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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査42巻13号

1998年12月発行

雑誌目次

今月の主題 検査項目の再評価

総説

検査項目の再評価:臨床的側面からの分析―メタアナリシスにより臨床検査の有用性を評価する

河合 忠

pp.1609-1614

 次々と新しい臨床検査が開発され,臨床の場に導入されて,1,000種類に余る臨床検査が行われている.それらを科学的に再評価して,診断学的にもまた経済的にも効率的利用を実現する必要がある.従来のように,専門家の経験に依存する再評価では不十分である.Bayesの定理を生かし,メタアナリシスの統計的な手法によって系統的再評価が必要である.それによって,Evidence-Based Medicine (EBM)がより広範に実現する可能性が高まる.

検査項目の経済面からの再評価と診断関連群別包括支払い方式

森 三樹雄

pp.1615-1622

 1998年度の診療報酬改定では,検査点数が平均7.4%と大幅に切り下げられたことにより,採算性の悪い検査項目が多くなってきた.これを経済面から再評価し,新たな方策を立てるべき時期にきている.本稿ではわれわれの病院における各検査項目ごとに1件当たりの支出(円),収入/支出比(%)などの経済的指標のデータを掲示し,これを中心に考察した.

 次いで,米国で実施されている診断関連群別包括支払い方式(Diagnostic Related Group/Prospective-Payment System: DRG/PPS)がわが国にも導入が示唆されている.日本版DRG/PPSの方法とその進捗状況を述べた.このような急性期入院患者に対する定額払い制度は,臨床検査を利用する臨床医に大きな影響を与え,実質的な検査の利用率は縮減すると思われる.

再考すべき検査項目

血清蛋白

大谷 英樹

pp.1623-1625

 急性相反応蛋白の中で炎症マーカーとしてCRPが最も利用されているが,CRP定量法を採用し得る施設では再現性に難点のある半定量法(毛細管法)を廃止し,定量値で報告すべきであろう.また,ハプトグロビンは遺伝型により基準値が異なるため,溶血性貧血のみに用いるとよい.

 膠質反応検査は,蛋白分画法が普及し,その必要性はほとんど消えつつある.慢性肝炎など慢性肝疾患の経過観察に用い得るが,その代わりにIgG値を用いるとよい.

 A/G比は,利用価値がほとんどない.蛋白分画値が得られない場合は,総蛋白量とアルブミン値(グロブリン値=総蛋白量―アルブミン値)のほうがよい.

          〔臨床検査42:1623-1625,1998〕

酵素

松尾 収二

pp.1626-1631

 検査は,測定の難易性,先発した検査の定着度合い,新規項目導入の推進力,長い時間かけて培われた臨床医の思い入れなど種々の要因が混じり合って淘汰されてきた.経験的なものでも結果的には正当な評価があるかもしれないが,本来は,関連する検査項目を集め,evidenceに基づいた総合的な評価が必要である.しかし,実際にはこの種の報告は少ない.本稿では3項目について言及したが,今後,客観的な再評価が必要であり,検査の選択方法のガイドラインが出ることを期待したい.

血液学的検査

風間 睦美

pp.1632-1636

 止血学的検査は精度管理が困難な分野である.出血時間はin vivo検査の1つで精度は低いが,血小板機能異常やvon Willebrand病の診断および術前スクリーニング検査としてかけがえのない検査である.トロンボテスト(TT)はプロトロンビン時間やヘパラスチンテストと同様に,外因系が関与する凝固異常を検出するが,これらはすべて生物製剤であるトロンボプラスチンやヒト血漿など標準化が困難な試薬を用いる.経口抗凝固療法のモニターとして開発されたTTの試薬の標準化には1984年に提唱されたInternationalNormalized Ratio (INR)方式の貢献が大きい.しかし多数の自動,半自動測定機器が開発されて起こってきた施設間差の問題に対しては,新しいINR方式が提案されている.全血凝固時間の臨床的意義は小さい.

病原微生物検査

古田 格 , 尾鼻 康朗

pp.1637-1642

 微生物感染症の診断は原因微生物を検出したり,あるいは感染微生物に対する抗体の検索などで行われるが,時代とともに感染症診断法は変化し,現在では感度や特異性が優れているPCR法や酵素抗体法などが採用されている.そのため,Widal反応,Weil-Felix反応などの,特異性や精度,そして検査効率の悪い検査は臨床的に利用価値がなくなっている.微生物検査も時代とともに変化するものであり,時代の要求に耐えられない検査は整理され,淘汰されるべきである.

