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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査42巻4号

1998年04月発行

雑誌目次

今月の主題 肥満

巻頭言

肥満

片山 善章

pp.383-384

 肥満といえば,自分の体重が標準体重より何kgオーバーしているかが気になる.その式は,標準体重=〔身長(cm)-100〕×0.9あるいは身長(cm)-105を一般の人たちは利用する.医学的には,理想体重=〔身長(m)〕2×22が標準体重の算出式として日本肥満学会から提言されている.22の数値は体格指数(body mass index; BMI)であり,その算出式はBMI=体重(kg)/〔身長(m)〕2である.また,肥満度(%)は(実測体重―標準体重)/標準体重×100で算出する.したがって,肥満の判定はBMIと肥満度(%)を組み合わせて,痩せ,普通,過体重,肥満の4段階で表現される.さらに,体脂肪量も肥満判定の指標であり,それは体脂肪率で表す.また,最近では,その真偽はわからないが,体脂肪率を簡単に測定できる簡易器械が話題になっている.このように,肥満は老若男女あるいは医療関係者の有無を問わず話題になることが多い.

 肥満は身体に脂肪が過剰に蓄積された状態を言う.その成因は過食,誤った食事の摂り方,遺伝的素因,運動不足,熱産生障害,精神的因子などが複雑に絡み合って構成される.いわゆる成因不明の単純性肥満(原発性肥満とも言う)である.一方,内分泌性,中枢性などの基礎疾患が原因となっている肥満は症候性肥満(二次性肥満とも言う)と呼ばれている.一般的に,肥満と言えば単純性肥満のことを言い,習慣や意志という後天的な問題として扱われてきた.

総説

疾患の背景となる肥満

中村 正 , 松澤 佑次

pp.385-394

 疾患の背景となる肥満は,医学的見地から減量治療を要する肥満すなわち"肥満症"であり,肥満症をターゲットとした診断,病態解析,治療方針の確立が重要である.特に,脂肪量の絶対的な増加よりも,ヒ半身肥満に代表される脂肪分布の差異が大きく関与することが明らかとなっている.さらに,上半身肥満の中でも,腹腔内の内臓脂肪の増加する内臓脂肪型肥満が疾患の病態基盤として重要である.最近になって,脂肪細胞の分子生物学が進展し,内臓脂肪が代謝上活発であり,しかも多数の生理活性物質を産生する臓器であることが明らかにされつつあり,その観点からの病態解明へのアプローチがなされつつある.

肥満と循環器疾患―インスリン抵抗性症候群

長谷川 雅昭 , 原納 優

pp.395-403

 肥満は糖尿病,高脂血症,高血圧などの動脈硬化の危険因子となる疾患と密接に関係し,動脈硬化の発症・進展因子として重要である.これら疾患の背景にはインスリン抵抗性やこれを代償する高インスリン血症が共通して存在し,血管障害の進展を促している.現在,インスリン抵抗性機序が分子レベルで明らかにされつつある.また,新しく糖尿病治療薬としてインスリン抵抗性改善薬の使用が可能になった.これら疾患の発症・進展予防にはインスリン抵抗性の是正が必要である.

肥満と遺伝子異常

西村 治男 , 小川 佳宏 , 細田 公則 , 中尾 一和

pp.405-412

 肥満モデル動物の責任遺伝子(肥満関連遺伝子)が,ここ数年の間に単離同定され(ob,db,fa,Ay,tub,fat),また種々のトランスジェニックマウスの開発により,肥満の分子病態が解明されつつある.その中でも肥満遺伝子(ob遺伝子)はヒトでも点突然変異が報告され,その産物であるレプチンがヒトにおいても重要なエネルギー代謝調節因子であることが確認された.

技術解説

脂肪量の測定

武井 泉 , 笠谷 知宏 , 渡辺 清明

pp.413-416

 肥満を評価するうえで,体脂肪量の測定は重要である.各種測定法にはそれぞれ,臨床的に容易に測定できるか,生物学的変動による誤差はどのくらいか,また測定者内変動や測定者間変動はないかなどの問題がある.本稿では,最も信頼されるとされる体密度法(水中体重法)および皮脂厚測定法,簡単な機器が広まっている生体電気伝導度法,また体脂肪分布測定法として近年利用されているCT,MRI,超音波などについて概説する.

