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文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻7号

1998年07月発行

文献概要

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

アポリポ蛋白欠損症

著者: 岡本康幸1

所属機関: 1奈良県立医科大学病態検査学

ページ範囲:P.801 - P.807

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はじめに
 アポリポ蛋白の遺伝子変異は,アミノ酸置換,短縮化,発現低下などにより,蛋白の構造的,機能的あるいは量的な変化を引き起こし,種々の脂質代謝異常の原因となるが,血中で有効な蛋白がほとんど消失した場合には欠損症となる.アポリポ蛋白の欠損は,一般に,A-IやBなどの構造アポリポ蛋白では関連するリポ蛋白の著明な減少を示し,EやC-Ⅱなどの末梢性アポリポ蛋白ではリポ蛋白の異化障害により特有の高脂血症を示す.通常,血中アポリポ蛋白の免疫学的な定量検査で測定感度以下の減少が認められることにより,欠損症が疑われる.確認のためには,超遠心でリポ蛋白を分画し,SDS-ポリアクリルアミド電気泳動や等電点電気泳動,あるいはこれらを組み合わせた二次元電気泳動などを行う.高感度のウェスタンブロット法を行えば,少量の蛋白が検出される場合があり,短縮型などの分子異常が検討できる.
 アポリポ蛋白欠損症の背景となる遺伝子異常には,コード領域内やsplice siteでの欠失,挿入,置換などにより開始コドンが消失したり,不適当な位置に終止コドンが形成される場合が多いが,転写調節部位に関する異常も考慮する必要がある.免疫学的な定量検査で検出されても,まったく機能を失った異常蛋白が出現している可能性も考慮する.また,配列内のアミノ酸が1つ変化しただけでも欠損症を示す例が報告されている.いとこ結婚などによる同じ変異のホモ接合型では典型的な症状が現れるが,ヘテロ型では症状が軽くなり,またアポリポ蛋白定量でも半減する程度となる場合が多いので,本症を念頭に置いた診断が必要となる.家族内に同様の所見がみられるかどうかが参考となる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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