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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査40巻9号

1996年09月発行

雑誌目次

今月の主題 動脈硬化とリポ蛋白

巻頭言

動脈硬化とリポ蛋白

片山 章善

pp.995-996

 脂質検査の異常が疑われる虚血性心疾患,脳動脈硬化,末梢性動脈硬化,糖尿病などにおいては,まず脂質検査の代表であるコレステロール,トリグリセリド(TG)などの血清脂質の測定が行われるが,最近は血清脂質の血清中の存在様式からみて,上記の疾患に伴う脂質代謝異常をリポ蛋白として分析することが行われるようになってきた.

 本号ではまず"リポ蛋白とはどのようなものか"を理解するためにリポ蛋白の役割と代謝およびリポ蛋白を構成している蛋白の部分のアポ蛋白の種類と機能について解説している.

総説

血清リポ蛋白代謝と動脈硬化惹起性リポ蛋白

山村 卓

pp.997-1007

 脂質は生体にとって不可欠な成分で,血液を介してリポ蛋白の状態で体内を輸送されている.リポ蛋白の量的異常を示す高脂血症(高リポ蛋白血症)は動脈硬化症の主たる危険因子の1つとしてよく知られている.最近,リポ蛋白の質的異常が注目されている.動脈壁に蓄積する傾向の強いリポ蛋白は動脈硬化惹起性リポ蛋白(atherogenic lipoprotein)と呼ばれ,これらの増加は特に動脈硬化の危険度が高い.レムナントリポ蛋白・LDL (特に,変性LDLやsmall,dense LDL)・リポ蛋白(a)[Lp (a)]などが動脈硬化惹起性リポ蛋白の代表的なものとされる.〔臨床検査40:997-1007,1996〕

TG-richリポ蛋白

トリグリセリド

及川 眞一

pp.1009-1012

 高トリグリセリド(TG)血症は頻度の高い病態である.TGの増加はこれを運搬するリポ蛋白の増加を反映したものである.したがって,このようなTG-richリポ蛋白代謝を理解することが必要である.

 TG-richリポ蛋白とはカイロミクロン・超低比重リポ蛋白(VLDL)およびそれらの代謝産物であるレムナントをまとめて呼ぶ名称である.これらの関与する段階の障害が高TG血症の原因である.これらを理解することが,治療上必要である.〔臨床検査40:1009-1012,1996〕

リポ蛋白リパーゼと肝性トリグリセリドリパーゼ

池田 康行 , 高木 敦子

pp.1013-1021

 リポ蛋白リパーゼ(LPL)は脂肪組織で合成される分子量61kDaの糖蛋白で,カイロミクロンや超低比重リポ蛋白(VLDL)のトリグリセリド(TG)を脂肪酸とモノグリセリドに水解する酵素である.LPL遺伝子異常ホモ接合体によるLPL酵素異常ではⅠ型高脂血症(高カイロミクロン血症)となり,LPL遺伝子異常ヘテロ接合体の遺伝素因にアルコール多飲などのTG合成亢進因子が合併した場合はIV型やV型高脂血症(高TG血症)となる.肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)酵素は肝臓で合成される65 kDaの糖蛋白である.その生理的役割はLPLほど明確ではないが,HTGL欠損症の場合,高TG血症を示すが,VLDLなどの大型粒子の蓄積はなくLDLやHDL粒子のTGが増加することから,これらリポ蛋白代謝に関与していると推定されている.両酵素の定量は,高TG血症の成因を解明するうえで臨床的に重要である.〔臨床検査 40:1013-1021,1996〕

レムナント様リポ蛋白

多田 紀夫

pp.1023-1029

 レムナント様リポ蛋白(remnant-like particles;RLP)はヒト抗アポA-Iモノクローナル抗体とヒト抗アポB-100モノクローナル抗体をそれぞれ固相化した免疫アフィニティ混合ゲルに非結合分画として得られた血清リポ蛋白であり,当初リポZとも呼ばれた.特に,RLP上に存在するコレステロール(RLP-C)の値はレムナントリポ蛋白を定量的に表現する値として臨床的に用いられている.

