icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査40巻10号

1996年10月発行

雑誌目次

今月の主題 糖尿病―診断・治療の指標

巻頭言

早期,軽症時からの徹底した管理を

河盛 隆造

pp.1111-1113

 糖尿病,特にインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)は,多因子の遺伝素因を有する症候群であると言われる.遺伝素因に,加齢,高エネルギー・高脂肪食,運動不足に基づく肥満,妊娠・出産,感染症,さらに精神的ストレスなどの環境因子が重なることによりNIDDMが発症する.WHOは,糖尿病を発症させないことを第1次予防,血管合併症の発症を防ぐことを第2次予防,合併症の進展による臓器障害のために非活動状況に陥ることを防ぐことを第3次予防,と呼んでいる.残念なことではあるが,現状の診療では第3次予防に主眼が置かれていると言わざるをえない.しかし,ライフスタイルに早期から介入し,第1次,第2次予防を成し遂げることも決して不可能ではなくなった.

 重症度とは個々の患者が発症から現在までに呈した臨床像の総和であるとされているが,その概念自体明確ではなく,治療反応性を指したり,長期的,生命的予後を指す場合など一定していない.また,種々の病因によって発症する臨床症候群である場合,その重症度を画一的に論ずることは当然ながら無理と言わざるをえない.糖尿病患者の重症度を,診断,分類するに際しても,その程度に応じて便宜上,軽症,中等症,重症という分類が用いられている.しかし,実際にはどの症例を軽症と定義するのかということになると,明確な解答が得られないのが実状である.

病態

血糖応答曲線から何を読み取るか

河盛 隆造

pp.1115-1120

 健常人にみる糖のながれを理解し,対象糖尿病患者では,糖のながれがどれだけ偏位しているか,的確に把握することができる時代になってきた.それは,1滴の血液から多くの情報を得ることができるようになったおかげであろう.すると,治療の理論付けが可能となってきた.従来,糖尿病の血糖管理はその目標値が甘く,血管合併症が発症・進展してから対処する例が大多数であった.これからの臨床糖尿病学は,決して血管合併症を発症させないこと,を目標としている.〔臨床検査40:1115-1120,1996〕

インスリン分泌能の把握

羽倉 稜子 , 吉田 洋子

pp.1121-1126

 インスリン分泌能を検索するためには,GTT時の血中IRI反応,および血中CPR,尿中CPRが広く用いられている.なかでも,グルコース負荷後30分の△IRI/△BG,空腹時と食後2時間の血中CPR,24時間のCPR排泄量は,疾患の診断や鑑別のために極めて有用であることを述べた.診断に比べ,治療の指標としては,有用性に乏しいとわれわれは考えている.〔臨床検査40:1121-1126,1996〕

インスリン抵抗性の把握

佐藤 義憲 , 佐藤 譲

pp.1127-1130

 インスリン抵抗性は,グルコーススクランプ法,SSPG法,ミニマルモデル法といった本格的方法で,あるいはインスリン負荷試験,糖負荷試験のように簡便な方法で測定できる.また,日常臨床では,空腹時IRI,BMI,中性脂肪値などからインスリン抵抗性を推定することも多い.このように,インスリン抵抗性を把握するための方法はいくつかあるが,これらはそれぞれの目的に応じて使い分ける必要がある.〔臨床検査40:1127-1130,1996〕

技術解説

血糖自己測定の精度管理

内潟 安子

pp.1131-1136

 自己血糖測定という手技のもたらす恩恵は大きく,糖尿病患者のQOLを悪くする長期合併症の発症頻度を低下させるのにたいへん役だった.自己血糖測定値の精度は今日市販されているものはどれも良く,どの機器を使用しても遜色ない.またその手技もたいへん簡単になってきている.われわれ医療側は,自己血糖測定することが患者の煩わしさを増大させずに,測定するのに価値ある時間帯をよく教えること,そして測定した値を血糖コントロールに有効に反映させるよう指導することが肝心であろう.〔臨床検査40:1131-1136,1996〕

グリコアルブミン

田中 逸

pp.1137-1141

 グリコヘモグロビン(HbA1c)は過去1~2か月間の中期的血糖変動を反映する指標であるのに対して,グリコアルブミン(GA)は過去1~2週間の短期的な血糖変動を反映する指標である.全アルブミン中の安定型糖化アルブミンの割合を2段階の高速液体クロマトグラフィ法で測定する.糖尿病は慢性疾患であるが,短期的な指標を必要する場合は非常に多く,GAとほかの指標をうまく併用して血糖変動の推移を把握し,適切な血糖管理を行うことが必要である.〔臨床検査40:1137-1141,1996〕

