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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査41巻13号

1997年12月発行

雑誌目次

今月の主題 臨床検査と医療経済

巻頭言

臨床検査と医療経済

河合 忠

pp.1717-1718

 1997年8月7日,厚生省は医療保険改革案を与党医療保険制度改革協議会に提出した.その改革案の柱は,医療費の総額抑制と患者の負担増からなっている.医療費抑制のための制度改革では,診療報酬体系に"定額払い"を大幅に拡大し,薬価制度では"参照価格制度"の導入を提唱している.患者の負担増では,すでに1997年9月からサラリーマンの本人負担増を2割に増加しており,与党はきたるべき参議院選挙を睨んで,さらに患者負担増を進めることに一応反対している.医療保険制度改革が,行政改革とともに,今後どのように推進されるかおおいに注目される.

 医療経済は,その時代時代にどのような方針で医療政策が進められてきたかに大きく依存している.すなわち,戦後1960年までは,国民に対する医療の供給体制(アクセス,access)を改善することに主眼を置き,国民皆保険が実現した.1970年代になると,劇的な経済発展に併せて医療の質(quality)を向上することに主眼が置かれ,したがって臨床検査室の設備投資が急速に増加した.この時代は,患者数が増えなくても,年々15%程度の検査業務の増加が続いた.しかし,1980年代になると,総医療費の増加率が国民総生産の増加率を上回る事態が続く中で,医療のコスト(cost)を考慮に入れた医療行政がとられた.すなわち,医療費の適正化が前面に打ち出され,臨床検査分野では,検査料の引き下げ,検査実施料と判断料の分離,マルメ方式による検査料の支払いなど,年々抑制策がとられてきた.これによって,1970年代から1980年代前半にかけて年々増加していた検査室の収入も大きく様変わりし,総医療費のll%程度を占める検査料比率が続いている.そして,1990年代に入ると,コストを考えながら質の向上を目指す政策が打ち出されてきた.すなわち,基本的には出来高払い方式を維持しながら,一部患者の負担増を導入してきたのである.年々約1兆円ずつの総医療費の増加を抑えることはできないまま,40年前の1955年には総医療費2,400億円足らずであったものが,1995年には27兆円に達し,現在29兆円代に入っている.すなわち,対前年度比で約5%程度の増加である.臨床検査の市場規模も,1995年には米国で3.3兆円,わが国で1.65兆円,ヨーロッパ連合全体で6,650億「llと推定されている.ヨーロッパ連合のうちでは,ドイツが1,935億円,フランスが1,271億円,イタリアが1,066億円,スペインが608億円,英国が419億円で,スイス,ベルギー,オーストリア,スウェーデンと続いている.検体検査だけについてみると,米国では総医療費の3~4%,欧州各国が2~3%であるのに対して,わが国では6~7%を占めている.また,わが国では,画像診断,生理的検査などに対する投資額が圧倒的に大きく,これが医療機関の経済状態にとってさらに大きな負担になりつつある.

わが国の医療経済の動向

国民医療費の動向と臨床検査

池田 俊也

pp.1719-1724

 わが国の医療水準ならびに医療費の水準は,先進諸国に比べてきわめて優れている.しかしながら,本格的な筒齢化社会を迎える中で,医療費の適正化は重要な政策課題である.今後,医療提供者の立場からも医療技術の効果や経済性の評価を進め,医療の効率化を推進することが望まれる.

21世紀の医療改正の方向

天神 美夫

pp.1725-1729

 21世紀の医療が大きく変わる歴史的な時期が,今訪れている.従来から行ってきた医療法の改正や,保険点数の取り扱いとはまったく異なる方向が示されていることから,本稿では,与党内に設置され,平成9年8月30日に提示された"医療保険制度改革協議会"の改革案を中心に述べるとともに,参考として厚生省原案も併記してみた.これは,与党案を理解しやすくすることを目的としたものであり,従来の厚生省原案が微調整のままで法文化する方式とは異なったスタイルになろう.

 臨床検査または検体検査単独で将来の図式を考える時期ではなく,大きな流れの一環として捉える必要がある.また現在,臨時国会で審議されている介護保険法案および関連法案も医療の形態を大きく変えることになる.

 この中でも,医療法改正法案の行方次第では,さらに地域医療圏内での検体検査の体制が大きく変わることになる.

