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文献詳細

雑誌文献

臨床検査40巻11号

1996年10月発行

文献概要

特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査 血栓症の検査 4.血管内皮細胞の検査

4)血漿P-セレクチン

著者: 半田誠1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部輸血センター

ページ範囲:P.191 - P.194

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はじめに
 P-セレクチン(PS)は血小板と血管内皮細胞の分泌顆粒であるα顆粒ならびにWeibel-Palade小体の膜に内在する膜糖蛋白で,それらの細胞が刺激を受け,脱顆粒とともにエクソサイトーシスにより原形質膜と融合して細胞表面に表出する.そして活性化され脱顆粒したそれらの細胞と白血球の結合を仲介する.PSと結合する白血球は好中球や単球以外に好酸球,好塩基球,NK細胞そしてTリンパ球の一部(メモリーTリンパ球など)が知られている.この結合は親和性が高いものの解離速度も速く,実際血液の流れに依存して可逆性となる.
 この現象はあたかも白血球がスピードを緩め血管壁上を転がり流れてゆくように見えるためローリングと呼ばれる.ローリングは炎症性刺激などで活性化された血管内皮細胞のみならず活性化した血小板の集まりである血栓上でも観察される.ローリングに引き続き白血球は活性化され,インテグリンやイムノグロブリンスーパーファミリーを介した強固な接着反応(膠着)が起こり,細胞は接着部位に停止する.そして炎症細胞が血管外に遊出する.すなわち,PSは生体内での血小板と血管内皮細胞の活性化を反映するマーカーと考えられる.PSはあくまでも膜蛋白であるが,血漿中にもその可溶型抗原が存在しており,種々の疾患や病態でそのレベルが変化することが最近明らかとなってきた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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