 レムナントリポ蛋白はカイロミクロンや超低比重リポ蛋白(VLDL)などトリグリセリドrichリポ蛋白の血中での中間代謝産物であり,低比重リポ蛋白(LDL)と同様に動脈硬化促進性リポ蛋白の1つとして考えられている.近年,食後高脂血症の動脈硬化病変発現との関連性が話題となっているが,レムナントリポ蛋白はここに介在するリポ蛋白として注目を集めている.〔臨床検査 40:1023-1029,1996〕

低比重リポ蛋白

small,dense LDL

芳野 原 , 平野 勉 , 鹿住 敏

pp.1031-1036

 低比重リポ蛋白(LDL)は主としてコレステロールエステルとアポ蛋白Bからなるリポ蛋白粒子で生体内でのコレステロールの運搬を担っている.このLDL分画はその粒子のサイズ,比重,組成の異なる粒子集団から成り立っており,今まで種々の方法でいくつかの異なる粒子サイズのグループが存在することが報告されている.また,このLDLサイズは血中トリグリセリドレベルと負の相関がみられている.注目すべきことはこの小粒子径LDL (small,dense LDL)を持つ症例("パターンB"と呼ばれている)は通常のサイズのLDLを持つ場合に比べて冠動脈疾患発症の危険度が3倍に達することである.このsmall,dense LDLがなぜ動脈硬化惹起性を持つかについては,本粒子がin vitroで通常のサイズのLDLに比べて酸化を受けやすいことが指摘されており,この易被酸化性が本粒子の催動脈硬化性の基本的な原因の1つと考えられる.このsmall, dense LDLは種々の薬物療法に反応し,多くの場合,血中トリグリセリド(TG)の低下とともに,正常のサイズに変化する.〔臨床検査 40:1031-1036,1996〕

酸化低比重リポ蛋白

長 幹麿 , 北 徹

pp.1037-1042

 粥状動脈硬化の初期病変形成には,血中低比重リポ蛋白(LDL)由来の変性LDLと,それをスカベンジャーレセプター経路で取り込み泡沫細胞化したマクロファージが重要な役割を果たす.酸化LDLは生体内に存在する可能性が最も高い変性LDLである.現在,酸化LDLには,マクロファージのみならず血管内皮・平滑筋・Tリンパ球といった粥状動脈硬化巣の構成細胞に対する多彩な生物活性や,その取り込みを支えるレセプターが明らかになりつつある.〔臨床検査40:1037-1042,1996〕

コレステロールエステル転送蛋白

コレステロールエステル転送蛋白

山下 静也 , 松澤 佑次

pp.1043-1049

 動脈硬化性疾患の患者では高比重リポ蛋白(HDL)分画のコレステロール値が低下し,遺伝性の低HDL血症症例において著明な動脈硬化が観察されることから,HDLは抗動脈硬化作用を有するリポ蛋白と考えられている.コレステロールエステル転送蛋白(CETP)はHDLの中に含まれるコレステロールエステルを超低比重リポ蛋白(VLDL)や低比重リポ蛋白(LDL)などのアポB含有リポ蛋白へと転送する蛋白であり,その遺伝的な欠損により著しい高HDL―コレステロール血症を生じる.本稿ではCETPに関する最近の知見について述べ,筆者らが明らかにしたCETP欠損症におけるリポ蛋白代謝異常や遺伝子異常,動脈硬化との関連についても紹介する.また,CETP活性は種々の病態で変動するがその変動因子についても言及した.〔臨床検査40:1043-1049,1996〕

リポ蛋白A-Ⅰ

近藤 和雄 , 蔵田 英明 , 貴堂 としみ , 板倉 弘重

pp.1051-1056

 リポ蛋白A-Ⅰ(LpA-Ⅰ)は,HDLの抗動脈硬化作用の本体として脚光を浴びているリポ蛋白である.このアポ蛋白A-Ⅰのみを持ったLpA-Ⅰが組織からコレステロールを引き抜くときの主役であることが,わかってきた.LpA-Ⅰの測定法の開発も進み,虚血性心疾患,糖尿病性腎症,アルコール多飲症などでの,LpA-Ⅰの低下が報告されている.最近では,LpA-Ⅰの中でpreβ位に移動度を持つpreβLpA-Ⅰに注目が集まっている.〔臨床検査 40:1051-1056,1996〕