1,5アンヒドログルシトール(1,5AG)

山内 俊一

pp.1143-1148

 1,5AGは,体内に豊富に含まれる糖アルコールで,高血糖に伴う尿糖により再吸収が拮抗阻害を受け,尿中へ喪失されて血中濃度が低下する.近年,日本独自に研究が進められ,世界に先駆けて血糖コントロール指標としての臨床応用に成功した.現在,日本全体での測定件数は月間30万件に達する.1,5AGは特に軽度高血糖領域で感度鋭く,リアルタイムに変化して,血糖変動を正確・確実に知らせる.また個人の正常値を持ち,治療の個別化にも役だつ.〔臨床検査40:1143-1143,1996〕

ケトン体

洪 尚樹

pp.1149-1154

 アセトン,アセト酢酸,3-ヒドロキシ酪酸からなるケトン体は,絶食やインスリンが不足した状態で,脂肪組織からの遊離脂肪酸放出の亢進により肝で産生され,脳をはじめとする肝外組織のグルコースの代用エネルギー源である.ケトン体の過剰産生が原因で起こる糖尿病性ケトアシドーシスは代謝異常の極限状態ともいえるが,このほかにもケトン体は,その絶対値やその比で,代謝状態や病態を知るうえで重要な情報をわれわれに与えてくれる.〔臨床検査40:1149-1154,1996〕

GAD抗体

小林 哲郎

pp.1155-1159

 GAD抗体は膵島細胞(主としてβ細胞)脳などに存在するグルタミン酸脱炭酸酵素(glutamic aciddecarboxylase)に対する自己抗体である.GAD抗体はGADのレコンビナント蛋白を用いて簡便に測定でき、国際標準化も進んでいる.この抗体が糖尿病患者で陽性の際には,インスリン依存型糖尿病(IDDM)もしくは緩徐に進行するIDDM (slowly progressiveIDDM;SPIDDM)である可能性が高くなる.特にSPIDDMではGAD抗体の抗体価は高値で診断的有用性が高い.〔臨床検査40:1155-1159,1996〕

AGE

藤井 渉 , 牧田 善二

pp.1161-1166

 生体内蛋白が還元糖と非酵素的に反応することにより,特有の蛍光を持つ褐色のAGEと呼ばれる物質が生成する.糖尿病患者ではAGEが組織に蓄積し,合併症(腎症,網膜症,神経症など)の成因の1つと考えられている.AGEは多様な物質であり,それぞれのAGEの性質に応じて,機器分析,蛍光の測定,免疫学的手法などを用いて定量される.AGEの測定技術は,現在のところ普遍的なものではなく,その普及が望まれる.〔臨床検査40:1161-1167,1996〕

話題

HbA1cの測定の標準化

片山 善章

pp.1169-1174

はじめに

 糖尿病患者の血糖コントロール状態の中期指標としてグリコヘモグロビン(HbA1c)が広く用いられている.その測定法は,現在,高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法が主流を占めているのは周知のとおりである.利用されている機種は京都第一科学,東ソーの2社のHPLC法が90%以上を占めているが,これらの測定装置によるHbA1c測定値は,装置間の誤差はもちろんのこと同種装置間においても誤差が生じている場合がある.その最大の原因は不安定型HbA1c分画の取り扱いが施設によって異なっていることである.すなわち不安定型HbA1c値に差が生じる.最近は装置内で不安定型HbA1cの除去が可能になっているが,HPLC法が普及しはじめた当初は不安定型HbA1cを全血試料溶血液で溶血処理して室温放置することによる前処理法による除去法が利用されていた.したがって,この前処理の実施の有無によってHbA1c値が異なり,HbA1c値の施設間誤差が生じ,糖尿病診療に混乱をきたしている.

 このような現状において,日本糖尿病学会の学術調査のテーマとして「HbA1cの標準化」が1993年8月に取り上げられた.現在も検討中であるが,本稿では今までの3年間の活動内容を紹介する.

