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文献詳細

雑誌文献

臨床検査40巻11号

1996年10月発行

文献概要

特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査 血栓症の検査 2.血液凝固系の検査

9)ヘパリンコファクターH

著者: 近藤信一1 小出武比古2

所属機関: 1神戸大学医学部附属病院検査部 2姫路工業大学理学部生命科学

ページ範囲:P.128 - P.130

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原理・測定意義
 ヘパリンコファクターⅡは,正常血漿中に約90mg/l存在する分子量66,000の糖蛋白質で,主として肝で合成される.ヘパリンコファクターⅡの阻害特異性は非常に高く,血液凝固因子ではトロンビンのみを阻害する.しかし,反応部位のPl位のアミノ酸残基がロイシンであることから,キモトリプシンやカテプシンGに対しても阻害活性がある.アンチトロンビンと同様にヘパリンコファクターⅡのトロンビン阻害も種々のグリコサミノグリカン(GAG)存在下に著しく(1,000倍以上)促進されるが,アンチトロンビンよりも10倍高濃度のヘパリンを必要とする.しかし,デルマタン硫酸で促進されるのはヘパリンコファクターⅡだけであり,デルマタン硫酸の産生細胞が,血管平滑筋細胞や線維芽細胞であることから,ヘパリンコファクターⅡは,血管内よりも,むしろ血管外の結合組織において機能すると考えられている.デルマタン硫酸のこのような性質はアンチトロンビン共存下でのヘパリンコファクターⅡの特異的な活性測定に利用されている.
 ヘパリンコファクターⅡ欠乏症の最初の報告は,1985年にTranら1)とSieら2)によってなされた.発端者は,それぞれ中大脳動脈血栓症と深部静脈血栓症を発症しているものの,Tranらの症例1)では,発端者の家族の1人に血栓性静脈炎の病歴があるほかは,ヘパリンコファクターⅡが同様に低値の家族は,いずれも無症状である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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