アポ蛋白の多型性

アポ蛋白E

山田 信博

pp.1057-1061

 アポ蛋白EはLDLレセプターに対して親和性を有するのみならず,肝でのレムナントの取り込みに重要なレムナントレセプターに対する特異的リガンドと考えられている.アポ蛋白Eは血漿リポ蛋白上に存在して,リポ蛋白の輸送に関与し脂質の再分布の役割を担っている.最近,アポ蛋白E遺伝子とアルツハイマー病とのgene linkageが明らかにされ,アポ蛋白E多型性,特にアポ蛋白E4と晩発型アルツハイマー病との関係が注目されている.〔臨床検査40:1057-1061,1996〕

Lp(a)フェノタイプの測定法と意義

野間 昭夫

pp.1063-1067

 リポ蛋白(a)[Lp(a)]にはその特有なアポ蛋白であるアポ(a)の分子の大きさによってイソ型が存在し,その分画によってフェノタイプ(表現型)分類がなされている.このフェノタイプ分析を比較的簡単に行えるキットが最近発売になったので,その方法の概要を示した.

 Lp(a)フェノタイプの違いによる機能の相違についてはいまだに明確にはされていなく,今後の検討を待ちたい.しかし,フェノタイプは血清Lp(a)濃度にも影響するので,基準値の設定はフェノタイプ別に行うべきであろう.〔臨床検査40:1063-1067, 1996〕

話題

高比重リポ蛋白-コレステロール直接測定法

藤田 誠一 , 片山 善章

pp.1068-1071

1.はじめに

 高比重リポ蛋白(HDL)-コレステロール(HDL-C)が,動脈硬化症の危険予防因子として重要な臨床検査項目の1つとして測定されるようになって久しい.

 その方法としては,ポリアニオンによる方法,ポリエチレングリコールによる方法,等電点の違いによる方法などがある.これらはいずれも検体の前処理操作としてHDL以外のリポ蛋白画分を沈殿分画除去し,その上清を分取し,そのコレステロールを測定する.

新しい酸化低比重リポ蛋白レセプター―CD36

野﨑 秀一 , 松澤 佑次

pp.1072-1074

1.はじめに

 動脈硬化の初期病変においては,酸化低比重リポ蛋白(LDL)などの変性LDLがマクロファージに取り込まれ,泡沫細胞が形成されると考えられている.その取り込みにおいては,Goldsteinら1)が指摘したスカベンジャーレセプターが関与していると考えられていたが,その本態は不明であった.1988年,Kodamaら2)はアセチルLDLをリガンドとしてスカベンジャーレセプタータイプI,タイプIIを見いだした.しかし,その後,児玉らのレセプター以外のスカベンジャーレセプターの存在も示唆されるようになった.最近,CD 36が,酸化LDLを結合するデータが報告され3),また,当研究室でのCD 36欠損マクロファージを用いた研究により4)CD 36の動脈硬化における生理的意義が次第に明らかになってきた.本総説ではこの2つのスカベンジャーレセプターのうち,CD 36を中心に解説する.

今月の表紙 表在性真菌症の臨床検査シリーズ

皮膚糸状菌症 6.生理学的/分子生物学的特徴に基づく検出・同定法

山口 英世 , 内田 勝久 , 槙村 浩一

pp.990-991

 これまで示してきたように,白癬菌の検出・同定は培養検査,特に発育コロニーの肉眼的観察とスライド培養の鏡検によって得られる形態学的特微によって行うのがあくまで基本である.しかし典型的な形態を示さない菌株も少ないところから,従来より生理学的特徴を調べる試験法のいくつかが,補助的検査として併用されてきた.主なものとしては,①栄養要求性テスト,②尿素分解(ウレアーゼ)テスト,③色素産生テスト,④毛髪穿孔テスト,⑤交配テスト,などが挙げられる.この中で日常検査として比較的簡単に実施できるのは①~③である.①についてはすでに述べたので(本誌第40巻第6号参照),ここでは②と③を中心に解説する.