医療経済を考える―構造改革を目指して

下村 健

pp.1730-1744

 医療保険の財政悪化が続く.今のまま,保険料や患者負担を引き上げると,毎年相当な負担になろう.医療保険全体の共通かつ最大の課題は,高齢化によって増え続ける老人医療費である.医療関連制度全体の構造改革を行うべきであるが,老人医療問題の解決を中心に考えるべきである.老人医療の新しい制度では,公平な負担に併せて,薬剤費問題など弊害が目立っている診療報酬制度,患者中心のサービス提供体制の改革が行われるべきである.患者中心のサービス提供とは,競争と選択のある医療経済である.このためには,患者への情報提供や保険者機能の強化が必要である.

わが国の医療経済と臨床検査

臨床検査における診療報酬改定の流れ

森 三樹雄

pp.1745-1750

 医療保険制度は改革の過渡期にあり,臨床検査の保険点数も含めた診療報酬体系の見直し,社会的入院の解消,高額療養費の自己負担限度額の見直し,病床数の見直し,紹介率のアップ,医学部定員の削減,医療機関の機能分担と提携,医療関係情報の充実,被保険者証のカード化などが変革の対象となっている.

 影響力が大きい与党医療保険制度改値協議会案では,70歳以上の高齢者を対象に新たな医療保険制度を創設すること,診療報酬では慢性疾患について医療費を一定とする定額払いを原則とすること,薬価制度は現行の公定価格制を廃止し,薬代に上限を設ける参照価格制とすることなどを決定し,2000年実施を目指している.これは医療機関にとって大変厳しい変革になりそうであり,今後目の離せない展開になりそうである。

病院検査部経済的運営のための対策

村井 哲夫

pp.1751-1755

 病院検査部経営圧迫の要因を挙げるとともに,これに対応するためには個々の検査室の置かれた状況を正確に把握することが必要であることを述べた.この目的で聖路加国際病院臨床病理科(検査部)の臨床化学検査の経済性を調査した結果の一端を紹介した.

 検査部のコンピュータ化・自動化は人員の削減に効果を上げたが,当院規模では設備投資に見合う経済効果を上げることはできなかった.また,緊急検査の充実など,患者サービスの向上に欠かせないものが経済的には大きな負担になっていることが明らかになった.調査結果を生かすことによって,ランニングコストの軽減に成果を上げることができた.

一般病院の経営と臨床検査

井手 義雄

pp.1757-1760

 近年のわが国の経済の低成長,また少子高齢社会の急激な変化は,現行の社会保障制度の根本的な変革を余儀なくしている.また,一昨年以来の薬害エイズ問題,厚生官僚などによる不祥事は,厚生行政に対する国民の不信となっている.今後,種々の医療保険制度などの改革が実施されるが,われわれは,"患者中心の医療"を病院の基本理念として,日々の病院運営,また臨床業務に取り組んでいくことが,急激な変化に対応できる最大の武器となることを認識しなければならない.

診療所からみた経営と臨床検査

土谷 茂樹

pp.1761-1763

 札幌のベットタウンの団地で開業して30年の無床のクリニックの現場から,厳しさを増す保険診療の中での臨床検査をいかに考え,さらに経営のプラスのために行っているいくつかの工夫を紹介した.また,検査センターに対しては新しい検査法の紹介方法や検査報告書の改善について提言した.

 検査センターと医師がともに研さんする機会をより多く持つことは,何よりも患者に喜ばれることなのである.

外注検査と院内検査のありかた

高木 康

pp.1764-1767

 院内検査か外注検査かの識別・選定基準としては,コストパフォーマンス,検査の緊急性,サンプリングに関連する問題が考えられる.そして,臨床検査が医療の1分野であり,診断・治療に重要な役割を果たしていることを考慮して,院内検査とするか外注検査とするかを選択する必要がある.また,外注検査先は検査室の1分室と考え,精度管理の開示を求め,監視・管理を怠ってはならない.

企業からみた臨床検査

衛生検査所からみた臨床検査と医療経済

佐守 友博 , 宮哲 正

pp.1769-1774

 わが国の保険医療における衛生検査所の位置づけと,現在まで衛生検査所が医療経済に果たしてきた役割(功罪)にっいて述べ,今後の医療費抑制政策の中で,臨床検査をどのように正しく使い,生き残らせていくかについて考察した.

 また,衛生検査所の団体である日本衛生検査所協会をはじめ,臨床検査に関わる個人・団体が今後果たすべき使命について,意見を述べた.