インスリン感受性試験

鈴木 正昭

pp.417-421

 インスリン抵抗性とは,末梢(主として骨格筋)の糖利用に対するインスリン作用の低下を指すことが多い.steady state plasma glucose (SSPG)法は簡便で正確であり,SSPG値がインスリン抵抗性を表す.グルコース・クランプ法は最も多く施行されているが,手技が少し煩雑である.M値でインスリン感受性を表すことが多い.ミニマルモデル法は経静脈ブドウ糖負荷試験時の血糖とインスリン値のデータから専用コンピューター・プログラムを用いてインスリン感受性を計算する.

 本稿では,以上の3法について概説した.

レプチンの測定―測定値の意味するもの

飯田 満 , 村上 尚 , 島 健二

pp.423-429

 近年,肥満にかかわるいくつかの分子パラメーターが明らかになり,その一翼を担うレプチンもそのレセプターのクローニングなどによって急速に研究が進展した分野である。レプチンの血中測定が可能になり,レプチンの生体に及ぼすさまざまな作用が明らかとなってきた.本稿では,筆者らのレプチン測定系の開発の概要と,その測定値の臨床的な意味合いを,最近の知見を交えて紹介した.

β3アドレナリンレセプターの遺伝子解析

吉田 俊秀 , 坂根 直樹

pp.431-436

 脂肪細胞に存在するβ3アドレナリンレセプターは熱産生と脂肪分解に重要な役割を演じている.1995年,この遺伝子変異がピマインディアンにおいて発見され,肥満,熱産生機構の異常,インスリン抵抗性や糖尿病早期発症と関連するとされ,世界的な注目を集めた.また,その後の研究により,日本人にはこの遺伝子変異が3人に1人と高頻度に存在し,本変異を持つものは,基礎代謝量低下のため,減量が困難であること,心臓病や糖尿病合併症の発症にも関係していることが明らかになっている.

話題

睡眠時無呼吸症候群

石川 勝憲

pp.437-439

1.はじめに

 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome;SAS1))とは,REM期・non-REM期の睡眠段階で,10秒以上の無呼吸が7時間以上の睡眠中に30回以上,または夜間睡眠1時間あたり5回以上〔無呼吸指数(apnea index)5以上〕認められるものとされており,睡眠中に頻回に出現する無呼吸のため種々の臨床症状を呈する病態を総称したものである.

 肥満そのものを一次的原因とする心肺機能障害をobesity heart disease (肥満起因性心肺機能障害症候群)と呼んでいたが,1956年,Burwellら2)は,このような心肺機能障害の特徴を8つの特徴,すなわち,①高度の肥満,②傾眠,③夜間の周期性呼吸,④筋攣縮,⑤チアノーゼ,⑥二次性多血症,⑦右室肥大,⑧右心不全にまとめ,これがChales Dickensの小説,ピックウィック・クラブに出てくるJoeという肥満少年にきわめて似ていることから,ピックウィック症候群(Pick-wickian syndrome;PWS)と名づけた.その後,肥満がなくても睡眠時無呼吸を呈することが報告されるようになり,Guilleminaultら1)は,睡眠中に無呼吸を呈する病態をまとめてSASと呼ぶことを提唱した.

肥満の薬物療法

辻 正富 , 山本 芳子 , 足立 満 , 井上 修二

pp.440-443

1.はじめに

 肥満には糖尿病,高脂血症,高血圧,冠動脈硬化などの合併が高率にみられる.肥満度20%以上の場合や,これ以下であっても内臓脂肪型肥満のような体脂肪分布の異常の場合に,これら合併症を併発するときには,肥満症として医学的管理が必要となる.肥満治療の基本は食事療法と運動療法であるが,これらライフスタイルの修正のみでは対応できない症例も多く,薬物療法が必要となる.

肥満の功罪

池田 義雄

pp.444-445

1.はじめに

 300万年以上を経た人類の歴史の中で,遺伝子のしくみは,今日のようにたとえ豊富な食糧が供給され,美食・過食が可能になったからといって,これに順応すべくそう簡単に変化しうるものではない.長い狩猟生活時代を振り返ると,獲物を得たときには腹いっぱい食べてエネルギーを脂肪組織として備蓄する機構と,飢餓状態に置かれたときには備蓄した脂肪組織を分解して上手にエネルギー化する機構とのバランスのうえで,人類は生命活動を長い間維持してきたと言える.

