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文献詳細

雑誌文献

臨床検査42巻8号

1998年08月発行

文献概要

今月の主題 受容体 話題

インスリン抵抗性の糖尿病

著者: 高橋義彦1 門脇孝1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科

ページ範囲:P.892 - P.894

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1.はじめに
 現在生活習慣病として位置づけられているインスリン非依存型糖尿病の発症機序として,インスリン抵抗性とインスリン分泌の低下との2つの要素が考えられている.インスリン抵抗性とはインスリン作用不全であり,インスリンが血中から毛細血管壁を透過して標的細胞に至るdeliveryの過程,インスリン受容体との結合,それにより起こるインスリン受容体チロシンキナーゼの活性化,その基質のチロシンリン酸化とその下流の情報伝達といった作用発現のプロセスのいずれかが障害されて起こると考えられる.ヒトではインスリン受容体異常症が顕著なインスリン抵抗性疾患として遺伝子解析されているが,臨床の場で遭遇するさまざまな程度のインスリン抵抗性症例の病態は多岐にわたり,必ずしも糖尿病を呈するわけではない.しかし糖尿病を呈さなくても,動脈硬化性疾患などとの有意な相関がみられ,インスリン抵抗性は生活習慣病の病態に深く関係していると言える.糖尿病は多因子遺伝疾患と考えられているが,最近ジーンターゲティングにより生まれたノックアウトマウスの臨床型から1つないし2つの遺伝子の欠損で糖尿病が発症することが明らかになっている.本稿ではそうしたモデル動物の解析を中心に最近の話題を紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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