尿検査

伊藤 喜久

pp.1643-1648

 わが国ではいったん導入された検査法,検査項目はなかなか再考,廃止が進まない.尿検査も例外ではなく,臨床的意義,検査法の性能の点から問題がある検査が漫然と行われ,正確な病態解析に大きな混乱を引き起こしている.検査限界を確認して利用が許される項目から,はっきり廃止すべきものまでさまざまである.ここではBence Jones蛋白煮沸検査法,β2-ミクログロブリン定量,総蛋白定量法Kingsbury-Clark法(スルフォサリチル酸法),ウロビリノゲン検査を取り上げた.検査サイドではかなり常識化されており,むしろ現場の臨床医に関心,理解を求めたい.

生理機能

神辺 眞之 , 木村 俊樹 , 川本 仁 , 山肩 満徳 , 林 かおり

pp.1649-1654

 生理機能検査のうち,非特異的で近年ほとんど臨床医からの依頼がなくなった検査である基礎代謝および指尖容積脈波を中心に再評価を行った.現状では基礎代謝については,末梢組織が甲状腺ホルモンに反応しないために,甲状腺機能低下症をきたすRefetoff症候群(甲状腺ホルモン不応症)のみに有用と思われる.指尖容積脈波については従来の個々の脈波形の解析も有用性がないわけではないが,過去の検査となりつつあるが,パルスオキシメータの普及に伴い,パルスオキシメータから出力された指尖容積脈波に関する論文は散見されるようになった.その中で個々の脈波形解析ではなく,連続して記録した指尖容積脈波より呼吸情報を読み取る方法を紹介した.医療費の高騰を招かないためにも臨床的意義の小さい検査は淘汰されるべきであるが,消滅しかけている検査法に魂をそそぐ努力をすることも臨床検査医あるいは臨床検査技師の役割であろう.

話題

血沈

大曽根 康夫

pp.1655-1656

1.はじめに

 血沈は血球沈降速度(blood sedimentationrate)の略で赤血球沈降速度(赤沈:erythrocytesedimentation rate)と同義語である.最も簡便かつ重要な検査の1つであるにもかかわらず,その原理は今日なお十分には明らかになっていない.しかし,血沈値の変動には赤血球の凝集を促進する因子の存在が重要であることがわかっており,凝集が早く,大きいほど血沈は亢進する.また,赤血球は陰性荷電しているので,陽性荷電のグロブリン,フィブリノゲンが増加すると血球の凝集は促進され,血沈は亢進するが,陰性荷電のアルブミンが増加すると血沈は遅延する.また赤血球の状態も関係し,貧血では血沈は亢進し,赤血球増多症では遅延する1~3)

前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)

山中 英壽 , 深堀 能立

pp.1657-1659

1.はじめに

 前立腺酸性ホスファターゼ(prostatic acidphosphatase;PAP)は前立腺癌の腫瘍マーカーとして古くから使用されていたが,PAPが臨床応用され始めたころからPAP以外の腫瘍マーカーの開発研究が活発に行われ,その中から発見された前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)1)が優れた腫瘍マーカーであるとの評価を得て,PSAがPAPに代わって前立腺癌腫瘍マーカーとして使用される頻度が高くなってきている.医療経済状況が厳しくなり,検査の効率的利用が求められている昨今,前立腺癌の腫瘍マーカーとしてPAPからPSAに変更すべきものであるのか,続行すべきものであるのかは,ただ漫然と習慣的にオーダーするのではなくして,その特異性および臨床的意味についてPAPについて検討すべきときにきている.

ポイント・オブ・ケアテスト

巽 典之 , 津田 泉 , 田窪 孝行 , 日野 雅之

pp.1660-1664

1.ポイント・オブ・ケアテストとは

 これまでわが国における臨床検査は,背景にある国民健康向上の必要性と同時に国家経済の発展に支えられ,自動化・システム化の方向へと急成長を遂げてきた.この基本思想としては,①多検体に対する多項目同時測定,②迅速化,③省力化,④精度と正確性の向上,⑤経済性の追求,があり,さらに最近では,⑥国際的標準化,⑦安全性向上,⑧環境保護,もこの中に含まれるようになり,検査の質は年々向上していることが諸種の臨床検査精度管理調査報告からうかがい知れる.しかしながら一定の医療水準目標が達成されたことと,長寿化による高齢者人口の増加,国家経済の翳(かげ)りと保険経済の破綻の影響を受け,臨床検査全体の成長が停止した状況に追い込まれている現状にある.最近では臨床検査の有用性(臨床的効率:clinical utility)が医療の観点だけでなく経済的な観点から見直しされており,再度注目されているのがポイント・オブ・ケア(Point-of-Care; POC)テストである.POCテストはnear-patient testあるいはbed side testとも呼ばれ,簡便かつ迅速に患者の側で検査を実施して結果の得られる臨床検査を指しており,具体的には尿や血糖の試験紙テストを意味していた.

 わが国におけるPOCテストの歴史は古く,尿検査試験紙法は尿糖濃度を目視判定するテステープ(イーラィ・リリー)を皮切りに,その後,糖・蛋白・潜血・pH・ケトン体ほか多項目の迅速同時比色測定が可能な自動機器が開発され,今ではほとんどの医療機関でその装置が利用される現状にある.他方,臨床化学分野で一世を風靡したものにRaBAシステム(中外製薬)がある.このシステムは1970年に上市され,多くの実地医家に愛用されたもので,液状試薬により反応させ,波長変換型光電比色計で吸光度を測定する方法であって,準備された計測法項目も30種類にわたっていた.

病院経営から求められる臨床検査

向井 英憲

pp.1665-1667

1.はじめに

 ここに来てわが国の医療システムには,大きな変革の波が押し寄せてきている.

 引き続く経済不況と政府の財政難,人口の高齢化,少子化など,現状から将来にわたっての不安感(危機感)が常態化しつつある中で,戦後の昭和30年代にスタートした国民皆保険(1961年),あるいは薬価基準制度というわが国保険医療システム,あるいは医療産業界を支えてきた二大制度が今や崩れ去ろうとしている.

今月の表紙 血液・リンパ系疾患の細胞形態シリーズ・12

特殊急性白血病・低形成白血病

栗山 一孝 , 朝長 万左男

pp.1604-1605

 低形成白血病(hypoplastic leukemiaあるいはhypocellular acute leukemia)は骨髄が低形成にもかかわらず芽球の増加が認められる急性白血病の一病型である.成人急性白血病の約10%を占め,高齢者に多く治療難反応性である.典型的低形成白血病は,汎血球減少症を呈し,末梢血中の芽球も少なく,ときには認めないこともあるため,再生不良性貧血や骨髄異形成症候群(MDS)との鑑別が重要となる.したがって,診断は骨髄穿刺標本による細胞形態観察と同時に骨髄生検による骨髄低形成の確認が大事である.

 骨髄は,hypocellularであるが芽球の増加が認められ,これらの芽球はFAB分類可能な急性白血病で認められる芽球と本質的に異なることはない(図1).相対的リンパ球増多を呈することが多く,全有核細胞中芽球が30%に満たないことがあるが,リンパ球を除くと30%以上となる.前述したように低形成骨髄であることは骨髄生検で決定するのが最もよいが,骨髄生検が困難な場合にはclot sectionでも十分有用である.また,全身骨髄のMRI検査が,骨髄cellularityを評価するうえで大いに参考となる.骨髄生検像は図2に示すように,著明な低形成骨髄すなわち芽球や造血細胞は多くの脂肪細胞の間隙に認められるのみである.低形成白血病の芽球は,ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase; MPO)活性が低いことが多い.図3にはMPO陰性芽球が多い中に陽性芽球を示す.MPO陽性率が低く,ときに3%未満であっても抗MPO抗体による免疫細胞化学法では,陽性のことがしばしばある.また,CD13陽性であることも多く(図4),リンパ性抗原を示すことはほとんどない.

コーヒーブレイク

橋わたし

屋形 稔

pp.1667

 京都の先斗(ぽんと)町と対岸の東山地区を結ぶ予定の鴨川の橋わたしの計画は,市議会の議決も経ていたがいったん白紙に戻ったらしい(1998年夏).鴨川にパリ・セーヌ河のポン・デ・サール(芸術橋)は不似合だという異論が高まった結果という.

 なるほど伝統のある京の風景にパリの真似はなじまないということであろうが,市長はじめ計画した側の気持もよくわかる気がする.それほどセーヌと橋の芸術性はよくマッチしており何とも言えぬ感動を残してくれるからである.京都駅から眺められる京都タワーの俗悪な不似合いさこそ考え直してもらいたかったものである.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

性決定因子の検査化

山岡 和子 , 神辺 眞之

pp.1668-1674

はじめに

 性決定が必要な場合は,犯罪に関係した血痕や毛髪を材料として行うものや,伴性遺伝病の生前診断および不妊,さらに性分化異常が主である.また,一時的に多数の検体の性決定を行う必要に迫られるのは,国際スポーツ大会における性別確認検査(Gender-Veri-fication,以下GVと略す)である.Y染色体上に存在するSex Determining Region of Y-chromosome(以下SRYと略す)が1991年1)に睾丸決定遺伝子として同定され,性決定の機構が解明されたかに思われたが,まだ,十分に解明されてはいない.