非観血的血糖測定装置

菊地 眞

pp.1175-1176

1.はじめに

 採血による観血的連続血糖測定では,総採血量が多くなり,また採血局所における出血,感染,疼痛が問題となる.非観血的な検体採取法について検討を重ねた結果,非観血的に表皮角質層を除去した後に,皮膚表面を減圧吸引することにより微量な検体(吸引浸出液:suction effusion fluid:以下SEF)が採取できることを見いだした.吸引浸出液量は400mHg陰圧時で約36±11μl/時・cm2と微量であるため,採取に適する吸引装置が必要であり,また糖濃度測定には微小な半導体型バイオセンサを使用する必要がある.

座談会

糖尿病管理に対する臨床データの有効利用法

河盛 隆造 , 遅野井 健 , 松葉 育郎

pp.1177-1185

 河盛(司会)"糖尿病は検査の病気である"と言われてきました.糖尿病では,ほとんどが症状が出ないので,検査により患者の病態を把握して,適切な治療をしなければいけないということでしょう.しかし,今や糖尿病患者の血糖応答反応を判断する指標は多くあって,病態を把握しているのに,適切な治療を行っていない,という指摘も多いわけです.

 そこで本日は,最前線で多くの患者さんを診ておられる先生方に,数多い指標をいかにうまく組み合わせて患者の1人1人の動態を捉えるか,そしてそれをいかに治療にフィードバックしていくか,ということについて教えていただきたいと思います.

今月の表紙 表在性真菌症の臨床検査シリーズ

まれな表在性または深在性皮膚真菌症の臨床検査・1

黒癬

山口 英世 , 内田 勝久

pp.1106-1107

 黒癬(tinea nigra)は,主として年少者の手掌に発症し,自覚症状がないことに加えて境界明瞭で非隆起性の褐色ないし黒色の不規則な形の色素斑をつくることを特徴とする表在性真菌症である(図1).もともと熱帯,亜熱帯地域にみられる疾患として知られ,特に中南米からの報告例が多い.一方,わが国には黒癬はないといわれてきたが,1983年に沖縄で第1例が見つかつた.それ以来沖縄をはじめ九州や四国の南部からも報告例が相次ぎ,近年さらに発生地域が拡大して関東(東京,神奈川)でも症例がみられるようになった.今後は全国的に患者が発生するものと予想されるが,前号まで述べてきた主な表在性皮膚真菌症に比べれば,まれな疾患であることには変わりない.

 黒癬の原因菌は黒色真菌に属する一菌種であるが,その分類学的位置についてはなお議論が残されている.現在,Cladosporium werneckii, Exo-phiala werneckii, Phaeoannellomyces werne-ckii,またはHoztaea werneckiiの菌名が統一されないまま使用されているが,わが国では西村・宮治(1984年)によって命名されたH.werneckiiが一般的である.

コーヒーブレイク

天上大風

屋形 稔

pp.1154

 昭和17年旧制新潟高校へ入った頃,坂部という先生がおられ化学の教授なのに当時有数の書家であった.この方に書いていただいた「天上大風」という書を手拭いにして皆大切に持っていた.元来は越後の生んだ良寛の書にある文字で一見して豪快さに魅きつけられるものがある.それで同じく越後出身の相馬御風の『大愚良寛』という書物をひもとく気になったりした.

 ある日フィッシャーというドイツ語の教師の時間にRyokanについて知っている人は手を挙げうといわれた.一知半解ながらドイツ人よりは知っているだろうと思って挙手したら,ドイツ語で話せという.一年足らずのドイツ語がすらすら出るはずはなく出るものは冷汗ばかりで大いに後悔した.あとでこの教師は「蓮の露」という良寛についての英文著書もあると聞いて恐れ入ったものである.

印象記 第2回国際緊急保健医療援助研修

第2回国際緊急保健医療援助研修に参加して

山田 誠一

pp.1186-1190

研修の概要

 国際緊急保健医療援助研修は国内研修と海外研修からなり約4週間の日程で行われた.1996年2月16日に国立国際医療センターに集合し,午前11時の開会式をもって始まった.3月16日からの海外研修ではコスタリカ・バルバドス・ハイチのカリブ海の国々を周り,PAHO (pan american health organization),コスタリカ厚生省,赤十字,診療所,病院,サナトリウム,学校,保健施設などを訪問した.マイアミとシアトルを経由して成田に戻ったときには,これでやっと日常生活に戻れると実感し,ほっとした.

