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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査40巻4号

1996年04月発行

雑誌目次

今月の主題 注目のグラム陽性菌

巻頭言

グラム陽性菌をめぐる最近の話題

猪狩 淳

pp.377-379

 最近,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),ペニシリン耐性肺炎菌(PRSP),A群溶血性レンサ球菌をはじめとする好気性グラム陽性球菌による感染症の話題が感染症学会,化学療法学会,環境感染学会,臨床病理学会および感染症関連学術誌などで取り上げられ,注目を集めていることは周知のことである.数年~十数年前はグラム陰性桿菌感染症が話題を独占していた.感染症の起因菌は時代とともに変化し,再びグラム陽性球菌の時代が到来したことを感じさせる.

 以下,最近話題になっているグラム陽性球菌による感染症について概説することにする.

ブドウ球菌

MRSAの耐性獲得の遺伝学

村上 博子 , 平松 啓一

pp.381-386

 MRSAは1961年に英国で最初に分離され,その後35年を経た現在では,全世界から分離されるようになっている.過去30年の間に,多種多様な抗生物質が開発,実用化され,細菌は自分自身の遺伝子を変化させたり,外来の遺伝子を獲得したりして,これらの薬剤に対抗すべく進化を続けてきた.MRSAが,これらの多くの薬剤に多剤耐性,高度耐性化するためには,いくつかの進化の段階を経る必要があったことは容易に想像できる.本稿では,MRSAのβ-ラクタム系薬に対する高度耐性化の,各段階に対応した遺伝的変化について解説する.〔臨床検査40:381-386,1996〕

コアグラーゼ陰性のブドウ球菌の新分類

江崎 孝行 , 河村 好章

pp.387-391

 Staphylococcus属の菌種は分類学的にはFamilyMicrococcaceaeから分離し,GC%の低いBacillus属やListeria属に系統的に近いことが明らかになった."好気性グラム陽性球菌でカタラーゼ陽性"といった旧来の定義に当てはまる菌種は16属に分布しており,もはやこの定義ではstaphylococciを正確には同定できなくなった.〔臨床検査 40:387-391,1996〕

レンサ球菌

劇症型A群レンサ球菌感染症

五十嵐 英夫 , 柏木 義勝 , 遠藤 美代子 , 奥野 ルミ , 榎田 隆一

pp.392-398

 近年,わが国でもA群レンサ球菌を起因菌とするショック,多臓器障害,軟部組織の壊死など,重篤な病態の進行が非常に速く,死亡率の高い劇症型A群レンサ球菌感染症が散見される.当初,病原性の強い新たなA群レンサ球菌の出現ではないかと騒がれたが,そのような証拠はこれまで明らかでない.本症患者由来A群レンサ球菌の疫学的調査によると,ある限られた血清型だけに収斂することもみられていない.発病機序については発熱性毒素がスーパー抗原の1つであることからいろいろ検討されているが,本症の激烈な病態をすべて説明できるような機序は不明である.本症の特徴は患者の血液や組織などからA群レンサ球菌が検出される敗血症であり,分離株はペニシリン感受性である.〔臨床検査40:392-398,1996〕

Streptococcus milleri group

新里 敬 , 草野 展周

pp.399-403

"Streptococcus milleri group"は全身に常在するレンサ球菌である.膿瘍形成性疾患を惹起し,嫌気性菌との混合感染が比較的多く認められる.嫌気環境下や炭酸ガス環境下での培養が望ましく,菌種レベルの同定には酵素反応試験が必要である.病原因子はまだ明確ではないが,菌体外酵素の産生,莢膜の存在,嫌気性菌との相乗作用などが考えられている.〔臨床検査40:399-403,1996〕

B群レンサ球菌による新生児感染症

松田 靜治

pp.404-407

 新生児期のB群溶レン菌感染症は,感染経路の特異性(垂直感染,水平感染)とともに発症例は少ないが,致命率の高いことから重症感染症の代表的疾患である.病態上早発型(肺炎・敗血症),遅発型(髄膜炎)に分けられ,血清型別上若干の特徴がみられる.対策としては,妊婦保菌者の正確な検出方法の確立と保菌妊婦の抗体保有状況の把握に努めることが大切であり,抗菌剤投与など治療の一端を述べた.〔臨床検査40:404-407,1996〕

