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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査41巻7号

1997年07月発行

雑誌目次

今月の主題 母子医療と臨床検査

巻頭言

母子医療の課題

中林 正雄

pp.731-732

 最近の母子医療の進歩は目覚ましいものがあります.母体管理,胎児・新生児管理などが連続して行われるようになり,現代の日本の妊婦さんは世界でも恵まれた環境にあると言えましょう.母子医療の最大の課題である母体死亡は年々減少し,10万分娩に6.9人と世界最低レベルにまで低下してきました.一方,胎児・新生児死亡の合計である周産期死亡率も世界に類を見ないまでに減少してきており,妊娠28週(出生体重約1,000g)以上では,1,000分娩に5.0を切るまでに減少しており,出生体重500~1,000gの超未熟児であってもその生存率は80%近くに向上しています.

 一方,少産少子化の現在,新しい問題も出てきています.出産年齢の高齢化に伴うハイリスク妊娠,合併症妊娠の増加です.また,胎児に関する情報が増加するに従い,それに対応する治療が検討されつつありますが,そこには当然倫理的問題もクローズアップされてきています.

総説

妊娠維持機構

許山 浩司 , 田中 忠夫

pp.733-740

 母体にとって半同種移植片である胎児・胎盤が拒絶されず妊娠が維持されるためには免疫学的機構が重要な役割を果たしている.これには,妊娠によって変化してくる内分泌因子も関与した全身あるいは局所における母体免疫応答の抑制作用,子宮局所におけるサイトカインなどによる胎児・胎盤系に対する増殖促進作用,そして母児間の接点に存在する胎盤の特異的な抗原性などが複雑にかかわっていると考えられている.

 また,妊娠のごく初期においては,月経黄体から妊娠黄体へ分化する機構も妊娠維持に不可欠と考えられる.

妊婦の生理的変化

寺尾 俊彦

pp.741-748

 妊婦には妊娠に適応した生理的変化がみられる.妊娠時の血液の変化は以下のとおりである.(1)造血機能の亢進により赤血球,白血球,血小板の絶対量は増加している.(2)しかし,血漿量がそれを上回るほどに増加するため血中濃度としては白血球以外は低下(赤血球),不変(血小板数)という水血症状態にある.(3)凝固・線溶因子に関しては,その産生量の増加のため血中濃度は上昇し何らかのtriggerがあれば即凝固,即線溶の態勢がとられている.

 しかし,この生理的変化が失調し,ホメオスタシスが乱れた病態が存在し,その代表的疾患として妊娠中に発生する血栓症や妊娠中毒症があり,またDICが発生しやすいと言える.

技術解説 妊娠初期の検査技術

習慣流産(不育症)

高桑 好一 , 田中 憲一

pp.749-752

 習慣流産あるいは不育症の原因は多岐にわたり,従来から子宮形態異常,染色体異常,内分泌異常,感染症などが指摘されてきた.一方,最近では生体の防御反応として重要な役割を持つ免疫機能の異常による習慣流産(不育症)の存在が注目されており同種免疫的アプローチ,自己免疫的アプローチがなされている.本稿では,これら習慣流産(不育症)の原因として重要な事項につき解説する.

胎児異常の母体血液スクリーニング検査

鈴森 薫

pp.753-756

 母体血液中のα-フェトプロテインが中枢神経管欠損などの胎児異常で高値を示すことは以前から知られており,この種の疾患の胎児スクリーニングとして英国などで行われてきた.その後,α―フェトプロテインの低値とダウン症との関連が報告されて以来,絨毛性ゴナドトロピンやエストリオールとの関係も明らかにされ,これらの3つのマーカーを組み合わせてダウン症のリスクを算出するトリプルマーカーテストが登場した.現在,数施設で臨床応用が試みられ,診断的価値が検討されている.

技術解説 妊娠中期の検査技術

羊水検査

森 崇英 , 井上 卓也 , 佐川 典正

pp.757-762

 羊水には胎児由来の物質が多数存在しており,妊娠管理に役だつ胎児情報を得ることができる.羊水穿刺の安全性の向上とさまざまな検査法の開発により羊水を用いて行える検査法の種類も増加してきている.現在,染色体異常の出生前診断,神経管開存症のスクリーニング,先天性代謝異常症の出生前診断,血液型不適合妊娠の罹患度評価,先天感染の出生前診断,羊水感染の診断,胎児肺成熟の評価などが羊水検査で行われている.羊水検査を行う際には,そのリスクや診断法の限界などについての十分なインフォームド・コンセントを得たうえで行うことが重要である.

