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乳癌-甲状腺癌家系
著者: 野水整1
所属機関: 1星総合病院外科
ページ範囲:P.94 - P.95
文献購入ページに移動 乳癌は家族集積性を示す癌の1つであり,乳癌多発家系の報告も多い1,2).これらの乳癌は一般に家族性乳癌と総称され,臨床的な定義として,A.第1度近親者(親,子,同胞の関係)に3名以上の乳癌患者がいる場合,B.第1度近親者に2名の乳癌患者がおり,そのいずれかが①40歳未満の若年者乳癌,②両側乳癌,③他臓器重複癌のいずれかを満足するものと,定めている2).そのほとんどは遺伝的要因を背景に持つと考えられ2),最近いくつかの原因遺伝子が発見,同定された3).乳癌多発家系の家系内腫瘍スペクトラムを調べると,乳癌のみが集積している家系のほか,乳癌一卵巣癌家系,乳癌―前立腺癌家系,乳癌―消化器癌家系,あるいは乳癌一甲状腺癌家系などがみられる.これらのうち乳癌―卵巣癌家系については,gernlineでのBRCA 1遺伝子の変異が原因で起こる遺伝性疾患で,Familial Bresat/Ovarian Cancer syndromeという1つの疾患単位として認知されている3).ここで述べる乳癌―甲状腺癌家系は,現在のところ原因遺伝子は同定されていないが,家族性乳癌の一亜型と考えられる.甲状腺癌(乳頭癌)は個人としての乳癌の重複癌として頻度の高いものであるし4),同じ甲状腺癌が家族性乳癌の家系内腫瘍スペクトラムで頻度の高いものである5)ことは興味深い.一方,甲状腺では,家族性髄様癌やMEN (多発性内分泌腫瘍症) II型の髄様癌が遺伝性腫瘍としてよく知られている6)が,甲状腺乳頭癌の家族発生も報告されている7).遺伝性の髄様癌では原因遺伝子がRET遺伝子であることが明らかにされている6)が,乳頭癌では明らかではない.
当科の5家系を表1に示したが,乳癌は30~40歳代が多く,また,重複腫瘍が多いのが特徴である.家系3を図1に示した.遺伝性乳癌の原因遺伝子の1つであるBRCA 1遺伝子の変異の有無をすべての患者の血液サンプルで調べたが陰性であった.
当科の5家系を表1に示したが,乳癌は30~40歳代が多く,また,重複腫瘍が多いのが特徴である.家系3を図1に示した.遺伝性乳癌の原因遺伝子の1つであるBRCA 1遺伝子の変異の有無をすべての患者の血液サンプルで調べたが陰性であった.
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