新しいレンサ球菌同定キット

河村 好章

pp.409-416

 レンサ球菌は臨床から高頻度に出現しているにもかかわらず,正確な同定ができない菌群である.近年レンサ球菌同定キットとして2品種(Rapid ID32STREP,ストレプトグラム)が発売され,利用できるようになった.これら同定キットはβ溶血性レンサ球菌,Enterococcus,Lactococcusなどでは93%以上の同定精度を示し有用である.しかしα溶血性レンサ球菌の一部の菌群では同定精度が低く,その同定結果に注意を払う必要がある.〔臨床検査40:409-416,1996〕

肺炎球菌

喀痰からの分離・同定

小栗 豊子

pp.417-424

 喀痰からの肺炎球菌の分離・同定法について述べ,最近の市販血液寒天培地では典型的な集落を形成しない場合があることを強調した.喀痰からの本菌種の分離頻度は,集計方法によりかなり差が生ずることを当検査室の集計成績より示した.肺炎球菌の検出された喀痰の性状は,膿性痰に多いものの,その色調は鉄サビ痰は少なく,黄色調のものが多かった.本菌種は喀痰から最も多く分離されるが,その菌型は3,6,19,23型が優位であり,特に3型以外の3種の菌型は多剤耐性肺炎球菌の優位菌型に一致する.〔臨床検査40:417-424,1996〕

ペニシリン耐性肺炎球菌の疫学

山崎 透 , 那須 勝

pp.425-430

 肺炎球菌は,市中肺炎の最も重要な起炎菌であり,細菌性髄膜炎,中耳炎,副鼻腔炎,慢性気道感染症の急性増悪の起炎菌となる.ペニシリン耐性肺炎球菌は,1980年代後半から急速に増加し,中等度耐性菌は,約40~50%にみられ,高度耐性菌は数%であるが,世界的にも増加傾向を示し,多剤耐性化しているため今後とも注意していく必要がある.〔臨床検査40:425-430,1996〕

ペニシリン耐性肺炎球菌の耐性機構

久我 明男 , 井上 松久

pp.431-435

 肺炎球菌は中耳炎,副鼻腔炎,慢性気道感染症、細菌性髄膜炎などの起因菌であり,ペニシリンをはじめとしたβ-ラクタム系薬に耐性を示すペニシリン耐性肺炎球菌の増加が世界中で問題となっている.これらペニシリン耐性肺炎球菌は大病院での分離率増加のみならず,市中病院の分離菌からも検出される.さらに本耐性菌は多剤耐性化の傾向にあり,検査に携わる者としてはその動向に注意しておく必要がある.〔臨床検査40:431-435,1996〕

ペニシリン耐性肺炎球菌のスクリーニング

古谷 信彦 , 山口 恵三

pp.437-441

 1977年に南アフリカでペニシリン耐性肺炎球菌が初めて報告されて以来,この耐性株による感染症が世界各地から報告されている.

 本邦においても1990年以降,その分離頻度が急速に増加しており,従来のペニシリンを中心とした治療を見直さなければならない必要が生じてきた.

 このような状況を背景としてペニシリン耐性株か否かのスクリーニングは抗菌薬の選択にきわめて重要なものとなってきている〔臨床検査40:437-441,1996〕

腸球菌

腸球菌の高度薬剤耐性―ゲンタマイシン・ペニシリン・バンコマイシン耐性

池 康嘉

pp.443-448

 近年,腸球菌の臨床分離頻度が増加している.欧米においては高度多剤薬剤耐性腸球菌が最も重要な院内感染原因菌となっている.腸球菌はセフェム・アミノグリコシド系薬剤に自然耐性で,しかもすべての薬剤に獲得耐性となる.重症院内感染の原因となる薬剤耐性は高度ゲンタマイシン,ペニシリン,バンコマイシン耐性である.腸球菌には,グラム陽性菌では唯一の高頻度接合伝達性プラスミノゲンが存在し,これらの薬剤耐性の拡がりに関与している.〔臨床検査40:443-448,1996〕

尿路感染症と腸球菌群

広瀬 崇興

pp.449-455

 尿路感染症における腸球菌の大部分はE.faecalisであり,過去20年間で増加してきた.E.faecalisは大腸菌などと比べると,実験的にも臨床的にも病原性は弱いものの,単独感染でも明らかに急性腎盂腎炎やurosepsisを発症させており,特に菌数が多い場合や易感染性患者では無視できない.血清型別では2型と4型株の病原性が強かった.血清型別により院内尿路感染を疫学的に調べると交差感染の可能性も示唆された.〔臨床検査40:449-455,1996〕