胎児奇形の画像診断

竹内 久彌 , 町田 正弘

pp.763-769

 超音波断層法は,胎児奇形の診断に必要欠くべからざる検査法であるが,スクリーニングと精密検査の両方に同様な手技で使用されるという特徴を持つ.したがって,妊娠中期以降では主として胎児のどの部分をどの程度の詳しさで読影すべきかを具体的に理解しておく必要がある.またカラードプラ(あるいはパワードプラ)法は心奇形の診断に必須であり,通常の断層像では描出できない細い血管の血流を描出できるので,胎児循環異常の把握にも活用されるべきである.

切迫早産と前期破水

西島 正博 , 黒須 不二男

pp.771-776

 妊娠22週以降37週未満の分娩を早産と言い,早産に至る可能性がある状態を切迫早産と言う.前期破水(premature rupture of the membranes; PROM)とは,分娩開始以前の卵膜の破錠と定義され,妊娠37週未満に発症した場合をpreterm PROMと言う.preterm PROMは,早産の原因の約30%を占め,特に妊娠中期の早産児の予後を考慮するとその診断,管理は重要であり,よりいっそうの進歩が期待される.以下,切迫早産,前期破水の診断,管理に関し簡潔に述べる.

血管作動性物質

佐藤 和雄 , 古屋 清英

pp.777-782

 妊娠時には胎児の発育に伴って母体に大きな変化が起こるが,母体臓器は形態的,機能的変化によって代償して母体の生命と胎児の発育を維持する.このような機能的代償の1つとして母体循環と胎児・胎盤循環を維持するための血液量や心拍出量などの変化が起こるが,種々のホルモンや血管作動性物質の働きによって機能的傷害が引き起こされないように調節されている.このうち,血管作動性物質である一酸化窒素やプロスタグランディンなどは血管の緊張性をコントロールして血圧や血流を調節している.

技術解説 妊娠後期の検査技術

糖代謝異常

豊田 長康

pp.783-787

 妊娠後半期には妊娠糖尿病の頻度が上昇するが,そのスクリーニング検査法としては,グルコース・チャレンジテストや朝食後随時血糖値などがある.前者は精度は優れているが煩雑であり,現在わが国では後者が推奨されている.診断は糖負荷試験によって行われるが,その方法および基準はいまだに国際的に統一されていない.HbA1C,フルクトサミン,グリコアルブミン,1,5アンヒドログルシトールなどは,糖尿病合併妊婦の血糖管理には有用であるが,妊娠糖尿病のスクリーニングには適さない.

 本稿では,妊娠時糖代謝異常の診断ならびに管理に有用な検査について,必ずしも妊娠後半期に特有の検査ではないが,特にこの時期に留意して解説する.

胎児発育と成長因子

中山 摂子 , 岩下 光利

pp.788-792

 胎児は母体,胎盤および羊水,そして胎児自体という3つの大きな要素が存在する.これら3つの要素の機能調整には多くの成長因子が関与しているが,本稿ではその中のEGF,IGFに注目して,その胎児発育における意義について概説する.また,この2つの成長因子は胎児発育だけでなく胎児の成熟にも関与しており,成長因子は発育と成熟という胎児の発達になくてはならない存在である.

胎児well-beingの検査

米山 芳雄 , 冯 虹 , 荒木 勤

pp.793-798

 周産期管理は,医療および検査技術の向上により格段に進歩してきている.

 さて,胎内において胎児のwell-beingを評価する方法は,以前は生化学検査が主であったが,最近では胎児の生理学的検査が中心となってきている.ここでは,胎児心拍,羊水量,胎児の行動パターン,胎児循環動態などの解析から胎児のwell-beingを評価する方法について解説する.

母子感染

野口 昌良 , 中西 正美

pp.799-802

 妊娠後期の母子感染予防のための検査は,HIVのような重篤かつ致命的な疾患を除けば,それほど重大な意味を持たないものが多い.ただ,近年特に頻度の高いクラミジア・トラコマティス感染は,リン菌感染と同時に検査できるうえ,母子感染による新生児側への感染頻度も高いため,必ず行う必要がある.さらに,梅毒のように妊娠初期に母子手帳交付のための形式的検査だけでよいかどうか,むしろ妊娠後期に発症した感染に対する配慮のほうが,HIVを含めて検査としての意味を持つと言えるのではないか,と思えてならない.

話題

胎児採血

遠藤 力 , 佐藤 章

pp.804-806

1.はじめに

 胎児血採取は超音波ガイド下に臍帯から採取される.胎児血採取の最初の試みは,placentocen-tesis1)(胎盤穿刺)あるいはfetoscopy2)(胎児鏡)により行われ,1983年にDaffosら3)により超音波診断装置を利用した胎児採血法が報告され現在に至っている.現在は,溶血性疾患や染色体分析,子宮内感染症の診断に対して胎児採血が行われている.

胎盤蛋白

鈴木 良知 , 井坂 恵一 , 高山 雅臣

pp.807-810

1.はじめに

 母児間の接点であるヒト胎盤からは,さまざまな生物学的活性を有する蛋白が産生・分泌され,妊娠の維持,胎児発育に影響を及ぼしている.その中で非妊娠時にはまったく生体内には存在しない,またはごくわずかしか存在しないが,妊娠時には胎盤からの産生・分泌が増加する妊娠関連蛋白質は,妊娠時の胎児発育・異常妊娠の指標として臨床応用がなされている.一方,絨毛性疾患はもとより,悪性腫瘍からも妊娠関連蛋白質が発現することが知られており,これらが腫瘍マーカーとして利用されてきている.本稿では,従来から臨床応用されてきている胎盤蛋白であるhuman chorionic gonadotropin (hCG),human pacental lactogen (hPL),schwangerschaft protein-1(SP 1)に加えて,最近注目されてきた新しい胎盤蛋白であるpregnancy-associated plasma pro-tein A (PAPP-A),placental protein 12(PP 12)およびplacental protein 14(PP 14)の生体内動態とその臨床応用に関して概説する.

胎児成熟度の評価

児玉 由紀 , 池ノ上 克

pp.811-814

1.はじめに

 産科における重要な臨床的問題の1つに,胎児成熟度の正確な評価がある.児の未熟性は新生児の呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome; RDS)の発症や死亡と密接な関係があり,この問題に関して多くの検討がなされてきた.

 胎児の成熟度は在胎週数によって規定される時間的なプロセスであり,在胎週数をいかに正確に決められるかということが重要になる.

今月の表紙 深在性真菌症の臨床検査シリーズ・3

酵母様真菌による感染症(1)―鑑別分離培地を利用する検査法

山口 英世 , 内田 勝久

pp.726-727

 わが国で通常みられる深在性真菌症は,アスペルギルス症などを除けば,カンジダ症をはじめ,クリプトコッカス症,トリコスポロン症など大半のものが酵母様真菌(酵母)に起因する.それぞれの疾患の原因菌は,Candida spp.,Cryptococcus neoformansおよびTrichosporon beigelii(T.asahii)である.カンジダ症の原因菌種としては,かつてCandida albicansが圧倒的に大きな比率を占めていたが,近年幾種ものnon-albicans Candidaに起因する症例がますます増えている.これらの異なる疾患は無論のこと,同じカンジダ症の中でも原因菌種によって病態,予後,治療への反応などが異なることが多いので,菌種レベルの診断すなわち原因菌の同定がきわめて重要となる.

 酵母は,菌糸状真菌(糸状菌)に比べて発育形態が比較的単純で特徴に乏しいところから,莢膜を持つCr.neoformansを除ければ,蛍光抗体法や酵素抗体法でも用いない限り,直接鏡検や病理組織学的検査から原因菌の菌種を推定することは困難な場合が多い.しかしその一方で,酵母は取り扱いが容易で,細菌と同様に比較的短い培養で単一コロニーをつくり,しかも菌種特異的な生理学的特徴(代謝活性)を持つ.この特徴を利用して,酵母の分離と鑑別という2つの機能を備えた寒天培地がいくつか考案されている.前者の目的には培地中にクロラムフェニコールなどの抗菌薬を添加して細菌発育を抑制する.また後者については,各種基質に対する真菌の酸化還元能の違いを利用し,培地中に含有された色素の発色色調の違いなどから菌種を識別することを原理としている.以下に現在国内で市販されているいくつかの鑑別分離培地を紹介する.