 最近,性腺の形成分化に関与する遺伝子が単離されており,男女の性分化を決定する機序が明確になりつつある.しかし,現在,性の判定を臨床的にとらえる方法としては,SRYの有無による判定が有力な方法であり,スポーツ大会におけるGVや,性分化異常症および生前検査の診断に必要な検査である.また,Y染色体長腕部に無精子症に関連する領域2,3)(azoo-spermic factor,以下AZFと略す)が存在することが知られており,Y染色体の長腕の一部がmicrodele-tion (欠失)している無精子症患者の解析2~8)が行われているが,いまだAZFの部位は確定していない.筆者らも,特発性男性不妊症の患者の一部にAZFの領域にmicrodeletionを認めた9,10)

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

白血病の遺伝子異常・2―bcr/ablキメラ遺伝子以外の遺伝子異常

北村 聖

pp.1675-1679

はじめに

 遺伝子診断の分野では,悪性腫瘍細胞の同定は極めて重要な位置を占めている.特に末梢血中に悪性腫瘍が存在する白血病では,初期の診断,病型分類のみならず,治療後の残存微少白血病細胞の同定には極めて有用である.

 本稿では前回に続けて白血病細胞の遺伝子異常とそれを用いた臨床検査について概説する.表1(再掲)に白血病でみられる転座型遺伝子異常と,これらの転座に関与している遺伝子の推定される機能をまとめて示す.

トピックス

卵巣癌におけるステージングラパロトミー

落合 和徳

pp.1680-1681

1.ステージングの重要性

 卵巣癌に限らず,悪性腫瘍に関する進行期の決定(ステージング,staging)は,腫瘍組織の進展の客観的な評価手段であり(図1),かつこれによって患者の予後推定が可能となる.種々の予後関連因子のなかでも進行期が最も強い影響を持つことは周知のとおりである1)(表1).したがって癌治療の個別化が叫ばれる現在,この進行期に基づく治療の選択が,大変重要であることは容易に理解できよう.

抗酸化LDL抗体

藤田 誠一 , 片山 善章

pp.1681-1684

1.はじめに

 冠動脈疾患をはじめとした粥状動脈硬化などの疾患の発症において,LDLコレステロールの血中での増加が,強力な危険因子であることの報告は数多くある.しかし,血中に増加したLDLが粥状動脈硬化を惹起する分子機構についてはいまだ不明な点も多く残されている.

 最近では,量的な変化より質的な変化が重要視されるようになり,いわゆる変性LDLが注目されている.

ホモシステインと糖尿病

奈須 正人 , 片山 善章

pp.1684-1686

1.はじめに

 動脈硬化や虚血性心疾患発症の危険因子として,高脂血症,高血圧,喫煙,肥満,糖尿病などが考えられているが,虚血性心疾患の患者の中にはなんら危険因子を持たない場合もしばしばある.特に,若年で発症した場合には,体質的な未知の因子によるものと考えられる.その中でかなり重要と思われるのが,軽度の高ホモシステイン血症である.

 ホモシステインが注目されたのは,遺伝子疾患であるホモシスチン尿症の研究において,心臓病との関係に気づいたのが始まりとされる.血中に蓄積した非常に高濃度のホモシステインが,動脈硬化の原因と考えられた.現在では,既に知られている心臓病の危険因子の多くもホモシステインとの関連で説明が可能とされている.さらに,糖尿病患者には,動脈硬化や心臓病の発症がよくみられるが,ホモシステインとの関係について最近の知見を紹介する.

イントラネットを活用した検査医学教育

石田 博

pp.1687-1688

 医療の進歩に伴い医療情報が急速に増加しているなか,医学教育のあり方にも変化が求められている.従来の講義を中心とした受動的な教育形態からチュートリアルなどの問題解決を図りながら学生が積極的な学習を行う方法を取り入れる大学が増えつつある.情報の詰め込みではなく,問題を解決するために必要な情報を入手し学習する術を学ばせようというものである.この変化を支援するものとして期待されるのがインターネットの普及にみられる情報インフラの発展と情報科学の進歩である.効率的な情報入手と有用な情報の統合化が日標達成の1つの鍵となるからである.今日では電子教科書やMEDLINEなどの文献検索,あるいは,国立がんセンターのがん情報サービス*1)のようなworld wide web (www)に載せられたさまざまな情報が,ネットワークを介していつでもどこからでも入手可能となっている.また,電子メールでの質問や連絡も可能である.このような環境の中,上手に学生を方向づけることで効率的な問題解決型学習が促されると期待される.