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

PCR法

宮地 勇人

pp.457-462

はじめに

 ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction;PCR)は,特定の塩基配列(DNAまたはRNA)を高度に増幅することによって病因遺伝子の迅速な検出や変異の解析が可能で,遺伝子診断における最も重要な技術の1つである.近年,操作法や酵素の改良,新しい解析技術や自動化の導入がなされ,その臨床検査技術としての有用性はいっそう高まりつつある.本稿ではPCRについて,その基本原理に基づく反応条件設定,各種解析技術さらに自動化について述べる.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

C型肝炎ウイルス

小原 道法

pp.463-467

はじめに

 C型肝炎は血液を介してC型肝炎ウイルス(HCV)が感染することにより引き起こされる.感染後高率に慢性化し(70~80%),肝硬変やさらに肝癌に移行する確率が高いといわれており臨床上重大な問題となっている.日本において非A非B型肝炎の大部分はC型肝炎であり,感染者は約200万人にのぼるとみられており重大な国民病と考えられている.分離同定が困難を極めた病因ウイルスであるHCVも分子生物学的手法により遺伝子がクローニングされ1~3),免疫電子顕微鏡法により粒子形態も同定され4),その構造および構成蛋白質の機能が明らかにされつっある.HCVは日本脳炎ウイルスや黄熱病ウイルスと同じフラビウイルス科に分類され,その核酸およびアミノ酸配列の検討から現在少くとも6つのグループに大別されている.多数のC型肝炎の患者からウイルス遺伝子がクローニングされ,その塩基配列および推測されるアミノ酸配列の比較検討の結果,日本では2つのグループ(グループ1および2)に大別され,さらにそれぞれ2つのサブタイプに分けられ各グループのHCVでは蛋白質合成開始効率やインターフェロン感受性も異なることが明らかとなってきた5)(表1).

 ウイルスの感染を診断する方法としては,ウイルス抗原の検出と特異抗体の検出の2とおりの方法がある.

今月の表紙 表在性真菌症の臨床検査シリーズ

皮膚糸状菌症 1.原因菌と直接鏡検

山口 英世 , 内田 勝久 , 楠 俊雄

pp.372-373

 皮膚糸状菌症(白癬)は,皮膚糸状菌と総称される分類学的に近縁な一群のケラチン(角質)好性の糸状菌が,完全に角化した表皮組織:角質層,毛,爪に侵入し発育する結果引き起こされる局所感染であり,俗に"みずむし"などと呼ばれる.白癬はさまざまな病型を含むものの,全体としては真菌症の中で最も発生率が高く,罹患者は全人口の約10%にものぼると言われる.白癬の症状は,特殊な病型を除けば比較的軽いが,角化組織内に侵入した菌は生体防御系から免れて容易に排除されないばかりか,抗真菌剤による治療にも抵抗して難治性となるかまたは再発を繰り返す例も少なくない.またいったん治癒した場合でも,皮膚糸状菌が皮膚の常在菌であるうえに,ヒトからヒトまたは動物(ペット,家畜など)からヒトへ伝播するために,容易に再感染が起こりうる.このような理由から,白癬は発生率のみならず治療対策の面からも表在性真菌症の中で最も厄介な疾患といえる.

 これまで類縁菌を含めて約40種の皮膚糸状菌が記載されており,そのすべてが不完全菌類の中の3つの属Trichophytom, Microsporum, Epidermophytonのいずれかに所属する.しかし実際に国内で患者などから分離される菌種の数はさほど多くはない.

コーヒーブレイク

宇都宮の学会から

屋形 稔

pp.407

 1995年11月中旬には宇都宮市で第24回日本臨床病理学会総会が開かれた.総会長は河合 忠教授で,日本のみならず世界の先頭に立って斯学を開拓した方なので国の内外からの参会者が多数見られた.栃木県の技師会の後援もあって盛大で意義深い学会になった.

 総会長講演では"わが国の臨床病理の過去,現在,未来"と題したいわば臨床病理の哲学まで踏みこんだ話があり,他に求められない語り手であるだけに聴衆に深い感銘を与えた.一言で言うと,未来に向って検査担当者は専門性を確立し,医療の本質,社会の変革に適応する意識改革が必要である旨を強調されたのである.

