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特集 神経系疾患と臨床検査 Ⅰ.生化学・遺伝子
9.球脊髄性筋萎縮症
著者: 道勇学1 田中章景1 永松正明1 祖父江元1
所属機関: 1名古屋大学医学部神経内科
ページ範囲:P.1272 - P.1276
文献購入ページに移動球脊髄性筋萎縮症(spinal and bulbar muscular atrophy;SBMA,X-linked recessive bulbospinal neuronopathy;X-BSNP,Kennedy-Alter-Sung dis-ease)1,2)は,伴性劣性の遺伝形式をとり,20~40歳台に発症する下位運動ニューロン疾患である.舌,顔面および四肢近位部優位の筋萎縮および筋力低下と筋収縮時の著明な筋線維束性収縮がみられ,また,軽度の男性性腺機能障害,耐糖能異常,肝機能障害などの合併を特徴とする.1991年,FischbeckらのグループによりX染色体長腕近位部に位置するアンドロゲン受容体遺伝子第1エクソン内にあるCAG (グルタミンのコドン) repeat部位,すなわちポリグルタミン鎖が正常の約2倍に異常延長していることが明らかにされ3),ハンチントン舞踏病(HD),SCA-1,2および6型脊髄小脳変性症(SCA-1,SCA-2,SCA-6),歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA),Machado-Joseph病(MJD)など,他のCAG repeat病発見の先駆けとなった.このアンドロゲン受容体遺伝子内CAG repeatの異常延長はSBMAに特異的であり4),しかも異常延長の程度と本症の発症年齢や重症度の指標との間に相関がみられることから本症の病因と考えられている5~7).しかし,このアンドロゲン受容体遺伝子異常が本症の病態発現にどのようにかかわっているのかは明らかにされておらず,その解明が現在の最も重要な課題である.
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