 今,この機構すなわち飢餓への対応のしくみが裏目に出て,過剰な体脂肪蓄積者つまり肥満者が出現し,多くの健康障害が引き起こされるに至っている.このようなことからすると,肥満は決して忌み嫌われるべき性質のものでないことが,よく理解できる.すなわち,人が体脂肪を蓄積しうる機能は,人の生存にとって大変な"功"だということである.しかし,人の置かれる環境の激変はこの機能を"罪"深きものとしている.本稿では,肥満が"なぜ罪深いか"について生活習慣病の視点から解説する.

今月の表紙 血液・リンパ系疾患の細胞形態シリーズ・4

急性骨髄性白血病(AML-M3)

栗山 一孝 , 朝長 万左男

pp.378-379

 FAB分類によるAML-M3は,形態学的に特徴のある急性前骨髄球性白血病である.したがって,形態診断の診断一致率も高い.形態学的特徴に加え,播種性血管内凝固症候群(DIC)と染色体異常t (15;17)(q22;q21)を認める例が90%以上を占める.17q21上にはretinoic acid rece-ptor-α(RARα)遺伝子,15q22にはPML遺伝子があり,相互転座によってPML-RARαキメラ遺伝子を形成している.all-trans retinoicacid(ATRA)による分化誘導療法の成功は,この遺伝子異常が密接に絡んでいることが明らかになりつつある.

 AML-M3の典型的細胞形態は図1に示すように,核型は分葉傾向を示す鉄アレイ状,原形質は不揃いなアズール顆粒で満たされ,Auer小体を有し,さらにAuer小体が束をなしたfaggotなどがある.この豊富なアズール顆粒の中には凝固や線溶活性物質が多量に含まれており,DICの原因となっている.

コーヒーブレイク

故里風物

屋形 稔

pp.412

 昨年秋,新潟市と福島県いわき市を結ぶ盤越高速道が開通した.早速郡山の先の生家を訪ね,那須温泉に足を延ばして清遊してきた.暮れには,雪化粧した日本海のゴルフ場を諦めて,太平洋岸まで横断して楽しんできた.片道3時間のドライブで以前の半分であるから,便利になったものである.

 一方,情緒面では"故郷は遠きにありて思うもの"と詠った詩人の心がよくわかる.50年も前とは,人間はもちろんであるが,風景や生活環境も徐々に変化を遂げてきているのがここにきて一挙に変貌する予感が確実にある.私たちの心に染みた故郷の風景は,唱歌の"兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川"のイメージそのもので,あの思い出はダイヤよりも尊い.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

CGH法

坂部 智哉 , 稲澤 譲治

pp.446-449

はじめに

 分染法の導入以降,腫瘍の染色体分析は精力的に行われ,周知のように造血器腫瘍や軟部組織腫瘍の転座切断点からは腫瘍化に直接かかわる原因遺伝子が単離されており,その多くは転写因子であることも明らかになっている1).しかし,固形腫瘍においては,定型的な転座異常を見つけることは少なく,特に上皮性の腫瘍においては,欠失やイソ染色体といった染色体レベルのコピー数の変化を意味する異常がほとんどを占めている.このことは,古典的な染色体分析法によるアプローチのみで,胃癌や乳癌をはじめとする上皮起源の固形腫瘍のゲノム異常解析を進めても,ポジショナルクローニングの標的にできるような新たな染色体異常を見つけ出すことがかなり難しいということを示している.したがって,固形腫瘍の染色体レベルのゲノム異常解析において,ブレイクスルーとなるような新たな技術の開発が望まれていた.

 蛍光in situハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization;FISH)法は,顕微鏡をとおして標的とする核酸分子を染色体や間期核に蛍光シグナルとして捉えることができる分子細胞遺伝学的手法である.このFISH法を基盤にして,1992年末にCGH(comparative genomic hybridization)法が開発された2,3)

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

脆弱X症候群

津留 智彦

pp.450-454

脆弱X症候群とは

 脆弱X症候群は,遺伝性の精神遅滞疾患であり,精神遅滞を呈する先天性の疾患としてはDown症に次いで多いと言われている.頻度は一般男性の1,500人に1人,女性の2,000人に1人との報告があるが,最近の報告ではそれより少ない1)

 脆弱Xとは,患者X染色体一定条件下で特定部位の脆弱性を示すことに由来する.具体的には,患者由来の末梢血リンパ球細胞を葉酸欠乏培地で培養して染色体検査を施行した場合に,Xq27.3領域で染色体の断裂〔fra (X)(q27.3);FRAXA〕が発現することである.この方法を用いると,患者では1~数十%のX染色体の異常が検出される.