 ウレアーゼテストは,ウレアーゼ活性すなわち尿素を分解してアンモニアなどのアルカリ性代謝物を産生する活性の有無を調べるテストである.Trichophyton rubrum菌株はほとんど例外なくウレアーゼ活性を欠く(陰性).一方,T.menta-grophytes菌株の大多数は強い活性を示す(陽性).したがって,ウレアーゼ活性の有無によって両菌種の鑑別がある程度可能となるが,T.mentagro-phytesでもこの活性を持たない(陰性)菌株が10%ほどある点に留意しなければならない.図1にその実施例を示す.市販のクリステンゼン尿素培地上で2~3週間培養すると,陽性菌の場合には培地がアルカリ性となるために黄色から紅色へと変化する.

コーヒーブレイク

口髭考

屋形 稔

pp.1056

 ひとの顔にみられるひげ(特に口髭)というのは単なるアクセサリーなのかまたは特別の意味を持つのか考えてみると不可思議の存在である.

 わが国ではそれほど多くのパーセントではないが民族によっては成年男子のほとんどに見られるものでもある.私の亡父も若い時分にはいわゆるカイゼル髭というのをピンと生やし縁なしの眼鏡などかけた写真が残っており,少壮のドクトルメヂチーネの気どりの典型を示した時代もあったようである.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

アガロースゲル電気泳動の実際

須藤 加代子

pp.1075-1078

はじめに

 アガロースはD-ガラクトースと3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースの鎖状結合による直鎖状分子がゲルを形成し分子篩効果を生じるため,核酸電気泳動の支持体として用いられている.ヌクレオチド鎖の分画効果は網目構造の大きさ,すなわちアガロース濃度により調節されている(表1).前述(先月号)したPAGと異なり架橋構造は存在しないため,巨大な核酸分子さえも泳動分画可能である.PAGに比較し,ゲルの調整が簡便,無毒,泳動後の抽出操作が容易であるので,抽出高分子DNA,サザンプロット,ノーザンプロットなど比較的高分子(100bp以上)の核酸の泳動に広く用いられてきた.近年低フラグメント用低融点アガロースが開発され(表2),PAGに近い低分子(8 bpまで)も分画可能となってきたため,ますます使用範囲が広がってきている.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

HTLV-Ⅰ

田口 博國 , 三好 勇夫

pp.1079-1083

HTLV-Ⅰの構造

 成人T細胞性白血病(adult T-cell leukemia;ATL)の原因ウイルスhuman T-lymphotropic virustype Ⅰ;HTLV-Ⅰはレトロウイルスに属し,ウイルス粒子は平均直径100nmの球状で,外側のエンベロープと中心部のコアからなり,コアの内部に一本鎖RNAが2本入っている(図1).HTLV-Ⅰは細胞膜から出芽の形で細胞外に放出され,主としてCD 4陽性のヘルパーT細胞に感染する.感染後ウイルス自身の逆転写酵素によりウイルスRNAは相補的DNA(プロウイルスDNA)となり,宿主細胞の染色体に組み込まれる.プロウイルスDNAは9,032塩基対からなり,図1に示すようにLTR-gag-pol-env-pX-LTRの構造を持つ.gag遺伝子はウイルスのコア蛋白質p19,p24,p15を,pol遺伝子は逆転写酵素を,env遺伝子はエンベロープ蛋白質gp 46,p20Eをコードする.pX領域にはtax,rexの遺伝子があり,ウイルスの増殖を自己制御するとともにATLの発症に重要な役割を果たしていると考えられている.

トピックス

子宮内膜異型増殖症

中島 伸夫

pp.1085

 新WHO1)と新子宮体癌取扱い規約2)では,増殖性の子宮内膜病変を細胞異型の有無によって増殖症,異型増殖症の2つに分け,さらに各々を腺構造の異常(構造異型)の有無により単純型と複雑型に分けることはすでに述べている3).細胞異型と構造異型の程度は通常は並行することが多く(単純型増殖症,複雑型異型増殖症),細胞異型はないが構造異型があること(複雑型増殖症),また細胞異型があって構造異型がない(単純異型増殖症)例は少ない.単純型増殖症が旧版4)の嚢胞性腺増殖症(cystic hyperplasia)に,複雑型増殖症が異型増殖症(atypical hyperplasia)に相当する.