試薬メーカーからみた診療報酬の問題点

瀬戸 四郎

pp.1775-1778

 検査薬メーカーは,試薬と用具を開発し安定に供給する役割を担っているが,ここ十数年来,国の医療費抑制策の中で,検査点数は毎年大幅な切り下げが続いている.このことは,メーカーにとって新しい検査法の研究開発に投入される原資を著しく圧迫している.

 政府は依然として価格抑制を中心とした施策を進めているが,検査の有効な活用が総医療費の軽減に貢献するという視点も忘れてはならない.

海外の動向

アメリカの支払いシステム

廣瀬 輝夫

pp.1779-1782

 私的自由医療の最後の牙城であった米国でも医療費削減のために社会的制限医療が導入され,さらに最も避けるべき配当医療さえ一部で施行され始めている.したがって,その支払い方式も自由無制限支払い(CUR)から包括式出来高制限支払い(global pay-ment)に切り替えられ始め,政府管掌保険であるメディケア,メディケイドおよび私的保険の2/3を占めるマネージドケアもこの方式を採用している.

変貌するイギリスの国営医療

寺崎 仁

pp.1783-1788

 国民への保健医療サービスを国が直接提供している英国の医療制度を紹介し,国民医療費に関するデータを日本と比較してみた.また,1991年から始まった大規模なNHS (National Health Service)改革の内容と,それに伴う医療費の支払い方法の変化などについて説明した.そして,政府みずからがサービスの提供者から購入者に立場を変えるというきわめて大胆な制度変更は,すでに一定の成果を生みつつあり,わが国でもこのような思い切った改革が必要となっていることを指摘した.

ドイツにおける支払いシステム

佐多 謙

pp.1789-1791

 日本が医療を学んだ国ドイツは,今でこそアメリカに医療の先進国の座を奪われてしまった感は否めないが,多少極端な方向へ向かうアメリカの医療に比べて日本にはなじみやすい印象を受ける.インフォームドコンセントや情報公開が話題になっている現在,医療従事者,患者双方にとって日本のことを再考する際に,健康保険,家庭医,予約システム,薬局のことなど,このドイツのシステムはまだまだ参考になり,有用であると思われる.

話題

臨床検査標準化の経済性

巽 典之 , 田窪 孝行 , 日野 雅之

pp.1792-1794

1.はじめに

 臨床検査は,大規模検査室では搬送システムを完備した検査が推進され,中小規模検査室では簡易型検査システムが普及してきている.ここで共通する基盤は検査経済性の向上,すなわち検査コストの低減であり,その背景には逼迫する医療保険経済があり,検査経済性を無視した医療や臨床検査は立ちゆかなくなっている現状を反映していると言えよう.そしてこの問題は,単に検査室だけでなく,国家的および国際的な問題としてクローズアップされつつある.

臨床検査のリエンジニアリング

近清 裕一

pp.1795-1797

1.はじめに

 臨床検査業務改善策としてTQC (総合的精度管理),意識改革,リストラ,マネジメントなどがよく言われてきたが,それらは従来の作業の延長上での部分的改善策であり,現在の情報・技術・機器の進歩と産業構造の大きな変化には対処できなくなってきた.

 特に,近年の医療改革は根底からの変革であり,病院の理念そのものからの業務変更を余儀なくされている.このような時期の業務改革は,既成概念の延長では対応できない.そこで,他の業種が取り組んでいるリエンジニアリング構想があり,そのマニュアルを医療の場,特に臨床検査を中心に適用することを考えてみた.

今月の表紙 深在性真菌症の臨床検査シリーズ・8

二形性真菌による地域流行型感染症(2)

山口 英世 , 内田 勝久 , 槇村 浩一

pp.1712-1713

3.Histoplasm capsulatum

 本菌は日本国内には生息しないものの,アメリカ大陸の流行地域(endemic area)で感染を受けた後にわが国に帰国(または入国)した人を中心に十数例の感染例が報告されており,その中には米国人感染者から提供された腎の移植を受けて感染した例も含まれている.H.capsulatumの取り扱い危険度は,Coccidioides immitis (コクシジオイデス症の原因菌)についで高いとされ,まれではあるが実験室内感染例も報告されているので,検査室では注意して取り扱う必要がある.ヒストプラスマ症の診断には,皮内反応や血清学的検査も有用であるが,診断を確定するには,原因菌の分離・同定が不可欠である.