トピックス

HHV 8とカポジ肉腫

立川 夏夫

pp.455-457

1.HHV 8

 カポジ肉腫は,地中海沿岸住民や東欧系ユダヤ人の高齢男性に好発するまれな悪性腫瘍として知られていた.1981年以降は,男性同性愛者の後天性免疫不全症候群(AIDS)患者間でのカポジ肉腫の多発が認められ,何らかの感染性病原体の関与が疑われていた.サイトメガロウイルス,ヒトパピローマウイルスなどが病原体の可能性として挙げられていた.1994年12月,ChangらはPCR(polymerase chain reaction)法を応用して,正常組織には存在せずカポシ肉腫の組織にのみ認められる未知の遺伝子断片を検出した1).この遺伝子断片に対応する新しいウイルスは他のヘルペスウイルスと相同性が高いことが確認され,HHV 8(human herpes virus 8)またはKSHV(Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus)と呼ばれている.現在,遺伝子の大きさは約170~270kbと類推されており,ヘルペスウイルス科のガンマヘルペスウイルス亜科に属すると考えられている.ガンマヘルペスウイルス亜科の特徴は腫瘍ウイルスであり,この科に属するウイルスとしてはEBVとHVSの2種類が知られている2).EBVはアフリカ小児に風土病的に多発するバーキットリンパ腫細胞の培養中に発見されたウイルスであり,Bリンパ球に感染し,Bリンパ球を芽球化・不死化させることができる.

心室由来心臓ホルモン(BNP)

川口 秀明

pp.457-459

1.心房性ナトリウム利尿ペプチドとは

 従来,ポンプ器官と考えられていた心臓から,内因性降圧利尿物質である心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide;ANP)が分泌されることが明らかになって以来1),この分野の研究は驚異的なスピードで進んでいる.現在まで,ナトリウム利尿ペプチドファミリーとして3種類報告されている(図1).ANPのほかに,ブタ脳で発見された脳由来ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide;BNP),ヒトやラットでは視床や視床下部,小脳に多く存在するC型ナトリウム利尿ペプチド(C-type natriuretic peptide;CNP)がそのファミリーである.このうち,ANPとBNPは主に心臓で生合成・分泌され,心臓ホルモンとして働いている.ANPとBNPは膜型グアニルシクラーゼであるナトリウム利尿ペプチド受容体を介し,利尿,血管平滑筋弛緩およびレニン・アンギオテンシン系の抑制などの生理活性を示す.ANPやBNPはさまざまな心臓負荷に反応して生合成され,分泌される.これらペプチドの作用によって,心臓に対する前負荷および後負荷が軽減されるために,いわば心臓の自己代償機構の1つと考えられている.

マイクロダイセクションを用いたDOP-PCR CGH法

馬屋原 健司 , 坂本 優 , 杉下 匡

pp.459-461

1.はじめに

 CGH法は1992年10月にKallioniemiら1)により開発され,今日では新しい分子細胞遺伝学的手法として広く知られている.CGH法の最大の利点は,腫瘍DNA中の遺伝子コピー数の増加ないしは減少を1回のハイブリダイゼーションで同時に検出し,さらにそれらの領域をすべての染色体上にマッピングできることにある.しかし,上皮内癌や微小浸潤癌のように,採取した組織中に正常細胞が大半を占める場合には,従来のCGH法では正確な結果を得ることが不可能である.そのため,われわれはホルマリン固定パラフィン切片から腫瘍組織のみをマイクロダイセクションにて採取し,DNA抽出後,DOP-PCRでDNAを増幅しCGH法を行っている.

子宮内膜表層に観察されるsurface syncytial changeの細胞像

渡辺 徹 , 江村 巌 , 須貝 美佳 , 内藤 真

pp.461-463

 近年,子宮体癌が増加しており,今後さらに体癌の発見が増加すると考えられる.しかし,細胞診による子宮体癌の正診率はいまだ満足すべき状態にはない1,2).この原因の1つとして,子宮内膜にはいくつかの良性増殖性病変が存在することが考えられる3).細胞診で子宮内膜病変を正確に診断するためには,これら良性増殖性病変に由来する細胞の特徴を把握し,内膜増殖症や子宮体癌由来の細胞との鑑別点を明確にする必要があると考えた.われわれは,短時間のうちに変化してゆく子宮内膜の変化を理解するためには同時に採取・作製された細胞診標本と組織標本とを対比することが望ましいと考え,エンドサイトによる子宮内膜細胞診に坂東ら4)のによって紹介されたコロジオンバック法を併用して検討した.その結果,子宮内膜には高い頻度でsurface syncytialchange (SSC)が観察されることに気付いたので,SSC由来の細胞像について報告した5)