 研修は国内研修と海外研修がそれぞれ2週間で,私の専門の医動物学とは少し遠い内容であったが,大学にいては体験できない非常に有意義な経験を積ませてもらった.この研修により自分の世界が広がったという実感がもてた.現在は今後この研修の経験をどういうふうに活かすか思案しているところである.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

パルスフィールドゲル電気泳動法

大原 智子 , 伊藤 喜久

pp.1191-1196

はじめに

 パルスフィールドゲル電気泳動(pulsed-field gelelectrophoresis;PFGE) とは,電場の方向転換を繰り返すことにより巨大DNA分子を分離する技術である.通常のアガロース電気泳動が20kb (kb:キロベース,103塩基)以下に対し,PFGEでは2Mb(Mb:メガベース,106塩基)に及ぶDNA分子を分離できる.その対象は細菌,酵母からヒトに至るまでの多くの生物や培養細胞のDNAのみならず,蛋白や多糖体にも広範囲に応用されている.本稿ではPFGE法の基本的原理・操作法について,われわれが実際に行っているメチシリン耐性ブドウ球菌(methicillin-resis-tant Staphylococcus aureus;MRSA)のDNA解析を一例に解説する.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

リン病

松井 隆 , 荒川 創一 , 守殿 貞夫

pp.1197-1200

はじめに

 リン病(淋菌感染症)は性病予防法に規定されている現在でも重要な性感染症の1つである.リン菌(Neis-seria Gonorrhoeae)の古典的な診断法には鏡検および分離培養がある.リン菌はグラム陰性双球菌で,分泌物や擦過検体塗抹のグラム染色や,レフレル染色による鏡検で診断可能であるが,ほかの細菌との区別が困難な場合も多い.分離培養にはチョコレート寒天培地やサイヤー・マーチン培地などが用いられてきた.しかし培養法はリン菌が宿主外で生存性が低いことから偽陰性の可能性がつきまとう.一方,より簡便で客観性に優れる非培養検出法に酵素抗体法(EIA)によるゴノザイム(Gonozyme:アボット社)がある.ゴノザイムの検出感度は2×102CFU/アッセイ程度と報告されている1).本キットはポリクローナル抗体を用いている点で特異性に若干の問題があり特に一般細菌が多く存在する咽頭や直腸からのリン菌検出には不適である.

 最近ではこれらの方法に加え,より特異性や感度に優れた遺伝子診新法が臨床に応用されている.リン菌検出における遺伝子診断には核酸ハイブリダイゼーションによるDNAプローブ法と,DNAを増幅して検出するPCR法およびLCR法が開発されており本章ではこれらについて解説する.

トピックス

virus associated hemophagocytic syndrome〔VAHS〕

和田 靖之

pp.1201-1203

1.はじめに

 virus associated hemophagocytic syndrome(VAHS)は,1979年にRisdallらが良性の組織球増殖症の1つとして報告して以来1),ウイルス感染のみならず,さまざまな感染症で発症することが報告され,また各種の免疫異常状態を根底に持つ患者の経過中に合併することもいわれており2~3),これらの疾患群を近年hemophagocyticsyndrome(HPS)と総称している.VAHSは,ウイルスなどの先行感染の後,比較的良性で反応性の組織球の増殖と以前は考えられていたが,致命的な症例も多く報告されるようになり,また悪性リンパ腫との鑑別が困難であった症例も散見されている4).本稿では,われわれが経験したウイルス感染が関連したと考えられるHPS,つまりVAHSの症例も含めて概説する.

Mato細胞

間藤 方雄

pp.1203-1204

 Mato細胞は突起で互いに結び合って,脳の細動脈や細静脈の周りを取り囲む細胞群である.同細胞は蛍光顕微鏡下で黄色の自然蛍光を発する顆粒を多数含むことから,MatoのFGP細胞(fluorescent granular perithelium;蛍光性顆粒周囲細胞)と名付けられている.FGP細胞は細血管の基底膜と,その外側を囲む星状膠細胞の限界膜との間にある間隙(いわゆるVirchow-Robin腔)に位置している.この間隙は血液成分の脳への移行,あるいは脳内産物の血中への移行の通路に当たっている.細胞内の顆粒は酸性ホスファターゼ,エステラーゼ,リパーゼ,プロテアーゼなどの各種の酵素を含み,リソソームに属する.

