸脱量と,尿中D-アミノ酸濃度にも高い相関はみられなかった.

家庭用電子レンジを用いた銀染色法

佐々木 政臣 , 若狭 研一 , 桜井 幹己 , 田部 正則

pp.845-849

 家庭用電子レンジを用いて銀染色を行い染色時間の短縮化と操作の簡便化を図った.PAM,グロコット染色では,銀液にマイクロウェーブ(以下MW)を40~50秒間照射後,1~6分間放置することで良好な染色結果が得られ,グリメリウス,フォンタナ・マッソン染色では,銀液にMWを40秒間照射後,60℃艀卵器で1~2時間放置することで良好な染色結果が得られた.また,各銀液における硝酸銀の濃度はPAM染色では0.2%,グロコット染色では0.1%,グリメリウス染色では0.03~0.05%,フォンタナ・マッソン染色では0.125~0.125%が適当と思われた.

資料

CEA基準値の再検討―血清OEA値に及ぼす喫煙,性,加齢の影響

桑原 正喜 , 岩越 典子 , 坂野 俊和 , 萩野 真子 , 武馬 裕美子 , 北山 和代 , 有吉 寛

pp.851-855

 喫煙あるいは,性,年齢の血清CEA値に及ぼす影響の程度を明らかにし,臨床的に使用する基準値を再検討した.喫煙歴の把握できている健常人649名の血清CEA値を分析し,血清CEA値が喫煙の影響を大きく受けること,加齢の影響が見られることを再確認した.この成績を背景として,血清CEA値の基準値を喫煙量別に,あるいは非喫煙者においては年齢別に求めた.ROC曲線からは,癌疾患と非癌疾患を鑑別する至適なカットオフ値は得られなかった.しかし,喫煙量あるいは年齢を考慮した基準値をカットオフ値として用いることの有用性が示唆された.

私のくふう

細胞培養用CO2インキュベータを用いて微好気性菌を培養する方法

林 俊治 , 木村 浩一 , 杉山 敏郎

pp.856

1.はじめに

 微好気性菌を培義する方法としては,嫌気ジャーと微好気用ガスパックを用いる方法が最も一般的である.しかし,培養中はジャーを開けることができず,ジャーの外から中を観察することも難しく,決して使いやすい器具とはいえない.

 一方,確実に微好気状態を作ることが可能な器具として細胞培養用のCO2インキュベータがある.細胞培養の一般化に伴って,その普及は著しい.しかし,細胞培養用に作られたCO2インキュベータを用いて微好気性菌を培養しようとしても,うまくいかないことが多い,われわれはその原因として,CO2インキュベータ内の湿度が嫌気ジャー内に比べると低いことから,湿度の不足によるものではないかと考えた.そこで,細胞培養用CO2インキュベータの中に局所的に高湿度の環境を作ることによって微好気性菌を培養する方法を開発したので紹介する.

乳癌中のエストロゲンレセプター陽性細胞率の算出法―ポラロイド写真を用いて

澤田 茂博 , 貝森 光大 , 和田 龍一

pp.857-858

1.目的

 乳癌組織内のエストロゲンレセプター(ER)の動向は内分泌療法上重要であり,dextran-coated charcoal(DCC)法による生化学的測定値が用いられている.しかし,ER高値にもかかわらず内分泌療法に反応しない場合もあり1),近年免疫組織学的染色によるERの局在の検討が併用されつつある.また,乳癌組織中におけるERとプロゲステロンレセプターとの関係も両者の局在の検討抜きには考えられず,今後免疫組織学的な両者の検討はますます重要である.

 ところで,免疫組織学的染色を施行した場合,陽性細胞の定量化が必要であり,従来種々の方法が試みられている1~3).今回われわれは客観性および再現性に重点を置き,ポラロイド写真を用いて検討したので結果を報告する.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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64巻12号(2020年12月発行)

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62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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