 H.capsulatumは発育速度が遅く,SDA,PDAなどの通常の真菌用培地に25~30℃で培養すると,2週間以上かかって表面が白色~褐色,細く密生した綿毛状のコロニーをつくる(図1).一方,血液添加または無添加のハート・インヒュージョン(BHI)寒天に35~37℃で培養した場合には,発育はより良好となり,湿潤した白色の酵母様コロニーをつくる(図2).

コーヒーブレイク

脳死と臓器移植

寺田 秀夫

pp.1756

 脳死臨調から5年半,法案が提出されてから3年余りを経て,ようやく脳死からの臓器移植を認める臓器移植法が,1997年6月17日に成立した.その後,連日この法案に関連して救急医療現場の医師の意見,ドナーカードや移植コーディネーターの問題が新聞紙ヒをにぎやかにし,ややもすると臓器移植時代が到来したような錯覚に陥る人もあるであろう.しかし,あくまでもその根底にある"脳死を人の死と認めるか否か"の問題は,決して解決されたわけではない.ある有名な哲学者は"脳死は人の死ではなく,皮膚は暖かく,静かに呼吸をしている.そして,医師が脳死判定した女性から,2週間後に赤ん坊が生まれたケースもある.そうすると,生まれた子供は死人から生まれてきたことになる.脳死を人の死と定義する考えかたは,疑う余地もなく新鮮な臓器を合法的に早期に取り出すためである"と述べ,脳死を人の死とすることに強く反対している.この考えに同調する医学者や有識者,一般人も多く,自分も全く同感である.また,最近日本大学林成之教授らによる脳低体温療法による脳死状態の患者の蘇生率の向上なども考慮すると,脳死判定はますます慎重にすべきである.

 先日の朝日新聞の全国世論調査では,脳死容認者は男46%,女34%で,非容認者はそれぞれ40%,44%とまだ一般に慎重であり,脳死容認者でも2割の人々は法律での規定に反対している.

旅の中で

屋形 稔

pp.1767

 6月下旬から7月.上旬にかけて梅雨のじめじめと暑苦しい日本から,涼しさを期待してヨーロッパへ出かけた.デュッセルドルフは緑豊かで過ごしやすく,コモ湖畔は遠くアルプスの雪を望み静寂で美しかった.しかし,ウィーンやミラノは日本と変わらぬ暑い日射しで,ミラノは折しも世界ファッションフェスティバルとかで格好よいモデルたちが街を歩き,眺めはよかったが何ともざわついていた.特に悪名高いアリタリア航空は出発直前に都合によりフライト中止ということで,不愉快な経験もした.

 この時は高知識のS教授という豪の者から,り帝国したらその足で瀬戸の臨床化学会夏ゼミに来てしゃべるように命じられていたので,往復の飛行機の中はもっぱら原稿書きで退屈もしないですんだ.学会のメインテーマは"臨床化学よ目的を定めよ"という,ある意味では混沌たる斯界の現状を反映したものであった.当初は,臨床検査の年々厳しさを増す環境を考えて,種々の問題点を取り上げてそれに対処する方策を論じねばと考えていた.しかし,"臨床化学会は学術団体で職域団体ではない"と言っていた弟子のY君の言葉を思い出し,学問的悲観論に対しての意見を述べるべきとするに至った.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

NASBA法

川口 竜二 , 小林 優

pp.1798-1801

はじめに

 nucleic acid sequence-based amplification(NASBA)法は,主にRNA断片をin vitroで増幅する方法である.NASBAはもともと,Cangene社で開発されたRNA増幅法をベースにして,OlganonTeknika社が商品化した技術である1),self-sustained sequence replication(3SR)法とも呼ばれ,Baxter社で開発された経緯もある.ここではNASBA法の特徴,原理およびその応用について述べる.なお,NASBAとは別に,3SRをベースに商品化された技術にTranscription-mediated amplification(TMA)法(GenProbe/中外製薬)があるが,その基本原理はNASBAと同じである.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

Menkes病

児玉 浩子

pp.1802-1806

はじめに

 Menkes病は1962年にMenkesらが頭髪異常,脳変性の男児を報告したのに始まり1),1972年Danksが本症状は腸管での銅の吸収障害による銅欠乏症状であることおよび銅の吸収障害は腸粘膜での銅の蓄積によるものであることを明らかにした2).1993年,本症の原因遺伝子は銅輸送―PタイプATPase (ATP7A)遺伝子であることが明らかになった3~5).本症は,典型的症状を呈する古典型Menkes病と症状の軽い軽症型Menkes病がある6).Occipital horn症候群もATP7A遺伝子に異常があり,本症の軽症型であることが証明された7)

 本症の中枢神経障害は乖篤であるが,早期(胎内~生後2か月以内)に治療を開始すると予防が期待できる.このような点からも,本症では胎内診断を含む早期診断が.重要である.