 生理的条件下に,若年動物の脳標本を作製し,FGP細胞を観察すると,弱酸性の原形質にPAS染色でよく染まる多数の顆粒を持っている.この顆粒が前述の蛍光性顆粒と一致する.電顕的には同顆粒は直径0.2~0.8μmの電子密度の高い顆粒である.同細胞は明るい胞体を持ち,ミトコンドリア,小胞体の数は一般に多くない.一般のマクロファージと異なる点は偽足は持たない反面,深い原形質膜の陥入(infolding)を多数有することで,これらは本細胞がいわゆる貪食能は欠くが,液性成分ないしごく小さな顆粒を選択的に取り込む性質に関連するものと想像している.

新しい肝炎ウイルス―HGV/GBV-C

上田 一仁 , 清水 章

pp.1205-1207

 血液を介してヒトに感染し肝炎を引き起こす新しい肝炎ウイルスの存在が1995年に相次いで2つの施設から報告された.1995年1月の輸血の安全性に関する学会で,Genelabs社のKimら1)のグループは,仮にG型肝炎ウイルス(hepatitisG virus;HGV)と名付けた因子をこれまでにない肝炎ウイルスであると報告した.

 HGVは非ABC輸血後慢性肝炎の患者から得られたプラス鎖RNAウイルスで,輸血前の保存血清にはHGV-RNAは認められず,輸血後アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇に伴ってHGV.RNAが検出された.HGVはアミノ酸配列の類似性からフラビウイルス科であることが明らかになった.一方,1995年4月,Ab-bott社のMushahwarら2)のグループは約30年前に肝炎を発症した外科医の血清から,タマリン(南米産キヌザルの一種)に肝炎を発症させることができ,継代培養が可能な因子を発見した.この外科医のイニシャルから"GB agent"と名付けられたこの因子は非A-E型の新しい肝炎ウイルスである可能性が強く示唆された最初にタマリンから検出された因子はGBウイルスA (GBV-A),GBウイルスB (GBV-B)の2種でともにフラビ様ウイルスであった.

質疑応答 臨床化学

ミクロゾームトリグリセリド転送蛋白の基質異常・機能異常検査

横出 正之 , 北 徹 , Q生

pp.1208-1209

 Q ミクロゾームトリグリセリド転送蛋白(MTP)の基質異常あるいは機能異常を知るため血清ベースで行える検査としてどんなものが現在あるでしょうか.アポB-100,アポB-48の定量検査はその意味で意義があるのでしょうか.関連性も含めてお教えください.

質疑応答 臨床生理

アース接続の必要性

白井 康之 , Q生

pp.1210-1211

 Q ME機器を使用するときに接地(アース)は必ず接続しなくてはならないのでしょうか.接地の不要なME機器はないのでしょうか.

シールドマットの必要性

白井 康之 , Q生

pp.1211-1212

 Q 心電図や脳波検査で交流雑音対策としてシールドマットをベッドに敷くのはなぜですか.

研究

末梢血幹細胞採取時期決定における網赤血球強蛍光分画の有用性

岡田 恭孝 , 小池 考一 , 萩野 真子 , 伊藤 妙 , 神村 信吾 , 安藤 学 , 新海 佳子 , 矢神 幸子 , 桑原 正喜 , 有吉 寛

pp.1213-1218

 自動網赤血球測定装置R-3000(東亞医用電子)は,網赤血球の数を計測する以外に,網赤血球を成熟度に応じて,LFR,MFR,HFRの3分画に分類する機能を有している.

 これらの3分画においてHFRは,幼若網赤血球を示し,同時に骨髄造血能を把握する指標になることがこれまでに報告されている.

 今回,末梢血幹細胞採取を予定した症例に対し,HFRとCD 34陽性細胞率の経時的変動を観察した結果,HFRの変動は,CD 34陽性細胞に先行することが示唆された.このため,HFRに基準値を設定することを検討し,それを利用して末梢血幹細胞を効率的に採取し得る時期を予測することが80%の確率で可能となった.

病理検査室における溶媒再生に関する基礎的検討

中村 圭吾 , 八木 健一 , 西村 千枝子 , 谷口 恵美子 , 横井 豊治 , 覚道 健一

pp.1219-1222

 病理検査室では,何種類かの有機溶媒廃液を排出している.筆者らはアルコール廃液とキシレン廃液の2種類について,市販の溶媒蒸留装置を用い,実用性について検討したので報告する.パラフィン,アルコールの混入したキシレン廃液から,高純度のキシレンを回収できた.しかし,キシレンの混入したアルコールからアルコールの分離精製は,キシレンの混入を防ぐことができなかった.蒸留残渣としてのパラフィンや色素成分は,固形物として処分することができた.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

62巻12号(2018年12月発行)

今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら