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雑誌詳細

文献概要

今月の表紙 血液・リンパ系疾患の細胞形態シリーズ・1

急性骨髄性白血病(AML-MO)

著者: 栗山一孝1 朝長万左男2

所属機関: 1長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設分子治療研究分野 2長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設

ページ範囲:P.2 - P.3

 当初の急性骨髄性白血病(AML)のFrench-American-British (FAB)分類には,AML-MOは含まれていなかった.この経緯からもわかるように,AML-MOは細胞形態学/細胞化学的方法のみでは診断できず,免疫学的マーカー検索によってはじめて診断できる亜群である.従来から骨髄系に最も特異性が高いと考えられる光学顕微鏡(光顕)的myeloperoxidase (MPO)あるいはsu-dan black B (SBB)が陰性,かつリンパ系抗原も陰性であるきわめて未分化な急性白血病(acute un-differentiated leukemiaまたはacute unclassifi-able leukemia; AUL)が知られていた.これらAULの芽球の中には電子顕微鏡(電顕)的MPO陽性顆粒が認められる例があったり,さらに骨髄系細胞の抗原性の検討が進むと,CD13あるいはCD33が最も骨髄系に特異的であることがわかり,AULにこれらが陽性である一群の存在が判明してきた.FABグループはこのタイプをAML-MOとしてAML分類に追加した.AML-MO診断の要約は表1に示した.診断上,最も大事な点は,MPOが十分染色されている標本でMPO陽性率を正確に算定することである.図1には,筆者らが初めて経験したAML-MO症例のMay-Grunewald/Giemsa (MG)染色による芽球を示した.FABグループが定義するタイプI芽球であり,原形質の空胞はMOの特徴というわけではない.AML-M1にみられる骨髄芽球とほとんど区別がつかないが,ときに核クロマチンが豊富で中型から大型のリンパ芽球様に見えることもあり,MO独自の形態的特徴を指摘することは困難である.光顕的MPOは陰性であったが,電顕的MPOは図2に示すように陽性顆粒を有する芽球を認めた.また,本例では抗MPOモノクローナル抗体を用いた免疫細胞化学法によって図3に示すように強陽性であった.このようにMOでは,酵素活性を示さないで抗原性のみを有するproenzymeと呼べる段階のMPOが存在する場合がある.図4には,最近経験したMO症例の芽球を示す.原形質が広く単球系細胞の可能性もあったが,非特異的esterase染色は陰性であり,flow cytometryでCD13, CD33陽性であり免疫細胞化学でも図5に示すようにCD13陽性であることを確認した.

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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