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文献概要
今月の主題 臨床検査情報処理の将来 巻頭言
情報処理システムの進歩に歩調を合わせた検査室
著者: 高橋伯夫12
所属機関: 1関西医科大学病態検査学 2関西医科大学附属病院・中央検査部・医療情報部
ページ範囲:P.615 - P.616
文献購入ページに移動次に,ネットワークシステムが非常に急速に普及しつつあり,なかでも手軽な手段としてインターネットを臨床検査情報の交換に利用する動きがある.医療の形態が変化しつつあり,政策的に病診連携を積極的に薦める動きが加速している中で,基幹病院の医師と地区の医師会員がインターネットをとおして検査情報を交換するシステムがすでに軌道に乗っている地域もある.しかし,このような医療情報のオープン化はセキュリティの面では無防備となる可能性が高い.現在でもエイズなどの感染症で問題となっているが,患者情報の守秘は,今後ますます重要な問題となるであろう.利便性と個人情報の秘匿とは相容れないのが実情で,永遠の課題である.また,社会の国際化は飛躍的に日常化しており,検査情報についても,今後は国際間で情報ハイウェイに乗ってのやり取りも視野に入れる必要性がある.臨床検査標準化プログラムと歩調を合わせて,臨床検査情報システムの国際標準化プログラムが"数多く"実行に移されつつある.すなわち,コンピュータシステムや通信手段を問わずしてデータを互換するしくみの構築である.ただし,この"数多く"に問題があり,1つの統一されたシステムが実現するには多少の時間がかかるものと思われるが,これらが淘汰されて国際標準臨床検査システムが完成するのは時間の問題である.そのようにして検査情報の互換性が達成されれば,患者にとっては医療の質の向上と経済的負担の軽減,検体採取の回数の減少によるQOLの改善などの望ましい環境が実現できるであろう.すなわち,患者は一定のフォーマットに収納した検査データを何らかの記憶媒体に記録して,国内はもとより世界中で持ち歩くことが可能となる.これが広く活用されるようなことが現実になると考えるだけでも興奮を覚える.
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