トピックス

SPRセンサー

戸谷 誠之

pp.468-469

 SPRとは表面プラズモン共鳴(surface plas-mon resonance)のことである.高度に電離した気体,すなわち電子の疎密波のことをプラズマと言うが,表面プラズモンとは金属と誘電体物質の境界面で発生するプラズマのことである.金属表面に高エネルギーの光波(レーザ光のような)あるいは電磁波を通すことによってある条件が整った場合に,この表面プラズモンを共鳴振動により発生(励起)できる.以上がSPRの概要である.この現象を利用した新たなセンサーの応用の場として,臨床検査の領域での利用の可能性が検討されている.

 上述の基本原理に基づいて構築されたセンサーには共鳴振動の発生方式の違いなどにより複数の方式が提案されている.その詳細は文献を示すにとどめる1).ここでは現状で実用性が最も高いと評価されているエバネッセント波を利用する方法の一例について解説する.この方法によるセンサー部分の模式図の一例を図1に示した2)

複雑型子宮内膜増殖症

中島 伸夫

pp.469-470

 WHOの女性生殖器腫瘍の組織型分類の改訂に従い,わが国の子宮体癌取扱い規約も改訂される.新しい分類では,子宮内膜増殖症は上皮細胞の異型の有無により,子宮内膜増殖症と子宮内膜異型増殖症の2つの範疇に分けられ,さらに各々の範疇は,腺構造の異常の程度により単純型と複雑型に分類されることとなった(表1).癌に進展する危険性を予知するには,細胞異型の存在が良い指標となることが分かってきた.そのため細胞の異型の有無を正確に診断する必要がある.

 複雑型子宮内膜増殖症(図2)は,"細胞異型を伴わない子宮内膜腺の過剰増殖からなり,腺の形態は著しく複雑で,腺の密度は高く,腺の極性は乱れている"と定義されている."細胞異型を伴わない"とは,上皮細胞が高円柱形,核は長円形,大きさと形が均一,細胞と核の長軸は基底膜に垂直方向(極性)を示し,正常の増殖期内膜腺の上皮細胞(図1)に類似することを意味する.複雑型子宮内膜異型増殖症(図3)では細胞は形が種々,核は大きさと形が多彩であり,核と細胞に極性の乱れを見るなど対照的である.

食物繊維摂取量の評価指標

辻 啓介

pp.470-471

 食物繊維は"人の消化酵素によって消化,吸収されない食物成分"と定義されている.食しても,利用されない成分と考えられていたが,大腸での腸内微生物による発酵でかなり低分子化され,エネルギー源となったり,短鎖脂肪酸に変化して重要な生理作用を発揮することが明らかとなっている.

 1994年,厚生省は"第五次改訂日本人の栄養所要量"において,食物繊維は成人1人当たり1日20~25gの摂取が望ましいとして,目標摂取量を設定した.食物繊維は長い間非栄養素とみなされてきたが,今回の措置によりようやく栄養素としての評価がなされたことになる.

細菌と熱ショツク蛋白質

西村 仁志 , 吉開 泰信

pp.472-473

 ストレス蛋白質(熱ショック蛋白質:hsp)はさまざまなストレスに応答して発現し,あるいは発現量が増加して細胞内での蛋白質の集合や輸送を助ける.また,さまざまなストレスによって細胞内に生じるunfolding蛋白質のfoldingを行い,細胞自身の防御に働く.細菌感染症において,宿主と寄生体の関係を考えた場合,両者間で相同性の高いhspはおのおのの生物の中で類似した機能を示すと考えられる.

 細菌は宿主に侵入した際,さまざまなストレスにさらされることになる.皮膚などの物理的バリアを突破すると血清中のリゾチームや補体,さらには食細胞により殺菌作用を受ける.細菌にとってこれらのストレスをいかにかわすかにより,その細菌の運命が大きく左右される.特に,細胞内寄生性細菌において,これらのストレスをうまくかわすために用いられる病原遺伝子の重要性が示されている.病原遺伝子のうちの多くが,ストレス応答と関わりを持つことが報告された.マクロファージに貪食されると酸素ラジカル,塩基性殺菌蛋白質,加水分解酵素によって殺菌が試みられる.Salmonella typhimuriumは貪食されたのち2時間で30以上のストレス蛋白質を発現する1).この発現した蛋白質の中には,hspであるGroEL (hsp 60ファミリー)やDnaK (hsp 70ファミリー)が含まれる.