 増殖症,異型増殖症,高分化類内膜腺癌は形態的にはほとんど連続の変化に見える.ここで腺癌は浸潤像を認めるものを言うので,異型増殖症には粘膜内腺癌(adenocarcinoma in situ)が含まれることになる.したがって異型増殖症は一方では増殖症と他方では浸潤腺癌との鑑別を要する.高齢者の異型増殖症は子宮の摘除が適応とされているが,妊孕性の温存を希望する若年者の場合は治療を加えつつ経過を見るのであるが,経験上,いったん異型増殖症とされたものが元に復活することは少ない.

臨床検査医のホームページ

西堀 眞弘

pp.1086-1087

1.インターネットとホームページ

 インターネットはもともとは米国の軍事技術として開発されたコンピュータネットワークであるが,まず研究者や技術者の間で広がり,その後文字だけでなく画像も簡単な操作で閲覧できるソフトが発明されて以来,一般社会への急速な普及が始まった.情報交換の中心である「電子メール」は,相手が不在でも連絡がとれ大変便利であるが,盗み見や改ざんの可能性を考えて使う必要がある.情報発信は主に「ホームページ」で行うが,最近では音声や動画像を扱う技術を駆使して,インターネット上で番組放映やテレビ会議も行われている.

質疑応答 臨床化学

食事による血中アンモニア濃度の変化

伏見 了 , 松井 昌彦 , T生

pp.1088-1089

 Q 食事による血中アンモニア濃度の変化については,食事による影響はない高蛋白質で上昇するなど本によりいろいろな記載がありますが,詳しいデータや文献がありましたら,教えて下さい.

 また,その際健常者と肝機能異常者でどれくらいの差があるのが教えて下さい.

質疑応答 その他

百科事典のCD-ROM版の利用

鹿島 哲 , K生

pp.1089-1092

 Q 大百科事典は役に立ちますが,重くて大きいため使いにくいのが困る点です.そのCD-ROM版または電子ブックが出ているようなので,書物の百科事典と比較してその長所短所と使い勝手を解説してください.

研究

RT-PCR法を用いた遺伝子発現の定量的解析―FITC標識プライマーとDNAシークエンサーを組み合わせた高感度解析

吉田 祥子 , 北川 昌伸 , 神山 隆一

pp.1093-1096

 微量なサンプルを用いて遺伝子発現を定量的に解析する場合,ノーザンブロット法は,感度,作業の安全性,簡便さにおいて十分なものではない.今回,FITC標識プライマーを用いたRT-PCR法と,自動分析機であるDNAシークエンサーによる測定,解析を組み合わせて遺伝子発現の相対的な定量化が可能かどうかを試みた.その結果,この方法は迅速かつ簡便であり,検査室レベルでの使用に十分対応できるとの結果が得られたので報告する.

カラムスイッチングHPLC法による血中バンコマイシン測定

北橋 俊博 , 大場 康寛

pp.1097-1100

 微量血清直接注入カラムスイッチング高速液体クロマトグラフィを用いた特異的,迅速,高感度な血中バンコマイシン濃度測定法を開発した.クロマトグラムは高い分離度を呈し,直線性も良好であった.同時再現性のCVは1.03~1.76%,回収率は96~100%,最低検出感度は0.03μmol/1(S/N=3)である.蛍光偏光免疫測定法とも高い相関性を示した(r=0.987).本法は前処理不要でカラムの耐久性にも優れ,高精度,低コストで迅速に適応できる日常検査法である.

資料

Helicobacter pylori輸送培地(ポルタジャーム・ピロリ)の検討

大内 裕敬 , 林 俊治 , 木村 浩一 , 塚本 尚行 , 加藤 元嗣 , 西川 恵子 , 工藤 峰生 , 浅香 正博 , 藤井 暢弘

pp.1101-1103

 Helicobacter pyloriは慢性胃炎,胃・十二指腸潰瘍および胃癌の発症における重要な病原因子である.現在,H.pyloriの培養検査の需要が高まっている.そのためには,医療施設からH.pyloriの存在が疑われる胃粘膜生検組織を検査施設まで輸送する必要がある.しかし,本菌は生育条件が厳しく,輸送に当たっての取り扱いには細心の注意が必要である.今回,筆者らはH.pyloriの輸送を目的に開発された輸送培地:ポルタジャーム・ピロリ(bioMér-ieux社)の検討を行ったところ,その有用性が確認された.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 どうする?精度管理

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今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

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今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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