 一例として,インターネットの技術を学内LANに適用したイントラネットでのコンピュータを用いた検査医学教育について紹介する.当学では,基本的な臨床検査情報から患者に起こった病態を推論する診断演習(reversed clinico-path-ological conference;RCPC)を月1回の割合で行っている.この症例をデータベース化し,他の学生にもwwwの形で演習可能なシステムを構築した(図1).症例の病態を検査からひもどくためには,基本的な検査の読み方やその検査に関連した病態についての理解が要求される.学生は手元にある教科書やwwwで提供される電子教科書を参考に推論を進めるが,各検査の異常のみを追ってゆくと,鑑別診断に上がるものが多くなり思考が発散してしまう場合も多い.そこで,典型的な症例を多数集めて臨床症状や検査値をデータベース化し,検査値の異常頻度や値分布,2項目の検査の分布などが表示できる病態検査情報システムを構築し,活用可能としている(図2).さらに,検査値と病態の関係を掘り下げる目的で文献検索の課題を与え,解決に向けた支援を行っている.学生の症例検討が一定レベルに達した段階で,実際の臨床診断とその経過や画像検査,病理画像およびその診断を提示し,学生が考察した病態を検証し,フィードバックをかけることで問題解決の締めくくりとしている.

質疑応答 臨床化学

液体クロマトグラフィーとODS

松下 至 , T生

pp.1689-1693

 Q液体クロマトグラフィーについてお尋ねします.医療医薬品の分析に液体クロマトグラフィーはどのように活用されているのでしょうか.その中に順相クロマトグラフィーと逆相クロマトグラフィーがありますが,その違いとカラムの使用方法について教えてください.また,逆相クロマトグラフィーとしてよく用いられるODSについて合成方法を含めて教えてください.

質疑応答 微生物

アデノウイルス7型の臨床所見と検査所見

中村 良子 , Y生

pp.1693-1694

 Q 1995年に山梨県でアデノウイルス7型の集団発生が起こって以後,各地(川崎,和歌山,滋賀)で流行がみられますが,アデノウイルス7型の臨床所見,検査方法などをお教えください.

研究

ホルマリン廃液処理に関する基礎的検討―消石灰による糖合成反応の利用

高橋 勝美 , 江尻 晴博 , 望月 衛 , 木村 久江

pp.1695-1697

 ホルマリン廃液に消石灰を加えることで糖液に変化させ,廃棄をより安全かつ簡単で安価に処理可能か基礎的検討を試みた結果,廃棄の実状を踏よえ有用であると結論した.

結合型PSAおよび遊離型PSAを等モル測定する血清PSAの酵素免疫測定試薬スマイテストELISA[PSA]の基礎的検討

西松 寛明 , 水谷 隆 , 森山 信男 , 亀山 周二 , 本間 之夫 , 河村 毅 , 北村 唯一

pp.1699-1702

 前立腺特異抗原(PSA)は日常診療ならびに検診において広く使用されている.今回われわれは結合型PSAと遊離型PSAを等モル測定する血清PSA測定試薬スマイテストELISA[PSA]の基礎的検討を行い,良好な測定精度,希釈定量性を確認した.40歳以上の健常男性から推定されるカットオフ値は4.0ng/mlであり,今回の検討対象から算出された感度・特異度は各々79.5%および27.7%であった.

学会だより 第30回日本臨床検査自動化学会

オートメーションからラボラトリーマネージメントへと展開

亀井 幸子

pp.1703

 1998年9月17,18の両日,日本コンベンションセンター(幕張メッセ)国際会議場で開催された表記の大会は,臨床検査分野の自動化の幕開けからちょうど30年を迎えて,記念すべき回であるとともに,新世紀における展開の方向を示す大会となった.

 世間はまだ不景気のまっただ中にあり,また,前日の台風7号の影響もあって,学術集会の参加登録者数は1,900名,併設展示見学者数は約7,700名と,例年より多少少なかったとはいえ,一般演題243題,すっかり定着した機器・試薬セミナー25題,ランチョンセミナー6題を数えた.併設展示への出展会社も114社と例年なみに推移したことと併せ,機器・試薬の新規導入にはこの学会からの情報が貢献していることは不変であった.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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