コーヒーブレイク

山河在り

屋形 稔

pp.748

 故郷福島から第2の故郷新潟に移り住んで半世紀以上になるが,離れた2つの場所が,時々さまざまな形でつながることがある.

 戦後もかなりたった昭和28年ごろ,越後小出から羊腸とした枝折峠をジープに揺られて越え,医者1人の日赤巡回診療に参加したことがある.行きつく所はそのうち電源開発で湖底に沈む地帯で,銀山平から山奥は車も捨てて,強力に荷物をかつがせ平家落人部落のある福島県檜枝岐村に向かった.只見川上で対岸の福島県までは1本の太いロープで結ばれ,籠渡しと称して籠に乗って手で操りながら激流を渡ったが,万事開けてしまった昨今,やたらに懐しく思い出される.

1枚の血液標本の観察がカナダ青年の命を救う

寺田 秀夫

pp.792

 1992年9月から,東南アジアおよびインド,インドネシアの一人旅を続け,その間,街の中の生活と森の中でのキャンプ生活を半々に続けてきた18歳のカナダ人青年が,1993年3月から全身倦怠感,食思不振,発熱が出現したため,帰国途中来日し,某病院に入院加療を受けたが,診断名つかず,病状悪化のため本院に1993年4月6日緊急転院.

 入院時,高熱のためか憔悴しきった白人青年で,汎血球減少(WBC3,500/μl,RBC 340×104/μl,Hg 9.8g/dl)とDICの所見(PT 33秒, Fbg33.0mg/dl,AT Ⅲ 44%,FDP 44.4μg/ml)がみられた.直ちに末梢血標本を経験豊かな技師が観察すると,熱帯性マラリア原虫に特有なマウレルMaurer斑点を有する環状体が1つまたは2~3個赤血球に貪食されており,また分裂体schizontの集合像,また半月状生殖母体(crescentic gametocyte)も多数みられ,熱帯性マラリアと確定診断.骨髄でもマラリア原虫を寄生している赤血球を貧食している多数の細網細胞(反応性細網症)がみられ,肝・腎機能の明らかな障害もみられた.熱の波型は夕方から夜間にかけ40℃に上昇し,明け方下るというパターンで3日間続いた.熱帯性マラリアと確定後直ちに主治医はアメリカのCenters for Disease Control;CDC (米国疾病対策センター)と連絡し,キニーネ投与を開始した.この間マラリア原虫は末梢血中に最高10.5%にまで達したが,第5病日には0.04%に減少し,DICもヘパリン,FOY,AT Ⅲの投与で改善したが,第4病日に肺水腫を併発し,O2投与も功を奏せず,第10病日まで人工呼吸器管理.その後さらに右気胸を起こし癒着術を施行し,第21病日にようやく退院となった.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

ノーザンブロット法

酒井 正春

pp.815-819

はじめに

 遺伝子発現の解析,すなわち,mRNAの量や性質を解析するための方法はノーザンブロット法の他にドットブロット法,RNaseプロテクション法,プライマー伸長法,RT-PCR(reverse transcription and polymerase chain reaction)法などが用いられ,それぞれ長所,短所がある.しかし,最も古くから用いられるオーソドックスな方法がノーザンブロット法である.アガロースゲルで目的の細胞RNAを分離し,メンブランフィルターに移す.標識した特異的なプローブで検出することによって目的のRNAの大きさ,量を知ることができる.RNAを変性する方法によっていくつかの方法が用いられているが,本稿では最もよく使われており,信頼性も高いホルムアルデヒド―ホルムアミドを用いた方法を紹介する.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

赤血球膜蛋白質異常症

濱崎 直孝

pp.820-825

はじめに

 細胞質などに存在する可溶性蛋白質や酵素と違って,膜蛋白質は一般的に水溶性でなく実験的に取り扱いが難しく研究が遅れていた.しかしながら,最近では,膜蛋白質研究法も進歩し,遺伝子工学技術の発展とあいまって膜蛋白質の構造と機能に関する研究が進んだ.膜蛋白質研究が進むにつれて膜蛋白質異常が原因で起こる疾病も徐々に明らかになりつつある.本稿では,一般的な膜蛋白質異常と疾病の関係を概説し,それに続いて赤血球膜蛋白質異常が原因で起こる疾病の検査診断法について述べる.