トピックス

Streptococcus iniae感染症

松本 哲哉

pp.1808-1809

1.はじめに

 Streptococcus iniaeはもともと魚類の病原菌として知られていた菌であるが,最近になってヒトにも感染を起こすことが明らかとなった.さらに1995年12月から3か月間に4例の菌血症例が報告され1),以後カナダ国内で計12例の感染例が報告されるに至って,注目を集めるようになってきている.本稿では,本菌の細菌学的特徴とともに感染症の臨床像について概略を述べる.

出血性大腸菌O 157による食中毒の疫学

田部 陽子

pp.1809-1810

 病原性大腸菌(最近は下痢原性大腸菌と呼ぶ)は,現在5種類に分類されている.昨年来トピックスとなっている大腸菌O 157:H7は,腸管出血性大腸菌,あるいは最近ではベロ毒素産生性大腸菌と呼ばれる群に含まれる.本菌による食中毒例を海外と国内の疫学的見地から概観してみたい.

 大腸菌O 157:H7が初めて注目を集めたのは,1982年に米国の2州で発生したファーストフード・チェーンのビーフハンバーガーによる集団食中毒の病原菌としてであった.しかし,それ以前の1977年に子供の下痢便から分離された大腸菌の一部にベロ毒素を産生するものがあるということがすでに発見されていた.そして,大腸菌O 157:H7は,このベロ毒素産生性大腸菌に含まれ,その中で最も頻度が高いものであることが明らかになった.その後も,米国では1992~93年にかけて4州で発生したこれもファーストフード・ビーフハンバーガーによる大規模な集団食中毒をはじめとして,大腸菌O 157:H7による集団食中毒が多数発生している.発生場所は,学校,ナーシングホーム,デイケアセンターなど,地域のさまざまな施設が含まれる.

質疑応答 その他

パソコンのディスプレイの画面を整える方法

鹿島 哲 , O.K生

pp.1811-1814

 Q デスクトップパソコンのディスプレイの画面を,ちらつきのない鮮やかなものにして気持ちよく作業したいのですが,どうすればよいのでしょうか.

海外レポート

GNH国民総幸福量は世界―青年海外協力隊員レポート

中根 小百合

pp.1815-1816

私の協力隊参加への動機

 "海外へ行って,住んで,働いてみたい"というのが私の夢だった.しかし,それがなかなか行動に移せなかった.それにはいろいろな理由があった.仕事を失うことへの恐れ,新しい知識や情報を手に人れられないこと,見知らぬ土地への不安,危険な病気への感染,日本へ帰ってきたときの再就職のことなど,挙げていけばきりがない.現状に不満があったわけではなく,給料も十分手に入れていたし,友達も少なくない.しかし,私が協力隊参加を決心することができたのは,本当にささいな理由だった.そのとき住んでいたアパートの契約期限が迫り,そこを出なくてはならなくなったからだ.そのとき,"行こう"と思ったのだ.いったん行こうと思ったら大胆になるべきだと思う.迷ってはいけない.初めから正しいことなんてない.勇敢に向かって行くべきだ.決心してしまうと,今までの悩みはただの言い訳で,自分に言い聞かせていただけだったようにさえ思えてきた.

資料

―濃度ディスクによるペニシリン耐性肺炎球菌のスクリーニンク法

森 伴雄 , 小栗 豊子 , 岡田 淳 , 設楽 政次 , 郡 美夫 , 高橋 綾子 , 熊坂 一成 , 矢越 美智子 , 猪狩 淳

pp.1817-1822

 さまざまな臨床材料から分離されたS.pneumoniae 222株を対象として,試作ディスクによるペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)のスクリーニング法を検討した.その結果,試作したディスクのうち,ペニシリンディスク(1単位および2単位)はオキサシリンディスクよりもペニシリンGの最小発育阻止濃度と高い相関を示し,また,PRSPど検出のための感度,特異度,偽感性および偽耐性の出現率についても良好な成績であった.以上の検討結果および薬剤安定性の観点から,昭和ディスク法においてPRSPのスクリーニングを行う場合,2単位のペニシリンディスクが有用であることが示唆された.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

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増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

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60巻12号(2016年11月発行)

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60巻11号(2016年10月発行)

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60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
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今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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