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膵癌発生におけるmucous cell hyperplasia-adenoma-carcinoma sequence(粘液細胞過形成-腺腫-癌腫連鎖)―癌遺伝子Ki-ras codon 12突然変異の立場から
著者: 柳澤昭夫1
所属機関: 1癌研究会癌研究所病理部
ページ範囲:P.846 - P.849
文献購入ページに移動 近年画像診断の進歩により多数見つけられるようになった膵管拡張型粘液性嚢胞腫瘍(図1)1,2)は,組織学レベルでの検索で腺腫と腺癌が共存することから,この腫瘍の癌は腺腫を経て発生するadenoma-carcinoma sequenceが成り立つことが疑われていた.筆者らは,この腫瘍について通常型膵管癌に高頻度にみられるシグナル伝達系に関するGTP結合蛋白p21をコードしているRAS遺伝子の変異,特に,Ki-ras codon 12の点突然変異の有無を検索した結果,同一症例の腺腫部分と腺癌部分の変異はいずれも同様であったことより,両者は同一クローンであり,遺伝子解析の立場からもこの型の膵癌の発生には腺腫に由来するものがあることを報告した(図2,表1)3).また,変異がみられるこの腫瘍の多数の箇所からDNAを抽出しKi-ras遺伝子の変異を検索した結果,変異は腫瘍内の異型度の低い粘液細胞過形成から異型度の高い腺腫あるいは癌すべてにみられ,その内容はすべて同一であった。すなわち,異型度の低い粘液細胞過形成にGGT→GAT(Gly→Asp)の変異がみられた症例は,腫瘍のどの部位の変異もすべて同一であり,異型度の高い組織学的に腺腫あるいは癌と診断される病変まですべてGGT→GAT(Gly→Asp)の変異であった(図1).
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