トピックス

アドレノメデュリン

錦見 俊雄 , 寒川 賢治

pp.826-828

1.アドレノメデュリンとは

 アドレノメデュリン(AM)は,1993年北村,寒川らによって,ヒト褐色細胞腫から新しく発見された52個のアミノ酸からなるペプチドである1).6個のアミノ酸からなるジスルフィド結合によるリング構造と,C末端のアミド構造については,AM, CGRP,アミリンと共通の特徴を有し,約20%の全体的なアミノ酸のホモロジーを有する点などからCGRPスーパーファミリーに属するペプチドと考えられている.

尿中α2-マクログロブリン測定の意義

伊藤 喜久

pp.828-829

 α2-マクログロブリン(α2-M)は,4本の同一サブユニット構造からなる分子量740kDaの高分子蛋白である.補体C3,C4,C5やpregnancy zone proteinなどと同一ファミリーに属し,第2染色体短腕12~13領域でコードされている.生物学的な役割は明らかでないが,凝固,線溶機能の制御,炎症反応の沈静化などのアンチプロテアーゼ作用,およびIL-6, TNFα(tumor necrosis factor-α),インスリンなどの担送機能を有する.産生組織は肝臓,マクロファージ,線維芽細胞,アストロサイトなどから,一方,異化組織は肝臓,マクロファージで,プロテアーゼとの複合体形成による構造変化により,レセプターを介して急速に除去される1)

 血清における臨床上の意義はきわめて限られたものであったが,近年,欧州を中心に,わが国においても,尿中α2-Mの微量測定が脚光を集めてきている2~4).尿中であっても構造的には血清と同一であり3),比較的安定性が維持され,既存の血清測定システムでおおむね拡大利用が可能である4)

質疑応答 輸血/その他

Rho(D)血液型に自己洗浄血球は不可か/

椋本 芳樹 , 寮 隆吉 , Q生 , 丹後 俊郎 , Q生

pp.830-832

Q 日臨技輸血検査標準法血液型検査で試験管法およびスライド法において,Rho(D)血液型に用いる血球は自己血清(血漿)浮遊血球となっていますが,自己洗浄血球を用いてはいけないのでしょうか?

研究

血液の保存温度が血中グルカゴン濃度測定値に及ぼす影響

西山 友貴 , 花岡 一雄

pp.833-834

 採取した血液の保存温度が血漿グルカゴン濃度測定値に及ぼす影響を検討した.健康成人男性6人から静脈血を60mlずつ採血,6mlずつ10本に分注し各5本を室温(22℃)保存,5本を冷所(4℃)保存し,各々,0, 1, 3, 6, 12時間各温度下に放置後血漿グルカゴン濃度を測定した.測定方法自体に0~19%の,室温保存では-23~25%の,冷所保存では-29~25%のばらつきを示したが,ともに12時間後まで有意な変化を認めなかった.

測定干渉により甲状腺刺激ホルモンと遊離サイロキシンが同時に異常高値を示した症例

鈴木 智晴 , 大倉 佳子 , 林 知美 , 名執 由起 , 青山 昭 , 山口 伸之 , 小田桐 恵美 , 出村 黎子

pp.835-839

 甲状腺癌のため甲状腺全摘後甲状腺ホルモン剤の補充治療中の81歳の女性で経過中にTSHとfT4が同時に異常高値,一方,fT3は低値を示した症例を経験した.種々の動物血清やウシγグロブリンの添加実験によりTSH,fT3, fT4値が正常化することなどから,本症例血清中にはマウス血清のほか,種々の動物血清と反応する異好性抗体が存在し,これが種々のイムノアッセイキットの抗体と反応して様式の異なる測定干渉を及ぼしていることが判明した.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

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今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

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今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

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今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

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64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

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63巻12号(2019年12月発行)

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今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

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今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

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今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

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今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

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63巻2号(2019年2月発行)

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今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

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62巻9号(2018年9月発行)

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62巻8号(2018年8月発行)

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増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

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62巻1号(2018年1月発行)

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今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

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今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

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今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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