 SSCは,内膜の被覆細胞層に形成される上皮性細胞の小さな増殖巣である(図1).背の低い立方状の細胞から成り,合胞状で重積しており,しばしば乳頭状に増殖していた.細胞間に好中球やリンパ球が浸潤する所見をまれならず認めた.細胞質は広く,エオジンに好染していた.多くの場合,核に大小不同はなく,癌や内膜増殖症との鑑別に苦慮することはなかった.しかし,乳頭状に増殖する細胞集団の中にはしばしば核の直径が15μmを超える大きな細胞も混在していた.

質疑応答 一般検査

便中の好酸球の検査方法,意義

田邊 將信 , Y生

pp.465-466

 Q 便中の好酸球の検査方法,意義について教えてください. 

質疑応答 その他

報告などをプリントするときに必要な知識

鹿島 哲 , S.O生

pp.466-470

 Q パソコンを使って仕事をまとめたときには,最後にプリンタを使って紙にプリントします.最近は,カラープリンタやレーザープリンタが安価になって個人の手の届くところになりましたので,それらの長所,短所と使いかたの要点を教えてください.

研究

全血を用いた心筋トロポニンT定性試験紙"トロップT"の臨床的検討

志村 嘉彦 , 平井 誠 , 菅原 健一 , 古木 量一郎 , 大谷 英樹

pp.471-475

 全血を用いた心筋トロポニンT(cTnT)測定試験紙"トロップT"(ベーリンガー・マンハイム)の臨床的検討を行った.従来法は,遠心分離操作や測定機器を必要としたが,本法は全血を用いることでベッドサイドにおいて簡単・迅速に血中のcTnT測定が可能である.検出感度は0.19ng/mlと十分な感度を有し,心筋梗塞患者は全例が陽性を示した.骨格筋由来TnTとの交差反応は認めず,cTnTに特異性の高い測定法であり,臨床上の有用性が明らかにされた.

酵素免疫測定法による尿中I型コラーゲン架橋N―テロペプチド(NTx)測定の基礎的検討

馬場 広太 , 橋爪 真理 , 松浦 崇 , 片峯 奉章 , 植村 昭夫

pp.477-481

 酵素免疫測定法に基づく尿中NTx測定の基礎的検討を行った.同時再現性,日差再現性ともCV 5%以下を示し,また,希釈直線性,添加回収についても良好な結果であったことから,本法が正確度・精密度の高い測定法であることを確認した.また,尿中のNTxはpH5.0~8.0の範囲で安定であり,凍結条件で12か月,凍結融解回数は10回まで測定値の変動が認められないことを確認した.

抗DNA抗体測定における各種測定法の比較検討

西村 忠隆 , 南雲 文夫 , 植田 寛 , 只野 壽太郎

pp.483-488

 測定原理の異なるRIA法とELISA法により,膠原病患者の血清中の抗DNA抗体測定の再評価を行った.RIA法とELISA法の一致率は85%であった.患者間で抗DNA抗体のイムノグロブリンクラスに違いがあり,測定法によって結果が大きく異なる症例の存在を確認した.

編集者への手紙

DiBr-PAESAを用いた血清銅測定法の問題点

山田 満廣

pp.490-491

1.はじめに

 大阪赤十字病院の臨床化学検査においては,血清銅の日常検査法として長年にわたり直接法であるTAMSMB法〔ラボシートⅢ Cu:(株)シノテスト〕を,COBAS MIRA S自動分析装置(F. Hoffmann La Roche)に適用し測定してきた.この間,特異な患者血清において異常蛋白に起因すると考えられる測定妨害反応による偽高値を示す検体を見出し,測定上注意すべきであることを報告した1)

 今回,TAMSMB法に代わり4-(3,5-ジブロモ-2-ピリジルアゾ)-N-エチル-N-(3-スルポプロピル)アニリンナトリウム(DiBr-PAESA)をキレート剤とする方法2)(クイックオートネオCu)について検討した.その結果,TAMSMB法との比較試験において多くの検体でほぼ良好な相関を示すものの,明らかに乖離する検体の存在を認めたので報告する.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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60巻11号(2016年10月発行)

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60巻10号(2016年10月発行)

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今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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