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文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻7号

1998年07月発行

文献概要

今月の主題 多発性内分泌腫瘍症(MEN) 話題

放射線障害とMEN―実験的下垂体,甲状腺,卵巣腫瘍を中心に

著者: 伊藤明弘1 藤本成明1 丸山聡1

所属機関: 1広島大学原爆放射能医学研究所予防腫瘍研究分野

ページ範囲:P.790 - P.792

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1.はじめに
 われわれの生体は個々の細胞の集合体であり,これらの個々の細胞が集まって臓器を形成し,これらは神経,血液などを通じて全身の統一が保たれている.この統一システムを連絡しているのは各種のニューロトランスミッター,ホルモンおよび免疫システムであり,血清や種々の蛋白,増殖因子などにより司られているが,さらに細胞間同士を直接つなぐ情報伝達経路も明らかになりつつある.
 放射線障害は大別して急性障害と慢性障害に分けられる.急性障害は,広島の被爆者で観察された脱毛,下痢,貧血,火傷などが最も多発した病変である.これらの急性障害を免れると,白血病,貧血,骨髄障害,ケロイド,神経不安定障害などの亜急性疾患が発症してくる.これらの病変は多くは致死的とはならないが,ほぼ一生継続して発症するものが多い.最後に来るものが,慢性障害であり,悪性腫瘍,心,血管系障害などいわゆる現代病の代表的なものがある.ただし,広島,長崎の被爆者集団では白血病は異常の高頻度で多発したが,他の固形癌の発生は一般集団の2~3倍程度にとどまっている.したがって,放射線の特徴は,①ヒト一般集団に認められる悪性腫瘍と同一のものが発生し,その頻度を少し増強させ,ある場合には潜伏期間を短縮させる.②一般集団にまったく存在しない形の病変は認められない.③直接被爆者での影響と異なり,子孫への影響はいまだ明らかでない.ただし,実験的には親に放射線を与えて生まれてくる二世では明らかに悪性腫瘍の発生率が上昇することが知られている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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