質疑応答 臨床化学

アルフォスのアイソザイム

正田 孝明 , 岡山 直子

pp.475-476

 Q 現在,わが検査室では,8~16%gradient PAG電気泳動でインドリルリン酸による染色を行い,翌日,肉眼判定による結果報告をしています.もっと客観的に判定できる方法はないでしょうか.タイタン,アルフォーなど,少々検討しましたが,コスト面,判定面などで導入に至っていません.

質疑応答 微生物

好酸球増多を伴うブタ回虫症の検査法

赤尾 信明 , 藤田 紘一郎 , 山本 進

pp.476-478

 Q 好酸球増多を伴うブタ回虫症の検査法について  お教え下さい.

編集者への手紙

血液の保存条件か血中抗利尿ホルモン濃度測定値に及ぼす影響

西山 友貴 , 久保田 敦 , 花岡 一雄

pp.479-480

1.はじめに

 ある物質の血中濃度測定において,検体の保存,処理の状態が大きく測定値に影響する.現在,ホルモンなどの比較的検査頻度が少ない項目については多くの病院で外注検査が行われている.したがって,検体の処理過程はわれわれ医師が関与することは少なく,また一定の手技のもとで行われていると考えられる.しかし,検体が冷凍保存に至るまでには,採血した血液が血漿あるいは血清に分離されるまでの過程と分離後冷凍保存されるまでの過程に誤差を生じうる.前者が特にわれわれが関与し得る部分であるため,今回,採血後の血液の保存条件が測定値に与える影響について報告がない血中抗利尿ホルモン(ADH)濃度に関して検討した.

研究

多項目自動分析装置におけるPLT ClumpsおよびRBC Agglutinationに関するIPメッセージの評価

内田 けい子 , 熊谷 崇 , 熊谷 エツ子 , 大塚 邦子 , 岡嵜 公士朗 , 宇治 義則 , 岡部 紘明 , 楠田 元春

pp.481-485

 自動血球計数装置で血球を測定する場合,まれに正しく計測できないことがある.つまり,EDTAによって血小板(PLT)が凝集する検体および寒冷凝集素によって赤血球(RBC)が凝集する検体では,みかけ上PLTおよびRBCが低値を示す.このような偽性血球滅少を捉えるための指標として,シスメックスNE-8000におけるPLTclumps,RBC agglutinationおよびRBC abnormal dis-tributionに関するIPメッセージが有用であるか否かを調べた.その結果,これらのIPメッセージによって,血小板および赤血球の凝集の有無を血算と同時に把握することができた.なお,PLT clumpsメッセージが表示された検体のうち,塗抹標本で血小板凝集が観察されたのは87.2%であった.

睡眠時呼吸障害例に対する睡眠脳波自動解析装置(MEDILOG Sleep Analysing Computer.DEE-1100)の有用性

板坂 芳明 , 宮崎 総一郎 , 多田 裕之 , 戸川 清

pp.487-490

 睡眠時呼吸障害症例20例に対して睡眠ポリグラフ検査を行い,睡眠脳波自動解析装置(Medilog SAC)の有用性について検討した.自動判定と視察判定の比較より,睡眠周期時間,総睡眠時間,睡眠効率,入眠潜時,睡眠段階出現率において有意差はなく,睡眠段階の一致率は86.1%であった.また,無呼吸+低換気数の解析においても良い相関を示し,本装置は睡眠時呼吸障害例の睡眠自動解析において有用であると考えた.

資料

多項目自動血球分析装置"SE-9000"における幼若白血球検出能の評価

岡田 恭孝 , 安藤 学 , 神村 信吾 , 新海 佳子 , 矢神 幸子 , 桑原 正喜 , 小池 考一 , 有吉 寛

pp.491-495

 多項目自動血球分析装置SE-9000は,血球計数と白血球5分類を自動測定する装置であるが,本機は,幼若白血球検出専用のIMI (immature information)チャンネルを搭載している.

 今回,SE-9000における幼若白血球の検出能を,目視法と比較検討した結果,検出能力は,臨床検査に使用する上で,満足できる精度を有していると判断できた.さらに,IMIスキャッタグラム上の特定領域におけるドットの有無を,判定基準に加味することで,検査精度をより高めることが可能となった.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

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今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

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今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

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今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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