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文献詳細

雑誌文献

臨床検査40巻11号

1996年10月発行

文献概要

特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査 血栓症の検査 3.線溶系の検査

6) PAI-1

著者: 三室淳1

所属機関: 1自治医科大学医学部血液医学研究部門止血血栓

ページ範囲:P.165 - P.167

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原理・測定意義
 血管内に血栓が生ずると,血栓を溶解するメカニズムすなわち線溶系が働き出す.この血栓溶解が早すぎれば出血を,逆に遅すぎれば血栓の増大から血管の閉塞をきたす.線溶反応の調節に主要な役割を果たしているのがplasminogen activator inhibitor 1(PAI-1)である.凝固反応の結果フィブリン血栓が生じると,フィブリンにプラスミノゲンと組織型プラスミノゲンアクチベーター(tPA)が結合する.その結果,tPAによりプラスミノゲンがプラスミンに変換され,プラスミンがフィブリンを分解する(図1).
 血栓溶解はPlgの活性化段階ではtPAのインヒビターであるPAI-1により,プラスミンが生じた後はプラスミンのインヒビターであるα2プラスミンインヒビター(α2PI)により制御調節されているが(図1),α2プラスミンインヒビターはフィブリンα鎖に結合しているため血栓溶解が起こり始める初期で血栓溶解を抑制する.しかし,血栓溶解がいったん始まると血栓溶解を遅らせる作用は弱く,プラスミンの作用を血栓上にとどめてプラスミンによる他の血漿蛋白や細胞膜蛋白の分解を防ぐことに主要な作用がある.先天性欠乏症や著明な肝機能障害がない限り,プラスミノゲンやα2プラスミンインヒビターの血液濃度はほぼ一定に保たれているのに対し,種々の刺激によりtPAやPAI-1の血液濃度は大きく変動する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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